まっつんさんの映画レビュー・感想・評価

まっつん

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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

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しっとりとした情感溢れる長回しに乗せて交わされる贅沢極まりない視線のやりとりにただ陶然とし、何よりも雄弁な沈黙を味わう、この上なく上質な「愛」についての物語。

人生の不可逆性と「わからない」未来を同
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

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これまでも「巨匠」の称号を冠せられてきたクリストファー・ノーランであるが、本作で文字通りのそれに”化けた”。

観客を試すが如く入り乱れる時系列、それでもこちらの混乱を最低限に留める研ぎ澄まされた編集
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

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音楽評論家の田中宗一郎氏は第一作の印象を「超美麗なスクリーン・セーバーみたい」と述べていたが、僕もこの評に同意するところ大であり、遅々として進まないストーリー、平板なテンポをひたすら刻む編集、バリエー>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

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早くも2024年ベスト候補の作品に出会えたことを先ずは言祝ぎたい。

記憶を再構成するメディアとして、そして「眼差す人びと」を捉えるアートフォームとしての「映画」への示唆と深い考察に富んだ途方もない傑
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アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

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明白さ=ステレオタイプを求める衆愚(無論、僕も含まれる)を終始刺し続ける、皮肉に満ち、底意地の悪い視座に居心地の悪さを覚えつつも、語り口はあくまでも軽やかで観やすい。

「大衆性」と「芸術」は両立しう
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

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冒頭、産道を通って母体から出行く胎児の主観視点から物語が紡がれ出した時点で、ただ事ではない何かが始まったかと思いきや、あれよあれよという間に不条理でカオティックな悪夢へと誘われていく。

異様なまでに
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

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16mmフィルムの「きめ細やかな」とは形容し難い粒子を湛えてスクリーンに投射されるメンタル・ディスオーダーの人びとの様は、その解像度の低さ故に、我々の安易な共感を決して許さないが、それでも、終幕に際し>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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主人公・ベラは自死した女性の肉体に胎児の脳が移植された人造人間という造形。人工的に創り出された「生」ではあるが、これに絶望するでなく自ら寿ぎ、肉体と精神の行使権は自らにこそあるのだというアティチュード>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

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ルカ・グァダニーノの傑作『君の名前で僕を呼んで』のエメラルド・フェネルなりの変奏かと思いきや、最後には思わぬところに連れて行かれる怪作。フェネルの前作『プロミシング・ヤング・ウーマン』から趣向がガラリ>>続きを読む

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

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怖い、これは怖い。
若者たちが降霊術に嵌る様はドラッグ乱用の隠喩にも見えるが、ストーリーが最奥を穿つにつれて、誰しもが持つ承認欲求、もっと言えばアディクティヴな人間関係のそれであることに気づかされる。
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ロスト・フライト(2022年製作の映画)

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もともと飛行機が大の苦手の私にとって、中盤の不時着のシークエンスは搭乗前に見る妄想が現出したかのようで最悪(無論、褒め言葉である)であったが、「一つ一つ着実に」とプロに徹して事態の打開のための最善の一>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

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Stick to your plan(計画通りに)、Don’t improvise,anticipate(予測せよ、即興はするな)と主人公が執拗に唱えるマントラに、監督であるデヴィッド・フィンチャーの>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

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ナポレオンの歩み=近世フランス戦争史という観点で、彼が出陣した61の戦争のうち有名な5戦をピックアップして描くという思い切ったアプローチは果たして成功していると言えるのだろうか?

大画面にスペクタク
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愛なのに(2021年製作の映画)

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インモラルなように見えて、その実は誠実な「愛」についての考察であるところがいかにも今泉監督の脚本らしい。
城定監督の演出は相変わらずバッチリ決まっていて、特にフレーミングは秀逸。ピタリとハマる人物の配
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(2023年製作の映画)

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『首』という題を冠しながら、全くこれに頓着しない羽柴秀吉の様は強烈なアイロニーと虚無を醸す。
さて、「武功」として織田信長の首に拘り続けた明智光秀は、北野武の目にはどう映るのだろうか。

と、賢ぶった
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

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山崎貴監督なりの『ジョーズ』の変奏として興味深く拝見したところ。

個人的に『ジョーズ』の白眉と思うのは、鮫との決戦前夜、船内でブロディとクイント、フーパーの三者が自身の傷跡を見せながらその由来を語り
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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

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なるほど、こう来たか!というセンス・オブ・ワンダーにあふれた、2020年代のchildren of men。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

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206分という誰もが身構えて挑まざるを得ないであろう上映時間の全てにおいて、弛緩も、そして隙さえも生じさせない巨匠の御業に陶然とする至福のひとときを過ごしたところ。

アメリカという国が犯してきた制度
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ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(2023年製作の映画)

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「どうせ俺たちなんて」というジメジメした盆暗精神と、「なんだって出来らァ!」という根拠のない全能感とが同居し、そしてひたすらにきゃいきゃいと遊びくれていた“ティーンエイジ“を経験した俺たちを、やんわり>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

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『ミッション・インポッシブル:デッド・レコニング part1』が映画の古典を参照しつつ、その動性を極限まで現代的にアップグレードする試みであったとするならば、本作は2014年以降、アクション映画史に燦>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

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私はウェス・アンダーソンの最高傑作は『ファンタスティック・Mr.FOX』であると信じて疑わないが、それ以降は緩やかな下降線を辿っている印象。というか、彼の作家性に伴う毎度毎度の「この感じ」に、正直飽き>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

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巨匠・宮﨑駿といえども寄る年波には勝てないのか、彼のトレードマークであった動的なカタルシスに満ちた活き活きとした線画はほぼ死に体と化しており、アニメーションの本質たる絵が動くことの悦びは、前作「風立ち>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

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バスター・キートンが主演を務めたスラップスティック・コメディ・ムービーの再興とはかくや、と言わんばかりのアクションのつるべうちには呆然とするよりほかなく、トム・クルーズの疾走と滑空の様に、映画というア>>続きを読む

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

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主な目当ては、今年度のアカデミー主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーの演技を見に行くことであったので、それは叶えられたところ。重たすぎる身体をずるずると引き摺りながらよたれ歩くチャーリーの巨体は>>続きを読む

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り(2023年製作の映画)

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米国において批評家及び観客の双方から高い支持を集めていることを知り、危うくスルーしかけていたところを慌てて鑑賞。成る程、これは確かに面白い。

鑑賞前に予測していた「ファンタジー版ガーディアンズ・オブ
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AIR/エア(2023年製作の映画)

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ジェームズ・マンゴールドがスティーヴン・スピルバーグの後を継ぐ者(つまりは後者が体現してきた「アメリカ的娯楽映画」のバトンを受け継ぐ者)であるとするならば、ベン・アフレックはシドニー・ルメット的な(さ>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

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これは僕が愛する「映画」のフォーマットに落とし込まれた作品ではない。繰り返される説明セリフの応酬、イマジナリー・ラインの崩壊したバストショットと冴えない切り返しが延々と続く画面構成にはほとほと辟易する>>続きを読む

まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

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軽妙かつ心地のよい掛け合いの妙、手堅く観やすい演出と、あらゆる面で及第点を超えつつあった「思わぬ拾い物」的な本作だが、ここで終われば完璧なのに!というタイミングを1分ばかり逃してしまっているという一点>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

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スピルバーグの半自伝をとおして、映画の本質を浮かび上がらせるといった趣の作品。

カメラに事物を撮り納めることで、何某かの真実を映し取ってしまう映画というアートフォームの孕む暴力性、何かを切り取る(フ
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

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重々承知の上で、ものすごく馬鹿みたいなことを言うが、やっぱり「映画ってすげぇ」。

登場人物の一挙手一投足、生じる展開など、そのいずれもが突拍子がなく、そして滅茶苦茶であるのに、それが繋がって「見える
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西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

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人命を代替可能なモノとして見做す「戦争」の禍々しさが冒頭から提示され、そのあまりに淡々としたルーティンに呆気にとられていたら、文字通り地獄のような戦線へと誘われ、延々と行きつ戻りつの経巡りが繰り返され>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

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真のメロドラマと官能は直接的な描写の上には成り立たず、我々人類の得た特権たるイマジネーションとインテリジェンスの上に成立する。
縁を求めて浮遊しては沈み、そして最後には溺れていく、決して結ばれ得ない二
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バビロン(2021年製作の映画)

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1920〜30年代の豪奢なるハリウッド業界、そして彼らの織りなす狂宴の葛折りの彼方に、デイミアン・チャゼルなりの映画愛を描こうとした本作のことを、僕は一切評価しないし、今後好きになることもないだろう。>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

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中年男性のアン・フレンデッド・ストーリーと思いきや、最終的には遍く世界にある分断と安全保障の話に至る脚本の精緻さよ。

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

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いわゆる「社畜」たちが過ごしている、常に仕事に追われ立てられる似たような日々を、タイムループという手法で表現してみせた時点でアイデア勝ちも同然の本作は、「反復」とそれを打ち破る「変化」を繊細に描き、か>>続きを読む

マッドゴッド(2021年製作の映画)

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ト書きも筋書きもない、地獄で繰り広げられるサークル・オブ・ライフには当然の如く条理も存在せず、只管に繰り広げられる殺戮と汚物の提示には、最初は興味を覚えたところであるが、段々と食傷を感じることとなる。>>続きを読む

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