【祝】英国映画アカデミー賞(BAFTA)にて、「お嬢さん」が外国語映画賞受賞とのこと。おめでとうございます。
これを機に、以前上げた感想に付け加える形で、再度UPします。
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十代の頃、小説や漫画や映画……その媒体を問わず、男女間のラブストーリーが嫌いで、鑑賞を避けていた時期がある。当時ラブストーリーが嫌いだった理由の一つが「男と女の間にある社会的な格差を、ロマンテ>>続きを読む
「赤の時代」が始まる。冒頭、あまりにも鮮やかな真紅の空間の中、躍り狂う脂肪の塊に圧倒され、鑑賞者達たる私は、訳も分からぬまま、暴力的に作品の世界へと引き摺りこまれる。だが、オープニングが終わって気づ>>続きを読む
この作品は、戦争映画であると同時に、異端者の英雄譚だった。
物語は、主人公デズモンド・T・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)の幼少期の記憶から始まり、成人して恋人に出会い、軍に志願するようにな>>続きを読む
感想を書くにあたり、私には、この映画の素晴らしさを描写するだけの文章力が無いということを、最初にまず明言しておかねばならない。私の言葉では、この壮大すぎる映画の魅力を語り尽くせない。だが、こんな唯一>>続きを読む
この映画を観終えたとき、私は「耳で映像を観る」という感覚を初めて味わった。その時見た景色は、時間を経た今となっても、私の脳内で鮮やかな残像となって生きている。
しかし『光』を観た人全員が、これを体>>続きを読む
あまりにも有名すぎて、見逃していた作品の一つ。
不眠症に悩むトラヴィス(ロバート・デニーロ)は、マンハッタンのタクシードライバーの職を得、夜の街をタクシーで走る。彼は麻薬売人や娼婦などで賑わう盛り>>続きを読む
家族や大事な存在を、突然不本意な形で亡くした時、人は、今日と同じように明日が来ること、未来が当り前に続くことが、信じられなくなる。生の呆気ない幕切れを目撃した人は、より良い未来を信じることなんてでき>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
突然だが、私は幼少期を日本有数の信仰深い土地で過ごしたせいか、自身の信仰以前に、昔から魂の存在を信じている。
そして現在は『新耳袋』を始めとした多くの実話怪談集本の蒐集家であり、『幽』等の怪談雑誌>>続きを読む
フィクションの多くは、キャラクターの台詞や言動によって、その人の心情や内面や過去を明快に表現することで、ラストへと導き、観客に問題が解決したという満足感を与える。だが、実際の生活において、必ずしも私>>続きを読む
主人公の女子高生ネイディーンは、幼少期を振り返って「この世の中には『勝ち組』と『負け組』の二種類の人間がいて、私はいつも『負け組』だ」と語る。
そんな彼女を見て、観客である私は、こんな風に自分の十>>続きを読む
「男らしさを究極的に突き詰めるとシュールな笑いが生まれる」という現象をギャグとして描く作品が、この世にはたびたび生まれる。たとえば、昭和の傑作少年漫画『魁!!男塾』がその典型であったのに対し、201>>続きを読む
「暗いトンネルを抜けた光の先に」
後編を観終えた時、この『三月のライオン』という映画が何を描いたのかを、ずっと頭の中で考えていた。そして、自分なりの解釈ができた。
この作品は、幼き日に家族を失う>>続きを読む
「魔法が魅せる映像的カタルシス」
むかし私は(一昔前の)ディズニープリンセスものが苦手な女の子だったので、今回の実写版も観に行くべきか二の足を踏んでいた。けれど先日雑誌ELLEに掲載されたエマ・ワ>>続きを読む
キム・ギドク監督作品。
観終えた時、なんとも言えない浮遊感にとらわれ、しばらく抜け出すことが出来なかった。
これはまるで、荘子の「胡蝶の夢」ような世界だ。 私が蝶になった夢を見ていたのか、蝶が私>>続きを読む
映画にはそれぞれ、その人にとって観るべき時があるようで、そのような時分に幸運にも巡り合い、観た映画は一生の宝物になる。だが、そうでない時に観た映画は、どんな名作であっても心の琴線に触れずに、忘れ去っ>>続きを読む
「クズ男達のミドルエイジクライシス」
ヘロインまみれの20代を描いた前作から20年。月日は流れ、再びマーク・レントンはエディンバラへと戻ってくる。
映画冒頭は前作と同じく、人が走る姿から始まる。>>続きを読む
家族ものの感動ロードムービーかと思いきや、この映画は、観客である私達が普段信じていた価値観に対し、絶えず疑問を突きつけてくる社会的な問題作だった。
常識とは何か?社会とは何か?幸せとは何か?教育と>>続きを読む
この物語は、現在の日本社会を生きる、とある不器用な女の子のおとぎ話だった。
前半は、主人公の結婚とその失敗、転落を描く。
皆川七海(黒木華)は派遣教員をやっているが、仕事は安定せず、友達も少な>>続きを読む
当たり前すぎて普段私達は意識しないが、人のアイデンティティというものは、往々にして、その人の過去の経験や、帰属意識から生まれ、形作られるものだ。
では、もし自分の中に欠けた過去があったとしたら?>>続きを読む
最初、ひねくれ者の私は「これってよくある、すれた都会の若者が田舎に癒されて、人生を見直す話でしょ?」と、思い切り高を括って鑑賞に臨んだ。
そして実際、ストーリーの大筋はその通りだった。だが観終えた>>続きを読む
「此処と彼岸の境界」
主人公ジャンは世界最古の写真撮影法ダゲレオタイプの写真家ステファンの助手になり、彼の娘でモデルのマリーと恋仲になる。長時間モデルの身体を拘束する撮影から、ジャンはマリーを救お>>続きを読む
「罪と正義を主張する主人公の執念」
80年代軍事政権下で赤狩りの風が吹く韓国。高卒で弁護士をやっているウソクは、若い頃に世話になった店の息子ジヌが国家保安法違反容疑で逮捕されたことを知り、アカだと>>続きを読む
「すべての解釈を観客に委ねる映画」
架空の独裁者の幼少期を描いた映画『シークレット・オブ・モンスター』を観た。第一次大戦後間もない仏国に米国高官の父に伴ってやってきた美少年プレスコット。彼の家族と>>続きを読む
「観客の聴覚を究極まで研ぎ澄まさせる映画」
デトロイトの三人の若者は街を出ていく為、退役軍人の盲目老人の家に強盗に入る。しかし老人は驚異的な聴力と戦闘力を持ち、三人は狩られる側になり、追い詰められ>>続きを読む
「神を信じる強さと宗教が持つ欺瞞のはざまで」
江戸時代初期、禁教下の日本で布教をしていた恩師が棄教した報を受けた宣教師のロドリゴとガルペは、真実を確かめに長崎へ来日し、迫害される信徒達の姿を目撃す>>続きを読む
「新しいヒーロー像、ロールモデルを描く映画」
いわゆるアンチ・ヒーロー物ドラマ。主人公が自閉症っていうのが、凄く新しく感じた。発達障害者がヒーローにってのは珍しいし新しい。アクションも素晴らしかっ>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
先日、映画『虐殺器官』を観て来ました。そして感想はというと……観終えた時、正直ものすごく混乱しました。
(ちなみに以下たいへん長く読みにくいので、なんなら私のブログで読んで頂く方がよいかと思います→>>続きを読む
「家族はつらいよ」
主人公ルイは自分の死期が近い事を伝えるため12年ぶりに実家に帰郷する。だが久しぶりに顔を合わせた家族は噛み合わず、会話が互いを傷つけ合うことに…。
大仰な性格の母、威圧的な兄>>続きを読む
「嫌な奴しか出てこないイヤミス映画」
とにかく登場人物がほぼ嫌なやつしか出てこない。惨殺された感じのいい夫婦と評判の二人について主人公が調べていくうち、女癖が悪く野心的な夫の過去や、向上心が強く他>>続きを読む
「夢追うことの儚い虚しさ」
夢を追いかける愚かな大人である主人公二人を描き、現実に何度も打ちのめされても、互いの情熱や芸術に惹かれあい、すれ違い、それでも夢を諦めない。素敵で、切ない映画だった。愛>>続きを読む
「良くできた映画だが、マイノリティの描き方がステレオタイプすぎる」
母が突然家を出ていった少女トモは、叔父のマキオの家に身を寄せる。そこで、彼の恋人である性転換手術を受けた女性リンコと出会い、同居>>続きを読む
「観客を地獄の淵に立たせる映画」
悪い奴らばかり出てくる韓国ノワール映画『アシュラ』。病気の妻を持つ刑事ドギョンは金の為、街の再開発を計画する市長の裏方として汚職に手を染めていたが、それに目をつけ>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
「少女よ、外へ目を向けよ、自らの道を見つけよ」
この映画には、大きく二つのテーマがある。一つは「外の世界へ目を向けよ」。モアナの住む島では、豊富な海洋資源と自然に恵まれて暮らしていける為、珊瑚礁の>>続きを読む
「湿度の高い、まとわりつくような恐怖」
韓国の地方のある山村では、村人が発狂し家族を惨殺する事件が続いていた。警察官ジュングはよそ者の日本人が事件の元凶ではないかと疑い始めるが、自らの娘もおかしく>>続きを読む
「ただ楽しいエンタメではもう満足出来ない」
『SING/シング』吹替版で観た。廃業寸前の劇場支配人のコアラのバスターは、劇場再起をかけて賞金付歌のオーディションを企画。子育てに追われる主婦のブタや>>続きを読む