akubiさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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若葉のころ(2015年製作の映画)

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思い出はいつまでも美しいもの。覚束ない後悔が苦いだけ。痛々しい青春。迸る感情と戸惑いの焦燥。不器用な恋心。無知な正義感。君が溢した涙の跡を、時はただ通りすぎていった。

ドラマチックがすぎて恥ずかしく
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ピクニック(1936年製作の映画)

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盗み聞きしてしまったいやらしい会話と暗い森と嵐に、わたしはふるえた。なにかおそろしいことが起きそうだったから。あのきらきらした河の向こうがわへは、行ってはいけない気がした。人生の現実と空想のあわいを漕>>続きを読む

軽蔑(1963年製作の映画)

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把手のついたくり抜かれた扉。閉じているのにあいている。これが"家族"でいるということ。愛を覚えた痕の容赦ない要求。情熱は永遠に続くべきものという愛についての幻想。男と女のもちあわせている物差しがまるで>>続きを読む

春にして君を想う/ミッシング・エンジェル(1991年製作の映画)

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よそよそしさと拒絶。都会はこんなにも騒がしいのに、ひとびとは沈黙に浸食されてゆくよう。
「誰もが思うようには生きられない」
死臭の漂うダンスホールからぬけだして。ふたりの帰郷は見棄てられた場所へとつづ
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やさしい女(1969年製作の映画)

5.0

捥がれた翼のような真っ白なショールが空を舞う、終わりにむかうはじまりが美しすぎたから、わたしはあんしんした。
絶望にきちんと絶望できなかった彼女の苦しみとこれから訪れるあらゆる憂いとをだきしめて。
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アメリカン・スプレンダー(2003年製作の映画)

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わたしたちは、自分に持ち合わせていないものをもっているひとを"幸せ"であると認識してしまいがちだし、自分は何故にこんなにも悲惨なのかと腹を立てたりしてしまう(なにに?)いきもの。なにかを手にすればまた>>続きを読む

汽車はふたたび故郷へ(2010年製作の映画)

4.3

監視され抑制された檻のなかでも羽ばたこうとするのを忘れない。ひとびとは空を飛ぶ船を夢みては、ウォッカで苦渋を喉の奥に流し込む。邪魔をするものが人魚かなんかだったら良かったのに、なんて郷愁がさびしくぽつ>>続きを読む

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!(1993年製作の映画)

4.5

時の流れはあまりにも速く、おちた天使は絶望と孤独をしって堕ちてゆく。残酷な時の浸食に身をゆだねて "探し"ながら、ひとは過去と歴史を物語る。そしてそのいれものに唯一いれて運べるのは、愛なのだと天使はし>>続きを読む

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

5.0

なりやまない憂いの詩の海を天使たちは游ぐ。死にむかうものの記憶の欠片と物語を解き放って、ゆきばのない想いや言葉たちは天使が集めてくれる。そんなどこまでも孤独なひとのみる夢。今日もホットミルクティーのマ>>続きを読む

パリ、テキサス(1984年製作の映画)

4.5

わたしもトラヴィスみたいに、剥がれ落ちた過去の破片を拾いあつめるようにすすんだ。深すぎた愛が、すべてを焼き尽くしてしまったから。今度はいつか、あの 空っぽ を満たすべく走りつづける。暗闇をぬけて、幼か>>続きを読む

ハンテッド(2003年製作の映画)

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醒めない悪夢のなかで、じぶんも人類をも疎ましい森の木霊となった彼の哀しみの声が聴こえた。
あの開け放ったままだったマンホールの蓋はまるで彼のこころの扉のようだった。助けてを叫ぶもうひとりの彼。躊躇いの
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テトロ 過去を殺した男(2009年製作の映画)

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過去や血縁から逃げようとするほど囚われる。抜けだすには向き合うしかないというジレンマ。損なわれた自尊心のそのぽっかりと空いた傷口がじくじくと痛い。真実は、氷河の煌めきのように眩しすぎて彼は目を閉じてし>>続きを読む

ニア・ダーク/月夜の出来事(1987年製作の映画)

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この世に囚われた死ぬことのかなわない可哀想ないきものたち。冷血でいなければ生きぬけないだなんてアイロニー。
永く生きている(生きなきゃいけない)のに毎日イライラカリカリしてやっぱり太陽を浴びないから自
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BACK TRACK バックトラック(1989年製作の映画)

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ロマンチックな音楽に変態性が漂いはじめてわたしは嬉しくなっちゃった。「ストレスはからだによくないよ」なんてプンスカなアン(そりゃそうだろう)をみて落ち込んだりと童貞み溢れる優男まるだしになる殺し屋の愛>>続きを読む

ビーチ・バム まじめに不真面目(2019年製作の映画)

4.0

おくさんが死んでも友人が左足をサメに噛み切られても、笑って飲んで吸ってヤッて踊って吐く。それらが彼に美しい言葉を紡がせる。あとにゃんこのごろごろ。
渚のホームレスは欲望のままに刹那的美しさを綴じこめて
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クルエラ(2021年製作の映画)

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自らのアイデンティティの輪郭をスケッチしてゆくような少女時代のエステラがきらきらしていてとてもすき。
Cruelサイドのクルエラのその運命を受け容れた哀しみを孕む挑発は、妖艶に眩い蛹から羽化した蛾のよ
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ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲(2001年製作の映画)

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あれ。このひともあの人もこの場所も知ってるぞとおもっていたら、世界を飛び越えてあんなひとたちやこんなひとたちまでなんてお祭り騒ぎ。吐き出される毒と自虐、リスペクトを孕んだディスまで愛おしくて可笑しい。>>続きを読む

ダーク・スター(1974年製作の映画)

5.0

宇宙で響くカントリーとロックに弾んでいたらモニターに一瞬あらわれたぞっとするサブリミナルみたいな残像に囚われた。船内にただよう寂寥と倦怠とおかしみ。退屈な船員たちの詩のような独白。調子はずれのメランコ>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

4.0

やばいちょうおもしろかった。ヴィルヌーヴの撮る美しくもエキサイティングな画とディストピアなギミックと巧妙で壮大なものがたり。きらきら光るわたしたちの生命をおびやかす残酷な美しさに涙が零れる。ちっぽけな>>続きを読む

河内カルメン(1966年製作の映画)

4.5

安らぎの場所を探しつづける渡り鳥のようなつゆこ。花の密に集まる虫のような男たちを包容力のあるその大きな翼で優しく抱きしめつづけた。おなじくらい憎みながら。けれど女たちは絶えずとまり木を求めつづけてしま>>続きを読む

ボクと空と麦畑(1999年製作の映画)

4.0

やられたらやり返す、弱いやつにはその力を見せつけるのがルールのこのごみ溜めみたいな町で。オトナたちはなにかと闘いながらビールとサッカーと昼寝にしか興味がない。あるいは鬱々と日々に垂れこめる灰色にぼやい>>続きを読む

私の、息子(2013年製作の映画)

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富裕層の自己中でかまってちゃんのいわゆる"おばちゃん" のおはなし。金と権力ですべてが自分の思いどおりになると信じて疑わない痛々しさがとても哀しい。ならない電話。強制しないと会いにこない息子。この事故>>続きを読む

列車に乗った男(2002年製作の映画)

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おおよそ交わるはずのないふたり。ひとりはアウトローな冒険に憧れ、ひとりは過去に囲まれた平穏な生活に夢をみた。乗ったレールをそう簡単に切り替えることはできない。わたしたちは走りだしているこの列車のなかで>>続きを読む

存在の耐えられない軽さ(1988年製作の映画)

4.0

「わたしもあなたみたいになりたい。無神経で。したたかで。」
テレーザは愛をトマシュに、情をカレニンにそそいだ。裸が儚くも美しいのは、そうでないときは隠されているから。縛られているから。
「支配されるの
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アンモナイトの目覚め(2020年製作の映画)

4.5

女たちの自らが放つ言葉は、独り言や寝言や間奏曲のようなモチーフの語る幻影でのみ。大海原に一歩を踏みだすがごとくに震えたあの日。陽光に包まれて悦びの波を泳いだあの午後。絶頂のあとのような幸福感と寂寥感の>>続きを読む

ピーウィーの大冒険(1985年製作の映画)

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誇張されたイタい大人たちの愛おしさと可笑しさ。迷子になった大好きな自転車をさがす大冒険。でも好きなものや好きなことを追いかけつづけていればきっと新しい未来が開けるよ。でも思いやりも忘れずにね。アハハっ>>続きを読む

乱暴と待機(2010年製作の映画)

3.5

本音が言えないふたりの拗らせ愛。おどおどしているひとに対して発動してしまうひとの支配欲という迸る本能の気持ちわるさと、嫌われないよう必死に求められることで人格を保つしかない哀しさもぐちゃぐちゃに縒り合>>続きを読む

ヌードの夜(1993年製作の映画)

4.3

俯瞰を誘う世界のあちら側とこちら側の視線。世界の傍観者のような紅次郎とたくさんの後悔を抱える哲郎の境界線が瞬く。可哀想な女たちを放っておけない「女たちの夢の跡」の管理人の哀憐にいだかれて。みんな孤独か>>続きを読む

いのちの食べかた(2005年製作の映画)

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この映像はとくに主観は息をひそめ、ただ太陽がめぐるのを眺めているような俯瞰に揺蕩いながら、わたしたちに 考える ということの大切さをおしえてくれる。 ほとんどすべてがautomaticに、わたしたちも>>続きを読む

懺悔(1984年製作の映画)

3.8

亡骸のうえには合唱のシーツが掛けられるけれど、いつかの誰かは厭な予感に逃げ惑う悪夢にとらわれる。いつだっておいかけてくる洗脳のような支配。悪魔は悪魔に懺悔して、邪悪は崖の上から棄てられる。そんな夢をみ>>続きを読む

アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)

4.5

消さないラジオから鳴りつづけるノイズ。永遠と止みそうもない大地を跳ねる雨粒。革靴が床を擦る悲嘆の主張。その微笑みから漏れ出でるような、変わり移ろいゆくものへの郷愁を抱きしめる。鳥籠のなかの独りぼっちの>>続きを読む

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス(2016年製作の映画)

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ニューヨーク公共図書館を1日体験させてもらったよう。運営の会議や様々なプログラムやイベントライブやなんかをのぞいて、それはとても興味深く有意義で浪漫あふれる時間だった。
自由に発言する。それを自由に聴
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アニエスによるヴァルダ(2019年製作の映画)

4.0

アニエス・ヴァルダによる彼女自身が撮った映画や写真やインスタレーションへの想いや撮影秘話、出会ったひとびとや思い出の場所がゆったりと語られる。ひと が好きな彼女の創る作品を通して、ひとのもちうる純粋な>>続きを読む

さよなら、私のロンリー(2020年製作の映画)

4.3

孤独が凍みるのだけれど、触れあう心がかたかたと音をたてる。まるで眠っていたわたしの真ん中を起こそうとしているみたいに。遥かな郷愁。あのこにとってそれは泡のように鬱陶しく滲む淡く儚い幻想。ビッグバンのよ>>続きを読む

サンセット大通り(1950年製作の映画)

3.5

大きすぎるお屋敷に寂しげに灯るあかり。愛のはしっこにしがみつくひとびと。栄光という亡霊に憑かれたハリウッドの闇にころされた、栄光も愛も再び手にすることのなかった哀れな男のものがたり。その魂はようやく自>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 完全版(1984年製作の映画)

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思い出がぽろぽろと、始まりにむかって終わってゆく。雄弁な余白から滲む彼の劣等感と焦燥感。愛と憎しみで繋がったふたり。ゆっくりとだけれどつねに先を歩く君に少しでも近づこうとしていたみたいだ。けれど気が付>>続きを読む