Habby中野さんの映画レビュー・感想・評価 - 16ページ目

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

ぼくは『エヴァンゲリオン』のことはまったくわからない(そう言わされてしまうのが嫌だから少し距離を取っていたところもある)。
アニメシリーズを観ていない。だから独立した存在としてのこの映画の“シンジくん
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東京ゴミ女(2000年製作の映画)

3.6

世紀の狭間のいわゆる“スタイリッシュ”はビデオの色の撮れなさに拠るとおもう。撮られた瞬間から過去然とする映像化された世界は、狭間の窪みと共鳴する。フィクションみが強いフィクションも現実的なフィクション>>続きを読む

ロード・オブ・ドッグタウン(2005年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

早起きして明け方、サーフボードひっつかんでスケボーで海岸へ。なんてカッコよいオープニングシーン。セクシーなクルクル金髪ミディアムヘア、最高の音楽、スケート、希望、成功、変化。“たしかにそこにある”、手>>続きを読む

トラック野郎 度胸一番星(1977年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ー史上12番目にバカなオープニングあき竹城/八代亜紀ソロコンサート〜今夜は夢で帰りたい〜/生ビール鼻血拭いたティッシュ入り/千葉真一(完全に『広島死闘編』大友勝利声)の啖呵で眠りたいー
「たまにはなメ
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ビリケン(1996年製作の映画)

3.2

全然おもしろくないけど大阪、大阪やな大阪やわ、と阪本順治のたまに勢いでいっちゃうやつの幽霊の正体見たりって感じで。

靄の向こうに(2012年製作の映画)

3.4

無彩色、壁のタイル、裸、汗、イグアナ、眼差し/邂逅への期待、怯え、過去への執着、歌、好機と逡巡、我慢。これでもかと分けられた画面の中の身体性と精神性、記号と意味、現象と本質、をどちらともなく包み込み混>>続きを読む

存在しない夢の国(2012年製作の映画)

3.4

万が一、遊園地が夢の国なのだしたら、それは存在していない。ことに気づく女の子。現実に作られた場所で、虚構は現実に存在している。万が一、大人たちが子どもの世界、を夢のようだと思うとしても、それは存在して>>続きを読む

肉体と火山(2015年製作の映画)

3.6

生きることは世界に対する妄想的自己の拡張であり、翻訳であり誤読である。それは自分一人の確実なもので、ほかの誰にも譲れるものではない。他人の無関心も優しさも読み込んで飲み込んで生きるのは、強いということ>>続きを読む

おとし穴(1962年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

誤って爆音で再生してしまった冒頭の音から始まり、設定、物語、映像、どれをとってもそら怖ろしい。なによりもこの映画にそれらしき「落とし穴」が存在しないこと、なにもかも「わからない」ことが狂いそうなくらい>>続きを読む

真西へ(2019年製作の映画)

3.2

好奇心旺盛の少年、顕示欲の強い姉、何も考えずついていく妹、純粋に娘を心配する父、小さく揺れ動く娘の心。自分以外イデオロギーのない生身の人間最小単位の姿、短い夏の発表会。

北斎(1955年製作の映画)

3.5

粗い接写のみ/キャプションでないナレーション/あの奥行きとスケール/筋道でなくストーリー/絵の醸し出すサウンド/人魂に 行くきさんじや 夏野原

東京少女(2019年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

とるに足らない、自らとるに足らないと言う一人の若者の独白は、自己陶酔と問いと迷いと悩みと苦しみと空虚さの自認と愚痴と夢と寂しさと非双方向な愛と雰囲気と関心と無関心と希望と絶望と抵抗の個人的な語りは、日>>続きを読む

私たちの愛は誰にも負けない(2018年製作の映画)

3.3

君を愛するようには他の人は愛せない
これより強い愛はないんだ

A Sister(2018年製作の映画)

3.0

「a sister」
通報を受けた女性が通報者を救うために被せられた役。スリルある展開の末、その“役”は安堵に到達。が、震え上がった通報者は車を降りるのを嫌がり、そして安否確認に応えず電話を切る。a
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俺たちの映画ができるまで(2011年製作の映画)

3.0

こうして映画ができた。「映画を作れなかった」は映画になる。そしてまたビデオカメラを拾った少年らの映画が始まる。

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

社会-大衆の接続から外れたアウトロー家族が、皆が怖れる怪物に立ち向かい倒すことでこの壊れた社会(画面外の鏡写しとしての社会)を変革せしめ再接続する、という主人公(あるいは社会)の成長譚 教訓譚ー怪獣モ>>続きを読む

日曜の昼食(2015年製作の映画)

3.0

「日曜日」「昼食」には懐かしい夢の幻想性がある気がする。その非現実性と実際の時間の乖離を描くのにアニメーションは自由に暴力的に適しているな。理想を打ち消す現実の不安を、歪曲するように表現して絵が動くこ>>続きを読む

スタア(1986年製作の映画)

3.6

バカげてる、バカげまくっている。隅から隅まで最小フレーム単位を超えた0.01秒まで、時空が歪んだかのようにバカげている。酒を飲んでヒッチコックん家から奪った骨を間違えて大林家のポストに入れた文化人たち>>続きを読む

菜の花畑で引きつけられて(2018年製作の映画)

3.2

GPSを使用したマッチングアプリ=テクノロジーの勝利/への敗北は宇宙の星から見ればしかし人間の運命的自由さの敗北とは限らない。空-地上の目線が行ったり来たり、で見えるのは種豚の逃亡を最後には認めるミカ>>続きを読む

ニコラ・ショヴァンの栄光に満ちた受賞スピーチ(2018年製作の映画)

3.2

都会人の作ったピエロ、架空の存在による架空の受賞スピーチの架空の話。ナポレオンに乳首は3つはない。が、乳首を撫でるのは本当、っぽい噂。途中までマジに見てしまってたから爆笑したりもしたけれど、ラストの怒>>続きを読む

思い出の船乗り(2011年製作の映画)

3.0

思い出、ただの思い出。他人の懐かしい思い出。でも誰の思い出なのか、いつの思い出なのかなんてわからない。それをひどいとは思わない。

雷の子供たち(2019年製作の映画)

3.7

こんなにも感じてしまうのは夏が美しいからか、画面が懐かしい525のビデオサイズだからか、少年少女への時間的に届かない距離をもはや測ってしまっているからか。
大人に失望して、神がかり的な子ども性を保って
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旅するパオジャンフー(1995年製作の映画)

4.5

他愛ない会話をする家族が乗ったバンが、台湾の片田舎を走る。黄色っぽい雰囲気のその後ろ姿に乗る少し音調古めかしいナレーションの、説明のための形容というよりも、後々ずっと続く、真実味を持った響き。
「パオ
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ぼくたちのジュネーヴ条約(2016年製作の映画)

3.4

少年は大人の比喩であり大人は少年の生き写し、人間は人間の、映画は現実の裏写し。
若者たちがカネ、プライド、有り余ったエネルギーで争いあってケンカに、ならない話。身銭を切るのは痛い。資本主義社会において
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燃えつきた地図(1968年製作の映画)

4.0

画力、画力、画力、画力、画力。グラスに映った顔とのツーショット、極端なズームイン、間の長すぎるピン送り、気の狂いそうになる色調変換、深いディゾルブ、暗すぎる闇、フィルムノイズのみが流れ続ける静かすぎる>>続きを読む

俺達に墓はない(1979年製作の映画)

3.4

マスクの上からくわえタバコの咳エチケット。ダイナマイトにも火をつけやすい。
勘違いから相方を殺し、弟分を殺し嗚呼それは儚い、俺たちに墓はない。
輝かしきピンクのレディーに囲まれて、自らを“あくまで”華
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愛しのアイリーン(2018年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

美談、かのようにまっすぐすぎて近すぎて、想像力の入り込む隙はない。ぜんぶが見てわかることと、うろつく程度の「なのだろうな」と不確かな推測のための断片でのみ作られている。濃い、というより息苦しい、近いと>>続きを読む

バウンス ko GALS(1997年製作の映画)

5.0

思い出すには近すぎて、覚えておくには前すぎる。(アキナのネタみたいな書き出し)
日本にとっての90年代は、鮮明でもセピアでもない落ちくぼんだ薄い思い出なのだと薄々感づいてはいたよ。だれか覚えてる?あの
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音楽(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

隣に座った人が主人公と同じ髪型だったのでご本人登場という感じ、ずっとうちわで楽しんでいた。


間延びした 安心ゆっくり へいわな世界は幸せな夢として求められる一方で、その存在自体がまやかし
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ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

「私を忘れないでね 約束よ」
これは映画の一番最後の台詞。幼少期から薬で仕事漬けにされ、“オズの魔法使いのドロシー”として人々の記憶に残り、子どもたちに身を捧げた彼女は、“私”を忘れられ、また自らも
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セブン・デイズ・イン・ハバナ(2012年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

無知/未知、無防備による超主観の他者排除と他者としての落ち着いた傍観という旅行者が帯びる時間と、旅行される側が持つ、前から流れている時間についての、旅行的7日間。
月曜日、旅行は浮遊感を持ち、その土地
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大阪外道 OSAKA VIOLENCE(2011年製作の映画)

3.6

まったく映画らしくない。画面の作り込みの弱さ、演技の弱さ、雰囲気ぜんぶが映画らしくない。そして暴力よりも、貧乏よりも、その境目の曖昧さが怖ろしい。なんだか見過ごしている、見ていないことを糾弾されるかの>>続きを読む

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

風邪気味なのか、疲労なのか、どうしようもない頭痛に苛まれながら身体から魂が零れ落ちるように座席に沈み観たこの映画も、夜に食べためちゃくちゃでかいサラダも寝ながら見ていたテレビのチベットの奇祭も、どれも>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます


午後11時ごろ映画館からの帰り道、カラスたちの鳴き声が聞こえて今が夜なのか朝なのか一瞬わからなくなった。
白夜とはずっと昼で、時間がわからなくなる。眠るべく夜がわからないまま促され眠り夢を見た。昼間
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スキャンダル(2019年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

あらゆる差別的固定観念の中で、女性蔑視という思考に他者として寄り添う男はたぶん理解的な記号を用いることで自己言及から逃げ出し何も変わっていないことをごまかそうとしている。
「で、きみは“フェミニスト”
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