mjtbさんの映画レビュー・感想・評価

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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.1

ノーランの中には罪のヒエラルキーのようなものがあって、皆から激詰めされるタコ殴りされるような罪はそこまでランクが高くなくて、誰も裁きにやってこずただ罪悪感だけが増大していくタイプの罪に彼は価値を置く。>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます


バービーのケンに限らず、ダメだけど安全な男が暴走して、でもなんとか軟着陸するいまの流行りみてると、これケンがもしガチミソジニーでもっと危険なヤツだったら社会の進歩のためにちゃんと殺すか自殺させる話に
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

キーホイクァンの演じた夫の描き方がマジで素晴らしい。
ヘビー級ボクサーのような強さではなく、超長距離マラソンを走り切るようなタイプの人間の強さ。
こういうタイプの人の強さを母娘関係がメインの映画のあく
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映画 聲の形(2016年製作の映画)

4.8

聲の形は"罪悪感ってある意味あるんだろうか?"って作品だと思ってて、利益だけみればやり得でうまくいってるのって小学校のあのメガネ担任と、メガネ委員長の二人がまるもうけで悪いヤツのままうまくやっていて、>>続きを読む

サイバー地獄 n番部屋 ネット犯罪を暴く(2022年製作の映画)

3.5

総じて承認欲求的だった。犯人はアプリ内でそれぞれコミュニティ化していて、しかも規模感が可視化されている。そこで一番をとるための遵法意識ゼロの承認競争が最も上位にあるように見える。博士がつかまったあとに>>続きを読む

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

急に激ヤバ女が見たくなったので男性社会批判モノからそれっぽいサムネのを選んで視た。医者でなく引退した弁護士のほうに託すとこが、そうか~って感じで良かった。

一貫して、裁き手ぶってオラついても、ドロッ
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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

4.9

このレビューはネタバレを含みます

色々ありすぎるので、ラストにだけ絞った感想。

ラストが祝福され前向きなものに見えて、不自然だと感じないのが凄いと思う。
ピーターにはもうコネもカネもない。いやそれどころか、彼にはもう
学歴も地位も、
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ザ・スイッチ(2020年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

一番主人公に刺さるセリフであるところの、過干渉のクソ母と、よくできた姉の廉価版として生きててお前の人生それでいいのか? を言えるのは仲いい友人でも恋人でもなく入れ替わっていた殺人鬼だけっていうツボの押>>続きを読む

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

4.8

中盤までは博士の奇妙な愛情だけど、そっから先は完全に現代版として新要素だけで直近の世界を反映してて、アメリカの劇作の本気。
ネトフリで公開前に大作ですって煽ってたもので良かった事ほとんどなかったけど今
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.2

さいしょはダメなネトフリに典型な、単調なtoxicおじさん懲らしめポルノかと思ったら、そのフィルにいじめられてる新妻も息子のことを独立した人格だと扱えてない毒母の側面があり、それが息子の命の扱いに対す>>続きを読む

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)

3.9

虐げられた歴史というルーツからくる正当性(黒人、ユダヤ人)と、今の自分がつらいんだ(白人)というのが現代の争いで、ルーツ勝負では当然勝ち目ないし、その点で正当性は常にマイノリティ側にあるけど、そのこと>>続きを読む

サンタ・サングレ/聖なる血(1989年製作の映画)

4.1

いまは毒親モノってジャンルも盛り上がって、押見修造の血の轍とか、母殺しをテーマにもつ作品も増えたけど、男性性と母のバトルを描くものとしてすごく先駆的かつそこでやるべき表現が今作だけでかなり追求されてい>>続きを読む

プラダを着た悪魔(2006年製作の映画)

4.3

女×女ではじまり最終的に父殺しの話になる。師であり先輩であり尊敬もしている象徴的な父を殺して独り立ちする戦士の話であり、わちゃわちゃしたトーンによって終盤までそうやって終わる話なんだと全然予想できない>>続きを読む

国選弁護人ユン・ジンウォン(2015年製作の映画)

3.9

内容からOJシンプソンを扱ったアメリカン・クライム・ストーリーの影響下かと思ったら公開もほぼ同時期で、法モノのエンタメとして完成度も並ぶくらいうまい、キャラの立たせ方とか絡ませ方とか、かなり良。

シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

EOEを壊せるとしたら弱点はどこか、という自問に庵野が出した答えはEOEはどこまでいっても、運命の相手としてのオンリーワンでわかり得ない他者(アスカ)の話なことで、これが最大の強みであり弱みだった。だ>>続きを読む

機動警察パトレイバー2 the Movie(1993年製作の映画)

4.6

ワンチャンスを勝手に感じてる相手に対して、中年がアプローチする円環がこの映画をつくっている。荒川は後藤に、後藤はしのぶに、しのぶは柘植に、柘植は日本社会に、ワンチャン感じてる。そして押井はなんと、ここ>>続きを読む

スパイダーマン:ホームカミング(2017年製作の映画)

4.4

これは父探しについての映画だと思っている。ヴァルチャーは昔ながらの妻と娘を守れる強い父でいたい。がそれは合法な形では現代の流動性に耐えられなくて、ヴィランとしての人生を彼は生きている、一方トニー・スタ>>続きを読む

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に(1997年製作の映画)

5.0

言葉で悟った直後に行動で間違う、というくだりがこの映画では反復される。ミサトはシンジを奮い立たせるための完璧な説教をする、演技もあいまった屈指の名シーン。その直後にキスをする。シンジはミサトに母や姐御>>続きを読む

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

4.2

名作なのは前提だけど、冴えない青春モノすら知的エリート学生たちのものになったな、とか、このクラス多様だけどトランプに投票するやつ一人もいなそうな多様さだな、とか、そういう感想も抱く。サウスパークのファ>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

4.5

人は文化状況に投げ込まれる。文化は万人を愛すわけではなく、文化の寵愛と疎外はポランスキーのような才人もマンソンのようなカルトも生む。その状況下そのものをダルトンとニックという文化の神に微妙に愛されてる>>続きを読む

ジョーカー(2019年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

よく言われる夢か現実か。はベタの層で仕掛けられてるが、もうひとつ上に、忠誠を抱いてるのはスコセッシにかアメコミにか、の宙づりがある感じで、主にそこのほうが人の悪い作りで良い。スコセッシ好きの映画人がア>>続きを読む