塚原直彦さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

塚原直彦

塚原直彦

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暗数殺人(2018年製作の映画)

3.8

釜山で実際に起きた事件を基に描いた、外れなしの韓国ノワール映画。
事件自体もおぞましいが今作の肝はタイトルが示す通り「暗数」。

知能が高く次々と供述を変え事件を煙に巻いていく犯人に、我々観客も次第に
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ライフ・オブ・デビッド・ゲイル(2003年製作の映画)

4.0

アメリカで死刑に対し、最も積極的であるテキサス州。
その地を舞台に人間を法というある種無感情なルールブックで裁く事の困難さ、そして極刑は果たして本当に意味のある制度なのか、その是非を問う本作。

一つ
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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.3

こんな思い切ったリメイクの方法があったのか。
現代へ向けた多様性を内包しつつ、ラストにはしっかりとした答えを見出だす的確過ぎるアップデート。

これまでになかった時系列をいじる演出により原作を知らない
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THE UPSIDE 最強のふたり/人生の動かし方(2017年製作の映画)

3.7

日本でも大ヒットしたフランス映画『最強のふたり』のハリウッド版リメイク。
構成と展開はほぼ同じだが、そこにアメリカらしさを刻み込む事には成功。

抜群にポテンシャルの高い主演二人の相性も決して悪くない
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エノーラ・ホームズの事件簿(2020年製作の映画)

3.8

ご存知『ストレンジャー・シングス』のヒロインであるミリー・ボビー・ブラウンを主役に、これでもかと美味しい要素を詰め込みまくり。
当初は劇場公開を予定していたものの昨今の事情でNetflix配信となって
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エンド・オブ・ザ・ワールド(2012年製作の映画)

3.6

タイトル通り、世界の終わりをテーマに市井の人達の生活に焦点を当てて描いた本作。
構成も敢えて余計な事はせず、ストレートでシンプル。

終末にしては登場人物達の行動がかなり牧歌的で違和感はあるが、いざ実
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ソフィーの選択(1982年製作の映画)

4.2

過酷な運命を生きた一人の女性が怒りや悲しみを突き抜け、本当の人生を掴んだ物語。
劇中の関係同様、主役三人の演技の調和がとにかく完璧でそれだけで価値ある一本。

観客目線のスティンゴを通し、我々は
ジリ
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ナイチンゲール(2019年製作の映画)

4.3

ナイチンゲールと言ってもあの偉業を成した看護師ではなく、美しい西洋の夜鳴きウグイスの方。
演じるは「ゲーム・オブ・スローンズ」でリアナ・スタークを演じたアイスリング・フランシオン。
オペラ歌手でもある
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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

4.0

この映画界の悲惨な状況を逆風に、見事特大ヒットを放ち絶賛記録更新中のエンタメ界の希望とも言える劇場版「鬼滅の刃」。
原作は映画の直前まで読了、アニメはほぼ未見のにわか状態なのでやや申し訳なく鑑賞。
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ベスト・キッド(1984年製作の映画)

3.7

話題のドラマ『コブラ会』視聴に向け、数十年ぶりに復習。
展開はこれぞ超が付くほど王道だが「あれ…こんなシーンあったけ??」のオンパレードで、恐らく地上波向けにカットされまくっていたのかとかなり新鮮。
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ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

4.0

オープニングのファーストカットから流石ソフィア・コッポラ、よく分かってます。
監督本人が日本に住んでいたおかげで細かな描写にも嘘がなく、いつものトンデモ日本の居心地悪さはほぼ0。
選挙カーがあそこまで
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さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)

4.2

ロバート・レッドフォードの引退作、まさにこれぞ有終の美。

過去作のオマージュや、とあるシーンではそのままの映像を巧く流用したりとリアルタイムで彼を追いかけてきた人には号泣必須。
脇も渋めのキャスティ
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ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)

4.1

公開して少し時間は経つが、まだまだ話題の本作。
LGBTという現代を象徴するような題材だが、表面を撫でるだけでなく踏み込む箇所はしっかり踏み込んでくれた。

大枠はシンプルで最初は反発していた孤独な者
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ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)

4.3

『LEON』など様々な映画に影響を与えまくった男女のバディ設定、全編通してウィットに富んだ台詞、計算され尽くしたショット、等々至る所隙なし。

展開自体は無駄なく分かり易く、とにかくシンプルイズベスト
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プロジェクト・パワー(2020年製作の映画)

3.4

正直、物語の設定は売れない少年漫画レベル。
もう二、三歩踏み込んでくれないと全く何も得られず…
ジェイミー・フォックスも今や何でも出るなぁと最早感心。

その分何も考えずお気楽に観れるのだが、そうなる
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悪魔はいつもそこに(2020年製作の映画)

4.2

本作にて描かれるのは「暴力という名の負の連鎖と円環」。
そこで料理されるのは今をときめく豪華キャスト陣。
確実に好き嫌い分かれるであろうテーマだが、個人的にその組み合わせは涎が出るほど大好物。

信心
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ゼイリブ(1988年製作の映画)

4.0

ジョン・カーペンター監督による、現代社会の資本主義構造に向け皮肉たっぷりな伝説的カルト作。
改めて観ると、予算を出来る限り抑えつつこれだけの効果的演出を考案したアイディアがまず秀逸。

テーマ自体は一
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シンプル・シモン(2010年製作の映画)

4.1

オープニングから何と無駄なくセンスの塊のような映画なのだろうか。
『アメリ』を彷彿とさせる淡くも美しい画面の配色と質感、そこに全く嫌味のない洗練され洒落た演出。

主人公のシモンを演じる今や売れっ子ビ
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八月の鯨(1987年製作の映画)

4.2

リリアン・ギッシュとベティ・デイヴィス、偉大な名女優の晩年の共演作。
舞台は夏の避暑地の別荘。
特に驚くような事件が起こる訳ではないが、ここまでエモーショナルな感情を掻き立てられるのはその二人の圧倒的
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9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019年製作の映画)

4.0

何とも面白い設定を考え付くものだ…と思ったら本作品、あのダン・ブラウンが「インフェルノ」を出版する際のエピソードをベースにしたらしく驚き。
まさに事実は小説より奇なりとはこの事。

普通ならば一方通行
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嘘八百 京町ロワイヤル(2019年製作の映画)

3.8

待ってました、待望の続編!
帰ってきたこの二人のバディ感がやはりたまらなく、意外な組み合わせにも見えるが相性はバッチリ。

今回も小さな脇役に至るまでキャスティングがとにかくお見事。
各々が個性的過ぎ
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TENET テネット(2020年製作の映画)

4.0

評判通り、今回もまたノーランらしく時間という概念を自由に操った難解な本作。
一度目の鑑賞では映像に圧倒されたまま気付いたらエンドロール。

二時間半の長尺ですら足りない観客への状況説明…というより恐ら
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君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)

4.3

美しさとは一体何なのか。
眩い光が照らすイタリアの避暑地か。
微睡むような贅沢な時間か。
森の緑か。
湖の蒼か。
それらが混じった色彩か。
彼らの造形美か。
それらを構築するこの世界か。

正解のよう
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2分の1の魔法(2020年製作の映画)

4.2

さすがピクサー、今回も細かなCG描写~完璧過ぎて嫌になるレベルの伏線回収でなめてたら大怪我します。

どう考えても扱いにくい下半身だけのキャラクターを真ん中に据え、一体どうやって感情を表現するのかと思
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カクテル(1988年製作の映画)

3.6

すっかり内容を忘れていたので何十年ぶりかに鑑賞。
成る程そうか、そもそも内容がないから記憶に残らなかったのか…合掌。
トム様ご自身もかなり不満気な本作。

とは言ったものの全編に当時の熱と多幸感に満ち
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映画ドラえもん のび太の新恐竜(2020年製作の映画)

3.8

『STAND BY ME ドラえもん』を除けば、劇場版アニメのドラえもんとしては20年以上ぶりに映画館で鑑賞。

ドラえもんでは恐竜ネタは鉄板なのか相性は◎だが、過去の名作の焼き直し感は拭えず。。
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ゴーストマスター(2018年製作の映画)

3.6

全編スプラッター満載、ゴリゴリ&コテコテで胸焼けするほどのアクの強さにそりゃ観る人を選ばない訳がない本作。
監督の映画愛が詰まりに詰まりまくり、名匠トビー・フーパーに熱き想いを吼えるシーンはグッと来ま
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ザ・ピーナッツバター・ファルコン(2019年製作の映画)

4.1

タイトルの通り、甘いようで切り込む鋭さもしっかりとある。
メインは友情を軸に描いたロードムービー。

ご都合主義で理想的過ぎる展開もやや多いが締めるところはきちんと締める、そんな姿勢には好感度高し。
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トンネル 9000メートルの闘い(2019年製作の映画)

3.7

ハ・ジョンウ主演の韓国版「トンネル 闇に鎖された男」に引き続き、こちらのトンネルはノルウェー版。
あちらは崩落事故だが、こちらは火災。
どちらも同じく阿鼻叫喚の地獄。

観ていて若干しこりとなる設定や
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エクストリーム・ジョブ(2018年製作の映画)

4.4

またもや超特大ホームランを放ってくれました、最早敵なしの韓国映画。
韓国歴代興行収入一位を塗り替えたのも納得の超特大クオリティ。

冒頭から勢い良く洪水のように溢れ出るコメディセンス。
あの手この手を
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カツベン!(2019年製作の映画)

3.8

語弊を恐れず言うならば、シネフィルとしての映画愛が存分に詰め込まれた周防監督版『ニューシネマパラダイス』。
映画黎明期に活動弁士が一体どのような活躍をして来たのか、それを知るだけで勉強になる本作。
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キャッツ(2019年製作の映画)

3.0

公開前の予告編から全世界で大不評の嵐だった噂のコチラ。
なるほど、冒頭からすぐにカルト映画の香りがプンプンと。

ヒトの顔をした猫が歌って踊る…というのは、舞台という制限された特殊な表現世界だからこそ
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スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.2

朝鮮戦争最中、巨済島捕虜収容所の中で起きた様々な出来事からインスパイアされた本作品。
その背景の割に前半は軽めだが、それも全て壮大な仕掛けの一部というのは流石『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチ
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ラストレター(2020年製作の映画)

3.7

岩井監督、相変わらず自然光を見事に使う演出や静かな音楽など各シーンが隅々まで洗練された美しい作品。
特に女性の撮り方の美しさは言わずもがな。

だけどそれが個人的にはややノイズに。
こんなに人間って美
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男はつらいよ お帰り 寅さん(2019年製作の映画)

4.0

オープニングから節操なく登場のあの方にはかなり驚いたが、本シリーズを追ってきた人ならとにかく泣いて笑って忙しい本作。

前作と同様これまでを振り返る総集編…だけに留まらず、完結編に相応しく観客側へ向け
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アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)

4.1

ここまで我々観客が振り回される作品は極めてレア。
冒頭から荒れ狂うような情報量と様々な構成が重なり合う、クライムサスペンス&ブラックコメディ。

眺めているだけで頭が痛くなる程の胡散臭さ満点で超曲者の
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