新潟の映画野郎らりほうさんの映画レビュー・感想・評価

新潟の映画野郎らりほう

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デスパレート・ラン(2021年製作の映画)

2.0

【御用】


人が走る映画が好きだ。
映画に於ける 人の最も美しい動きと思うからだ。

映画で人が走る時、何故美しく そして感動的であるのか。それは それがA地点からB地点への単なる移動手段に非ず、人
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

1.5

【送り火と】


社内喫煙所で 脚を大きく開き 視線を下に紫煙を燻らすシイノ(永野芽郁)。
床に落とした吸殻を見遣り、遺灰(位牌)と焼香が彼女の中に喚起される―。

海を目指すロードムービーであり、海
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LAMB/ラム(2021年製作の映画)

3.5

【鬼胎】


荒涼とした丘陵地は荒んだ心象の顕現であり、周囲を取囲む高い山嶺は社会を拒絶する壁である。霧と靄と霞み懸かった寒色曇天な気象も社会的視界不良と自己位置認識の喪失を顕す。
その上で、自然と生
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ザ・ディープ・ハウス(2021年製作の映画)

3.2

【メタ映画~映画の逆襲】


廃屋への侵入を試みる男女の自撮り映像が延々と続くアヴァンタイトル。
デジタル撮影されたネット動画(とゆう設定の映像)。それが映画としてスクリーン上に映し出され、私は それ
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Zolaゾラ(2021年製作の映画)

3.0

【尻拭い】


レストルーム。横並びの個室に 二人の女が着座し排泄行為に及ぶ。
キャメラは上方からその様子を捉えるが、ゾラ(ペイジ)が自身の陰部を聢と払拭するのに対し、隣室のステファニ(キーオ)にはそ
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グッバイ・クルエル・ワールド(2022年製作の映画)

3.2

【絶望の行き止まりと無限の自由】


ホテルエントランスで吐瀉嘔吐する玉城ティナ。
その後のカットで彼女は外階段に着座し、画面左手に起立した宮沢氷魚とのツーショットで捉えられる。
金を手にし 家を借り
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破戒(2022年製作の映画)

3.8

【我は―】


屋外では 乱暴で騒々しい風雨が鳴り響き、家宅内で僅かに揺めき点いていた燭台の灯りさえも、侵入許した隙間風に依って掻き消され、丑松(間宮祥太朗)の自室は
闇黒と化し、彼は只 絶念の表情を
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ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ(2022年製作の映画)

3.8

【アメリカの栄光】


常に互いを牽制し 反目し 相剋し合う“青と赤”―。

テマティスム的に見れば、それが民主党と共和党の鬩ぎ合いである事は明らかだ(黄色は日和見/無党派層か)。

成る程、ナックル
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峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)

3.0

【最後の映画】


小泉堯史と云えば黒澤明であり、仲代達矢や香川京子のキャスティングとはつまりそうゆう事だ。

フィルム撮影への拘りも 結局はデジタルコンバートが施され、大多数の観客には 気付きすらさ
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ドラゴンボール超 スーパーヒーロー(2022年製作の映画)

3.2

【 RR 】


フェイクニュースを楯に好き放題する者の大暴走と それに踊らされる者達の大混乱。情報精査/読解能力の必要性=リテラシーと、対話を通じての解決=民主主義。
発動してしまう最終兵器に対し、
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トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

3.5

【10G プレッシャーの果てに】


稀代の“アクション”スター/トムクルーズが、その身体を操縦席に拘束され、ヘルメットと酸素マスクに依って相貌も 目元以外を覆い尽くされ「アクションスターの命とも云え
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流浪の月(2022年製作の映画)

3.2

【多様の踏み絵~善意面した無自覚な悪意】


冒頭、公園遊具/ブランコに腰掛ける少女で以て、タイトル主題系である「地に足着かぬ魂の彷徨い」が表徴される。

開かれた書籍頁上に落ちる(涙の様な)雨雫。そ
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ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)

3.4

【代理自己】


主演女優賞受賞の某黒鳥映画と同じ。

アッリが“水鳥”であるのが既に確信的参照である。
カラスの“黒色”。母は毒親。頻出する鏡。バレエと体操の類似性。性的嫌悪と性的興味の過渡期。
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映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021(2021年製作の映画)

3.4

【大きさ】


「どこでもドア」を使い しずかちゃん宅を後にする のび太達。
立ち去る彼等を 手を振って見送るしずかちゃんの姿が、のび太達の側から切り取られる―。
「どこでもドア」が閉まり切る直前 ―
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ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)

3.9

【絶望的自覚】


劇中 幾つもの“扉”(門扉や窓を含む開閉装置)を開け放つ事で、男(クーパー)は 二度と後戻り出来ぬ領域へと踏み入ってゆく。
構図に配光、キャメラの移動線 等は偏執的に作為性に満ちて
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林檎とポラロイド(2020年製作の映画)

2.8

【ネガポジ反転】


写真のネガがポジに反転される様に、ネガティブ(否定的心理)はポジティブ(積極的心理)へと変容してゆく。
スタンダードサイズの画面比率や 多用されるシャロウフォーカスも、写真が印画
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ワルキューレ(2008年製作の映画)

4.5

【二人の女神 ― ワルキューレとヴァルキリー】


きちんと「映画」を観ていれば、あの爆発に依ってヒトラーが 絶命に至った事なぞ一目瞭然である筈だが『暗殺は未遂に終わる』とゆう“史実”に囚われた大多数
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余命10年(2022年製作の映画)

1.8

【生き写し】


小説執筆は原稿用紙に肉筆で以て為されるべきで、それを(Webコラムは兎も角)PCを使っている時点で 映画として駄目だろうと。

茉莉(小松菜奈)が著述する小説とは『彼女が自身の生命を
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真実(2019年製作の映画)

5.0

【映画は私より私について識っている】


リアルじゃない。実際には有り得ない。整合性云々。御都合主義。突っ込みどころ満載 ― 映画批判に於ける最も安易簡便な常套句。

何故都合か、何故リアルじゃないの
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ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

4.5

【君を離さない、永遠に】


劇中頻出する鏡と それに準じる床面や水溜まり等の鏡写装置が、本作の“二面性 / 客観性 / もう一つの像”を表徴する。
ミュージカルにフォーカスしていた’61年ワイズ/ロ
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.8

【駆動せよ、私の車を ー私の人生をー】


処方された目薬を点眼した家福(西島秀俊)の瞳から 直後に零れ落つ滴。
あれは「目薬が溢れ出たもの」だろうか。
否、目薬を呼び水 ー切っ掛けー に流れ出した“
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マークスマン(2021年製作の映画)

3.3

【死んだ筈の男】


同時期公開イーストウッド「クライマッチョ」と設定/因子が酷似しており、おそらく本作も N・リチャード・ナッシュ原作『クライ・マッチョ』を下敷きにしているのだろう。

国境、オール
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クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

5.0

【 アイロニア 】


開幕早々、マイク(イーストウッド)の相貌が車内ルームミラーに映り込み(二面性)この映画に『もう一つの世界/もう一つの意味』がある事を示唆する(ダブルミーニング)。

馬の彫刻が
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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

2.0

【エクリチュール】


成島出「八日目の蝉」に、井上真央が自転車で坂道を 脚を広げ下っていく場面がある。
終盤、永作博美も同様に 自転車に脚を広げ乗る場面があるのだが、ここで我々は 全く血が繋がらぬ二
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キングスマン:ファースト・エージェント(2020年製作の映画)

3.0

【紳士の作法/映画の作法】


ネクタイを締め、靴紐を結ぶ ― 所作に依ってオーランド(ファインズ)の決意とする。
上記は紳士の作法であると同時に(言葉に頼らず所作行動に依って趣意を表出する)映画の作
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マトリックス レザレクションズ(2021年製作の映画)

1.5

【 Reflections 】


レザレクションとゆうよりリフレクション(反射/鏡映)。

頻出する“鏡”への映り込み。手を翳し無数の銃弾を“跳ね返す”リーブス。水面に映る“反像”の揺めきをファース
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サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~(2019年製作の映画)

4.0

【サウンドオブサイレンス~サイレント映画】


原初の映画〈サイレント〉には台詞は疎か音そのものが無く、依って観客は 人物の所作挙動や 視線、構図、画面占有率、配光、距離化 等から 言葉なぞ無くとも
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アナと雪の女王(2013年製作の映画)

3.0

【スティグマ】


自らを投げ抛ち 全力で他者を想う ― 其が結果として自身を救う事となる ― 姉:エルサと妹:アナの鏡像関係。

であるならば、氷を隔て見つめ合う二人の“透過/鏡写”表現が 是非欲し
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ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)

4.2

【客観性欠いた一方的目線】


キャメラは被写体直ぐ傍から対象を極大接写し続ける。
結果 目視出来るものは直近に限られ、遠景は悉く展望を欠く。

狭小視野に依り陥る目視情報の不足と裏腹に、銃声 / 叫
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いなくなれ、群青(2019年製作の映画)

3.5

【女神】


海岸堤防沿いを歩んでいた横浜流星がその歩を止め、驚きの面持ちで上方を見上げる。切り返された先には、堤防上に立ち 沖を見つめる飯豊まりえが映し出される。
高速度撮影で捉えられた後景波濤の審
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リスペクト(2021年製作の映画)

3.9

【 Daemon /ダイモーン】


走り去る母の乗る車を 追い掛ける幼いアレサ。
どんなに追い掛けても 母の車は彼女を突き放して行ってしまう―。
ここで誰もが「この二人はもう二度と会う事が叶わない」
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クワイエット・プレイス 破られた沈黙(2021年製作の映画)

4.0

【 Extinction Rebellion 】


一作目のメタファーが『強権に対し声上げる事許されぬ弱者達の苛み』と『遂に声(音)を上げる決意をした女性達のムーブメント』であり、“ Silent
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モーリタニアン 黒塗りの記録(2021年製作の映画)

3.9

【USA PATRIOT Act】


アメリカ合衆国がアメリカ合衆国であり続ける為に―。

911を受け、テロに関与 或いは何らかの情報を保持すると疑わしきは、事を起す以前に 強制連行ないし逮捕に踏
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ザッツ・ダンシング!(1984年製作の映画)

4.5

【Dedicated to…】


マイケルジャクソンが、後に彼の代名詞となるステップ“ムーンウォーク”を初披露したTVショー放映後、ある人物から電話で激賞されたとゆう。
そのパフォーマンスはエミー賞
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最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

4.0

【真実の複数形】


真実なぞどうでもいい。

抑 エピローグ映像や 字幕で語られる後日談が 最も嘘臭く、そんなものが真実であるなぞ端から思ってはいない。

三人の主張は『三人各々にとってのみ真実』な
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青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)

2.0

【モ(ろくて)ア(おくて)イ(たい)】


真っ先に想起せしは『20世紀少年(堤幸彦)』。
つまりトモダチ(の悲哀)だ。

交友交歓を拗らせ、青春を拗らせ、初恋を拗らせた末の稚拙なテロリズム。


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