ナガノヤスユ記さんの映画レビュー・感想・評価

ナガノヤスユ記

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レッド・ロケット(2021年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

まずは相変わらず編集のテンポとセンスが良すぎる。130分の長尺とは到底思えない。これはもう理屈を超えた天性の才能の領域にあると感じる。
そしてもちろん脚本がいい。この編集のソリッドさ、この話で、130
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37セカンズ(2019年製作の映画)

4.2

序盤は、いささか分かりやすく配置されすぎたようにも感じる差別描写に頭が痛かったものの、尻上がりにドラマがドライブして、ユマが完全覚醒した後半以降は割と王道的なロードムービーとして、良くも悪くもだいぶ安>>続きを読む

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

-

一昨年の釜山国際映画祭で鑑賞。物語のこまかい内容はあまり覚えていない。子どもの視点を描いた映画は数あるけれど、作為的になりすぎないギリギリの、上品なラインのカメラワークだったなというのはなんとなく印象>>続きを読む

エリ・エリ・レマ・サバクタニ(2005年製作の映画)

4.0

中学生ぶりくらいに。あれを音楽と表現すること自体におおいに疑問を抱く人もいるだろう、というようなノイズの洪水。切り出した世界を丁寧に加工して提示するのとは違う、むきだしの音への純然たる信仰のようなもの>>続きを読む

終わらない週末(2023年製作の映画)

3.7

日常生活の脆さと、一見相反するような習慣や惰性のしぶとさと。信じられるものが何も無くなった世界で、最後に縋れるのってこういうものだよね、というだけのことを、長く嫌な時間の先に見せられる。正直すこし退屈>>続きを読む

山の音(1954年製作の映画)

4.0

めくるめく視線の会話劇。かなり倒錯的で、転覆的な2ショットのエロティシズム。戦前的家族像の崩壊なんていう生易しいもんではない。根源的な愛の不可能性を描きながら、ともすれば婚姻制度の欺瞞そのものに挑戦し>>続きを読む

雨月物語(1953年製作の映画)

3.9

戦禍の話だ。戦は人を変えるというが、それは何も兵士だけの話ではない。男は、はじめて手にした大金にとりつかれる。自らの手で金をつくる悦びに夢中になる。とりつかれやすい質なのだ。それはすでに家族のためでは>>続きを読む

祇園の姉妹(1936年製作の映画)

3.5

最近の気分としては、いわゆるミゾグチ的と解釈されるところのショット至上主義というか、こだわり抜かれた文体の仕事みたいなものに少し距離を置きたいのだけど、だからこそあえて見る。結果、最近の日本映画は、シ>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

3.8

明らかに表情は老いているにも関わらず、「老い」をまったくテーマにしない潔さ。アクション映画、さらにいえばシリーズ映画にとって「物語」なんて二の次なんだという強い意志を感じる。AIはおそらく、有無を言わ>>続きを読む

女が階段を上る時(1960年製作の映画)

4.3

高峰秀子演じる未亡人の雇われマダムは、死んだ夫の遺骨に約束した貞節を根気強く守っている。生きている人間とは違う、亡き夫の記憶に今も縛られ生きている。好いた男に抱かれながら、野菜を買って帰る夫の夢を見て>>続きを読む

銀座化粧(1951年製作の映画)

4.2

他人の世話を焼いている。それ自体が嫌なわけではない。しかし、身の回りの些末な政ばかりに時間をとられていく。何も持たない者はそうして生きていくしかないからだ。何も持たない者こそ政治にすがっている。この街>>続きを読む

風船(1956年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

左幸子と芦川いずみの邂逅、『あのこは貴族』じゃん(逆)。北原美枝はさながらゼンデイヤ。戦後の日本を舞台に、持てるもの持たざるものの不均衡がベースにあるが、出てくる人々は誰もが根源的な生への不安を抱えて>>続きを読む

大学は出たけれど(1929年製作の映画)

-

作品の大部分が消失した不完全なフィルム作品なので点数はつけない。小津安二郎の20年代サイレント作品。
家族の崩壊…まではいかないけど、家族というものの面倒さ煩わしさは存分に滲み出ていて、いかにもという
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恋人たちは濡れた(1973年製作の映画)

4.0

男は自分が自分であることを否定して回っていく。それってすなわち自殺かもしれない。
去っていく克の背中を追いかける女主人の決死の追走は、もはやカラックスの『汚れた血』におけるビノシュの走りに匹敵する。移
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宵待草(1974年製作の映画)

4.5

言っちゃ悪いけど、たったこれだけの話をよくもまあ最後まで見させるよなあ。ほとんど物語としては破綻していて、映画としても粗が多いのに、革命闘争の渦中に佇むブルジョアな出自の若者たちの空虚さ空っぽさに妙な>>続きを読む

しとやかな獣(1962年製作の映画)

4.4

あーおもろ。
いわゆるワンシチュエーションの会話劇というのはごまんとあるけど、単なる会話劇というのは憚られるほど活劇然とした、こういうイキのいい映画を見てしまうと、昨今のドラマ映画はシンプルに画面に元
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気のいい女たち(1960年製作の映画)

4.3

『いとこ同志』にも通底するような、憂うつで弛緩した都会生活の描写がいかにもシャブロル。わかりやすいメランコリーではなく、じわじわと境界を突き破ってくるような病理じみたところがある。表面上近しい (もし>>続きを読む

アルカトラズからの脱出(1979年製作の映画)

4.2

久々に見たけど、めっちゃいいですな…。当たり前だけど、フランク・ダラボンがショーシャンクでもたらしたウェットな感じ (別に嫌いなわけではない) が全くない。なにより凄いのは、一応主人公であるはずのフラ>>続きを読む

白い肌の異常な夜(1971年製作の映画)

4.0

身体的欠損と男性性の去勢、かなりヒッチコック的メタファー。イーストウッドの実生活、特に女性関係がかなり荒れていたのは周知の事実かもしれないが、映画でこのような役を引き受け、自らの身体をメタメタに傷つけ>>続きを読む

わたくしどもは。(2023年製作の映画)

4.0

佐渡のロケーションとそこから得られるインスピレーションにまるごと身を委ねつつ、つかず離れずの絶妙な抑制を保ったスタンダード画面が続く不思議な感覚。キャストがはまらなければかなり厳しいと思われるが、この>>続きを読む

ノーカントリー(2007年製作の映画)

4.3

社会のルールから逸脱して見える者 (サイコパスやシリアルキラーとラベルされる者) もまた、彼ら独自のルールに従って生きたり死んだりしているのであり、正常と異常の境界 (≠生死の境目) を決めるのは結局>>続きを読む

運命じゃない人(2004年製作の映画)

3.7

こういう作品を好きな人がいるのはよくわかる。人によっては生涯の一本にさえなるだろう。なんというか、折り紙のような映画だ。ハンドメイド感もあるが、精細で、幾何学的でさえある。僕は折り紙が苦手だった。こん>>続きを読む

地獄の警備員(1992年製作の映画)

3.7

今こそ90年代黒沢清を見直そう。話自体は、本来人々を部外者から守るはずの警備員が、実は殺人鬼だったらどうする? という中学生でも思いつきそうなアイデアではある。怖いやつの怖さが、シンプルにデカくて怖い>>続きを読む

ニンゲン合格(1999年製作の映画)

4.2

めちゃくちゃベタにまとまってしまいそうなところ、これでもかというほどベタをやらない心意気にやられる。でてくる人たち全員が、自分の生に対して根源的な不安を抱いており、所在なさげなのがたまらない。これぞ2>>続きを読む

カリスマ(1999年製作の映画)

4.2

90年代の黒沢映画を見直そう。つい最近仕事で大鷹さんご一緒したし、スタジオで松重さんもお見かけしたから、すげーここから四半世紀近く経っているんだ…となる。消えていくものもあれば、残るものもある。しかし>>続きを読む

CURE キュア(1997年製作の映画)

4.6

独房での高部と間宮の対峙シーン。天井から浸み出でる雨水。黒く濁った水が机の上に落ち、床へと溢れていく。間宮の「伝道」が高部の精神にも侵食していく、些か分かりやすさが過ぎるようなメタファーだけど、こうい>>続きを読む

めし(1951年製作の映画)

4.0

家でメシ食う映画が観たくて、観た。観たことないと思ってたけど、観たこと、あった。結果、のんきにメシを食うような映画ではまるでない。
主体性や能動性によって幸せをつかみとるような世界観じゃない。あれも嫌
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