nagashingさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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淪落の女の日記(1929年製作の映画)

3.0

過剰なまでの波乱万丈と露悪的な視線劇がギャグの領域に突入してだんだん楽しくなってくる。照明ガン決まりの強いクローズアップも最初こそ震えるが途中からはぜんぶ笑える。ルイーズ・ブルックスがブチ込まれる感化>>続きを読む

幸運の星(1929年製作の映画)

4.5

またもや高低差の演出が変奏されまくる黄金トリオの3作目。鮮烈な逆転の構図に問答無用で感動させられる。男女の非対称性が視覚的にも物語的にも解消されるラストがあまりにも美しい。そして白と黒の対比。暈をまと>>続きを読む

アラビアン・ナイト 第3部 魅了された人々(2015年製作の映画)

3.0

語るものと語られるものが混在する時空間の乱れ、多重露光の多用や画面分割とのコンボに眩惑。映像とモノローグが完全に剥離するデモシーンではデュラスを想起した。シェヘラザードの語りの中断と再開を延々と字幕だ>>続きを読む

アラビアン・ナイト 第2部 孤独な人々(2015年製作の映画)

3.5

全体の構造について考えるのを諦める。第1話の濃密な闇とおっぱいでアガり、第2話のブラックユーモアのクドさとあからさまな寓意にゲンナリし、第3話のイッヌとおっぱいにまたアガる。第3話は、部屋に籠もりまく>>続きを読む

アラビアン・ナイト 第1部 休息のない人々(2015年製作の映画)

3.0

完全にリテラシー不足。大木のスズメバチの巣の焼却とクリスマスツリーの電飾の発光の相似とか、部分的なおもしろさは散見。でもなんで『千夜一夜物語』? おとぎ話の形式を援用したりシュルレアリスムを混在させた>>続きを読む

サンライズ(1927年製作の映画)

4.0

さまざまな二項対立とその越境による再生が寓話的。突然現れる路面電車の異物感はまさに彼此の媒介といった趣。合成や多重露光を意欲的に採用した映像は、都会の女の淫靡とあいまって魔術的な様相を呈する。あの密会>>続きを読む

街の天使(1928年製作の映画)

4.5

幸せになってくれと念を送りながら観た。『第七天国』よりも小技が効いている。変奏されまくる高低差の演出。竹馬、椅子、階段を用いたアクションや、ジャネット・ゲイナーとチャールズ・ファレルの身長差を前提とし>>続きを読む

愛の花(1920年製作の映画)

3.5

映画史上初らしい水中撮影や、原住民の男女のボート上での逢瀬など、水や光がしっとりとした美しさで描出。しかし一方で、それに拮抗するかのように激烈な暴力性が隆起して笑う。船を壊したり人を溺れさせたりする描>>続きを読む

人生の乞食(1928年製作の映画)

3.5

ルイーズ・ブルックスの男装→ドレスルック(かなり少女趣味)の二段構えに無事死亡。ルイーズ・ブルックスとふたりきりで密着して眠るのに、このあと滅茶苦茶セックスしないリチャード・アーレン、偉大すぎる。とは>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

3.5

悪ノリと表裏一体のピュアネス。慎みのなさが愛らしい。冴えまくるDJセンスにハジける足フェチ。マンソン・ガールズも全員キレッキレ。みんな可愛いんだけど絶対にヤりたくない。ブラピがすべての危険を一手に担い>>続きを読む

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)

3.0

ムダ話がただのムダ話じゃなくて作品のバックボーンやコンテクストの説明としてちゃんと機能しているのが不満。全体的に自己模倣が過ぎてノレなかったが、リンカーンの手紙が採光でピカーっと輝くのは、『パルプ・フ>>続きを読む

家光と彦左と一心太助(1961年製作の映画)

3.0

家光と忠長の有名すぎる後継争いの切なさと、『王様と乞食』的な替え玉劇のツボを押さえた笑いがいい塩梅。錦之助の演じ分けも見事で、ちゃんと別人に見えてくる。嘉葎雄の涙の告白のはてにようやく錦之助に切り返さ>>続きを読む

イングロリアス・バスターズ(2009年製作の映画)

3.5

突き抜けた荒唐無稽と露悪趣味にむしろナチスへの愛情がチラホラ。ダイアン・クルーガーのルックス大好きマン(演技はそんなに)なので、利己的で頭カラッポなダイアンが美脚の銃創をホジられて脂汗かきながら悶える>>続きを読む

バシュフル盆地のブロンド美人(1949年製作の映画)

3.5

やりたい放題のおバカウエスタン。いきなり拳銃と幼女という奇天烈な取り合わせで楽しい。赴任女教師は賞金首の凄腕ガンマン、なんてシチュエーション・コメディとしてもわりとイケそうな設定がまるで活かされない。>>続きを読む

凱旋の英雄(1944年製作の映画)

3.5

さんざん戯画化される大衆の盲目。それを終盤の感動的なスピーチにいたるまで徹底するも、同時に恋愛に例えることで肯定してみせるアクロバティックな処理があざやか。歩くヒロインを追った移動撮影が多めなのは、例>>続きを読む

ダンケルク(2017年製作の映画)

4.0

池袋の例のやつにて。まんまTPSなファーストカットがピークかと思ったが、コクピットに同乗してるかのようなVR感がそれ以上に楽しすぎた。バカでかいのに狭い画角も、オフスクリーンへの恐怖感をあおる近視眼的>>続きを読む

サボテンの花(1969年製作の映画)

3.0

オールドミスのバーグマンがババアかわいい。嘘が嘘を呼ぶ大混乱のはてに真実が宿る、というファルスの典型で、ジーン・サックスとI・A・Lダイアモンドにはお手のものといった感じ。人物の出入りなんかには演劇の>>続きを読む

アフリカの光(1975年製作の映画)

3.5

アフリカという外部を志向しながらもドン詰まりの港町にとどまりつづける中折れ感がたまらん。あきらかに弛緩しているにもかかわらず、突発的な暴力やショーケンの一挙一投足が予測不可能すぎて目が離せない。イチャ>>続きを読む

ロケーション(1984年製作の映画)

4.0

「いい画を撮ること」「映画を完成させること」への狂気じみた情熱が虚実の境をも融解させていく。それが映画内の虚構と現実にとどまらず、映画外の現実へも及ぶかのような熱量。美保純に食らいついていく撮影クルー>>続きを読む

大脱走(1963年製作の映画)

3.0

音楽も演出もユルいからこそ吹替の嘘っぽさがハマる。『20世紀少年』きっかけだったので、本編以上にあの世代の共通体験の声がデカい。アイブスが死んだあとで一週間のインターバルが入らないほうが不自然に思えて>>続きを読む

ドラゴンへの道(1972年製作の映画)

2.5

『燃えよドラゴン』とまちがって観てしまったレベルになにもわかってないんですが、ジャンプ漫画の謎様式のネタ元とかがわりと解明されて感動しました。格ゲーみたいに精緻な攻撃をたがわず連打するブルース・リーの>>続きを読む

映画 けいおん!(2011年製作の映画)

4.5

当たり前の日々が終わる無常に現実の悲劇を投影せずにはいられないし、京アニファンの想いを代弁しているとしか思えない “U & I” には本当に胸が張り裂けそうになった。ただ、それでも大いに笑えるしなやか>>続きを読む

モアナ~南海の歓喜~(1980年製作の映画)

3.0

半世紀も隔たった映像と音声をひとつの記録として受け入れなければならない体験が異次元すぎて戸惑う。気持ちが1926年と1980年に引き裂かれてしまう。作為性のないドキュメンタリーなど存在しないことはわか>>続きを読む

怪盗ルパン(1957年製作の映画)

3.5

ルパンの果断でキビキビとした動きと、それを追うなめらかなカメラワークが気持ちいい。冒頭の闇の中の動線設計なんて見事すぎる。火を点滅させることによる照明の変化もあざやか。隠しギミック満載の装置や、塀をの>>続きを読む

呪われた城(1946年製作の映画)

2.5

ジーン・ティアニー演じる庶民の娘がヤバい貴族のヤバい豪邸に住み込んでその深淵を覗き込む、という例によって例による感じのゴシックホラーであまり突出した点はない。いろいろ意味深なネタが放り込まれ、予定調和>>続きを読む

ろくでなし(1934年製作の映画)

3.0

ワイルダーの初期作。周到なシチュエーションの構築ではなく、人物の衝動とカーチェイスの強勢で牽引していくのが新鮮。ネクタイやナンバープレートなどの小道具使いは、後の作品ほど冴えてはいないものの萌芽が見ら>>続きを読む

他人の家(1949年製作の映画)

4.0

『ゴッドファーザー』と『ワンス・アポン・ア・タイム』を足して二で割った感じの濃密な家庭内愛憎劇。貧乏時代の回顧、近代アメリカへの批評的言及、猥雑で無法な貧民街の描写がなすバックボーンの豊かさにときめく>>続きを読む

NAGISA なぎさ(2000年製作の映画)

3.5

緑色のガラス片ごしの視界に永遠を感じた。江ノ島の夏を日焼け少女が走って歌って泳いで踊って恋して泣く映画なので嫌いなはずがない。少女たちのアカペラとオリジナル音源がクロスフェードする「恋のバカンス」や、>>続きを読む

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

4.5

クソジジイの一大博覧会。デ・ニーロに似てるやつ(いるよね?)が推し。ジャンヌに藁の冠をかぶせる豚野郎もいい笑顔すぎて嫌いになれない。基本的に誇張された顔芸のマウント合戦なのだが、不意に挿入されるエスタ>>続きを読む

SEX配達人 おんな届けます/宙ぶらりん/弁当屋の人妻(2003年製作の映画)

4.0

ヒーターや夕焼けで赤く染まった室内を印象づけたかと思いきや、イカ弁青年の部屋やおっさんの足の爪切りは清廉な白日に照らされて目がくらんだ。その光を招き入れる白いカーテンを媒介したシームレスな場面転換、か>>続きを読む

怒りの刑事(1972年製作の映画)

2.5

ショーン・コネリーのナーバスが伝染して皆さんご乱心めされる過剰さはそれなりに楽しいが、中年の危機やら仕事の負荷やらが延々と吐露されるいかにも戯曲らしい室内劇は退屈。フラッシュバックの乱発、同一シーンの>>続きを読む

真夜中の青春(1970年製作の映画)

3.5

画面の後景(テレビや写真)から自己主張してくる政治性や社会派脚本の直截さを、ズタズタに寸断する編集とカリカチュアの諧謔で撹乱する感じが楽しい。これが機能しなくなる=主人公の楽観が打ちのめされるのはニュ>>続きを読む

混血児ダイナ(1932年製作の映画)

4.0

ザクザクとした鬼編集。船員と船客のクロスカッティング、海や機関室への予兆めいた俯瞰ショット、あらゆるシークエンスで散見される一方通行の視線が、不気味なイメージを挿入しつつ段階的に明確な意味を結んでいく>>続きを読む

わが恋せし乙女(1946年製作の映画)

3.5

酪農家の義兄妹の切ない青春譚だが、開放的なロケーションとダイナミックな運動が風とおしのよさをもたらす。ムダにスリリングに編集された追走シーンはその筆頭。馬上の躍動感からの奥行き豊かなエスタブリッシング>>続きを読む

真昼の不思議な物体(2000年製作の映画)

4.0

各人の欲望や価値観をダイレクトに反映しながら人工的なフォークロアが生成されていく暴力的なまでのダイナミズムに高揚する。口承過程と再現映像と撮影風景とが混在する虚実の三重化も眩惑的だが、キアロスタミ(と>>続きを読む

世紀の光(2006年製作の映画)

3.5

ゆるやかにうつろうカメラの浮遊感と、静かに蠢く音響の圧迫感が張りつめたトーンを持続させていく。前半と後半で舞台設定や画面構成が対照(称)されていることと、アピチャッポン印の魔術的な暗闇が近代的装置に憑>>続きを読む