nagashingさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

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映画(780)
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ビートルズ/レット・イット・ビー(1970年製作の映画)

4.5

祝50周年&リストア&リメイク。ジョージのムーディーな当てつけソング (I Me Mine) が、ジョンとヨーコの不気味なタンゴを絶妙に彩る謎シークエンスが個人的にハイライト。全体としては、解散の予感>>続きを読む

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

3.5

平板なオチに興ざめ。採光、逆光、日照の変遷などの自然光の処理はよかったけど、宵闇やガラス(反射、汚れ、曇り)があきらかに表情=真相の隠蔽を志向しているのに、蛇足ぎみのエピソードを継ぎ足してリドル・スト>>続きを読む

七人の刑事 終着駅の女(1965年製作の映画)

3.5

フィクションパートとドキュメンタリータッチが、それぞれのアクの強さにもかかわらず社会派サスペンスとして超高度に調和。リアルな群衆と環境音で、すみずみまで画面が活気づき臨場感たっぷり。東北本線のターミナ>>続きを読む

ある関係(1962年製作の映画)

3.5

さまざまな小道具を用いて緻密に伏線を張りめぐらす脚本が巧み。逢引の部屋で伸張する影、毒を仕込むナイフに反射する光、やましさを代弁する猫のワンカットなど、背徳的なイメージもなかなかいい感じに横溢。構成に>>続きを読む

・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・(1988年製作の映画)

3.5

すったもんだのすえにぎこちなく身体を求めあう男女が萌えエモい。空間の立体構造と人物を戯れさせる長回しはたしかに相米っぽさがある。カメオ出演の豪華役者陣の出オチ感が楽しくて、とくに滑稽と不穏が拮抗したま>>続きを読む

キートンの蒸気船/キートンの船長(1928年製作の映画)

3.5

せっかくの蒸気船版『ロミオとジュリエット』みたいなシチュエーションなんだから、高所のブリッジをバルコニーに見立てた演出がほしかったところ。話のオチは登場人物の紹介がすんだあたりで読めてしまう(父からの>>続きを読む

キートンのセブン・チャンス/キートンの栃麺棒(1925年製作の映画)

4.0

いよいよディズニーの世界へと肉薄してきた感のある不死性。もはや生身の人間のなせる業ではない。超ダッシュ、谷間の跳躍、岩石の回避、とその記号的な身体によってスーパーマリオすら完コピ。怒涛の花嫁がブルーカ>>続きを読む

キートンの探偵学入門/忍術キートン(1924年製作の映画)

4.5

『カイロの紫のバラ』の元ネタ。夢と映画の近似性に着目した例としては先駆的だが、いっさいの留保も誤魔化しもなく危険にさらされるキートンの身体が心配になりすぎて、こっちの気持ちが現実に引きもどされてしまう>>続きを読む

キートンの恋愛三代記/滑稽恋愛三代記(1923年製作の映画)

3.0

『イントレランス』×『ベン・ハー』×『卒業』。ムダに壮大で金がかかっているわりに低調だが、名作映画をパロりつつも先取りしてしまうスケール感覚はやはり得体が知れない。だんだんエンジンがあたたまっていくに>>続きを読む

ひかりの歌(2017年製作の映画)

4.0

科白の抑揚が自然で、人物が風景になじみまくる。これはロケーションから逆算してつくってる気が。環境音につつまれて、抑制的かつ雄弁な視線のドラマがおだやかに展開。原作の短歌に由来する意味深なクサみが、時間>>続きを読む

ストライキ(1925年製作の映画)

3.5

影のシルエット、水と鏡の反射、逆再生、動くポートレート、といろいろ手が込んでいる。モンタージュ以外にも、映画固有の語りや表現を模索している感じ。階級闘争や水の暴力性は『メトロポリス』と共通するのに、人>>続きを読む

戦艦ポチョムキン(1925年製作の映画)

3.5

人、機械、水、煙の運動がこれでもかと積み上げられる。組織化された物量の迫力が革命の原動力を地でいってる感じ。しかし、モンタージュにこだわるあまりか、いくつかのシーンでエスタブリッシングショットを欠いて>>続きを読む

マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!(2017年製作の映画)

3.0

今風に角がとれた『愛と幻想の一夜』。映像の鮮明さにビビるも、全体のコンセプトと構成のムリやり感はいなめず。雑多なフッテージをまとめあげていくアクションつなぎも徹底されない。ビートルズの曲だけステレオミ>>続きを読む

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Years(2016年製作の映画)

2.5

バラバラのフッテージを目まぐるしく交錯させて、ブームの狂躁を擬似再現したコラージュ作品としては悪くないが……。現存素材が断片的だからしょうがないとはいえ、音の追加、差し替え、人工着色と、もうイジりまく>>続きを読む

劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel I. presage flower(2017年製作の映画)

2.5

メディアミックスの極北のような企画。極めて洗練された映像だが、裏を返せば予定調和で緊張感に欠ける。TYPE-MOONの世界観に調和した美しい花を添えることしか考えられていない。制作スタッフが表現したい>>続きを読む

アフター・アワーズ(1985年製作の映画)

3.5

時代と舞台の近接性ゆえか、ちょっと初期のオースターっぽい? とか、あまりうかつなことを書くと現代アメリカ文学への浅い理解が露呈しそうだが。でも『スモーク』や『ミュージック・オブ・チャンス』よりよっぽど>>続きを読む

悪の力(1948年製作の映画)

3.5

「スコセッシにもっとも影響を与えた〜」とかいう紹介のせいで、ギャング映画の名作群と勝手に響き合い(レストランでの殺人とか)80分とは思えぬ豊かさを読みとってしまった。兄弟のねじれた関係性、主人公とあや>>続きを読む

天使の顔(1953年製作の映画)

2.5

導入こそ典型的なノワールだが、ジーン・シモンズはファム・ファタールとしては粗忽すぎるし、ロバート・ミッチャムは巻き込まれ系主人公としては冷静すぎる。中途半端なキャラ造形がモロに影響して後半は失速。製作>>続きを読む

拾った女(1953年製作の映画)

4.0

視線と手もとの緻密なモンタージュ。スリリングなスリと尾行が、男女の駆け引きのようにも、満員電車あるあるの牽制し合いのようにも見える。波止場の小屋、小型の昇降機、地下鉄のホーム、といった舞台装置の高低差>>続きを読む

ショックプルーフ(1949年製作の映画)

4.0

陽の光の下を歩くまっとうさに安らぎを見いだしたのに、結ばれればそれを失ってしまうという皮肉。逃避行以降の展開はそのメロドラマ的ジレンマが解消してしまい退屈だが、いっきに弛緩するラストシークエンスの肩す>>続きを読む

危険な場所で(1951年製作の映画)

3.0

「風景の中の人物」って感じ。もちろん、ロージーが後年に撮った同名映画のロケーションには及ばないが。稠密な都会の闇と雄大な雪景色が好対照。主人公の荒れた心が癒えるのも、盲目美人に出逢って云々というより、>>続きを読む

過去を逃れて(1947年製作の映画)

4.5

光と影に彩られるジェーン・グレアの顔面があまたのファム・ファタールのなかでも規格外の美しさ。その異常な美しさが、強烈な魔性を発揮するでもなく、ただ浅薄な嘘と卑小な自己保身のために浪費されるという空虚さ>>続きを読む

堕ちた天使(1945年製作の映画)

3.5

『ローラ殺人事件』同様、ひとりの女に対する男たちの異様な執着があらわになる話。リンダ・ダーネルへ向けられるネバついたまなざしや、店のレジが放つ神経症的な音の気持ち悪さが、中盤の急展開までひたすら宙づり>>続きを読む

その女を殺せ(1952年製作の映画)

4.5

『ジョジョ』第5部のプロシュート兄貴戦を彷彿とさせるシチュエーションにアガる。列車の空間的な特性を活かしまくった濃密な70分で、ノワールな陰影が前菜でしかない。障害物にも隠れ蓑にもなるおっさんの太鼓腹>>続きを読む

犯罪王ディリンジャー(1945年製作の映画)

2.5

ロブ=グリエからハシゴしたせいか、語りの主体と形式に対するあまりの無頓着さに愕然。だれの回想なのかすらわからないし、回想が始まる「起点」にもたどりつかない。「7ドル20セント」を反復しても、もちろん冒>>続きを読む

ヨーロッパ横断特急(1966年製作の映画)

2.5

誇張と思えるほど愚直にジャンルの定型をなぞろうとするにもかかわらず、自身の性的嗜好に翻弄されてその枠組みを逸脱していく(=任務に失敗する)ロブ=グリエ≒トランティニャンの悲喜劇が極まっている。かなり笑>>続きを読む

嘘をつく男(1968年製作の映画)

4.0

英雄譚の二次創作作家トランティニャン。「嘘をつく」ことが「嘘」になり、対偶的に括弧つきの真実へと昇格する。テキトーに発案した二次設定が公式で採用されてビビる、みたいな話だが、公式=現実の優位性もまたお>>続きを読む

不滅の女(1963年製作の映画)

4.5

記憶という遡行的に再構成されたイメージの再現。時間は恣意的に流れ、淀み、因果は混乱の果てに逆転する。小ループと大ループで構成されているゆえか、すごいビデオゲームのプレイログっぽい。任意のセーブポイント>>続きを読む

囚われの美女(1983年製作の映画)

3.5

マグリットの同名の作品をモチーフにしているからって、本当に囚われてる美女(?)を出すのはどーなのよ。主演女優にティファニーの前でメシを食わせるのに通じる短絡さ。萎えかけるも、『巴里のアメリカ人』のクラ>>続きを読む

母のおもかげ(1959年製作の映画)

4.0

清水宏のシネスコ最高。同一構図の反復から突然90度転換する縦横無尽なドリーに腰を抜かす。向かい合う家屋を利用した前景と後景の180度反転もエクストリーム。クソガキたちの生き生きとした描写はさすがだし、>>続きを読む

恋多き女(1956年製作の映画)

3.0

扉を利用したドタバタ追いかけっこの錯綜に、鮮やかで華やかな衣装と色づかい。『ゲームの規則』と『フレンチ・カンカン』のいいトコどりといった趣きだが、不思議とあまりおもしろくならない。過剰な物量が躁的に躍>>続きを読む

港の日本娘(1933年製作の映画)

3.5

ドリーに次ぐドリー。同一、あるいは類似した事物やイメージやを執拗に反復することで生まれる謎の強迫感がメロドラマをガリガリと駆動。 ロングショット→フルショット→バストショットの荒ぶるポン寄りは初期の手>>続きを読む

レット・ザ・サンシャイン・イン(2017年製作の映画)

3.5

ひたすら噛み合わない女と男の滑稽。中年女性の孤独やらインテリの倦怠やらを暑苦しいクローズアップの切り返しで主張されるのはかなりキツいが、女の目をとおしたダメ男の見本市みたいな様相を呈してきてだんだん楽>>続きを読む

パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)

3.5

ゴルベワの美しすぎる横顔と堂にいった立ち居振る舞いがやはり鮮烈。群青の夜を真っ赤なネオンが侵す18区の退廃と、ドン詰まりな移民コミュニティーのリアルにまぎれて、ただひとりフィクション性の高い軽やかさと>>続きを読む

キングス&クイーン(2004年製作の映画)

4.5

歪かつ巧妙な構成と編集。ブツ切りの断片のようなカットを一見して乱雑につないでいくことで、過去と現在、記憶と事実が巧みに交錯し、人生への悪意と祝福がモザイク状に織りなす。積み重ねた辛辣さがある瞬間で甘っ>>続きを読む

もぐら横丁(1953年製作の映画)

3.5

比較的抑制気味とはいえ、横丁と長屋の奥行きの捕捉や、部屋を横断する移動撮影はやはり冴えまくっているし、街の風景もいちいち新鮮。序盤の公園と終盤の病院で夫婦の切り返しが反復されるのにもグッとくる。宇野重>>続きを読む