この14歳の少女は何と辛い旅を強いられているのだろう。
両親の信奉する総統が死んで、世界が変わる。両親は突然戦争犯罪者になって去っていき、幼い赤ん坊の世話を任されて、妹や弟を連れて北へと苦しい旅を強>>続きを読む
何の前触れもなく忽然と姿を消した愛娘。娘の身を案じて狂気に陥る男。この男の父親は、生前刑務所の看守を務めていた。看視する者と囚われる者。看守と囚人の立場が幾度も交錯する。
「神である主が造られたあら>>続きを読む
煌びやかで、アーティスティックで、攻撃的で、難解で、突き放したような、よそよそしさ。圧倒的な美しさに酔いしれていたら、ふいにぐしゃりと心を掴まれて、たまらなく切なくなる。
アフリカの聖母が、どうしよ>>続きを読む
華やかな観光都市ローマの印象とは、がらりと異なる、市井の人々のさりげない日常が淡々と綴られているのだが、実に豊饒で、何とも味わい深い。没落貴族、車上生活者、ウナギ漁師、救急隊員、植物学者。ばらばらの人>>続きを読む
「吸血鬼に美味しい血を飲ませてあげられるような人間として生きたいと思った」と、安西水丸さんがコメントされていて、観るまでその感覚がピンとこなかったけれど、観ると激しく共感。私も彼らに血を吸われて、あの>>続きを読む
「何ごとも初めては一度だけ。楽しみなさい」。初めて一人でニューヨーク!空港に降り立つも、英語も話せず、不安でいっぱいのシャシを、飛行機で隣り合わせた、親切で愉快な紳士が送り出す。
物珍しい大都市がシ>>続きを読む
フィリップ・シーモア・ホフマンが演ずる、ギュンター・バッハマンが奏でるピアノの音色がたまらない。夜、一人で、大きな身体をかがめて、「訥々」と鍵盤をたたく。その情景と音色がどうしようもなく切ない。
ス>>続きを読む
特段にドラマティックなことは何も起こらない。台詞も少ない。なのに、一人一人の心の動きが丁寧に映し出されて心に染みる。
反抗期っぽい、ジャンルーが、新しくやってきたメイドのテリーに、最初は反発するも、>>続きを読む
ともすればベタベタなメロドラマになってしまいそうな題材であるのに、過剰を排した演出によって、滋味あふれる作品に仕上がっている。
時の政治権力によって罪人して捕らえられ、20年を経て名誉を回復した夫。>>続きを読む
報復戦争の醜さ、虚しさ、やるせなさがじんじんと伝わってくる。エンドクレジットで映し出される映像は、アメリカのナショナリズムのすさまじさをまざまざと見せられて、恐ろしくなる。しかし、きっとこのナショナリ>>続きを読む
劇場で観るのは初めて。かわいらしいラブストーリーかと思いきや、それだけにあらず。結構ロックだ。
終盤の展開に気分高揚、爽快!
名場面と名高い、ラストシーンも素晴らしい!
そして、もちろん音楽、ファ>>続きを読む
ヤラレタ。マイリマシタ。
チラシがま四角で、とてもスタイリッシュだったから、わかる人にだけわかる、みたいな、難解なアート系の映画かと心配した(ドラン作品が初めてだったので)。しかし、もちろんオシャレ>>続きを読む
スリリングだ!五感を研ぎ澄ませて見る世界。
「まず思い浮かべるんだ。そしたら話しかけてくる。それを聞くんだ。」
なんて豊かな世界なのだろう。目が見える者には決して見えない、細部までが丁寧に描かれてい>>続きを読む
冒頭から圧倒された。蟻塚の中の蟻のように、大きな穴に列を成し、へばりつく無数の生き物。それが人間であることに驚き、この光景が太古のものではなく、自分が生きてきた時代のものであることに愕然とした。金鉱の>>続きを読む
わずか40分の間に心を掴まれた。ブランコを漕ぐ娘の瑞々しい躍動感。凝視してしまう男たちの気持ちがわかる。あっという間に恋に落ちる男女。とても官能的だ。ボートの舳先で揺れる川面のさざ波が、押し迫ってくる>>続きを読む
幼い兄弟と二頭のラクダで乾いた大地を旅に出るが、二人の間に会話がない。弟くんは素直に感情を表しているように見えるが、お兄ちゃんはすねた感じ。そんな二人が、旅の半ばで感情を吐き出し合って喧嘩する。兄と別>>続きを読む
みずみずしい。もちろん主人公の少女ジェルソミーナに因るところが大きいのだが、作品全体が潤いに満ちている。
映像が澄んでいる。陽光の温もり、海水の冷たさ、晩夏の夜のひんやりとした空気が肌に伝わってくる>>続きを読む
「衝撃のラスト」と謳っているので、身構えて観ていたのだが、想像を遙かに超えて、心底、魂消た。ああ、こういうことかと、タイトルが突然に意味を成す。打ちのめされた。陽は昇りかけて沈んでしまう。愕然とした。>>続きを読む
ジェイク・ギレンホール(ギンレイホールと似てるよね)が演じる主人公がとことんえげつない。もう佇まいからして不穏に感じる。ギョロリと光る目が威圧的だ。笑顔で人と会話している時でさえ、決して腹の内を明かさ>>続きを読む
いかにも好みが分かれそうな作品で、スルーしようかと思ったが、どうにも気になって、博打を打つ気持ちで劇場へ。しかし、始まってすぐに安堵した。音楽がとぼけている。モスグリーンを基調とした画面は、決して明る>>続きを読む
たとえどんな人物であれ人の死を願うことは罪であろうが、ヒトラーだけは、あの時死んでくれていたらと思ってしまう。わずか13分の違いで、どんなにか多くの命が犠牲にならずにすんだであろうにと。
ナチスが絶>>続きを読む
戦時下の許されぬ恋が軸ではあるのだが、恋愛そのものよりも、占領下に生きるということがどんなに緊張を強いる苛酷なことであるのか、女性の視点から丁寧に訴える描写に心を奪われた。
1940年、ドイツの占領>>続きを読む
イスラム過激派によって占拠された古都で暮らす人々の営みを描いているのだが、語り口は静謐だ。美しくさえある。その静かな語り方が、余計に過酷な現実を生々しく伝えている。
街から少し離れた砂漠のテントで暮>>続きを読む
知らなかった。アルメニア人の苛酷な歴史。欧米ではユダヤ人と共に離散の民と呼ばれていること。1915年に起きた、当時のオスマン帝国による大虐殺のことも。トルコ政府は虐殺を認めておらず、「事件」と呼んでい>>続きを読む
「保険会社は信用が大事だ」という台詞が出て来るが、この会社の保険商品は絶対に契約したくないな。上司の女遊びのために、アパートの部屋を貸さねばならない。断ると降格させるぞと、脅される。パワハラ、セクハラ>>続きを読む
マリーの笑顔がとても愛おしい
目からも耳からも情報が遮断された世界。暗闇と静寂。だけど、マリーが生きる世界は、言語を習得する以前から、思いのほか豊かで躍動的だ。冒頭の父親が御する馬車に乗っている場面>>続きを読む
ピエール・エテックスという監督の1969年の作品。保存状態が悪く上映できない状態だったのを監督の監修のもとで復元。東京フィルメックスで上映。
私のイメージする古きよきフランスのコメディ映画の趣。こん>>続きを読む
ヴィヴィアンの写真は、ノーマン・ロックウェルの絵を思い出させる。一枚の構図の中に物語を感じる。被写体の心に寄り添っているようだ。とても心惹かれる。
得体の知れない女性。どなたかが(思い出せず、すみま>>続きを読む
場所も時代も特定されない架空の国。言語さえも、観客の多くが認識できないのではないか。私は出来なかった。鑑賞後にチラシを見て、ジョージア(グルジア)語であると知った。(今月、この言語の映画を見るのが2作>>続きを読む
知らなかった。フランクフルト・アウシュビッツ裁判。 自国の戦争犯罪を自国で裁く。このことが、とてつもなく困難で、辛い痛みを伴うことを教えられる。日本は、未だそのような裁判を経験していない。
敗戦後1>>続きを読む
ナチスが多くの美術品を強奪したことを、「ミケランジェロ・プロジェクト」が話題になるまで知らなかった。クリムトのこの作品のことも。
実話である題材そのものが非常にドラマテイックで感動的だ。アメリカに住>>続きを読む
ニコ・ピロスマニという画家のことを知らなかった。グルジアでは、貨幣に肖像が使われるほどの国民的な画家であり、女優との恋が噂され「百万本のバラ」の歌詞のモデルとなった人物だそうだ。そもそもグルジアという>>続きを読む
1981年のニューヨークが舞台。しかし、西部劇を観ているような気分になった。果てしなき成功への野心。アメリカン・ドリーム。物質的豊かさと名声。成功者への嫉み。仲間の策略。暴力による強奪。銃社会。法律も>>続きを読む
美しい。映像も、物語も、音楽も。
突然死した娘の写真を撮って欲しいという、富豪の急な依頼を、断ることが出来ずに応じる、ユダヤ人青年のイザク。富豪の娘であり、人妻でもあるアンジェリカは、まだ若くて美し>>続きを読む
以前に地上波テレビ放送で観たことがあったが初めて劇場で鑑賞した。
ガーシュウィンの曲が心地よく、楽しいミュージカル。『パリの恋人』で印象に残った曲♪ス・ワンダフル♪は、こちらが先だったのかな。
♪ス・ワンダフル〜
有名な曲らしいが、知らなかった。なんで「す」をつけるんだと驚いた。当時流行っていたit'sを短縮した言い方だそうな。ス・ファニーだ。
アステアもオードリーも好きなので、ずっと観>>続きを読む