湯浅政明監督と吉田玲子さんの組み合わせで「水(海)」と「死」を絡めた作品であり、かつ物語の前半で幸福感を拗らせた様な過剰に甘い描写が続くので、これは相当な前フリだと期待をしていた。
だが物語はそのま>>続きを読む
傑作だよ町田くん。
町田くんを知り、町田くんに愛され、町田くんを愛した人だけに見える世界がある。
物語が終わる最後まで、
「ただのファンタジーだ」
「こんな事は有り得ない」
「こんなに簡単じゃない>>続きを読む
夏休み初日に大好きなハンドボール部の活動で部員とケンカをし居場所を失うという、極めて学生らしいパーソナルな導入で幕を開ける物語。
が、ジュゴンに育てられた兄弟と出会い海へと連れられ飛び込んだ果て>>続きを読む
解散(決別)を意識した事で、憧れから劣等感へと変容した大切な人への想いをなぞり直す、ハルレオ全国ツアーの旅路。
ツアー中何度も演奏される「さよならくちびる」が既に決別の行く先を示しているというのが、>>続きを読む
この映画で起こる事全てが自分にとっては「憧れ」であり、「自責」であり、「希望や絶望」であり、それから…それから、なんだろう、もっとたくさん。
4/22に観て以来ずっと頭から離れなくて、5/31には舞>>続きを読む
中野量太監督の千本ノック健在。
プロット一つ一つの力強さ。
涙必至の短編映画を何本も連続で流されている様な。
「愛嬌」の使い所が神がかってる。
登場人物みんな可愛くて可愛くて。
それがそのまま涙に>>続きを読む
この無意味かつ不快なシナリオで映画を作る事の何処に情熱の注ぎ様があったのか、現代では到底理解不能。
申し訳ないが理解したくもない。
悲劇を描く意義は、悲劇の先をどう描くか、或いは示唆するかにある。>>続きを読む
恐怖体験の総称としてホラーという言い回しをしていいなら、この映画は今まで観て来た映画の中でも屈指のホラーだ。
宇宙船内からの視点に絞られ、いや縛られ目の当たりにする壮絶極まった閉塞、孤独、緊迫、絶望>>続きを読む
スカイツリーの頂上からいきなり突き落とされるけど、落下する背中越しに「頑張れ」と言われたような気がする映画。
全体の評価なんてどうでもいい、必要な人にだけ届けばそれでいい。
劇場という共有空間で「死」をディベートする様子を見つめるのはとても意義深い。
「死」を欲するというマイナスを抱えた人物同士の対話と呼応によるプラスへの変化。
社会との繋がりに対する「靴」のメタフ>>続きを読む
今年最もワクワクの止まらない映画だったかもしれない。
タイトルバックのドラッギーな高揚感といったらもう。
登場人物も主要は勿論、端から端まで愛着わきまくり。
年末〜年始のフワフワとした街の空気や人の>>続きを読む
映画の中にある曖昧な予感同様、観終わった後のこの気持ちは曖昧なまま言葉にしたくない。
そんな最高の作品と出会えたという事だけは伝えたいから、せめてこれだけ。
主張も主題も素晴らしい。
にも関わらず強烈な違和感を拭えぬ理由は、それらの輪郭を明瞭にする為の主人公の極端な行動。
それが彼女という人間をこの映画の世界での成立に留まらせている。
現実で彼女と同じ行>>続きを読む
今年の10本に選びたい。
風も心地良く感じ始めた平成最期の夏の終わり。
そんな今日にこの上なく相応しく、今、この瞬間に、沢山の人が出逢うべき素晴らしい映画。
世界と、世界から生まれた全ての物体を愛>>続きを読む
オムニバス作品は単体では小品故に観る人の判断や評価が枝分かれし易い。
が、その並べられた作品群に共通した主題を見出した瞬間、目の前は果てしなく開けていく。
一作品ごとに映倫の文字が入ろうとも、この>>続きを読む
もし、家族の変遷を縁取ったこれまでの家系の節目にある感動を、一つ一つ子供に見せることが叶えばどれだけ素敵だろう。
どれだけの想いを子供に伝えられるだろう。
今作はそんな親のささやかな願いをそのまま冒険>>続きを読む
頭の先から足の爪先まで緻密で、繊細で、柔軟なこの一作は、家族を描く様式美さえも越えて人の営みを奇跡の様に煌めかせる。
是枝裕和監督の経験による総力が余す事なく詰め込まれた、正真正銘、渾身の一作。
結末の状態に至るのは実はとても簡単だったのかもしれない。
しかし、それぞれの意思や思惑、若くは疑問や不安が一体化を図る事で起こる僅かな見解の相違と摩擦が、その単純明快な解を阻害する。
他者へ自らの想>>続きを読む
生粋の関西人である主演二人故の役に対する軽妙な咀嚼が、秀逸な掛け合いの滑らかさを生み出しそのまま作品の鮮血となる。
人物同士の関与と影響へのアプローチが浅めにも関わらず心理が繋がる事や、ラストステージ>>続きを読む
一つのシークエンスを極力ワンカットで行う長回しへの注力と、それに沿ってスムーズに提示される各人物の背景とフラストレーションが徐々に物語の熱量を上げていく。
しかしその熱は急激に冷まされ、積み上げられ>>続きを読む
直面している問題の痛切と空想の世界に残る僅かな幼少的感覚。
その反復が、大人への境界線を今正に跨ぐその瞬間を静観する。
地続きとなった思春期の全てをひたむきに捉え、ラストのモノローグへ集約していく>>続きを読む
ツチダは男から見れば最低な女としての理屈が揃っているのに、あの笑顔が、怒りが、涙が、全てが、そんな理屈から解き放たれていく。
生活音を慈しむその一瞬一瞬が、彼女たち、彼たちの僅かな心の機微も摘み取っ>>続きを読む
自らの時間からは決して抜け出せない二人が、東京の喧騒と疲弊と疎外感の中で引き合いながら、戻らない時間とこれから失う時間を慰め合う。
必然の別れまでに交わされた二人の孤独が、その孤独の待つ先を僅かばか>>続きを読む
戦時中という異様な「現実」が日常の一部である様子が、映画製作という「虚構」へ向き合う姿との狭間に映し出される。
それを見事に表した序盤の空襲シーンを皮切りに、空襲での部屋の振動に顔色一つ変えずタイプラ>>続きを読む
劇中の主張や観客への映像アプローチの共通から「恐怖」というキーワードへの強い意識は浮かぶ。
しかし、あくまでスピンオフとして本編映画への関心を惹く事に傾倒した結末を迎えたのは、本編映画の主張性の高さ>>続きを読む
プライバシーの過剰な排除による人脈のフラット化が生み出す、壮大な「ありがた迷惑」のお話。
爽やかな笑顔で挨拶するかの様に他者のプライバシーへ土足で介入する姿は恐怖そのもの。
【他者のプライバシーへの>>続きを読む
前作から通してレプリカントが誕生してしまった「過ち」の渦中であり、かつ例え「過ち」の存在であっても人と変わらず「血」を通わせるレプリカントの切望が、降りしきる酸性雨に混在する。
今作はKの存在を通し>>続きを読む
ファーストシーンの位置関係や、何度か挿入される意味深なフラッシュバック等、ラストへのアプローチが常に行われている事が結末を観ると分かる画使いが印象的。
しかし極端な性的関係により端を発する人物の交わ>>続きを読む
一体何故刑事になれたのか疑問な程に直情的な主人公の村上が事態を「実直」という力業で動かし、それをベテラン刑事の佐藤が知識と経験と温情で支える。
奪われた拳銃による事件が進展するに連れ自責の念を募らせ>>続きを読む
人はどうしようもない欲動に理屈や善悪を超えて突き動かされる。
その決して払拭出来ない欲動を泉と葉山の業が全て露呈する関係へ透過し、観る者各々が持つ無数の欲動の記憶を呼び覚ます。
是枝裕和監督「三度目>>続きを読む
(青山シアター オンライン試写にて鑑賞)
物語に終わりが必要である事への慈しみによって人間の生命が終わり行く絶対を説きながらも、その一生を語り継ぐ事で生まれる永遠を温かに肯定する事で人々の繋がりの深>>続きを読む
自身のノスタルジーへの信頼と、相反する他者の無理解。
その狭間で生き埋めとなり身動きが取れない苦悶。
戯けて茶化してみたりカッコつけたりしてみても、現状が絶え間無く押し寄せる。
もはや理想への妄想>>続きを読む
背景の見えない序盤は幽霊たちの図々しさに観てるこちら側すら腹が立ちそうになる(勿論面白いのだけど)が、彼女たちが存在する世界の理と主人公の祖父のエピソードが交差した時、途方も無い寂しさと人同士を繋ぐ涙>>続きを読む
「生ける死体」の放屁による浮力が、主人公の生への希望を浮上させる超異色サバイバルムービー。
その馬鹿馬鹿しさとは裏腹に物語は遭難した森の中、自意識や承認欲求の渦へと迷い込む様相を見せる。
死体が人間>>続きを読む
各々の人物から断片的に綴られる思春期の一欠片が、それぞれに最低限の関連性を持ちながらも独立して描かれる。
ラストシーンの甘酸っぱさにノスタルジー(=自身の投影の意)とカタルシス(=他者としての感情移>>続きを読む