未島夏さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)

4.2

「親の心子知らず」なんてよくもあっけらかんと言えたなという話で、親だって昔は自分が子供だった癖にちっとも自分の子の気持ちなんて分かろうともしない。
いや、親心という大義名分を振りかざすのに必死で、何も
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真夜中からとびうつれ(2011年製作の映画)

3.2

映画は世界。
世界はマトリョーシカの様。

瞳を持つ全ての者は観客であり被写体である。
その者たちは映画によって世界を自在に覗き渡り、世界に憧れ、世界を作る。
そんな姿もまた何者かに覗かれ、映画となる
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夜のピクニック(2006年製作の映画)

4.6

80kmかけて踏みしめる一歩。
ロードムービーと群像劇の利点を青春映画に堪らなく上手く盛り込んだ、永久普遍の傑作。

序盤を始め高校3年生には見えない様な少々幼い演出も時に見られるが、それが若さを表す
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64 ロクヨン 後編(2016年製作の映画)

3.8

サスペンスとして「追及」の娯楽性に頼らず、被害者視点の心理を常に観客の心に置く様起伏が敷かれている。

子供視点の心理は掘り下げ切れなかった印象があるが、各人物の結末には揺さぶられ、静かに落涙。

マネーモンスター(2016年製作の映画)

3.7

犯人の行動範囲とその障壁に対しては、脚本都合の悪い潤滑さがある。

しかし人物の背景を自然に浮かべながら「共犯関係」へと持ち込むまでの人物同士のシンパシーの描き方がとても良い。

負の感情を臭さ無くエ
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火垂るの墓(1988年製作の映画)

3.7

世代によっては戦争への教養的印象がある映画。
しかし改めて見返すと、物理的な戦争への恐怖以上に、思春期を迎えた主人公清太の環境に戦争があったという事への悲劇が焦点として描かれている様に感じた。

どん
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新幹線大爆破(1975年製作の映画)

3.7

ひかり109号を操縦する運転手の掌には遠く及ばないだろうが、観る側としても手に汗握る大変スリリングな作品で、41年前の映画なんて先入観は早々に吹き飛ぶ。

犯人グループの犯行動機には絶望的な哀愁が漂い
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海よりもまだ深く(2016年製作の映画)

3.9

少々あざといまでの「歩いても 歩いても2」だったが、こちらの方がより普段は遠ざけたいけど向き合うべき想いを映している。

退行的な感情から目を逸らさずうんざりなまでに描いていくからこそ、憎めない人間の
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歩いても 歩いても(2007年製作の映画)

4.2

家族とはどうしてこうも煩わしいのか。
そう感じるのは自分が受けた愛と、それに対する愛と恩が仕方ない位あるからだと、この映画を観ると残酷にも気づかされる。
一瞬でも、「愛なんて無ければ」と考えてしまうの
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書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)

3.0

虚構という前提を映画自らが語り示した上で奔放に繰り広げられる、徹底したフラストレーションの蓄積と自己陶酔。

時代、家庭、利己、肉欲、虚無、嫌悪、反骨、その全てから成る思想に一人の男が酔い潰れる映画。
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64 ロクヨン 前編(2016年製作の映画)

3.8

64事件に対する焦点を捉えたまま別視点で警察内部の実情(=64事件当時の内情)を抉る。

サスペンスとしてのカタルシスへ誘う前に、まず組織における体質的障壁への対峙を描くのは「前編」としてとても良い形
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パリ、テキサス(1984年製作の映画)

3.7

ロードムービーと聞くと何処かを目指す旅路をイメージするが、実際は追憶と忘却の旅から愛すべき現実への帰路を描いた作品だった。

回想という手法を使わず(厳密には少しあるが)描かれる過去が、静かに鮮烈に浮
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アイアムアヒーロー(2015年製作の映画)

3.5

土地柄や環境、ZQNの習性を元にした機転の効いたセリフにより、あらゆる角度から上手く緊迫感を出していた。
しかしロードムービーの構図に当てはめて観るとかなり消化不良。

人物については、英雄と比呂美が
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逆噴射家族(1984年製作の映画)

4.0

頭痛を伴う様な傑作。

家内で起こる「戦争」からラストシーンまでの間に内包された主張には、家族間のプライバシーの象徴とその破壊によって確かに説得力がある。
しかしこの家族にとっては根本的な解決になって
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しゃべれども しゃべれども(2007年製作の映画)

3.7

何かを話しているから誰かが聞くのではなく、誰に何を話して、何を伝えたいのか。
それに気付けた時の「素直」への踏み込みと、それが伝わった事で起こる「笑い」に涙。

ガルム・ウォーズ(2014年製作の映画)

3.5

非常に難解かつ自分が理解に乏しい為、作品世界に対する解釈全体を掴むことが出来なかった。

それでもACT02(2章)における夜の会話は、互いが得体の知れない想いに言葉を手探り、搾り出す様子が堪らなく良
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アキラ AKIRA(1988年製作の映画)

3.6

社会、組織、個人、葛藤、好奇心ーーー。
そうやって人間に植えつけられた「愚」の種が芽吹き悲劇の輪廻を産む過程を、滑稽かつ大胆に描く。

人物の生死に対する結末は気に入らないが、「愚」の象徴と捉えるなら
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世界から猫が消えたなら(2015年製作の映画)

4.1

傑作。
アプローチは違うが、和製「素晴らしき哉、人生!」。

大切な人々との思い出は非常に断片的に描かれていくが、どれも強く、普遍的に観客の涙腺を揺らしていく。

この映画は「物語という媒体の本質」に
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ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

3.7

背景に根付く内戦については知識を入れず、アナの主観に寄り添える様努めて鑑賞。

毒キノコのシーンで漠然とアナが向かう結末を想起。

虚構を虚構と捉えられぬ無垢な疑問に誘われる危うげなアナの行動、そして
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太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)

4.2

衝撃。

顧みず狂気に犯行を遂行していく娯楽性、痛快さに反し、彷徨う目的や混沌とした死生観。

城戸と警部山下の人物像からなる「太陽」への解釈、その対立。

原爆の製造過程を映すシーンはある意味で恐怖
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亜人 第2部「衝突」(2016年製作の映画)

3.6

3部作の第2部として申し分ない高揚感。

人物関係の変化も、王道的と言えるがとても惹きつけられる。

ラストカットは次作への布石としてこれ以上無い。

台風クラブ(1985年製作の映画)

2.2

思春期に対して、映画という芸術のフィルターを通し過ぎてしまった作品だろうか。

映像の構図には力があるが、思春期だからと片付けるには無理のある取り返しの付かない心理描写が多すぎる。許されない。
全編を
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打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(1993年製作の映画)

4.1

憧れや恥じらいが生む後悔、あまりに儚い無知、少年の美しき妄想。
泥臭く、故にこんなにも煌めく。

人の大切な何かは、一瞬の日々と空想が濃縮したハレーションの中にあるんだと、そう思う。

太陽(2016年製作の映画)

3.8

二つに分断された世界で堂々巡りの「個人の意思」。
その彷徨いと世界からの自立を、観客に重くのしかかる様なプロットの集合で描く。
クライマックスの長回しには言葉も無い。

ズートピア(2016年製作の映画)

4.0

王道「回収劇」。
本筋の伏線は勿論、些細なキャラクターも全てシナリオのラインど真ん中に納め切る。
コミカルでスリリングな展開の応酬は、少々先が読めても観客を高揚させる。

人種問題やそこから生まれる劣
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スポットライト 世紀のスクープ(2015年製作の映画)

3.8

隠蔽に抑制され続けた「声」が再び溢れ出る、その開始点を捉えたラストに震える。

組織そのものという顔なき巨大な相手に迫り行く様を堅実に、かつ登場人物の涙腺を撫でながら刻々と記す。
唖然とさせられた。

ルーム(2015年製作の映画)

3.7

地球に住む人々が宇宙の未知に畏怖する様な、「世界」が増幅していく事への恐怖と関心。
そんな目線が子の主観に徹して描かれていく。

重ねて、監禁事件被害者としての心傷、そして親として強くなければいけない
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七人の侍(1954年製作の映画)

4.0

軽々しい言葉で語りたくはないけれど、ただ純粋に、とにかく「面白い」。
どんなに時代が変わっても決して拭えない脚本と演出のインパクト。
白黒だろうが技術が現代に比べ何だろうが、やはり物語の大前提は脚本、
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モヒカン故郷に帰る(2016年製作の映画)

3.7

物語には起承転結があるけど、家族の営みにそんな型は無くドラマの様に上手くいかない事が散在する。
そうした日々で暮らし、喜怒哀楽を尽くし、血は継がれていく。
そんな風で良いじゃないかと、温かに囁くような
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On Your Mark(1995年製作の映画)

3.6

僅か7分程の実験的な内容ながらも、様々な解釈や主張が根付いている骨太な作品。

シーンの連続性やその変遷。
苦渋の放棄と自由への奔走。
翼の生えた少女のイノセンスが、二人の男のロマンに支えられ、それら
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十二人の怒れる男(1957年製作の映画)

3.9

逆境の妙。
圧倒的多数派であった有罪側の意見に綻びの見える瞬間が、真実に手を伸ばす姿を体現するかの如く光明となり捉えられる。

マジョリティが正義とされる社会体質を精悍に牽制する様な、限られたシークエ
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リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年製作の映画)

3.7

現代社会に対する作品の捉え方は正直これ見よがしな印象が強く、頷けない。

しかし、「一つのセリフ」。
それの為にある3時間もの世界、そこに浮遊しながら辿る揺れ動きが、時に可笑しくも胸を掴まれた。

お引越し(1993年製作の映画)

3.9

思いっきり頭を打たれた。
思春期に亀裂していく家族への葛藤と、一つの感情の移行が、こんなにも混沌と、修羅の如くスクリーンに映し出されるとは。

普遍的に進行しつつも違和感のある部分が、終盤で確信に変わ
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僕だけがいない街(2016年製作の映画)

3.6

まず言及しないといけないのは子役の力演。
実写では表現が難しいであろう幼少期のシーンに対して、ハードルを十分に超えてみせた。

脚本は、ミステリーとしてよりも愛梨との関係性を重視したものになっていて、
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甲鉄城のカバネリ 序章(2016年製作の映画)

3.7

血の気が多く世知辛い世界での物語ながら、登場人物それぞれに違うベクトルでの爽快感があり惹きつけられる。

公開当時は結末がどこに向かうかまだ不透明だったが、TVシリーズへの期待を抱かせるには十二分な重
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リリーのすべて(2015年製作の映画)

3.8

自らの性に疑念を持たない人こそに、この映画を目撃してほしい。
スクリーンを絵画的に見せる様凝らされたあらゆる被写体に対する画角や位置の拘り、その視覚的美しさは勿論素晴らしい。
しかし最も美しいのは、「
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