夜光虫さんの映画レビュー・感想・評価

夜光虫

夜光虫

映画(364)
ドラマ(0)
アニメ(0)

エミリア・ペレス(2024年製作の映画)

3.9

カオスな作品でした。情報量の多いところへ突然挿入されるミュージカルが相まって、狐につままれたような気分で物語が進んでいく。ストーリーそのものはそれほど難解ではない。どうしても手に入れたいもの、そして引>>続きを読む

ZOO(1985年製作の映画)

3.9

病的なシンメトリーの世界で展開される格調高い狂気。登場人物が軒並みサイコパスだというとんでもないフィルムであるが、狂気とは論理が破綻しているのではなく、我々が常識と呼ぶものとは異なる論理体系なのだとい>>続きを読む

ANORA アノーラ(2024年製作の映画)

4.2

タイプの違うゲス男とゲス女の物語。どっちもどっちで感情移入する余地などないはずなのに、テンポよくストーリーが進む中で、この二人の世界に没入してしまう。主人公の二人以外の男も女もクセの強い嫌なやつばかり>>続きを読む

ザ・ルーム・ネクスト・ドア(2024年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

ペドロ・アルモドバルもすでに75歳。「オールアバウトマイマザー」や「バチ当たり修道院の最期」を撮った監督の作品だろうか、と思うくらいに、これまでの作風とは打って変わって抑制的なストーリー。官能的な色遣>>続きを読む

花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)

3.9

湿度の高い映画である。香港の湿度、人間関係の湿っぽさ、そして身悶えするかのような官能の湿度。音楽がさらにその湿度を高めていく。
直接的な性描写こそないものの、まとわりつく濃密で官能的な空気が支配する。
>>続きを読む

雪の轍(2014年製作の映画)

4.7

不穏でザラザラとした人間関係。遠回しな嫌味、皮肉、当て擦り、批判、面罵。ドス黒い本音が時にオブラートに包まれ、時に直接ぶつかり合う。我々は普段、他者との考え方の違いや立場の違い、それによって生じる摩擦>>続きを読む

うなぎ(1997年製作の映画)

4.0

訳ありの男女が出会い、過去を克服していく。男は心を閉ざしているのか、うなぎ相手にしか本音を語れない。うなぎは囚われの象徴であろうか。心を開くことのできる相手が確信できたとき、うなぎは川へと放流される。>>続きを読む

麦の穂をゆらす風(2006年製作の映画)

4.0

ケン・ローチ監督は自他共に認める左翼である。個人的には左翼は嫌いなのだが、それは現実無視のイデオロギーに酔い、教条主義的で無謬性を主張するその姿勢にある。一方で、監督の作品に通底するのは、人間らしく生>>続きを読む

ミッション(1986年製作の映画)

3.7

ヨーロッパによる南米への布教と植民地化の時代。現地人としてみれば、海を越えて彼らがやって来たことは災厄以外の何物でもなかったであろう。植民地においてはまず宣教師がやって来て、それから商人、最後に軍隊が>>続きを読む

4ヶ月、3週と2日(2007年製作の映画)

3.8

社会主義時代末期のルーマニア、ホテルも寮も団地も、すべてが灰色で重苦しい。ストーリー自体も重くて救いようがない。オティリアの懸命の行動に対して、当事者であるはずのガビツァはどこか他人事で無責任である。>>続きを読む

ベティ・ブルー/インテグラル 完全版(1992年製作の映画)

4.2

感情をさらけ出してぶつかり合う男女。ヒステリックではあるが、どうしようもない一途さが伝わってくる。そして二人の関係はまさに相互依存としか言いようがない。シリアスさととぼけたユーモア、リアルさと突拍子も>>続きを読む

エル ELLE(2016年製作の映画)

3.5

敬愛するイザベル・ユペール様が主演、そしてお変態作品ということなら、当然に「ピアニスト」を想起するし、それを超える変態性を見せてもらいたいと期待が高まる。
で、結論から言うと消化不良。期待が高すぎたの
>>続きを読む

トータル・リコール(1990年製作の映画)

3.7

「記憶を操作する」系の映画ジャンルというものがあるようである。おそらく「現実と夢が交差する映画」の亜種ではあろう。
ごく個人的な思いとしては、シュワルツェネッガーはこういう難解なストーリーより、「コマ
>>続きを読む

ミッション:インポッシブル2(2000年製作の映画)

4.0

米国大衆映画の金字塔。いわゆる娯楽大作としての基準というものがあるのなら、本作がそれに該当するのだと思う。困難、絶体絶命、奇跡的な起死回生、問題解決、最後はチュー。小馬鹿にしているようで申し訳ないのだ>>続きを読む

セントラル・ステーション(1998年製作の映画)

4.4

この映画は最初、観る者を突き放す。ずるくていい人とは言えない大人たち、かわいげのない子供。そして、いろんなことが想像の斜め上を行くブラジルという国。人の命が安いのも、文盲率が高いのも、日本から見るとま>>続きを読む

黒いオルフェ(1959年製作の映画)

3.7

ヴィニシウス・ヂ・モラエスが原作を書き、アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲を担当したとなれば、ブラジル音楽ファンとしては失礼ながら映画はさて置いてでも注目必至の作品。ヴィニシウスは出来上がった映画の>>続きを読む

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)

3.8

いかにもウォン・カーウァイである。カメラワークも、色遣いも、空気感も何もかも。レスリーチャン演じるウィンの気まぐれな仔猫のようで、わがままで直情的でくっついたり離れたりして、それでも捨て置けない感じ、>>続きを読む

英国式庭園殺人事件(1982年製作の映画)

3.5

ここまで難解な作品も珍しい。やたらと情報量が多いのだが、ストーリーの核がいつまで経っても見えてこないのだ。しかし病的なまでにこだわった構図、マイケル・ナイマンによる音楽、英国的な「何か」、そして底意地>>続きを読む

サイコ(1960年製作の映画)

4.2

古い作品であるが、難しいテーマを無理なく作り込んでいる構成力はさすがヒッチコック。誰もが抱く違和感は一度は否定されるのだが、最後に伏線回収される。そして実はオープニングタイトルの中に答えが隠されている>>続きを読む

氷の微笑(1992年製作の映画)

3.9

周辺人物の描き方が少し甘く、ミステリーとしては物足りなさもあるが、シャロン・ストーンという女優の魅力を堪能する作品である。優れた邦題も素晴らしい。真犯人が誰なのかは言うまでもないですね。

流れる(1956年製作の映画)

3.8

没落していく芸者屋敷。お金に困窮していても見栄だけは張らねばならぬ。他人である女中の目から見た芸者世界が淡々と描かれる。豪華女優陣も圧巻だが、本音と建前、見栄、虚勢、意地悪、そういったセリフの一つ一つ>>続きを読む

サンダカン八番娼館 望郷(1974年製作の映画)

4.3

友人の熱烈な推奨があり、いつか見たいと思っていたが、やっと観る機会を得た。田中絹代というのは不思議な役者である。時代の波と貧困に翻弄された女性の晩年を実に自然に演じている。老いと孤独そして諦観、それら>>続きを読む

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

4.2

発想の勝利。何本もメジャー作品を撮っているような監督ではまず出てこないようなプロットである。映画制作の現場感が熱く伝わってくる。クセの強い出演者たちもいい感じ。

インセプション(2010年製作の映画)

3.6

構造が複雑で一度見ただけではなかなか全容を理解しにくい作品である。現実と夢を行ったり来たりという作品は多いが、夢の世界にも階層があるというのは新鮮だった。

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)

4.2

宇宙って怖い。
一難去ってまた一難、とは言うが、絶体絶命のピンチがひたすらに連続して、緊張の糸が瞬時たりとも緩むことがない。緻密なCGで描かれた無重力空間はリアルであり、観る側も地に足がつかない感じを
>>続きを読む

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

4.0

アンソニー・ホプキンスの絶大なる存在感。プロファイリングという言葉が一般に知れ渡るようになる以前の作品だが、レクター博士という異常者の凄みには戦慄を覚える。推理サスペンスの良作。

赤ちゃん泥棒(1987年製作の映画)

3.8

いかにもコーエン兄弟らしいドタバタコメディ。観た順序は前後しているが、後々「ビッグ・リボウスキ」や「ノーカントリー」に通じる世界観。ニコラス・ケイジはこういうダメ人間演じさせると本当に上手。

サタデー・ナイト・フィーバー(1977年製作の映画)

3.7

浮かれた若者が踊ってるだけではなく、家族、友人、恋愛、労働、宗教、かなりいろんなテーマが詰まった作品で、意外と考えさせられる。70年代のディスコサウンドが耳に心地よい。

アレクサンダー大王(1980年製作の映画)

3.4

だいぶ前に観たので忘れてしまった。ギリシャの近代史を知らないのでこの作品の真意はわからない。

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)

3.8

スティーブン・キングの原作は映画にするにはもってこいなのだろう。あいにく原作はひとつも読んだことがなきのだが。
少年の頃の冒険譚、その過程で起きる様々な極限状況はずっと忘れられない記憶となる。リバー・
>>続きを読む

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)

4.0

緻密に組み立てられた脚本が素晴らしい。ジョエルとクレメンタイン、演じる役者はとても豪華。欲を言えば、二人の愛の深さ重さをもっと感じさせるエピソードがあれば、さらによかったのだけれど。

マイ・プライベート・アイダホ(1991年製作の映画)

3.7

今は亡きリバー・フェニックスと若き日のキアヌ・リーヴスの贅沢な共演。リバーがもし今も生きていたなら、いったいどれほどの俳優になっていたか、そう思わずにいられないほどの存在感と溢れる魅力。
ストーリーや
>>続きを読む

ディクテーター 身元不明でニューヨーク(2012年製作の映画)

3.7

サシャ・バロン・コーエン主演作でも、これは最初からフィクションであって、その分余計な気を揉まずに観ることができるからいい。こういうブラックコメディはある程度、世界情勢を知らないと楽しめないのだが、知っ>>続きを読む

ブルーノ(2009年製作の映画)

3.4

ボラットとやってることは大差なし。しかし、こちらの方がより作り物感があるので、変にヤキモキしないで観てはいられる。
世界中、みんな善人ぶったり差別はいけないなんて言ってるわりに、実際は違うというのは共
>>続きを読む

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(2006年製作の映画)

-

評価に困るので採点は保留とする。
初めて観たときはサシャ・バロン・コーエンの毒に当てられて熱狂した口なのだが、時間をあけてから見直すと何とも悪趣味でやり過ぎで見ていられないのだ。過激な表現も毒のある表
>>続きを読む

死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)

4.0

とても緻密に組み立てられた無駄の無いプロット。ルイ・マル監督が20代でこの作品を撮ったとは驚きである。とても上質なサスペンス。マイルス・デイビスのトランペットが雰囲気を盛り上げる。