可憐な頃のカトリーヌ・ドヌーヴが輝かしい。ストーリーは定番な感じだが、この作品のすごいところはすべてのセリフがミュージカルになっているということ。最初こそ違和感が強かったが、慣れてくると不思議なもので>>続きを読む
いわゆる「ゆるふわ」「ほっこり」系。ストーリーの妙より、個性的な俳優陣で見せるオフビート作品である。こういう穏やかで幸せな、それでいて少し風変わりな世界もいいのでは。
世の中的に評判いいようですが、あまり刺さらず。ドイツ映画にありがちな、物事がすんなり思い通りに運んでいく様が得意でないのです。タイトルや音楽はとても魅力的。主人公は愛らしくもありつつも、セミヌードはい>>続きを読む
とんでもない作品であるとか、出演者にパゾリーニが殺されたとか、とかく観る前からスキャンダラスな話題に事欠かなかったが、実際は騒ぐほど過激だとは思わなかった。もちろん、上流階級の悪趣味やインモラルが炸裂>>続きを読む
無神論者のパゾリーニが聖書の記述に忠実にイエスの生涯を描く。そこで描かれるのはあくまでもひとりの人間イエスである。神格化も批判もなく淡々と描かれるだけ。処女懐胎したマリアを恨めしそうな目で見つめるヨセ>>続きを読む
青年がなぜこの家庭で同居することになったのか、その経緯はまったく描かれない。不条理な存在に掻き乱された家族の様だけが印象に残る。不思議な魅力をたたえた作品である。
リオのファヴェーラの抗争をテーマにしたドラマ。平和ボケの日本人には刺激が強すぎる非日常的なバイオレンスの世界がここでは日常である。人の命はとても軽い。そんな世界の抗争や人間模様をテンポよく描いた傑作。
ルワンダで1994年に起こった大虐殺。ひとたび狂気のスイッチが入ってしまった集団心理の恐ろしさ、頼りにならない国際社会へのもどかしい気持ちなど、実話に基づいた悲惨な歴史の緊迫感を上手に描いている。
実>>続きを読む
サンドラの能天気さ、これじゃ解雇されても仕方ないだろうと思ってしまうのは、私の底意地が悪いのだろうか。
自分の利益と他人の幸福がトレードオフの関係になったとき、自分ならどういう判断をするだろう。本音と>>続きを読む
ダルデンヌ兄弟の作品に初めて聖母的存在が現れたのかもしれない。これまでの作品の救いのなさ、絶望感とは打って変わって、慈愛がこの作品にはある。もちろん幸福な設定であるはずがないのだが、観る側はいくらか緊>>続きを読む
邦題のつけ方、とても苦労したのだと思う。いい邦題とは思えないが、ではどうするかと言われると、これよりも適切なものも思いつかない。観る側は、途中から「ある子供」とは何なのかを知ることになる。
ブリュノは>>続きを読む
よくもまあ、こういう救いのない設定ばかり思いつくものである。生きるためには何でもしなければならないのか。そこに人間の尊厳はない。しかし、ダルデンヌ兄弟の作品に出てくる女性たちは強い意志を持っている。幸>>続きを読む
例によって救いのない設定である。生き残るには非道な選択も致し方ないのか。
つくづく我が身の置かれた環境に感謝するのである。こんな境遇でなくでよかった、と。
息の詰まる設定である。表向きは平和に時が過ぎているように見える淡々としたシーンにも、張り詰めた空気が流れている。
もし自分が出演者の立場ならどうするだろう、そんなことを自問自答させられる。結末、観る人>>続きを読む
ダルデンヌ兄弟の作品を評するなら、「フィルムの終わらせ方が抜群にうまい」のだと思う。この作品もそこで終わるか、と本当に感心するのだ。それが作品全体の余韻をもたらし、完成度を高めている。
彼らは欧州の下>>続きを読む
お耽美映画の代名詞である。
デカダンス、斜陽、そして美への崇拝。崇拝というよりは服従、自己犠牲とでも言うべきか。
老作曲家は美少年を目で追いかけるだけである。指一本触れることはない。美しきものに心まで>>続きを読む
同じ親から生まれ、同じように育ってきたはずなのに、些細なことで人間の運命は変わるのだろう。出来も性格もバラエティに富む兄弟、その均衡を一人の女が崩してしまう。
原題は「ロッコとその兄弟たち」であり、邦>>続きを読む
ヴィスコンティってこういうコミカルな映画も作るんだという驚き。アンナ・マニャーニ演じるステージママが何しろパワフルで喧しくて圧倒される。いろいろあるけれど、最後はやっぱり母なんだよなあ。
このドタバタ>>続きを読む
血は水よりも濃い、ということか。親より子が感じる戸惑いの方が大きそうだけど、実際は逆なのかもしれない。
是枝監督の最高傑作だと思うのです。家族といえども他人、言えないことも多いし、意思の疎通は難しい。一緒に暮らしていれば衝突もするし、別々に暮らしていれば溝も開いていく。なかなかいい具合にはいかないのだ。>>続きを読む
産んだら親になるというわけではない。生物学的には親なのだろうが、社会通念的には親と呼べない親。柳楽優弥をはじめとした子役たちも素晴らしいが、YOUがとてもリアルにそんな「母親」を演じていた。
カメラの>>続きを読む
青春の揺れ動く感情と持て余したエネルギーの発露がとても瑞々しく描かれている。オゾン監督は脚本の精度が甘めだったのに、この作品ではとても良くなっていた。約束だけが二人で過ごした日々の証だったのか。
衝突から相互に認めあう間柄になっていく対照的な二人の女性。ストーリーも映像もどこか現実と夢想を行ったり来たりしているような幻想的な感じで心地よい。
ナルシシズム全開でストーリーの詰めも甘く、あまり世界へ入っていけなかった。ゲイであるオゾン監督が、先人のゲイであるヴィスコンティの「ベニスに死す」へ寄せたオマージュか。
なんと豪華な女優陣!風格のドヌーヴ様、癖のある女を演じさせたら右に出る者はないイザベル・ユペール、それだけでゾクゾクする。
推理コメディとしての作りも秀逸。女って…と思わず言いたくなってしまう設定やセ>>続きを読む
「ザ・スクエア」と同様に社会の上辺にいる人間の欺瞞や傲慢さを実に巧みに描いている。ただし、この作品のほうがよりエンタメ性が高く楽しめた。
平常時の価値体系は非常時には意味をなさない。トランプゲームの「>>続きを読む
世間にうまくなじめない、ズレた人間の思い込みが狂気を胸の内に増幅させる。そしてその狂気が行動となったとき、思わぬ展開が訪れる。まったくとんでもないストーリーだと思う。ヒーローの物語となってしまう社会病>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
体制や権力の横暴に反抗し立ち上がる者はありとあらゆる手段で潰される。そして悪は滅びずに残る。しかし、反逆者を支援する者や同調する者は少なからず存在し、その行動は永遠に刻まれるのだ。社会の縮図のような作>>続きを読む
昭和天皇を描いた作品ということで、点数をつけるのは控えることとする。
天皇が現人神であるというのは西洋人の幻想ではないだろうか。日本人にとっては「神のような存在」ではあるが、(西洋的な、キリスト教の)>>続きを読む
胎内で一体だった母と子が分離するのが出産であるならば、母の死を前にして心理的に再統合を果たしたのだろうか。不思議な余韻のある作品。
父と息子の関係性が何とも近親相姦的に見えるのは自分だけであろうか。息子の親離れか、父の子離れか。風景が美しい。
何とも不条理な、高熱にうなされて見る夢のようなシーンが続く。黄色い画面や歪んだレンズを通したかのようなカットが幻想的で、現実と幻想の境目が溶けていく。ストーリーを追うのではなく、幻想的なフィルムの世界>>続きを読む
泣きと笑いは表裏一体。ロベルト・ベニーニの底抜けな明るさが、この作品の哀しさを増強させる。
天才モーツァルトの魅力を余すところなく表現した傑作。モーツァルトの人となりは、おそらく本作で描かれたのとほぼ同じような感じだったのではないだろうか。名曲の数々も聞き応えがある。不朽の名作「魔笛」も元は>>続きを読む
非効率で人間味のないお役所仕事、弱者のためを謳いながら弱者を排除する福祉。これは世界共通なのか。損得ではなく、実直に誇りを持って生きる。ダニエルの反抗はまさにロックな生き様なのだ。シーンごとの英国らし>>続きを読む