ナカムラさんの映画レビュー・感想・評価

ナカムラ

ナカムラ

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

4.2

葉ちゃんは社会的に弱い立場だ。
なのにタクシードライバーを辞めようとしない。
タクシーに塗られたオリンピックロゴは彼女を抑圧するイデオロギーの象徴だ。
タクシーとして、広告車=動くイデオロギー装置の運
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

3.4

書くことをめぐる短編集のような趣き。

息苦しいほどに計算された画の美しさと、テーマとがそれほど親和してるとは思えなかったけど、観てて飽きなかったことは確か。

明け方の若者たち(2021年製作の映画)

3.0

北村くんのケツは事務所NG出たんだろうな。

僕と親友の関係はいい話風に語られてるけど、冷静に考えたらそんないい話でもないよなって思った。
それと、2人の関係は必ず3人目の女性がいることで成立してるの
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サウダーヂ(2011年製作の映画)

3.8

久しぶりの新宿『K's cinema』は、相変わらず小綺麗でちょこんとした映画館で、場所柄も相まって、コンクリートの裂け目から顔を覗かせるコスモスみたいだなと毎度思う。
「しかし、新宿は人が多くて緊張
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メランコリック(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

インディーズ、低予算ながら、オフビートなノリで進む物語には吸引力がある。

まず、銭湯を掃除場に使うという発想。これだけで勝ってる。
血液の処理と遺体の始末をどこが相応しいかという問題に対して、最適な
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蜜蜂と遠雷(2019年製作の映画)

2.5

鼻についたのはピアノの旋律か、これみよがしな演出か。

これ、ほんとうにおもしろいか?

石川監督の特色であるドライさが、例えば「愚行録」では世のどうしようもなさを脱臭するはたらきであったのに対し、本
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まともじゃないのは君も一緒(2020年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞前どころかエンドロールが流れるまで「普通じゃないのは君も一緒」だと思い込んでいたのは、私の最近とみに心もとなくなってきた記憶力だけの問題ではなくて、あんまりに作中で普通という単語が繰り返されていた>>続きを読む

ソニック・ザ・ムービー(2020年製作の映画)

3.5

ソニックに初めて触れたのはゲーム屋の試遊機だった。なんで敵を踏むと自分がダメージを受けるのかとか、リングをばら撒くのかとか、世界観は一切分からなかったけど、そいつのものすごいスピードにはクラクラさせら>>続きを読む

search/サーチ(2018年製作の映画)

3.0

既存のSNSの中で全てが展開してくってとこは面白い!
物語がその手法を用いてでしか表現できないようなものであったならもっとよかった。

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.0

小田急線沿いの大学に通っていて、先は見えないけど、一瞬一瞬が鮮やかだった時代を思い出した。

麦くんを評して、元々それほど創作活動に熱心じゃなかったんじゃないかという感想を見かけた。
具体的には、大手
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シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

電車とはなんだろう?
移動手段としてしか看做さない私が不勉強ながら思うところによれば、それは二つの要素で構成されている。

その静止しているところをレンズに捉えていつまでも止まった時の中を楽しむ、噛み
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哀愁しんでれら(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

観終わってから映画館から出て、様々な色の車が並ぶ駐車場を抜けて、横断歩道を渡った。
信号は黄色に瞬いていて、今にも赤に変わりそうだったので急いで歩道を走り抜けた。
振り返ってみるとずっと前から赤だった
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ドラゴンクエスト ユア・ストーリー(2019年製作の映画)

1.0

素晴らしきかな、日本のエンタメ。

山崎貴監督の作品に通底する、元ネタをグッド・オールド・デイズに依存しながら、それをただの美しいものとしたまま再生産してゆく姿勢には、価値観として、埋めがたい溝を感じ
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ねこぢる草(2000年製作の映画)

3.5

夢とは、夢を見た本人には解読できないようになっている、そんな言語で書かれた無意識からのメッセージだと聞いたことがある。確かにそうだ。

ニュアンスは分かるけれど、意味は分からない。そういった趣向の、ひ
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私をくいとめて(2020年製作の映画)

3.0

原作小説には綿谷りささんを再度迎えて、新ジャンル「女性のおひとり様もの」第二弾。
果たして結果として上手くいっているのかどうか、そこに注目していた。

もう座組み的に比較されるのを承知で制作していると
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天気の子(2019年製作の映画)

4.0

我々はこの物語をとっくに知っている。

アンダーグラウンドで、1990年代から脱がされたり、犯されたり、殺されたりしながら、消えたり、天に還ったり、前世を思い出したり、そういう陽菜さんを我々は1000
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もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)

2.0

他人の内臓の中にいるみたいな気分になる作品でした。

TENET テネット(2020年製作の映画)

3.0

ギミックというものについて、私はそれでしか表現し得ない理由というものがあらねばいけないと思っている。
絢爛豪華だけれど、とても空虚な作品だ。

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.1

スケートボードとストリートとその片隅にうずくまる子どもたちのお話。

私がジョナ・ヒルを初めてみたのは、青春のきらめきと馬鹿馬鹿しさ、その裏に秘められた胸を締めつけられるような、思わずはっと息を飲まさ
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mellow(2020年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

「ありがとう、でもごめんなさい」の連鎖。

今泉監督作品デビュー。
自分の色をはっきり持ってる人なんだなぁって映像を通して何度となく分からせられる。

この話って、誰かに何かを渡してゆく話なんだよね。
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ジョーカー(2019年製作の映画)

3.0

映像と音楽が、ひとりの人間の越境を物語る。

この作品は分かりやすい。
すべてがこうだからああなるという理性の範疇内にあって、喉越しの良い冷酒のように、見終えた後にはスッキリしたあとくちと、やや甘い酩
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きみと、波にのれたら(2019年製作の映画)

-

置かれた石が何故そこに置かれたかには、必ず理由があるものだ。

主題歌の反復が持つ意味を考えようともせず、類型的な物語だと早合点している人間を見ていると、自然と口を噤みたくなってくるのだから不思議だ。
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スパイダーマン:スパイダーバース(2018年製作の映画)

4.0

何故だろう。
この作品を見た後、ぼんやりとした頭で街路を歩みながら、私は完璧さというものについて考える。

スパイダーマンという大きな物語を、初見の方にも目まぐるしいスペクタクルで満足させ、追いかけ続
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バジュランギおじさんと、小さな迷子(2015年製作の映画)

4.3

印パ間の差異については皆さんが既に語っているので、ここでくどくどしく説明しない。

歴史はアラベスク模様の織物であるけれど、せめて新しい時代の子どもはその呪いとは無縁でいるべきだ。
大人は子どもを抱き
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カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

3.5

間違いなく面白かった。

しかしそれは、上質のすれ違いコントが、映画のフォーマットに耐えうると証明しただけに過ぎなかったのではなかったか。

MIND GAME マインド・ゲーム(2004年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

湯浅作品に通底する、生きることへの全肯定。
物語は祈りであり、こうあってほしいという希望であり、願いでもある。
過去起こった悲しいことは無かったことにはできないけれど、現在から過去に向かってこうあっ
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ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

私たちは、私たちの立ち位置や物差しを離れて現実を認識することはできない。
私は私、あなたはあなたの異なる想像力の範囲内で物事と出会い、観察し、評価を与える。
こういうと一見我々は想像力の檻の中に囚われ
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ゲキ×シネ「乱鶯」(2016年製作の映画)

4.5

たまたまシネマシティでやっていたということで鑑賞。

結論から言えば、素晴らしかった。
現場から一線を引いた元悪党と、現悪党とが斬ったり斬られたりすると言えば単純なストーリーであるのだけれど、私が注目
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美しい星(2017年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

本作品には二つの焦点がある。
ひとつは、崩壊した家族の再生の物語。
もうひとつは、自分の人生に対する選択とポジショニングの物語。

家庭が崩壊したとセンセーショナルな宣言がされたのももう過去の話。
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BLAME!(ブラム)(2017年製作の映画)

4.0

原作は霧亥達が超構造体に隔てられた様々な階層を巡る話だったのに対し、今作は様々な階層のひとつに過ぎない場所に亥達が訪れる話だ。
全体的にマカロニウェスタン風のストーリーテリングで、そのマカロニの中には
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メッセージ(2016年製作の映画)

3.8

所謂未知との遭遇もの、と見せかけてそうではない。
ばかうけの中に入っているタコのおばけがばかうけの中に入る理由もタコである理由も特に無い。
虹は何色により構成されるか?
この問いに答えはない。回答者の
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夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)

4.8

湯浅政明は優しい人だ。
マインド・ゲームから一貫して、彼は彼の生み出したキャラクターに、中心人物だけでなく端役にも、きちんとした救いのある結末を用意している。
本作は少年と異類のひと夏の出会いと別れと
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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(2017年製作の映画)

4.7

銀河を股にかけた家族と絆の話。
ここで言う絆とは、歩いているとタダで押しつけられるティッシュみたいなものではなく、しょーもないいざこざや行き違い、相手への尊重など、地道なコミュニケーションを通して積み
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帝一の國(2017年製作の映画)

4.3

様々な見方が可能な懐が深い快作だと思う。
ふんどし一丁のむんむんとホモソーシャルに汗立ち込める野郎どものケツを食い入るように凝視するもよし。
のび太がジャイアンを克服する「さようならドラえもん」的な男
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