小川勝広さんの映画レビュー・感想・評価

小川勝広

小川勝広

ガール・ウィズ・ニードル(2024年製作の映画)

3.7

高度なリアリズムの技巧で、
「100年前の当時の光景」を見事に再現している、
そこには一切の欺瞞がない。

だが、その徹底した客観性ゆえに、
観る者の感情の奥底に触れるような、
「匂い立つ」情動や、
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サブスタンス(2024年製作の映画)

4.2

観る者に不快感や混乱を与えるかもしれない。

だが、
その不快感や混乱の中にこそ、
現代の閉塞感を打ち破るヒントが隠されている。

これは、単なる映画ではなく、
時代を映し出す鏡であり、

我々がどこ
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ロストブレット3(2025年製作の映画)

3.3

危険を顧みない熱意と努力が随所に感じられる作品だ。

カメラワークはダイナミックで、
実際に車が激しく衝突し、
巻き上がる土煙や破片が、
スクリーンに飛び込んでくるかのような臨場感は、
近年のCGに頼
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バッド・インフルエンス(2025年製作の映画)

3.5

古典的なロマンスと衝突の物語に正面から挑んだ作品だ。

お嬢様とアウトロー、
美女と野獣、
といった対極の人物が織りなす関係性は、

昭和のマンガやドラマ、
映画はもとより、

江戸時代の日本の歌舞伎
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マインクラフト/ザ・ムービー(2025年製作の映画)

3.7

【パイロットが戦闘機に乗る→操縦桿を握る】

これと同じ意味で、

【ジャック・ブラックがモモアに乗る→髪の毛を掴む】

この奇妙な関係を、違和感なく成立させてしまう手腕、
これこそが、
さすがはジ
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アセスメント ~愛を試す7日間~(2024年製作の映画)

3.4

気にしないで、
私はいないとおもって、
とバージニア。

この違和感を、
どう展開させるのか、

近未来SFの寓話的作品になるのか、
または、
現実の厳しさか、
または、
ゴッドタン的バラエティなのか
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リー・ミラー 彼⼥の瞳が映す世界(2023年製作の映画)

4.4

リー・ミラーが残した戦争の実相の記録が、
ケイト・ウィンスレットと、
監督エレン・クルス(『エターナル・サンシャイン』等ミシェル・ゴンドリー作品のD.O.P.時代はなぜかクラスではなくクルス、馴染み深
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スンブ: 二人の棋士(2025年製作の映画)

3.9

韓国の囲碁界を舞台に、
二人の棋士の運命的な対決を描いた作品である。

私自身は囲碁のルールを全く知らない、
並べ方も、基本的な打ち方すら理解していない。
しかし、全く知らなくても、
本作は楽しめる作
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サンダーボルツ*(2024年製作の映画)

3.8

世界中がハア?

本作単体でカタルシスが得られるかどうかは、
観客それぞれの受け取り方次第だが、

MCUの新たな方向性を考える上で、
そして今後の展開への期待感を醸成する上で、
極めて重要な一作とな
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エクステリトリアル(2025年製作の映画)

3.7

見所は端的に言うとジャンヌ・グルソーのパフォーマンスだろう。

彼女は訓練されたエージェントとしての鋭利なアクションスキルと、
役柄の複雑な内面を巧みに表現する堅実な芝居とを完全に両立させている。
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JOIKA 美と狂気のバレリーナ(2023年製作の映画)

3.8

映画製作における永遠の命題がある。

〈本物が芝居を習うか、役者が技術を習うか〉

特に身体表現を主題とする本作のような作品を企画・開発する際には、
この問いが常に付き纏う。

そして、ストーリーテリ
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最強のファン(2025年製作の映画)

3.3

一般的な劇映画の構造から逸脱した異色の作品である。

登場人物たちの造形と、
映画製作の現場における「人間」への並々ならぬこだわりは、
よく考えられている。

ラナ、ポリーといった主要人物はもちろん、
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アナザー・シンプル・フェイバー(2025年製作の映画)

3.5

OP、キャラクター、ストーリー
全体的に火サスよりも軽いノリ。

もりだくさんの仕掛け、
そのわりには、
葛藤や業のようなものに、
ノータッチで、
スリーP・プレイヤー・ブレイク・ライブリー、
ブラザ
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宝石泥棒 ハイスト・ビギンズ(2025年製作の映画)

3.7

インド映画、特に現代のエンターテイメント大作は、
ハリウッドや日本の映画文法とは一線を画す独自の、
シネマティックランゲージ(映画的文法、言語、視覚表現)を有している。

それは、単なる異国情緒に留ま
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ハボック(2025年製作の映画)

4.0

シナリオはアクションプロットを侵食しない程度に、
登場人物それぞれのアキレス腱のような存在、立場、状況を、
シーン建て不要のレベルで薄く張る。

映像面では、
ライティングや画質のテクスチャーが独特の
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中山教頭の人生テスト(2025年製作の映画)

4.0

「中山教頭の人生テスト」は、
まさにタイトルが示す通り、
一人の教頭が直面する様々な試練を通して、
現代社会における教育現場の厳しさ、
そして一人の人間としての生き方を深く問いかける作品だ。

本作が
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今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は(2025年製作の映画)

3.8

山根弁でいくねー

みんな遠まわりするよねー

しょうがないよねー

ドカドカまわりうるさいもんねー

コノきとか、

サチせとか、

遠まわりするからこそ、
効いてくるねー

さっちゃんの長回し、
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アッシュ 〜孤独の惑星〜(2025年製作の映画)

3.7

フライング・ロータスによるSF映画『アッシュ 孤独の惑星』は、
一般的なエンターテイメント作品というよりは、
観る者の内面に静かに問いかけるような、
カラフルで瞑想的でアート性の高い作品だ。

主人公
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異端者の家(2024年製作の映画)

4.0

A24が得意とする「雰囲気先行型」の枠を超え、
鋭い批評性とエンターテイメント性を融合させた作品といえるだろう。

本作は、複雑で難解なテーマ、
信仰、存在の根源、現実と虚構の境界を扱いながら、

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花まんま(2025年製作の映画)

4.2

うぉうぉうーうーカーカーウォうかー

カラス語を翻訳すると、
場内は爆笑、鼻をすする音が、
たくさん聞こえた。

ひとつ間違えば、
絵空事になりかねない、
非常にデリケートで難易度の高い設定を、
誠実
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ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男(2024年製作の映画)

4.0

歴史の暗部をいわば【禁じ手】を使用して、
二度と繰り返してはならない過去を警告する作品だ。

冒頭とラストのテロップで明示されるこの製作意図は、
シナリオ、映像、演出のあらゆる要素に緻密に織り込まれ、
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iHostage(2025年製作の映画)

4.0

爆発物を体に巻き付けた犯人、
人質、店員、警官、交渉人、
狙撃手、特殊部隊、
セリフでアヤックスやブルース・リー、
等で登場人物の心理を巧みに描き出す。

アップルストア、備品置き場、
緊急通報室、横
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アマチュア(2025年製作の映画)

3.6

CIAの食堂!

スパイ映画の常套手段を大胆に回避した意欲作だ。

派手なカーチェイスや銃撃戦を最低限に抑え、
火力に頼らないストーリーテリングに挑む姿勢は、
現代のエンターテインメント映画が求める「
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シンシン/SING SING(2023年製作の映画)

4.0

ゴドーを待ちながら


刑務所内の演劇プログラム「RTA(Rehabilitation Through the Arts)」に参加する囚人たちの実話を基にしたフィクションであり、
元囚人たちが自ら演じ
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アンストッパブル(2024年製作の映画)

3.8

実話ベースのプロット、

レスリングシーンのフィジカルの描写、
特にアンソニーの足の表現は、
単なる身体的特徴のCG処理を超え、
彼の内面的な闘志と成長を象徴している。

その闘志と成長を支える、
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ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今(2025年製作の映画)

3.8

一作目から四半世紀という長い時を経て、
このシリーズのファンにとって、
ブリジットだけでなく、
ダニエルやジュード、
そしてマークといったおなじみのキャラクターが再登場することは大きな喜びだろう。
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熱血!スノー・ボーイズ(2025年製作の映画)

3.9

本作は少年院を舞台に新入り主人公ジャブの成長を描く青春ドラマだ。

少年院、ボスの存在、ケンカに強く技術に優れた主人公、
院長とその娘、対照的な良い先生と悪い先生等々、
どこかで見たような設定が並ぶ。
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G20 〜大統領を救出せよ〜(2025年製作の映画)

3.7

【ホームランダー登場】
近年、日本では劇場公開されず配信のみとなる作品の中にも、
AMAZON MGM作品やサーチライト・ピクチャーズの作品のように、
見応えのある秀作が増えている。

本作も、そうし
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タイラー・ペリーのデュプリシティ 嘘と裏切り(2025年製作の映画)

3.6

Amazon MGM作品である本作は、
一見つかみどころのない導入から始まるが、
次第にその真価を発揮する力作だ。

オープニングは軽快なトーンで幕を開けるものの、
物語の方向性が曖昧で、
観客は「こ
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BETTER MAN/ベター・マン(2024年製作の映画)

3.9

本作は、
【ミュージックビデオとして観るか、映画として観るか】
をどう捉えるかで評価が大きく分かれる作品だ。

【MVとして】
ロビーという成功したロックスターの内面的葛藤を軸に据え、
その感情の起伏
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アンジェントルメン(2024年製作の映画)

3.8

メインプロットのミッションを、
ストーリーの軸に据えつつ、
ガイ・リッチーらしい映像の妙技とテンポ感だけで観客を惹きつける作品だ。

しかし、このような「映像のおもしろさ」に全振りした映画が、
果たし
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ベイビーガール(2024年製作の映画)

3.9

PG-12ということは、

カラオケ行こ、
くらいのスタンスで観てください、
いや、
観れるようになる日が来ますように、
というメッセージかもしれない。

まさかのMX4Dの座席、
シュー、ピカ、ガタ
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マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド(2023年製作の映画)

4.0

『奇跡の人』で、
ヘレン・ケラーの手に井戸の水をジャージャー当てながら、
「water!」と指文字で叫ぶサリバン先生。

ミラクル・ワーカー、サリバン先生が実践していた教育方法こそが、
モンテッソーリ
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ミッキー17(2024年製作の映画)

3.9


【破綻ギリギリの構成を選択する理由】

ポン・ジュノなら、
彼の過去作の実績から、
本作においても、
異なるアプローチでエンターテインすることができただろう。

例えば、
劇中で出てきた、
王蟲
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エミリア・ペレス(2024年製作の映画)

3.7

オーディアール作品の多くには、
基本的な定型がある。

登場人物は過酷、
あるいはユニークな状況に放り込まれ、
肉体的な傷、精神的な傷を描くことが多い、

そしてそのフィジカリティとメンタリティの交錯
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ホランド(2025年製作の映画)

3.7

ちょっとズレてる周波数・・・

観客を常にズレた世界へ引き込む独特な作品だ。

ズレていると言っても、
それは単なる不協和音や混乱ではなく、
計算された美学と心理的な緊張感から生まれたものだ。

この
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