優しいアロエさんの映画レビュー・感想・評価

優しいアロエ

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映画(659)
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黒猫・白猫(1998年製作の映画)

4.2

 ブンチャカ、ブンチャカ。東欧のエキゾチックな魅力と底抜けの喧騒に感覚が麻痺してくる。クストリッツァ映画は精密な採点が難しい。

 「大セルビア主義(ユーゴ諸国の独立性を重視せず、統合を推進する考え方
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独裁者(1940年製作の映画)

4.0

〈言語媒体の不統一が生み出した? 映画史に残る6分間〉

 最後の6分、チャップリンは見えない舞台衣装を脱ぎ捨てた。機械化を嘆き、愛の尊さを謳ったあの演説は、しがない床屋の言葉ではなく、チャップリン本
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モダン・タイムス(1936年製作の映画)

4.3

〈批判性の密度の変化が気づかせるもの〉

 「チャップリンよりはキートン派かな」とか早く云ってみたいので、意を決してチャップ林に足を踏み入れる。
——————

 資本主義社会は、利便性や経済発展の代
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アンダー・ザ・スキン 種の捕食(2013年製作の映画)

4.4

〈☆2.9は傑作の証〉

 『ツリー・オブ・ライフ』然り、Filmarksの☆2.9作品にはアーティスティックで切れ味の鋭い作品が隠れている。

 本作『アンダー・ザ・スキン』は、地球外生命体の純粋な
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奇跡(1954年製作の映画)

4.4

〈宗教観の鶴瓶打ちと、その先に確かに待つらしい超自然的瞬間〉

 本作品は実に多様な宗教観が展開される。キリスト教に敬虔な者。不信な者。その両方を肯定する者。宗教観はあるが禁忌の恋に屈する者。キリスト
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彼らはフェリーに間に合った(1948年製作の映画)

4.2

 教習所はつまらないビデオの代わりに、この短編を流すといい。『怒りの日』BDの映像特典。

怒りの日(1943年製作の映画)

4.3

〈キリスト教社会の孕む欺瞞と、人間の奥底に眠る悍ましさ〉

 舞台は17世紀半ば。あるデンマークの村では魔女狩りが盛んであった。呪いを行使した・異端者であるといった理由で女性を審問しては、火刑に処して
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動くな、死ね、甦れ!(1989年製作の映画)

4.1

〈54歳、衝撃のカメラドール受賞作〉

 ストリートチルドレン出身で、無実の罪から30代を丸々牢獄で過ごしたというヴィターリー・カネフスキーが、本作を以て万丈の気を吐いた。54歳にてカメラドール受賞と
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8月の終わり、9月の初め(1998年製作の映画)

3.7

〈会話と日常的所作の同期〉

 仕事や住居、男女関係に齷齪する大人たちの日常を『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のような小刻みなフェードアウトと素っ気ない会話によって構築していくオリヴィエ・アサイヤ
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吸血鬼(1931年製作の映画)

3.8

〈妖女の心臓に鉄棒を刺せ!〉

 吸血鬼映画は、ポランスキー→ジャームッシュと全く正しくない入り方をし、未だ『吸血鬼ノスフェラトゥ』すら観ていないので掴めていないジャンルの一つなのだが、本作品はなかな
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裁かるるジャンヌ(1928年製作の映画)

4.8

〈画面一杯に溢るるジャンヌの激情〉

 熱い。ブレッソンの『ジャンヌ・ダルク裁判』同様、ジャンヌの異端審問から殉教までを描いた作品だが、与える印象はもはや対極にある。無機質な筆致を以てジャンヌの感情を
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イルマ・ヴェップ(1996年製作の映画)

4.3

〈企画先行型がたどり着いた惨憺たる容貌〉

 ルイ・フイヤード『レ・ヴァンピール 吸血ギャング団』のリメイク作品の製作過程を描いたオリヴィエ・アサイヤス作品。女盗賊Irma Vep(Vampireのア
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冷たい水(1994年製作の映画)

4.0

〈凍れる世界が終焉を物語る一抹の逃走〉

 1972年、フランス。五月革命の狂熱がとうに冷めきったパリ郊外で、やり場のない閉塞感が若者を幻想へと駆り立てた。

 本作は、フランスのTV局アルテの企画に
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アシク・ケリブ(1988年製作の映画)

3.8

〈パラジャーノフと巡るカフカス行脚 その4〉

7/24(金)『火の馬』
7/25(土)『ざくろの色』
7/26(日)『スラム砦の伝説』
7/30(水)『アシク・ケリブ』✔︎

 パラジャーノフの遺作
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ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)

3.9

〈不可逆の人生を演じつづける者たち〉

 映画に魂を売った男が自らに捧げる鎮魂歌。一方では死を見据え、一方では過去にしがみつく。順風満帆とは決して云えない映画人生を歩んできた男の静かなる叫びである。
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TOKYO!(2008年製作の映画)

4.0

〈イスとゴジラとヒキコモリ〉

 海外監督の目を通した歪なTOKYO像の三連打。

①『インテリア・デザイン』

 「町山智浩のアメリカの今を知るTV」でおなじみ藤谷文子が出演するのは、このミシェル・
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ストップ・メイキング・センス(1984年製作の映画)

4.3

〈『LETO-レト-』に連れられて その1〉

 ジョナサン・デミは『羊たちの沈黙』以外にもう一本サイコキラー映画を撮っている。トーキング・ヘッズの白熱のライブを収めた『ストップ・メイキング・センス』
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ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)

4.2

〈パリのなか、孤立した世界で愛が蠢く〉

 片脚を引きずった男、片眼を失った女、そして廃れたポンヌフ橋。満身創痍で、自己満足的な匂いが鼻を突くカラックス渾身の恋愛劇。

 男女ふたりの居場所を大都市パ
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ボーイ・ミーツ・ガール(1983年製作の映画)

3.6

 若者の鬱屈と愛の衝動をねっとりとしたカットで綴ったカラックスの長編処女作。じめっとした都会を漂流する『パーマネント・バケーション』のような味わい。豪奢なパーティのなか、チェック柄のドニ・ラヴァンが異>>続きを読む

汚れた血(1986年製作の映画)

4.5

〈死に際の世界を穿つ愛の衝動〉

 レオス・カラックスの構築したディストピアがフレームの内側に映り込むことはない。ハレー彗星の接近する地球。沸騰したパリ。バタバタと命を落としていく愛を知らない人たち。
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スラム砦の伝説(1984年製作の映画)

3.4

〈パラジャーノフと巡るカフカス行脚 その3〉

7/24(金)『火の馬』
7/25(土)『ざくろの色』
7/26(日)『スラム砦の伝説』✔︎
7/30(水)『アシク・ケリブ』

 コーカサス(露:カフ
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ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972年製作の映画)

3.6

〈満たされぬ欲望。長く平坦な道のり〉

 ブルジョワジーを無限の停滞に陥れる『皆殺しの天使』の変奏曲。突如湧き起こる欲望は止められない。だが、それが叶うこともない。

 ブニュエル作品中、最も愉しみに
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昼顔(1967年製作の映画)

3.9

〈妻を解き放つ二重世界〉

 カトリーヌ・ドヌーヴ演じる不感症の妻が午後帯勤務の娼婦「昼顔」となる。『糧なき土地』『忘れられた人々』のような貧困層を見つめた作品には決して登場しない“贅沢な”道楽に耽け
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ざくろの色(1971年製作の映画)

-

〈パラジャーノフと巡るカフカス行脚 その2〉
☆3.5〜4.0

7/24(金)『火の馬』
7/25(土)『ざくろの色』︎✔︎
7/26(日)『スラム砦の伝説』
7/30(水)『アシク・ケリブ』

 
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エル(1952年製作の映画)

3.7

〈無上の偏愛に蝕まれた男〉

 バート・ランカスター似の中年紳士が愛の倒錯と偏執に溺れていく悲喜劇。『めまい』の影響元との指摘もチラホラ。鐘楼に登るところが相似点。宗教人の堕落ともとれる物語だが、IV
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火の馬(1964年製作の映画)

-

〈パラジャーノフと巡るカフカス行脚 その1〉

7/24(金)『火の馬』✔︎
7/25(土)『ざくろの色』
7/26(日)『スラム砦の伝説』
7/30(水)『アシク・ケリブ』

 4連休をセルゲイ・パ
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LETO -レト-(2018年製作の映画)

4.8

〈Perfect Days of All the Young Dudes〉

Спасибо, Семёнович!
(スパシーバ、セレブレンニコフ!)

 完璧な日々を生き、呆気なく散っていった若者
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WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

3.9

〈絶えず移ろうティーンの感情とサウンドの波〉
 
 先々週からSpotifyでサントラを回しつづけ、聴いたことある曲が劇中流れたときの無条件の興奮を確信犯的に引き起こしにいった今年一番の贔屓作品。
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透明人間(2019年製作の映画)

3.2

〈一番コワイのは音だった...。視覚的恐怖の消散と同期化の失敗〉

 ゴシックホラーとパラノイアの狭間を漂う21世紀の『透明人間』がいま、批評家や映画ブロガーから高い評価を受けている。ユニバーサル・ピ
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忘れられた人々(1950年製作の映画)

3.9

〈リアリズムに吹き込まれる一条の幻想〉

 近代化に置き去りにされてしまったメキシコ貧困層のありさまを、子どもを中心とした群像劇を以て告示したメキシカン・ネオレアリズモ的作品。

 だが、『死ぬまでに
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Bacurau(原題)(2019年製作の映画)

4.3

〈近代化の裏で逞しく光る自治市民の尊厳と野性〉

 ブラジル最果ての村でPUBGする映画が7/14に北米で円盤化したと聴きつけ、飛び込んだ。2019年のカンヌ審査員賞をラジ・リ『レ・ミゼラブル』と分け
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シティ・オブ・ゴッド(2002年製作の映画)

4.2

〈神も見放す「神の街」〉

 貧困と犯罪にまみれた混沌の世界を、荒唐無稽なカットの応酬と後日談的語り口で紡いでいくファベーラ版『グッドフェローズ』。

 若者を中心とした抗争の断片を、穏やかな青年ブス
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アクエリアス(2016年製作の映画)

3.5

〈頑固な老女の自家撞着〉

 『Bacurau』に備え、クレベール・メンドンサ・フィリオのNetflix作品を鑑賞してみた。
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 ときは現代。ブラジルの湾岸都市レシフェは、二次的な都市開
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欲望(1966年製作の映画)

4.3

〈あるとき“写り込んでしまった”60年代ロンドンの病理〉

 これは60年代イギリス・ロンドン版『ブルー・ベルベット』または『ロング・グッドバイ』なのではないか?
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 現代社会の病理をう
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(1961年製作の映画)

4.7

〈「夜」にしがみつく哀れな人々の残影〉

 ある倦怠期の作家夫婦は、互いの気持ちどころか自らの本心すら不確かでいた。不穏な気配を引き摺ったまま、ふたりは幻想的なナイトクラブ、そして豪奢なパーティーへと
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情事(1960年製作の映画)

4.5

〈終幕の恐怖が付き纏う、危うくも魅力的な関係〉

 失踪した妻を追う形で男と女が情事へと堕ちていくミケランジェロ・アントニオーニの代表作。
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 同年公開の『甘い生活』さながら、本作もまた
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