pherimさんの映画レビュー・感想・評価

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ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ(2023年製作の映画)

3.6

福島県復興公営住宅・下神白(しもかじろ)団地で暮らす人々に、音楽を通じて寄り添う試み。

2011年原発事故時に避難してきた高齢者らと、支援グループとを繋ぐ時間の煌めきに、効率や生産性は無縁だし不要で
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クラユカバ(2023年製作の映画)

3.8

大正モダンな炭鉱町の地下領域“クラガリ”へ、集団失踪の謎を探りに貧乏探偵が潜りゆく。

スチームパンクの風趣溢れる塚原重義監督作。地図作成を志す男女や貸本業を営む情報屋、謎の武装機関や酔狂な機械博士翁
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

ソフィア・コッポラ新作が、14歳でエルヴィス・プレスリーと恋に落ち結婚へ至ったプリシラを描くと知り、たまげる。

少女が愛した一人の男、からズレだすことで“エルヴィス”となりゆく男の横顔。🕺柔らかな光
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ハーダー・ゼイ・カム(1973年製作の映画)

2.8

若きジミー・クリフ主演作。スター歌手を夢みる貧村出身ニキの日々。

ボブ・マーリー初期想わせる画が多く、A24ムーンライトばりの艶肌カットも登場し不思議と魅せるB級作。ジャマイカ初の商業映画で色々拙い
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リマスター ボブ・マーリー(2018年製作の映画)

3.2

1976年12月3日のボブ・マーリー銃撃事件を追うドキュメンタリーTV番組2018年作。

陰謀説紹介含めミステリー調の構成による工夫で飽きさせない。“ボンゴマン~”↓で時の政治家エドワード・シアガを
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ボンゴマン ジミー・クリフ デジタル・リマスター(1981年製作の映画)

3.7

ジャマイカのもう1人のスーパースター、ジミー・クリフの軌跡。

3歳上のボブ・マーリーにエール贈るライヴシーン、ラスタファリ運動と関わる逃亡奴隷マルーン集落場面など見処多し。“Reggae Sunsp
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貴公子(2023年製作の映画)

3.8

フィリピンの地下格闘で母の治療費を稼ぐ青年が、実は韓国財閥一家の隠し種で、爽やかに笑いながら襲い来るイケメン殺し屋“貴公子”に追い詰められる。

無闇に圧倒的で狂った殺し屋が鮮烈すぎてバカ楽しい。血筋
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夜明けへの道(2023年製作の映画)

3.6

ミャンマーで家族と映画を愛する中年男が、市民革命に立ち上がるまで。
監督15本、出演400本を超えるコ・パウの、笑いに満ちた過去作群を連ねる冒頭から、軍政下の苦境を撮る中盤へ。子のため戦う決断をなし森
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ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~(2018年製作の映画)

3.7

誕生から突然死へ至るホイットニー・ヒューストンの生涯を、関係者におもねらず暗部まで扱う秀作ドキュメンタリー。麻薬漬けの晩年や親類との不仲など、『ボディガード』による頂点以降の描写が痛切ながら力あり、儚>>続きを読む

ボブ・マーリー ルーツ・オブ・レジェンド(2012年製作の映画)

3.8

ボブ・マーリーの短き生涯を、近親者へのインタビューを軸に卒なくまとめる。

端正な展開の内にラスタファリ運動🇪🇹のうねりを熱く感じさせる構成に感心するも、モーリタニアンやホイットニーの監督作と知り納得
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成功したオタク(2021年製作の映画)

3.6

推していたK-POPスターが、性加害で逮捕された。

アイドル本人から認知されトップオタとなっていた監督が、推し活女性らの“その後”に取材する変わり種ドキュメンタリー。目が醒めたと語り、あるいはなお寄
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毒娘(2024年製作の映画)

3.5

怪異化した少女をめぐる一戸建てホラー物。✂️

魂の傷と手芸がハサミで結びつく設えや、理想の家族像を追う父親が抱える欲望のグロテスク表現など見入る一方、観念先行の演出が生む冗長さは惜しい。

耐えてい
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ナチ刑法175条/刑法175条(1999年製作の映画)

3.9

“Paragraph 175”

同性愛が違法とされ強制収容所へ送られた生存者を撮るドキュメンタリー。

東西ドイツで戦後も残った同法になお傷つき涙する姿に、犠牲の途方もなさが想像される。公然の秘密で
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ブルックリンでオペラを(2023年製作の映画)

3.6

小人症のイケ親父ピーター・ディンクレイジ演じるスランプ中のオペラ作曲家が、タグボートの女船長と勢いでいたしたのがバレ、さあ大変。

NYの都会生活を体現する精神科医&妻役アン・ハサウェイと、下町気風な
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リトル・エッラ(2022年製作の映画)

3.6

大好きなおじさんトミーの恋人が休暇に来ちゃって、エッラの嫉妬心が燃えあがる。

愛する人の幸せと自らの望みとがぶつかる苦渋。傑作ロスバンドのクリスティアン・ロー監督作で、LGBTQ表象がごく自然に映り
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インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

3.7

観光客が特権もつリゾート島で、画期的な人体クローン技術により死刑を弄ぶ遊びが始まる。

ポゼッサーに続き炸裂するブランドン・クローネンバーグの倒錯世界。マローボーン家の掟から毎作存在感増すミア・ゴスの
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スターリンへの贈り物(2008年製作の映画)

4.3

カザフ人鉄道員の男が、ユダヤ人移送客車から排出された死体の中に生きた少年を見つけ匿う。

ソ連圧政下の1949年、ポーランド人/朝鮮人/政治犯の妻/ムスリムら強制移送された人々が助け合う共同体の光景が
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SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)

4.0

老兵がワンコを連れ、襲い来る戦車隊と対峙する。

掘り当てた金塊を懐に忍ばせた老人が、実は伝説のツワモノでしたという構図自体が、ソ連とナチスに焦土化された小国の願望を具現化する。その場にある物で次々殺
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ヴェルクマイスター・ハーモニー(2000年製作の映画)

4.4

動乱の予兆漂う町の広場で、息を潜める鯨の巨軀。

寡黙に歩む群衆の弩迫力。立ち尽くす男らの相貌を舐め続けるカメラの異様。低空から男を睥睨するヘリコプターの不気味、耳を圧する羽音の轟き。タル・ベーラが世
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.8

極上。

寡黙なふたりが惹かれ合い、長い時間をかけ距離を縮める。それだけで更けゆくヘルシンキの夜が愛おしい。

なんだろう、哀れなるものたちもボーも凄かったけど、この冬ベストはやはりあなたでしたよアキ
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シチズンフォー スノーデンの暴露(2014年製作の映画)

3.8

香港で密かに行われたインタビューを軸とするドキュメンタリー。登場人物はもっぱら喋るだけなのに、どんなアクション映画よりも躍動的で緊迫感のみなぎる一作。覚悟の静けさ。アサンジも出るよ。



『美と殺戮
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美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

3.7

『美と殺戮のすべて』

現代美術界のスターであり続けるナン・ゴールディンが、オピオイド問題を機に欧米美術館の制度そのものへ叛旗を翻す。

70’s以降のドラッグ/ポストパンク/LGBT文化を駆け抜けた
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ブリックレイヤー(2023年製作の映画)

3.1

レンガ職人が実は腕利きCIAエージェントで、っていう殺人犯追跡物。

ギリシャ開幕の観光アクションを、ダイ・ハード2&クリフハンガーの老匠レニー・ハーリンが撮る座組で2023年は逆に新鮮、かと思いきや
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ペナルティループ(2024年製作の映画)

3.6

同じ男を殺しつづけるループ日乗。

殺人者と被害者が、くり返すうち互いに親しみ感じだすアツき展開&ノワール演出で魅せる。

主演/若葉竜也重畳。久々に見た仇役/伊勢谷友介、佇まいに枯れた感が加わり趣深
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流転の地球 -太陽系脱出計画-(2023年製作の映画)

3.7

“流浪地球2” 🌕

アンディ・ラウの“ジト見”顔が活きる一作。

流浪地球の前日譚で、今度は月がヤバいことになる。デジタル生命へ逃げ込む派とか、三体とも異なる劉慈欣宇宙の展開重畳。2001年宇宙の旅
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戦雲 いくさふむ(2024年製作の映画)

3.7

与那国島/石垣島/宮古島で進む対中国の自衛隊駐屯地整備と、沖縄本島で始まるミサイル網の統括本部運用をめぐる光景を撮る三上智恵新作。

個人的な記憶にも結びつく光景の逐一が軍事色に染まる衝撃と、変化に曝
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アバウト・ライフ 幸せの選択肢(2023年製作の映画)

3.8

結婚を前に煮詰まった男女の両親同士がW不倫状態とわかった対決夜いとおかし。

息子や娘の手前メンツを守りながらも、互いの不実を嘆き合う熟年夫婦4人の演技が絶妙すぎて笑い止まらず。

中でもダイアン・キ
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ビニールハウス(2022年製作の映画)

3.5

老人夫婦の介護で日銭を稼ぎ女が、息子との暮らしを夢みてどん底の現実を耐え忍ぶ日々。

認知症の老妻に暴行されつつ愛する全盲の老夫が、自らの認知症の兆しに怯える流れが、主人公の絶望にぴたり重なる演出は慄
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COUNT ME IN 魂のリズム(2021年製作の映画)

4.2

ロック&ジャズの伝説的ドラマーの系譜を、クイーン/ポリス/RHCP等々立志伝中のドラマー達が熱く語る。

話はアート・ブレイキーら白黒映像まで遡り、キース・ムーンの奏法をスティーヴン・パーキンスが分析
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ブルーイマジン(2024年製作の映画)

3.4

かつて映画監督から性被害を受けた女性が、被害者救済のためのシェアハウスで暮らし、支援活動に携わる中で、未だ同じ監督が同じ加害を続けていると知る。

記憶に濃い幾つもの実例をベースに編まれたストレートな
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ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

3.7

殺人を目撃した少年&少女が犯人を脅迫する。💰

青春タッチをからめ進行するクライムサスペンス。DV義父を刺した娘(星乃あんな)と逃避行するサイコパス少年(羽村仁成)vsシリアスキラー青年(岡田将生)の
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津島 ー福島は語る・第二章ー(2023年製作の映画)

3.6

阿武隈山中、津島村。3月11日の風向きが災いし、未だ殆どが帰還困難地域であるこの村に、かつて流れた時間の厚み。
何代にも渡って醸成された関係性と文化の網目模様がバラバラに破壊されゆく様、土地を離れ今を
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リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング(2023年製作の映画)

3.8

ロックンロール始祖の一代記。🕺

ミック・ジャガー、トム・ジョーンズらの情熱的な語りが聞かせる。🎙️

黒人+ゲイゆえに長く不遇の時代が続き、エルビス、ビートルズらが絶大な影響を認め、デヴィッド・ボウ
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すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

3.8

盛期を過ぎた多摩ニュータウンを包みこむおっとり時空。🚲

清原惟監督新作。『ひとつのバガテル』に連なる団地映画かつ『MADE IN YAMATO』から続く郊外物で、主役が家から町へ広がりゆく。音と間合
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FEAST -狂宴-(2022年製作の映画)

3.2

不慮の交通事故で、父が息子の身代わりに収監された富裕家族と、夫を失った貧しい妻子たち。

十八番の暴力&政治を封印したブリランテ・メンドーサの衰えぬ冒険心を、一方の主役となるフィリピン・パンパンガ州の
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アジア三面鏡2016 リフレクションズ(2016年製作の映画)

3.0

フィリピンのブリランテ・メンドーサ、カンボジアのソト・クォーリーカー、日本の行定勲によるオムニバス。この3人の組合わせより2017以降の継続に意義を感じた。プラナカン住宅舞台の行定作は、津川雅彦と永瀬>>続きを読む

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