pherimさんの映画レビュー・感想・評価

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Dwelling In The Fuchun Mountains(英題)(2019年製作の映画)

3.8

元朝の山水《富春山居図》を下敷きに、映し撮られる都市という自然の細部へ人生が溶け込んでいく。カメラは絵巻物を舐めるように水平移動し続け、杭州富陽に暮らす四兄弟各々の家庭に中国の今が象徴される。出演者が>>続きを読む

熱帯雨(2019年製作の映画)

3.9

シンガポールで働く女性教師が、不妊治療に非協力的な夫の不倫を目撃し、男子生徒から猛烈アタックされスイッチオン。中国語教育の現状やマレー系/華僑系の力関係、ドリアン買い食い場面などさり気ない日常&背景描>>続きを読む

昨夜、あなたが微笑んでいた(2019年製作の映画)

4.0

プノンペンの歴史的集合住宅の最期を見届ける。そこで育った監督による血肉化した目線が捉える団地風景は、どのカットにも愛情や追憶の奥行きが感じられる。風や光の通り具合がよく映し撮られており、記憶遺産的価値>>続きを読む

水の影(2019年製作の映画)

3.6

マラヤーラム映画問題作。古びたジープの雨がちロードムービーから急転、一切予測不能の密林展開が神話的。能書きだけの愛で縛ろうとする男より、暴力/レイプで従わせる男を本能で選んでしまう女のサガ、という動物>>続きを読む

波高(2019年製作の映画)

3.5

島の男たちに春ひさぐ少女の失踪。再開発の金の匂いが人を狂わす孤島の限界集落へ降り立つ女警官とその娘。廃れた無神父教会から象徴としての浸水(バプテスマ)への流れ、日本では要解説かも。ブラックな水産工場で>>続きを読む

家族を想うとき(2019年製作の映画)

4.2

闘士ケン・ローチ監督の粋極める一作。皆ベストを尽くしてるのに、心から思いやっているのに日々擦り切れ、ひび割れる家族の絆。リーマンショックから立ち直れず沈み込んでゆく一家に対する慈愛に充ちた、しかし安易>>続きを読む

エッシャー 視覚の魔術師/エッシャー 無限の旅(2018年製作の映画)

3.4

幾何学不思議図絵により、“絵で考える”をガチで実践しつづけた生涯。「私は数学者だ」と芸術家としての評価を受け入れなかった真意が精彩かつ丹念に示される。アニメとなってエッシャー迷宮を自在に走り回り、車輪>>続きを読む

タンスと二人の男(1958年製作の映画)

4.0

《ポランスキー短編集》
即興ユニット・シャザの生伴奏上映で『殺人』『微笑み』『パーティーを破壊せよ』『タンスと二人の男』『ランプ』の5篇。本物の不良集団使う『パーティー~』(’57)は『時計じかけのオ
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パーティを破壊せよ(1957年製作の映画)

3.3

《ポランスキー短編集》
即興ユニット・シャザの生伴奏上映で『殺人』『微笑み』『パーティーを破壊せよ』『タンスと二人の男』『ランプ』の5篇。本物の不良集団使う『パーティー~』(’57)は『時計じかけのオ
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乾いた人生(1963年製作の映画)

4.1

ブラジル東北部の荒野で難民化した一家が、干魃と搾取の狭間でどんどん“乾いていく”映画で物語に救いはない。しかしその一本調子ゆえにこそ、逐一強い各場面が全編で活き続ける、形式と内容のビタ一致したまさに傑>>続きを読む

シャドウプレイ(2018年製作の映画)

3.6

広州の摩天楼直下に残る半ば廃墟化した“村”という、中国現代を象徴する舞台がひたすら眼福。実際の汚職事件を元に『ブラインド・マッサージ』の婁燁(ロウ・イエ)が、香港台湾を包含し30年の時間軸もつ刑事劇を>>続きを読む

THE DEAD CLASS/死の教室(1976年製作の映画)

4.0

劇作家タデウシュ・カントールの代表作を、アンジェイ・ワイダがアウシュヴィッツの気配ただよう最重量級のゾンビ映画へ昇華。ほぼ一幕進行のノリで、唯一素顔の指揮者役をカントール自身が演じながら、完成作に激怒>>続きを読む

イーダ(2013年製作の映画)

4.4

自分がユダヤ人だと知らされた修道女が、見知らぬ故郷を訪れる。画作りで語りきる美学にキェシロフスキを感じ、ポーランド映画における一方の粋なのかとも。終幕で為される決断の切ないさり気なさに、小津映画へ通じ>>続きを読む

リオ40度(1956年製作の映画)

3.2

ピーナッツ売りの黒人少年たちを軸として、灼熱のリオに渦巻く権勢と情欲の嵐を群像劇で映しだす。少年がトカゲを追い動物園に迷い込む場面と、サンバから鳥瞰視点へ移行するラストが神。1955年完成時“共産的”>>続きを読む

人形(1968年製作の映画)

3.1

19世紀ポーランドの退廃貴族社会描く歴史大作のノリに目蓋の重さを感じる頃、ふと気づけば彼ら貴族が一部マネキンへ入れ換わってる奇怪作。練り込まれた役者の動線設計で魅せるヴォイチェフ・イエジー・ハスお得意>>続きを読む

つつんで、ひらいて(2019年製作の映画)

3.6

広瀬奈々子監督新作は、装丁家・菊地信義の日常を撮る。衰退気味な日本の書籍カバー文化がもつ奇特さの内で、75歳の菊池が見せる最長不倒距離への到達感ある仕草の記録はガチ貴重だし、言い知れない何かがそこかし>>続きを読む

オルジャスの白い馬(2019年製作の映画)

2.4

カザフスタンの大草原を駆ける馬たちと、草原の民の伝統的な暮らしを撮る映像は逐一眼福。ただ馬術に長けるわけでもない森山未來の馬上近接とスタントを使うロングショットのギャップが激しすぎ、日本人俳優を現地人>>続きを読む

読まれなかった小説(2018年製作の映画)

3.7

ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督至高の前作『雪の轍』から演劇的抒情を薄め、文学的叙事性を高めた観。プライドに見合わない実力由来の姑息さ宿す青年と、すべてに対し卑屈な父との衝突が、敢えて低速で交わされる様式>>続きを読む

アンジェイ・ワイダの建築へかける情熱(2017年製作の映画)

2.3

ポーランドの古都クラクフにたつ、磯崎新設計の日本美術技術博物館MANGA(’94開館)建設を巡る物語。共産的気風残る下アンジェイ・ワイダが自作収益を充当、日本の労組も協賛する時代感。波濤状屋根の窓を立>>続きを読む

ゾンビランド:ダブルタップ(2019年製作の映画)

3.8

何が楽しいって前作から10年たって、同キャストを実現させたこと。20歳だったエマ・ストーンは風格漂わせ、でもウディ・ハレルソンの炸裂親父ぶり安定で超展開乱れ撃ち、しかも前作で死んだあの人が。作品内も1>>続きを読む

バリエラ(1966年製作の映画)

2.6

イエジー・スコリモフスキ長編第3作(1966)。スターリン後の雪解け空気のなかにも多々横たわる社会/世代/男女間の“障壁(=バリエラ)”をテーマとする、都会風刺が楽しい即興作。他監督による頓挫企画の残>>続きを読む

i-新聞記者ドキュメント-(2019年製作の映画)

4.2

森達也、やっぱ画作りが面白すぎる。「官邸記者会見でバトってるツイートが読みにくい人」という望月衣塑子の印象が初めて更新された。ジャーナリスト魂欠くbot脳だらけの日本マスコミにあって稀有な存在、その本>>続きを読む

執事の人生(2018年製作の映画)

3.4

両大戦を生きたカシューブ人の物語。現ポーランド北部ポメラニア地方にあってナチスとソ連の侵攻に晒され、また「ポーランド人」たることを要求された苦難の下、仕事や恋愛、戦争や国家など何重にも引き裂かれながら>>続きを読む

アド・アストラ(2019年製作の映画)

4.1

『アド・アストラ』
宇宙を舞台としながら静謐に個人の内面を見つめるテイストが『ファースト・マン』続編のようで心地よい。強心臓のニール・アームストロング船長がSF近未来転生し『インターステラー』ばりに海
>>続きを読む

草間彌生∞INFINITY(2018年製作の映画)

3.5

草間彌生の一代記。NY時代にウォーホールら抽象表現主義&ポップの大物達が草間から剽窃する場面に盛った感あるのはご愛嬌として、地元松本市でのバッシングなど日本人には撮りがたい距離感と鋭角性。観客心理を巧>>続きを読む

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢(2018年製作の映画)

3.6

アウトサイダー・アートの至宝《理想宮》作者の伝記映画。生真面目すぎる郵便夫また頑固すぎる父として、家族や共同体に優しく包摂され穏やかに暮らす主人公の姿がそのまま、病気と名指し事足れりとする現代社会への>>続きを読む

象は静かに座っている(2018年製作の映画)

4.6

炭鉱町に蠢く魂たちの影。西洋資本主義の軛から遠く、究極の実験場と化した現代中国の灰空見あげる青年の諦念と、闇を見据える少女の覚悟。孤独に歩め、林の中の象のように。伝統様式の亡霊彷徨う狭間でそれは哭く。>>続きを読む

ライフ・イットセルフ 未来に続く物語(2018年製作の映画)

4.3

致命的事故を接点に交錯する複数の家族と世代。時代と文化圏の転換演出が感覚的に毎度爽快で、個人視点での悲劇が世代視点では幸福の起点にさえなるという筋立てに不思議な説得性を与えている。『バベル』『マグノリ>>続きを読む

ある女優の不在(2018年製作の映画)

4.5

イラン当局抑圧下の名匠ジャファル・パナヒ監督新作。自殺動画を残して消えた少女の謎を監督と女優が追うなかで、トルコ語圏アゼルバイジャン州の僻村が次第に不気味さを増し、果てはイラン映画史の悲劇まで顔を覗か>>続きを読む

KIN/キン(2018年製作の映画)

3.0

養子の黒人少年イーライが、廃墟で謎の近未来銃を手にするところから始まる冒険譚。光+音響演出にストレンジャー・シングスみあり、出所直後の兄とひた走る旅の途上、囚われの舞姫が仲間になるなどRPG感あふれる>>続きを読む

テルアビブ・オン・ファイア(2018年製作の映画)

3.8

昼ドラ撮影現場で働く冴えないパレスチナ人青年が、脚本家のフリをする内あとに引けなくなってくる。というネタのベタ化そのものが主人公を成長させる流れの風刺性は見事。アラブ伝統料理フムスが、イスラエル士官と>>続きを読む

リンドグレーン(2018年製作の映画)

3.5

長くつ下のピッピやロッタちゃんなど、元気で強気な子供達の由来も納得の、児童文学作家アストリッド・リンドグレーン波瀾万丈の一代記。厳しい戦間期にシングルマザーで働き子を育てる姿は応援したくなるし、心が離>>続きを読む

マイ・ビューティフル・デイズ(2016年製作の映画)

3.3

演劇大会参加のため週末旅へ出る高校生3人と女性教師。生徒から猛烈直球アタック受け惑いに惑う29歳教師扮するリリー・レイブ出色。根暗で繊細ながら、演劇という表現形を得て雲上へ突き抜ける少年役ティモシー・>>続きを読む

ワイン・コーリング(2018年製作の映画)

2.9

南仏ルーション地方に集う、有機農法による自然派ワイン造りを志す若者たち。朗らかに笑う気の良い彼らの言葉の端々に、自立的な社会思想がふと顔を覗かせる風土性。自然発酵に委ねる困難が説得的に描かれ興味深く、>>続きを読む

ジョージア、ワインが生まれたところ(2018年製作の映画)

3.9

紀元前6000年に遡る、素焼きの甕を埋め地中で醸造するクヴェヴリ製法を受け継ぐ人々に迫る。芳醇たる伝統風俗描写と、職人気質宿す人々の語りが至福なうえ、ジョージア(グルジア)域内の精彩な多様性を浮き彫り>>続きを読む

アダムズ・アップル(2005年製作の映画)

4.4

ネオナチ青年が反抗心も猛々しく乗り込んだ更生プログラム先の教会で待っていたのは、常軌を逸した住人達だった。なかでもマッツ・ミケルセン扮する牧師の敬虔かつ純朴すぎる狂気が怪物的で笑えるブラックコメディ。>>続きを読む

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