pherimさんの映画レビュー・感想・評価

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SONG OF EARTH/ソング・オブ・アース(2023年製作の映画)

4.1

84歳の父が森を抜け、氷河を渡る。
130年前に曽祖父の植えたトウヒの木が、
フィヨルドを圧して谷を睥睨する。

監督となった娘が撮る映像は、従来の環境映画を遥かに超える高みへ達し、今この瞬間を澄明に
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あなたのおみとり(2023年製作の映画)

3.6

91歳の父を看取る86歳母、を撮る56歳息子監督が見つめる時間。

逝去間際の夫の手をとり歌い続ける姿が沁みる。老老介護の困難や、関わる訪問医/看護師/介護士らの働く姿を半径1m視点で捉える映像は考え
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コンゴ川 闇の向こうに(2005年製作の映画)

4.1

ザイール消滅後の情勢不安定なコンゴ流域を遡る、コンラッド『闇の奥』を地で行く試み。遡るごと変容を遂げる人々の風貌、河面と風景。語られるレオポルド2世や指導者ルムンバの記憶、独裁者モブツが残した王宮廃墟>>続きを読む

ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー(2023年製作の映画)

3.6

殺し屋業も非正規組はキビシイのだ。

髙石あかりx伊澤彩織の主役タッグ、岩永丞威x濱田龍臣の敵役に加え、水石亜飛夢x中井友望の“掃除屋”コンビが良い味。

2作目ゆえ2(ウー)マンセル対決っていう軽快
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ヒューマン・ポジション(2022年製作の映画)

4.0

病からの恢復と模索、不意に降り注ぐ恩寵の有り難さ。

北欧のスロー感覚に、パターソンの穏やかな詩性と、コロンバスの澄明さが乗る静かな快作。家具の“修復”職人である恋人の弾く電子オルガンが響かせる、日常
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東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-(2023年製作の映画)

2.8

裏切りと友情をテーマに、物語の転回役として村上虹郎&永山絢斗が前面へ出るシリーズ2作目前編。

恋人を救う本来のミッションがどんどん遠のく不良グループ敵対図の複雑化たいへん。村上虹郎の眼力に『銃』も想
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ぼくのお日さま(2024年製作の映画)

3.9

吃音のホッケー少年が、見惚れたフィギュアスケート少女とペアを組み練習に励む日々を、淡い光で包み込むように撮る奥山大史監督作。

池松壮亮の物静かなコーチ役がガチ嵌り、その恋人を演じる若葉竜也との同棲描
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6才のボクが、大人になるまで。(2014年製作の映画)

4.2

二十年におよんで役者達が実際に歳をとっていく《ビフォア三部作》のリチャード・リンクレイター監督が、三部作と並行して撮ったある少年の成長物語。CG時代に、このナマの視覚変容体験は衝撃。



『ヒットマ
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ヒッチコック/トリュフォー(2015年製作の映画)

3.7

巨匠二人の対話による名著『映画術』素材音源をベースに、いぶし銀の現役監督十名が語る映画哲学と伝説的挿話の数々。憧憬を以て喋り倒すフィンチャー、黒沢清、アサイアス、リンクレイターらの恍惚顔がいちいち良い>>続きを読む

バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

4.3

天才建築家の名声を捨てた過去もつ
訳あり主婦の鬱屈と、解放への遥かな旅路。

ケイト・ブランシェットの、自らの資質に苦しみながらも芯は揺るがない主人公役がどハマリな、名匠リチャード・リンクレイター爽快
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ヒットマン(2023年製作の映画)

4.0

堅物教授が、囮捜査で演じるニセ殺し屋が滅法イケてて、逮捕対象の顧客♀と恋に落ちるラブコメ良作。

リチャード・リンクレイター監脚さすが、どの場面も軽快なのに濃密な“映画”の圧がある。グレン・パウエル&
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ジガルタンダ・ダブルX(2023年製作の映画)

4.1

映画がお前を選ぶのだ。イーストウッドを崇拝するヤクザ親分と悪徳警視、サダジッド・レイの弟子を騙る偽監督らが交錯するタミル語映画。全編熱い。

ジャッリカットゥ/チュルリに嵌った人必見で、水の影↑のNi
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シュリ(1999年製作の映画)

4.4

奇跡の一作。
と、20年ぶりに観て予想外の大興奮&再認識。

ソン・ガンホもチェ・ミンシクもぴっちぴちやし!キム・ユンジンの艶やかさたるやもう、もうね。

21世紀韓流全盛への鏑矢といえばこれ、南北分
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シュリ デジタル・リマスター(1999年製作の映画)

4.5

奇跡の一作。
と、20年ぶりに観て予想外の大興奮&再認識。

ソン・ガンホもチェ・ミンシクもぴっちぴちやし!キム・ユンジンの艶やかさたるやもう、もうね。

21世紀韓流全盛への鏑矢といえばこれ、南北分
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音楽(2019年製作の映画)

4.2

単調な日々から不意に始まる熱き青春。

全く楽器に無知な3人が次第にのめり込み、感覚だけを頼りにどんどんハマり、とまらない怒涛と化す加速度描写も鮮やかな岩井澤健治監督作。

瞳の描線など一見雑にみせな
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白い小船(2023年製作の映画)

3.5

父の元へ預けられた内気少女が、魅力的な年上女性に惹かれて過ごす瑞々しきひと夏。🚲

中国東北部ハルビンの無骨な街景や、医師の母がアフリカへ赴任し、ファムファタル姐は韓国へ出稼ぎへという朝鮮族コミュニテ
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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

4.8

戦慄する。幽かな柱の軋み、風に揺れるカーテンが生む幻。死者の淵から夫は見つめる。受け入れ難い現実を咀嚼しゆく妻の姿を。一瞬の解放が呑み込む。無限回廊の片隅に立つ人の孤独を。愛の残滓が魂に与える温もり。>>続きを読む

コズモポリス(2012年製作の映画)

4.2

テロと暴動の騒擾下にあるマンハッタンをリムジンが進んで行く。大半がその車中劇という異色作。抽象度の高さはクローネンバーグの十八番で、ゆえによくある主演者の表現力を巡る酷評は当たらない。主人公は主題の外>>続きを読む

ジャッキー・コーガン(2012年製作の映画)

3.0

酔いと荒廃の生態系。 日本では邦題・予告編ともに悪党ヒーロー物で売り出されているのが微妙。原題の"Killing Them Softly"はそのまま肝で、打ち出されている粋の水準が『ジャンゴ』とかとは>>続きを読む

演劇2(2012年製作の映画)

4.0

『演劇1』『演劇2』。平田オリザを撮り続けたドキュメンタリー作品。両作で5時間半と聞けばひるむも、実際観ると濃密で退屈する隙がなかった。平田と俳優達が見せる一途さは切ないほど。監督想田和弘の渇いた距離>>続きを読む

演劇1(2012年製作の映画)

4.0

『演劇1』『演劇2』。平田オリザを撮り続けたドキュメンタリー作品。両作で5時間半と聞けばひるむも、実際観ると濃密で退屈する隙がなかった。平田と俳優達が見せる一途さは切ないほど。監督想田和弘の渇いた距離>>続きを読む

クラウド アトラス(2012年製作の映画)

3.8

トム・ハンクスら同一の俳優陣が、異なる時代と土地で各々異なる関わりを遂げていく。当人も自覚することのない幽かな他者他世界との連続感、これを人種や性別をも超える特殊メイクにより暗示した手法がひたすら良か>>続きを読む

フライト(2012年製作の映画)

3.5

日本と違って、米映画は内面に迫る系だと宗教アイコン必須だね。ペンテコステ派の戯画化ぶりったらなかった。あと親友役のジョン・グッドマンと弁護士役のドン・チードルがもう最高。

ダイ・ハード/ラスト・デイ(2012年製作の映画)

3.3

(2013年ツイ記録)

遠めのIMAX劇場で観た。この手のってDVDは元より普通の劇場ですらもうあまり観る価値感じない。でもIMAXだと大金かけた演出を存分に楽しめる的な。超絶大画面とずしんと来る音
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ゼロ・ダーク・サーティ(2012年製作の映画)

3.9

文句なしの良作。ただ中東諜報物は近年
『ワールドオブライズ』から
『グリーンゾーン』『アルゴ』と粒揃ゆえ埋没感も。ビグローの肝は映像・音響とみる向きには安心の出来映えで、今回は拷問シフト。痛いってああ
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アウトロー(2012年製作の映画)

3.7

良作だが小粒。『コラテラル』に何一つ及ばずな印象。トム・クルーズの
ケビン・コスナー化に目を見張る。制作サイドから主役の出演場面に傾注した挙句、いぶし銀の脇役俳優たちは演技が硬くなり監督も生気を失くし
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意志の勝利(1935年製作の映画)

4.1

(2010年Dommune@Ustream放映時ツイ)

リーフェンシュタール『意志の勝利』放映中。彼女の作品ではオリンピックを撮ったものが有名だが、『意志の勝利』はガチでナチス賛美の文言が続くため、
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グリーン・ゾーン(2010年製作の映画)

4.0

バグダッド中枢の米軍占領地区を舞台とした陰謀劇。主演のマット・デイモンは今回、鋼の体を持った諜報員ではなく久々に生身の軍人を演じている。やはりこの人は内発性に基づくヒーローより状況から付与された葛藤を>>続きを読む

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)

4.0

音響アトラクションとして楽しめた。後半、夜中の市街地へ単独潜入して行くシーンは映画としてもちょっと良かった。しかしこれを観て、素で兵士の苦渋を想ったりイラク戦争擁護に傾く人がいたらバカだと思う。よって>>続きを読む

シークレット・サンシャイン(2007年製作の映画)

4.7

昔のソン・ガンホがみたくなり、『シークレット・サンシャイン』再鑑賞。韓国の地方の町が舞台なんだけど、二十年くらい前の日本の田舎見てるような懐かしさあるよね。映画も前半はウェルメイドな小品って感じで見流>>続きを読む

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)

5.0

ベタな話かもしれないが、白状すればカラックス『ポンヌフの恋人』は、劇場で一本の映画にハマる体験をした初めての作品だった。海外移住前のこの時期に、場所こそ変われど同じユーロスペースで彼の新作を観られて本>>続きを読む

L.A.ギャングストーリー(2012年製作の映画)

3.6

ギャングのような警官達(Gangster Squad)のお話。良くも悪くもウェルメイド、破れはショーン・ペンの怪演くらい。CGによる昔の大都市の再現は楽しいけれど、発展途上ゆえか大抵平板なのが惜しい。

オブリビオン(2013年製作の映画)

4.3

作品公開時におけるSFX映画音響とCGの極北。出ずっぱりのトム・クルーズに、幼い頃観た『トップガン』から『MI4』までの彼が度々オーバーラップした。遠くまで来たもんだ。酷評も多い『プロメテウス』を素朴>>続きを読む

言の葉の庭(2013年製作の映画)

4.0

水面に降り注ぐ雨と陽の光が主役の短編映画。1時間で終わり千円で観られる作品。中だるみや終盤の息切れに陥りがちなアニメの手法としてスマートかと。『秒速5cm』や『ほしのこえ』の暗さも好きだけど、今回はこ>>続きを読む

ホワイトハウス・ダウン(2013年製作の映画)

3.6

戦闘時の音響がとても良かった。重厚な金属炸裂音、ウェポン発射時の空気の摩擦音等々。皇居と国会議事堂や地下鉄は実は地下トンネルで~的な都市伝説好きには、あの白い官邸にこんなびっくり機能がという風にも楽し>>続きを読む

スティーブ・ジョブズ(2013年製作の映画)

3.0

スティーブ・ジョブス伝記映画。マッキントッシュ開発過程、追放劇からiMac誕生への復活譚。逝去時の喧騒に鼻白んだ僕ですら興奮を覚える展開だった。『ソーシャル・ネットワーク』に比べると、静謐さや切なさの>>続きを読む