人事屋パドーさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

人事屋パドー

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幕末太陽傳(1957年製作の映画)

3.5

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幻のエンディングが常に話題にのぼる傑作であるが、このラストの墓地の崩れ具合と海岸のコントラストは、冥土以外の何ものも表現しておらず、やはり素晴らしい。映画とは運動であることをこれほど主人公に具現化させ>>続きを読む

浮草物語(1934年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

名作「浮草」の原点である「浮草物語」。
これもまた名作。
旅廻り稼業は浮草稼業。人生は浮き草であり、人間は浮き草である。
小津が自らリメイクした「浮草」とは細かい部分が微妙に異なりますが、大筋では変わ
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祇園の姉妹(1936年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

然色映画として観ました。
ここで描かれているのは、生きることの辛さではありません。
どうであろうが、人は生きている限り生きざるを得ないという同語反復的な生の在り方それ自体です。
妹の山田五十鈴はどこま
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拳銃は俺のパスポート(1967年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

宍戸錠はもっと評価されていいい。
この心地よい緊張感はちょっとお目にかかれない。
殺しとは頭脳戦である。

パッセンジャー(2016年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

運命は受け入れざるを得ない。
そこからしか人生は始まらないし、ある意味、それが人生である。
ハリウッド的諦念。
案外、これが楽園であるのかもしれない。

銀座化粧(1951年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

田中絹代の無双です。
主役とはこういうものであるが実によく理解できます。
チンドン屋・長屋・銭勘定・水商売・ダメ男。
成瀬的要素がてんこ盛りです。

秋立ちぬ(1960年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

子供時代に特有の無力感が鮮やかに切り取られている。
人生は万事塞翁が馬であることを少年を通じて成瀬は我々に提示してくれる。ここにあるのは、人生の絶望感や希望的観測では決してない。
彼はいつも「リアル」
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風の歌を聴け(1981年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

70年代の青春。
時代の息吹を収めた貴重なフィルム的財産。
神戸・芦屋・西宮なにもかも懐かしい。
六甲のプールや王子動物園まで記録されている。
真行寺君枝のチャーミングさは特筆もの。

放浪記(1962年製作の映画)

3.5

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適役。
貧すれば鈍するにならないのは、女優の品位の高さにもっぱらよっている。
成瀬の画面はこのような伝記には相性がピッタリである。
高峰秀子は何を演じてもチャーミングだ。

TENET テネット(2020年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

起きてしまったことは仕方がない。
この映画の主題はこの一言に尽きる。
極めて仏教主観的なテーマ。
東洋人には非常に馴染み深い作品であるに違いあるまい。

乱れ雲(1967年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

女優司葉子の美しさを堪能するための映画。
メロドラマの徹底が図られ、メロドラマの底が抜け落ちる傑作。
これが遺作とは余りにも惜しい才能の早すぎる終わり。

トニー滝谷(2004年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

朗読劇手前でギリギリ映画として成立している作品。
その匙加減が原作のテイストを確実に生み出している。
宮沢りえはキャスティングの勝利。
とてもチャーミング。

EXIT(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

すべての小中学生に観てもらいたい。
人間の尊厳が実によく表現されています。
第一級のエンターテイメント。
韓国映画の底力をまざまざと見せつけられます。
出口は見つけるものではなく、自分で切り開くものだ
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半世界(2018年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

池脇千鶴が実にいいです。肩の力が抜けた演技が秀逸です。タイトルの「半世界」には様々な意味が込められています。人は誰もが世界の半分しか知りうることができないのだと、2時間を使って丁寧に語られているのです>>続きを読む

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)

4.0

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ビートルズに始まりデビット・ボウイで終わる。
21世紀にナチ映画を撮ることの可能性と限界がキラキラとスクリーン一杯に溢れています。ラストに「ヒーローズ」が流れ、主人公の少年がジョン・トラボルタに重なっ
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あらくれ(1957年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

いつもながら編集は一切の無駄を排除している。2時間に収まること自体がほとんど奇跡である。キャスティングは精緻を極め、過不足はなし。「金色夜叉」の山場をフィルム切れとして見せない演出は意味の重層化を見事>>続きを読む

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

戦争は命を最安値にまで下落させる。日用雑貨同然に消耗品化してしまう。一方、自己顕示欲は拡大の一途を辿る。個人の、組織の、軍隊の、国家の自己顕示は膨張を続ける。機能不全に陥るまで、拡大が止むことはない。>>続きを読む

小早川家の秋(1961年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

粋な小品。音楽はおそらく賛否が分かれます。セットは百点満点。新珠三千代でもう一本撮って欲しかった。無い物ねだりです。森繁や山茶花の演出はギリギリのギリ。

女の座(1962年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

血縁のやるせ無さ、醜さをこれでもかと叩きつけてくるフィルム。実の子供よりも血の繋がらない嫁の方がどれほどいいかという「東京物語」のテーマが、笠智衆を同じポジションで使いながら、奏でられている。本作も、>>続きを読む

乾いた花(1964年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

スタイリッシュ。虚無的という感覚を感覚的に理解したいのならば、避けては通れない作品。池部良という俳優の可能性と魅力が隠しきれず、溢れかえっている。加賀まりこは紛れもなくアイドルであったことが記録されて>>続きを読む

男はつらいよ 純情篇(1971年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

フーテンの寅さん初めて見ました。若尾文子がマドンナ役なので。よくできた物語です。寅次郎の躍動感は特筆ものです。

妻よ薔薇のやうに(1935年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

才能の塊だった。二人妻とのタイトルが別に冠されるが、これはある意味、「二人夫」というべき内容となっている。本宅には、「夫」が二人いると言える。つまり正妻は「妻」ではなく「第二の夫」であるのだ。こうであ>>続きを読む

お茶漬の味(1952年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

冗長。カタルシスへの壮大な前振りと観るか否か。木暮実千代の悪いところしか出ていない。まるで小津が小津を模倣しているような作品。

東京物語(1953年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

人生は生活の集合体である。けれども毎日の生活の中に人生を観ることのできるものは稀有であるのだ。そのことをこの作品は教えてくれる。

麦秋(1951年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

「東京物語」の主テーマである「家族」の一生がここではあからさまに語られている。小津は結婚の素晴らしさも悲しさも決して主張的には描こうとはしない。そのような主観に属する主題に彼は興味などない。ただ、家族>>続きを読む

お早よう(1959年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

肩残らない佳作の典型。弟の勇ちゃんが最高です。笑いの世界標準が実現されています。コミュニケーション論を語る際の好材料として本作は引っ張りだこであるはず。

秋日和(1960年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

設定は晩春そのもの。美術セットは彼岸花そのまま。安定の連続ホームドラマの装い。岡田茉莉子を観るための映画。ウエットよりもドライがいい。

彼岸花(1958年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ぜひデジタルリマスター版で見るべき作品。赤と緑が横溢しています。子供を思う親の気持ちが説得力を持って描かれています。道徳を超えた何かがスクリーンを走り抜けるのです。詩吟の場面は観る人の人生に直接突き刺>>続きを読む

にごりえ(1953年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

三作のオムニバス。杉村春子は安定のうまさ。淡島千景の凛とした色気が画面に滴り落ちています。長岡輝子はこのような役をすると右に出るものがいません。

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

青春の焦燥が転がされています。
どこにも行けない。何者にもなれない。
一度躓けば、もう二度と起き上がれないのだろうか。
彼らを笑うことは誰にもできないのかもしれない。

おかあさん(1952年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

成瀬のベストという人もたくさんいるだろうと想像できる傑作。
これを単なるメロドラマと解釈してしまう愚を決して犯してはならない。
商業作品というものはどういうものであるのかが、一刀両断のうちにわかるはず
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ザ・バウンサー(2018年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

フィルムノワール。好きな人はハマります。絶望の末路しか用意されていない男の達観がひしひしと伝わってきます。

山の音(1954年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

同じような題材を扱いながら小津と成瀬は表現するものが全く異なります。これを同型と見なすことはあまりに自らのフィルム的感性の枯渇を示していることとなるでしょう。彼らを分つのは「イメージ」に対する信頼性の>>続きを読む

娘・妻・母(1960年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

小津のパロディといえば、うがちすぎだろうか。ご丁寧に最後に笠智衆に小津の格好までさせている始末。「渡る世間は鬼ばかり」の原液のような作品。オールスターキャストでありながら、グダグダにならないのは流石と>>続きを読む

永すぎた春(1957年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

若き日の若尾文子を観るためだけの映画。

稲妻(1952年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

銃弾が乱れ飛ばないゴッドファーザー。つまりファミリーアフェイアである。登場人物は誰も彼もピタッと収まり文句のつけようがない。叙情性が溢れかえっているのに、どうしてこんなにも湿度が低いのだろうか。ほとん>>続きを読む