QRPさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ある男(2022年製作の映画)

3.5

脇に至るまでキャスティングに隙がない。ストーリー自体は亡くなった夫の正体を探る一本筋だけど、要所に出てくるほんのちょい役まで演技派を揃えていることで肉付けされて見応えがありとにかくグイグイと話に引き込>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.5

近作では常に自然災害を描いてきた新海誠がおそらくそのきっかけとなった東日本大震災をついに正面からはっきりと描く。
「戸締まり」という行為に災害で犠牲になった人たちへの鎮魂と残された者たちへの新たな門出
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物語る私たち(2012年製作の映画)

3.0

俳優としても監督としても好きなサラ・ポーリーの見逃していたやつがかかっていたので。
直前に見たアルモドバル『パラレル・マザーズ』とまさかのDNA鑑定繋がり。
幼少期に亡くなった母親を回顧するドキュメン
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パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)

4.0

赤ちゃんの取り違え事件を話のベースにしつつ、フランコ政権下での弾圧を強烈な意思をもって糾弾する。両者を直接的に結びつけるのはDNA鑑定というアイテムだけで、映画のストーリーとして構成に不自然さは覚える>>続きを読む

王立宇宙軍 オネアミスの翼 4Kリマスター版(1987年製作の映画)

3.0

一本の映画作品というよりガイナックスの最初の商業作品というベンチャーストーリーの一節として感慨深く見られる。クレジットロールに出てくる名前の豪華さよ。今って個人作家時代だからこういうチームで殴り込みを>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

3.0

『攻殻』や『ブレラン』に通じる、人間と機械との境界線、つまり人間とはというテーマが哲学的な説明を抜いて記憶の断片映像のみで語られる。他人の目を通した記録、記憶、思い出について。これが映画の本質かもしれ>>続きを読む

熱いトタン屋根の猫(1958年製作の映画)

3.0

ポール・ニューマンの映画スター然とした佇まいは今見ても色褪せていない。ポール・ニューマンだけが所謂メソッド演技の現代の映画に通じるリアリスティックなもので、特にエリザベス・テイラーとの対比は古き良きハ>>続きを読む

夜明けまでバス停で(2022年製作の映画)

3.5

実際の事件をモチーフにしつつも中身はゴリゴリの政権批判、現代社会批判。こうもストレートな主張を劇映画でやられるとウッとなってしまうものだけど、実力俳優陣に言わせることで臭みが消されてたのと、こんなにも>>続きを読む

プリンセス・ダイアナ(2022年製作の映画)

3.5

年端もゆかない女の子が30オーバーの皇太子に嫁ぐなんて誰の目にも明らかな政略結婚が普通に世間に受け入れられていたことが現代の価値観ではまず考えられない。
まずもってビジュアルが良すぎて、シンデレラを地
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.0

この手の危うい役を演じさせれば右に出るも者のいない奈緒。比べると永野芽郁はちょっと役柄と合ってないような印象だった。原作のマンガに沿った内容になっているらしいけど、独り言をぶつくさ言ったり急に叫び出し>>続きを読む

スペンサー ダイアナの決意(2021年製作の映画)

4.0

9割閉塞感、ラストでブチ上がるダニー・ボイル的カタルシス。
皇室にも通ずるけど、現代における王室の役割は人身御供そのもの。彼女の場合はそんな覚悟もないままに妃になったんだろうけど、こんなことが普通の人
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コロンバス(2017年製作の映画)

3.5

余白の多い構図の引きの映像は明確にスクリーンで見ることが前提とされていて、ああ映画見てるなあという気持ちにさせてくれる。引きの映像が印象的ではあるが寄りの画面レイアウトも趣向が凝らされていて距離に限ら>>続きを読む

花様年華 4Kレストア版(2000年製作の映画)

3.0

マギー・チャンの見事なプロポーション。『ポリス・ストーリー』の元気でおぼこいイメージが強いだけに、この映画での艶やかで大人なイメージのギャップにやられる。終始お疲れの表情の合間に見せる照れ笑いが可愛い>>続きを読む

とら男(2021年製作の映画)

3.0

劇映画にドキュメンタリーが挟み込まれる好物なやつ。アイデアは面白いけど、未解決事件の犯人を被害者の同僚に絞りこむんて憶測の域を出ないようなキワどいことをよくやるなと思った。解決に至らなかったのは確証が>>続きを読む

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)

3.0

全然関係ないこともないんだけど、ビリー・ジョエルのソ連公演をふと連想した。観衆の熱狂に国境線は無い。驕りとも取れるけど2000万人が殺し合うより良いのは間違いない。茶番なんだけど、終わった後に訪れる謎>>続きを読む

アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター(2022年製作の映画)

3.0

今となっては絶滅危惧種のリアル3D。本家本元だけあって他の追随を許さぬ圧倒的没入感を味わえる。公開から13年を経ても全く古びないのは進化の速度が鈍化したのか時代を超越していたからなのかどっちだろうなん>>続きを読む

セイント・フランシス(2019年製作の映画)

2.5

ソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』みたいなアートワークに惹かれて。
公共の場所で授乳させていたら普通に眉をひそめられるんだな。アメリカではみたいな言い方されがちな気がするが。
子守の家庭の問題
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激怒(2022年製作の映画)

3.0

この規模の映画にわりには撮影がしっかりしていて安っぽさはない。臭いものに蓋をする脱臭化された現代社会への不満の表明だとは思うけど、精神は違えど暴力による支配という点で結局のところ同じことではと思った。>>続きを読む

LOVE LIFE(2022年製作の映画)

3.5

奇しくも直前に見た『彼女のいない部屋』とも通ずる家族と喪失についてのストーリー。ありきたりな題材とも言えるわけだが深田監督の映画は少し変なのが良い。あくまで"少し"変なだけなのがミソ。ベースは普通なは>>続きを読む

彼女のいない部屋(2021年製作の映画)

3.0

わりと早い段階でネタは割れる。ただ現実と回想と虚構が入り乱れる最近で言うと『ファーザー』みたいな構成で撹乱させされて最後にハッキリと描写されるまでずっと頭を使わされるので、考えるよりも感じたい派の自分>>続きを読む

ビースト(2022年製作の映画)

3.0

一度失った娘たちからの信用を取り戻すために命をかけて家族を守り抜く話をベースに凶悪なライオンとの攻防が描かれる。父vsモンスターライオンの煽りはあくまでイメージビジュアルとしてのものかと思ってたが、ま>>続きを読む

7月の物語(2017年製作の映画)

3.5

新作公開に合わせた特集にて。見逃していたのでありがたい。『宝島』も劇場公開してくれないかな。
ブラックは多作家ではないけど、仕上がりはさらっと撮ったような多作家のそれ。画面からは全く力感を感じないけど
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勇者たちの休息(2016年製作の映画)

3.0

新作公開に合わせた特集にて。
自転車愛好家たちの毎年恒例アルプス越えのツーリングに帯同するドキュメンタリー。ロケーションが反則レベルで絵になる。チャリと映画の関係性については平野勝之を連想する。

2
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みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

3.5

久しぶりのギヨーム・ブラック。ヴァンサン・マケーニュじゃないのが少し寂しい。
なんてことはない若者の休暇の一幕なんだけど、全編になんとも言えない浮遊感が漂っていて心地良い気分になれる。シェリフの着てい
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サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)

3.0

評判が良かったので滑り込みで。
田舎ノスタルジー。急坂を登り切った先に開ける景色が素晴らしい。坂の町は住んでると嫌になるけど絵になるし思い出にもなる。
自分の地元はニュータウンだったのでそこまで階層の
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さかなのこ(2022年製作の映画)

4.0

さかなクンの自伝をのんが演じて沖田修一が撮ることの間違いのなさ。
さかなクンの半生のライトサイドに焦点を当てたようなミー坊と対比する不審者さかなクンの存在で、心温まるコメディの中にペーソスが滲み出てい
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灼熱の魂 デジタル・リマスター版(2010年製作の映画)

3.5

ストーリーが前面に出過ぎる映画は退屈になりがちだけど、過去と現在が行き来する構成と行動によって真実が浮かび上がる語り口が上手く、程良いバランスで仕上がっていてヴィルヌーヴの手腕を感じられる。ただ元々原>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

5.0

声に出して読みたい映画人第1位ホイテ・ヴァン・ホイテマ。映画を撮る執念。手回しでIMAXカメラ回すヤツ。『未知との遭遇』かと思いきや途中からどんどんとワケの分からない展開に。『バクラウ』に100倍金か>>続きを読む

モデル連続殺人!(1963年製作の映画)

4.0

ホラー秘宝まつりにて。初マリオ・バーヴァ。ジャーロ映画の代表作として挙げられる本作を見て、このジャンルに対して根本的な勘違いをしていたことに気付かされる。
映画のルックは同時代のハリウッドサスペンスと
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地獄の門 4K レストア版(1980年製作の映画)

3.0

ホラー秘宝まつりにて。去年は『ビヨンド』だけ見て、想像していたよりクオリティが低くてちょっと戸惑ったけど、とりあえず代表作は見ておきたいので。
少し設定が違うくらいで『ビヨンド』とスタイルはほぼ同じだ
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アンデス、ふたりぼっち(2017年製作の映画)

3.0

そえまつ映画館のイベントで松崎さんが推していたので。タイトルの語感でどうしてもハートスランプ二人ぼっちと言いたくなる。
絶景のロケーションでタイトル通りの映画。ふたりだけの宇宙とは言い当て妙だ。夜や室
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きさらぎ駅(2022年製作の映画)

3.5

急に一人称視点で昔のサウンドノベルみたいな質感のエフェクトがかかる謎が後半の展開でそういうことかと合点がいく。オチまで含めて素晴らしいアイデア。前半と後半で同じ展開を違う視点でたどる点で『カメ止め』を>>続きを読む

キングダム2 遥かなる大地へ(2022年製作の映画)

3.0

漫画でもバランスを欠くくらいにチートキャラのキョウカイを実写でそのままやられると少し浮く。それでも散々な実写化作品群の中ではよく出来ている方だと思う。ただ前作にあったようなアレンジがないと次を見たいと>>続きを読む

女神の継承(2021年製作の映画)

3.0

手ブレで気分悪くなった。
野犬の継承かな?オッサンが唸りながら横一列に並ぶ光景は面白かったりしたけど、画面酔いのダメージが強く早く帰りたすぎて楽しみきれず。
ハードなホラーでございみたいなアートワーク
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セルビアン・フィルム(2010年製作の映画)

2.5

今更の気づきだけど、映倫通してなくても普通の映画館でかけるんだな。
インモラルに振り切ること自体が目的と化していて形式ばったように見えた。終盤の記憶をなくしていたときの出来事の見せ方がかなりかったるく
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アルピニスト(2021年製作の映画)

4.0

羽生丈二の生き方を地でいく人。このシンプルなタイトルも彼には不足ない。絵に描いたような天才だけど、登攀の密着とインタビューで語られる言葉から精密な技術と判断能力に裏打ちされたプロフェッショナルであるこ>>続きを読む