宇部道路さんの映画レビュー・感想・評価

宇部道路

宇部道路

怒り(2016年製作の映画)

3.1

 やっぱり、最近の日本映画を観るのがどうも苦手だ。登場人物が全員、必ず不幸だし、必ず“わかりやすく”特異点的な存在として描かれている。もっと普通の人のドラマこそドラマだと僕は思うし、なんだろう。なぜか>>続きを読む

水俣 患者さんとその世界(1971年製作の映画)

4.3

 素晴らしいなぁ。なんという記録であるかという当然の感想をこえ、映像と音声の合わせ方、構成の妙、そして何より患者さんと土本の距離。その全てがこの傑作を生み出しているのだと、圧倒的に勉強になる。3時間近>>続きを読む

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)

3.2

これはジョニー・デップの映画だと思う。水俣病でもなくて、ユージーン・スミスでもなくて、彼がそのキャリアを精算し、今自ら置かれている状況を克服するための「使命感」が克明に記録されている映画。その点に>>続きを読む

カマグロガ(2020年製作の映画)

3.2

 とてもとても美しい映画だった。おそらく4K以上の映画で撮影されたこの作品が映し出す風景は、「農業」という題材や、「田園」という舞台を、豊かな香りとザラザラとした空気感までをも伴って、視聴者をバレンシ>>続きを読む

理大囲城(2020年製作の映画)

4.0

 凄まじいものを観た。この作品は本来、「映像」としての存在価値を確保され、「記録」としての評価、あるいは「告発」としての正当性を受け止めるべきなのだと思う。この種の作品を評価するということは、おそらく>>続きを読む

彼女について私が知っている二、三の事柄(1966年製作の映画)

2.0

 僕の中で、ゴダール作品群に一つの境界線を引くとすれば、きっとこの作品にする。この作品で、ゴダールは「映像」を信じることができなくなって、「言葉」に頼ることもできなくなって、彼の「哲学」だけが先走り始>>続きを読む

最初の54年間 ― 軍事占領の簡易マニュアル(2021年製作の映画)

3.2

 良くも悪くも、教科書的なドキュメンタリーだったような気がする。文字通り「マニュアル」として、パレスチナ占領の歴史が辿られる。とてもよくわかったし、とてもよく勉強になったというのが一番の感想なのだけど>>続きを読む

彼女の名前はエウローぺーだった(2020年製作の映画)

2.4

 なるほど…。こういう作品もあるのね、という感じだった。まず、作品の撮られ方として、フィルムが用いられていることや、コメントではなくて、ガラス板に印字された文字でぶつ切りにされるテロップ構成、そしてあ>>続きを読む

ミゲルの戦争(2021年製作の映画)

3.6

 山形国際ドキュメンタリー映画祭オンライン。オンライン開催してくれるの本当にありがたいし、今後もあらゆる映画祭がオンライン配信も併走してくれたらいいのにと、強く強く強く思う。
 最初に見たこの作品。賛
>>続きを読む

男性・女性(1965年製作の映画)

3.6

 僕はこの映画が、ゴダールの真骨頂だと思っている。シネマ・ヴェリテの手法によって、1960年代のフランスに生きる若者たちの実像を描き出したこの作品は、まさにゴダールが目指す哲学者としての作品に思えるか>>続きを読む

ソウル・キッチン(2009年製作の映画)

3.7

 「女は二度決断する」と打って変わったコメディで、人間賛歌的な装いを纏っているようにも思われる。こうも違う毛色の作品を、こうも巧みに描いてしまう監督の力量は賞賛せざるを得ないとは思う。そのなかに隠しこ>>続きを読む

女は二度決断する(2017年製作の映画)

3.7

 トルコ系ドイツ人監督ファティ・アキンの緻密で整理された秀作だった。短い時間のなかで、光る技巧を巧みに駆使して描き出す「正義」と「悪」の物語は、朝一番に鑑賞した僕を強く考える淵へといざなった。翌日に観>>続きを読む

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦(2002年製作の映画)

3.9

 なんという傑作か。95分という短い尺のなかで、戦国の血なまぐさくも避けることのできない争いと、そんななかでも確かに育まれる人間同士の血の通った交流——それは時に「恋愛」であり、時に「友情」であり、時>>続きを読む

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園(2021年製作の映画)

4.3

 素晴らしい!!!なんという傑作か!!!今の日本映画界で、これを作り出せるとは!?完璧だった。絶対的な傑作だった。まごうことなく「子供映画」でありながら、まごうことなき「青春映画」でもあって、それでい>>続きを読む

軽蔑(1963年製作の映画)

3.0

 やっぱり、僕はヌーベル・ヴァーグが苦手だと思う。それは「言葉」に依りすぎているからで、あるいは映画の外にある「知識」に依りすぎているからかもしれない。ゴダールの使う「セリフ」は全て「言葉」にすぎなく>>続きを読む

(1974年製作の映画)

3.1

 いやぁ、これはわからない。色々と「察してほしい」ことはわかるのだけれども、流石に哲学がすぎるというか、これを芸術というのだという考えもあるのだと思うけれど、僕にはついていけない世界だった。映像も確か>>続きを読む

アンドレイ・ルブリョフ 動乱そして沈黙(第一部) 試練そして復活(第二部)(1969年製作の映画)

4.6

 あぁ、なんという傑作か!映画とはこういう作品を指すに違いない。「目が離せない」とは、この作品に相応しい表現だと思う。三時間を超える上映時間、一瞬たりとも飽きることなく齧りついて観た。でも同時に面白い>>続きを読む

ハタリ!(1962年製作の映画)

3.6

 やっぱりCGが普及したことで、損なわれてしまった映画の強みというか、映像の迫力のようなものがあると確信してしまう。車載カメラで撮られた臨場感溢れるサイの映像は、「野生」という言葉の意味をこの作品に持>>続きを読む

教授と美女(1941年製作の映画)

3.6

面白い。まず設定がシンプルなんだけど、それでいて歪で、だからこそ面白い。昔から言われる、一番遠いものを掛け合わせると面白いという格言が、こういう作品から出自するのだと強く思った。百科事典を編纂する>>続きを読む

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

3.4

 やはりショーン・ベイカーは優しい。とてもいい人なのだと思う。登場人物が皆、ギリギリ「嫌な人」ではない程度に過激に描かれつつも、どう見たって子供はかわいいし、母親たちには同情したくなる。その描き方こそ>>続きを読む

暗黒街の顔役(1932年製作の映画)

3.5

 久しぶりのTSUTAYAレンタル。ハワード・ホークスの手がけた、「マフィア映画」の名作。やはり面白い。何よりもテンポがいい。「三つ数えろ」と同じように、最初は登場人物の多さに頭がクラクラしてくるのだ>>続きを読む

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)

3.1

 カラックスの2012年の作品。いやぁ、さすがにこれは“わからない”。鑑賞中から、おそらくカラックス自身の振り返り作品でもあり、新しい映画への皮肉と、そこに対してあまりにも無力なカラックス自身への戒め>>続きを読む

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)

3.6

 レオス・カラックス、アレックス三部作の最終章。たしかに、この映画にあこがれる人が多いこともよくわかる。橋の上での花火のシーンなんかは、本当に圧倒的に美しく、続く水上スキーのシーンなんかも、はっきり言>>続きを読む

汚れた血(1986年製作の映画)

3.6

 カラックスのアレックス三部作の第二弾。素晴らしい作品だった。「疾走する恋心」…。はぁ、なんて美しい表現なのかと、ドキドキと、心が高鳴る音が身体のなかを疾走した。アレックスが駆けるシーンも、アンナが駆>>続きを読む

ボーイ・ミーツ・ガール(1983年製作の映画)

3.1

 カラックスの、アレックス三部作の最初。やはり初期の作品ということだけあって、全体的な完成度はやや低く、会話で済まされる長いシーンに少し嫌気がさしてしまった。その一方で、映像的にはとてつもなく美しいカ>>続きを読む

チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密(2012年製作の映画)

3.3

 初ショーン・ベイカー。きっとこの人は優しい映画を撮る人なんだろうなと予感させる心地の良い作品だった。何より、主人公が絶対的にいい人だった。自分自身にも、友人にも、そして未亡人にも、徹底的な「優しさ」>>続きを読む

未来よ こんにちは(2016年製作の映画)

3.2

 静かでいい映画だったのだけど、でもやっぱり「普通」すぎるかなあ。あと、どうしたって、イザベル・ユペールに監督が負けてしまっていて、彼女の存在感を超える演出というものが見られなかったような・・・。
 
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EDEN/エデン(2014年製作の映画)

2.4

 今年のカンヌコンペにも選ばれたミア・ハンセン=ラヴ一本目。いやぁ退屈すぎる。これ絶対90分の映画でしょ。二時間超える内容ではないよ・・・。さらに言えば、大切な部分、というか「変化」の部分はジャンプさ>>続きを読む

エル ELLE(2016年製作の映画)

3.4

 ヴァーホーヴェンの復帰作としてカンヌでも評判の良かった本作。確かに、ヴァーホーヴェンらしさがあって、エロスもありつつ、サスペンスもありつつ、バイオレンスもあるという盛り沢山の内容だった。
 そしても
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氷の微笑(1992年製作の映画)

3.4

 なんじゃこの危ないセクシーな作品は。やっぱり環境問題もセクシーに解決しなきゃいけないなと痛感するほどに、セクシーの大切さを思い知る本作だった。セクシー万歳。シャロン・ストーン万歳。ヴァーホーヴェン万>>続きを読む

脱出(1944年製作の映画)

3.5

 ハワード・ホークス四本目。ハンフリー・ボガートとローレン・バコールが初共演したという本作。やはりなんといっても、その魅力は二人の演技に違いない。このときローレン・バコールが19歳!?妖艶すぎやしませ>>続きを読む

赤い河(1948年製作の映画)

3.4

 アメリカの雄大な原野を背景に繰り広げられる西部劇は見応えがあった。牛たちの大移動の迫力は凄まじく、これが1948年に作られたということに圧倒される。この作品が持つ「パワー」は絶対CGには成せないリア>>続きを読む

風が吹くまま(1999年製作の映画)

3.1

 キアロスタミが持つイランの自然美への賛歌がある地点に到達した作品だと思う。この作品は、「わざわざ」電波の通じにくいという設定を敷いてまで、その絶景を何度も何度も往復する。ともすれば、かなり退屈な反復>>続きを読む

桜桃の味(1997年製作の映画)

3.6

 キアロスタミの作品というのは一貫して、「繰り返す問答」と、そこから見えてくる「人生の意味」を表現しているのだと僕は思う。その極地にあるものがこの作品ではないだろうか。
 自殺(しようと思っている、と
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花様年華(2000年製作の映画)

4.2

 この映画、なんと美しいことだろう。衣装、美術、撮影技法、さらには建築。そのどれをとっても美しく、語られる物語、および感情の、静けさと完璧にマッチしていると思った。「不倫」「恋愛」という、気を抜くと力>>続きを読む

欲望の翼(1990年製作の映画)

3.3

ウォン・カーウァイの初期作。この時から、すでにクリストファー・ドイルとのコラボは始まり、空間設計や雨の美学など、その映像的特徴がはじまっている気がする。にしても、この人の作品では皆傘ささなすぎじゃない>>続きを読む

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