63さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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聖なるもの(2017年製作の映画)

3.2

『聖なるもの』本作にとって〝演技力〟は俳優だけでなく撮影テクにも求められ、大学の映研の日常を再現する上でリアルさも素人っぽさも実験的手法で巧みに演出される。その点では冴えない容姿を逆手にとる岩切一空監>>続きを読む

音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!(2018年製作の映画)

3.2

『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ‼』神声のカリスマと弱声のシンガーが〝やらない理由を見付けるな〟のメッセージを胸にドタバタ逃避行。設定や展開やキスシーンが無茶すぎても全てチャラ>>続きを読む

青春神話(1992年製作の映画)

3.4

『青春神話』蔡明亮の初期衝動。現在も監督作品に一貫する都市圏に生きる者に渦巻く孤独感と閉塞感を若者達を主体に描く。コンパスの針で刺されたゴキブリのような、部屋を丸ごと浸水させる排水溝のような、リア充と>>続きを読む

クソ野郎と美しき世界(2018年製作の映画)

3.4

『クソ野郎と美しき世界』稲垣吾郎がストレンジラブストーリーを駆け抜け、香取慎吾が歌えなくなるシュールさを彷徨い、草彅剛が風刺とペーソスの街を転々とし、野放しだった三話分の結末が大団円のミュージカルで収>>続きを読む

blank13(2017年製作の映画)

3.4

『blank13』弔問客からのスピーチで新しく浮かび上がる父という人物像。故人の思い出話の聞き手には佐藤二朗、そして野爆くっきーまで現れて、シリアスな回想シーンとは対照的に葬儀シーンはコミカルに。フラ>>続きを読む

運命は踊る(2017年製作の映画)

3.5

『運命は踊る』息子が戦死したと誤報を受けた夫婦の過ごす自宅の緊迫感とは対照的に息子は戦場と云えどラクダさえ通る検問所で暇を潰す。絵、記憶、会話、戦争と地続きな日常、三幕構成で一気に真相が収束する結末へ>>続きを読む

ザ・ビッグハウス(2018年製作の映画)

3.5

『ザ・ビッグハウス』ミシガンスタジアムを介して炙り出るアメリカという国民性。彼らの陽気で屈強で忠誠なプラス面も単純で雑把で横柄なマイナス面も全て筒抜け。十万人規模の熱狂が轟くマスな迫力に飲まれつつも市>>続きを読む

心と体と(2017年製作の映画)

3.5

『心と体と』社交的に不自由な女と身体的に不自由な男が自らの姿を鹿に変えた同じ夢を繰り返し見る。「今夜も夢で逢いましょう」次第に現実でも関係が近付いていく不器用なロマンス。夢シーンを始め残酷描写も官能表>>続きを読む

ランペイジ 巨獣大乱闘(2018年製作の映画)

3.5

『ランペイジ 巨獣大乱闘』9.11以降の感傷など吹っ切れたかの如く雄叫びを上げて大暴れしながら街を破壊するジャストサイズなモンスターアクションでストレス発散すべし。急所さえ外れれば怪我などお構いナシの>>続きを読む

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

3.6

『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』ホラーでなく徹底して幽霊視点の物語。安置所の白幕を覆って彷徨う死せる男は穴二つと布の皺に感情を滲ませる。故にポルターガイストも動機付けられて切な>>続きを読む

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)

3.6

『レディ・プレイヤー1』マリオカート、ガンダム、ゴジラ、ストリートファイター、挙げればキリがないほどCoolJapanへの愛に溢れたオマージュが捧げられまくり。個人的にはスピルバーグがキューブリックと>>続きを読む

日日是好日(2018年製作の映画)

3.6

『日日是好日』茶道を通じて成長する女性の半生を描くと同時に先生からは奥深きお茶の世界を学び観終わる頃には背筋が少しだけ伸びた。四季の移ろいと共に「わかる」まで時間がかかって構わないと映画に諭される。の>>続きを読む

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)

3.6

『愛しのアイリーン』大金でフィリピンから結婚相手を買ってきた事で表面化する社会の膿。息子を溺愛する老いた母と母の愛しか知らない男の暴走。勿論アイリーンに罪など無い。岩男が性欲に溺れるほど彼女の愛の純度>>続きを読む

斬、(2018年製作の映画)

3.6

『斬、』前作「野火」に続き塚本晋也はイズムとリズムを時代劇に凝縮かつ集約させる。軋む、擦る、捌く、日本刀を持つ者の心理を代弁するかの如く反響する刃の音効演出。主人公の〝斬る〟か〝斬らない〟かの葛藤は現>>続きを読む

シューマンズ バー ブック(2017年製作の映画)

3.7

『シューマンズ バー ブック』伝説のカクテル書の著者シューマンが名店を訪れバーマンから訊き出す仕事の流儀。グラビアを捲るような美しい映像による編集と構成で上質な専門誌の読後感に近い。一流の手捌きで注が>>続きを読む

バトル・オブ・ザ・セクシーズ(2017年製作の映画)

3.7

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』男性至上主義VSウーマンリブという現代に通じる主題のみならず両者の関係(芽生える妻・許容する夫・誇示する道化)を演技と演出で丁寧に掘り下げる深度がクライマックスの試合を>>続きを読む

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

3.7

『ファントム・スレッド』一人の完璧主義者が徐々に崩壊する姿、二人が辿り着いた先の究極なる偏愛の形、そんな狂喜劇を優雅に端麗に映像と音楽と衣装で二時間たっぷり魅了させるPTAはド変態監督かと。オムレツを>>続きを読む

モリのいる場所(2018年製作の映画)

3.7

『モリのいる場所』熊谷守一で沖田修一が一本撮るなんて夢のようなコラボ。家と庭の限定空間へ遊び心を目一杯に詰め込んで映画はのほほんと過ぎ行く。山崎努と樹木希林のペースに飲まれそうだが登場人物も生物も全て>>続きを読む

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)

3.7

『ブリグズビー・ベア』ジェームスは純粋で実直すぎる青年に育った。全てはブリグズビーのおかげ。でも事情から新作が見れなくて本人自ら撮るという。何に影響を受けて成長したかで人生が決まる。だから他人の趣味を>>続きを読む

レディ・バード(2017年製作の映画)

3.7

『レディ・バード』本名よりもレディ・バードと呼称したい赤髪女子が自らを受け入れるまでの成長物語。友情も進路も喧嘩も初体験も断片的編集で凝縮してポップに綴る。まるで思春期のアルバムをパラパラと捲るような>>続きを読む

エンジェル、見えない恋人(2016年製作の映画)

3.7

『エンジェル、見えない恋人』全盲の少女と透明人間の少年の恋という設定だけで胸が締め付けられる。そのワンアイデアを繊細に主観視点で映像化して観る者を耽美的な官能へと誘う。適した79分という時間で形のない>>続きを読む

ガザの美容室(2015年製作の映画)

3.8

『ガザの美容室』美容室に集まった女たちによる井戸端会議から間接的に学ぶガザ地区の社会情勢。彼女たちは〝争いは男たちがするもの〟と割りきっているのか。店の外で銃撃や爆撃が始まっても自らを女であり続けよう>>続きを読む

search/サーチ(2018年製作の映画)

3.9

『search/サーチ』消息が掴めなくなった娘をネットスキルの異常に高いパパが捜索するサスペンス。ワード検索、カーソル移動、マウスドラッグ等が心理描写を演出して全編PC画面上の映像だけでも予測不能なス>>続きを読む

顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)

3.9

『顔たち、ところどころ』アニエス・ヴァルダとJRが出逢う人をアートで幸せにする成りゆき気まま旅。建物の壁面に貼る巨大に引き伸ばした人物写真が人生を象徴化して場のシンボルとなる。完成作と対峙する本人のリ>>続きを読む

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)

3.9

『花筐/HANAGATAMI』戦争に蝕まれる青春群像劇を窪塚俊介、長塚圭史、満島真之介が実年齢を超越した若々しさで演じ、舞う桜、円い月、夜の海のイメージは鮮烈に映えて、絶えず鳴り止まない音楽と合成背景>>続きを読む

アイスと雨音(2017年製作の映画)

4.0

『アイスと雨音』稽古中に頓挫した公演に歯向かってく筋書と劇中劇をベースに青春の甘酸っぱさがワンカットの74分にノンストップで凝縮。感情を剥き出す彼らへ〝寄り添う〟ように熱唱するMOROHAの歌とアコギ>>続きを読む

犬猿(2017年製作の映画)

4.0

『犬猿』傑作!受け芝居の窪田正孝、ガチヤバ新井浩文、笑いを担うニッチェ江上、猫かぶり筧美和子、4人の名競演による愚痴や嫌味の会話劇から物語は必然性の上で展開する為、やがて2組が爆発する喧嘩のタイミング>>続きを読む

キングスマン:ゴールデン・サークル(2017年製作の映画)

4.0

『キングスマン:ゴールデン・サークル』編集テクと選曲センスと超絶アクションの相乗効果でスクリーンに釘付け。予測を裏切るストーリー展開で中弛み一切ナシ。ハイテンションを保持したまま2時間を貫き通したマシ>>続きを読む

インクレディブル・ファミリー(2018年製作の映画)

4.0

『インクレディブル・ファミリー』正統派なスーパーヒーロー映画の娯楽作でありながら〝ちゃんとできればヒーロー並の偉業〟と育児の大変さも物語に組み込まれた女性が活躍する時代における家族総出の大活躍劇。程良>>続きを読む

万引き家族(2018年製作の映画)

4.1

『万引き家族』寝床、散髪、花火、生活臭と名演技で徹底される暮らしのリアリズム。繋がらざるを得なかった人間達が引き離された場合〝そこに愛はあるのかい〟と逆説的に映画が問う。現代の社会問題を野心的に詰め込>>続きを読む

カメラを止めるな!(2017年製作の映画)

4.2

『カメラを止めるな!』ワンカット・オブ・ザ・デッド!ワークショップ・オブ・ザ・デッド!メイキング・オブ・ザ・デッド!再び観返したくなる、誰かに薦めたくなる面白さ。ゼミ制作だからこその粗雑さを逆に活かす>>続きを読む

希望のかなた(2017年製作の映画)

4.3

『希望のかなた』難民を受け入れるか否かの現実と希望。登場人物のポーカーフェイスから滲み出る人情に沁みた。特に殴り合うカットからの食事を奢るカットへの潔さ。じゃないスシと犬にニヤる。今作でもブレずに力強>>続きを読む

ガチ星(2018年製作の映画)

4.3

『ガチ星』競輪選手の道を志すロクデナシ。人生の不摂生が競輪学校という修練の場で挫折として降り掛かる。口から出任せだった〝努力だけが結果に結び付く〟を心で知るに至るまでの負け犬の応援歌。迫真の演出で魅せ>>続きを読む

港町(2018年製作の映画)

4.4

『港町』色情報を排したモノクロが〝獲→売→買→食〟という流通社会の本質を炙り出し、後期高齢化の進む集落にディストピア感を漂わせ、心象風景とリンクして仄かに色彩をもたらす。カメラを武器に漁婆さんの壮絶な>>続きを読む

犬ヶ島(2018年製作の映画)

4.5

『犬ヶ島』ハリウッドが描くジャパンの〝それじゃない感〟を本作は優に通り越して〝見透かされてる感〟にまで達した。誇張されるウェス・アンダーソンの日本愛は造形や美術や音楽に留まらず腐敗した社会にまで及ぶ。>>続きを読む

来る(2018年製作の映画)

4.5

『来る』辟易するイクメンアピールの裏を暴くと共に破綻し始める新婚夫婦のホームドラマは次第に血塗られながらジャンルレスに加速して今世紀最大の除霊バトルに辿り着く。御祓いの儀式を前例にないレベルで格好良く>>続きを読む