髙橋洋その他のJホラー界隈の人々が伝説的な作品として挙げる以上見てみるしかないだろうということで。張り巡らされた濃密な闇と豪奢な邸宅、たっぷり間をとったゆるやかなリズムの編集によってゴシックホラーの>>続きを読む
オープニング、残忍な顔の車掌が無賃乗車のホーボーの頭をいきなりハンマーでぶん殴り、列車の下に移動したローポジションのカメラが、男が激しく回転しながら車輪に蹂躙される様を捉え、続いて、腹部の潰れた死体>>続きを読む
角の丸いスタンダードサイズの画の中に、ジャンプスケアで現れた殺人鬼がしゃがみ込み、顔が見えたかと思った瞬間に真紅のタイトルバックに入って、T. Rexに合わせ、流血のようにその範囲が左右に広がってい>>続きを読む
青空に浮かぶ赤く大きな風船が、美しい願いの情景を生み出しつつも、スイカの側に捨てられる病気の魚が、死んでからキットに横腹を踏みつけられる牛が、とばっちりで射殺され川に捨てられる犬が、同じようにあっさ>>続きを読む
どう考えてもパルム・ドール兼アカデミー作品賞の格は備えておらず、映画界には奇妙なことが起こるものだと思うが、興味深い形式を有する作品であることもまた確かだった。ほとんど同じようなことの繰り返しの一つ>>続きを読む
キヨシが親友の眠る病室に佇んでいると、突如画面がぼやけ始め、ワンテンポ遅れた二重露光が人物の動きを増幅させ、更に、尿瓶を扱う看護師にその裸の姿が重なる。何の意味もなく突如放り込まれる強烈な実験性に、>>続きを読む
オープニング、狭苦しい空間で延々続くロングテイクの後、視界がパッと開けると、フレーム外から逆さまの自由の女神が画面に突き刺さる。新世界への鮮烈な入場。続くシーンがまさかの主人公の売春描写(生々しいカ>>続きを読む
約7年ぶりに再見。初見時は、『イレイザーヘッド』のような、リンチのグロテスクで強烈な映像を求めていたので肩透かしを食らった気分だったが、概ね印象は変わらなかった。映画の好みなんてのは、時間を置いても>>続きを読む
ファーストシーン、メインの舞台となる託児所で、ロケ撮影にもかかわらず、おそらくドアを開け放つことによって、セット撮影の壁抜けのようにカメラを動かす拘りにまずは感心する。続けざまに、二人乗りの自転車が>>続きを読む
基本的には弛緩した長回しが多く、ロマンポルノの傑作の評判にはピンとこない部分もあったが、随所に神代特有の強烈なイメージは見られた。とりわけ、ラブホテルの回転ベッドと滑らかなカメラの動きが絡み合い、ヒ>>続きを読む
神経質に異様に均整のとれた構図のショットを重ね、時折同じ意味合いの台詞を二度繰り返しながら独特なテンポのダイアログを紡ぐ小津特有のスタイルによって、卑近な題材と舞台を扱っていながらも、次第に作られた>>続きを読む
本作の実質的な監督がスピルバーグなのかフーパーなのかについては論争があるようだが、開幕早々の、疾走する自転車が交錯するラジコンに妨害され、道路に打ち捨てられた自転車、穴が空いた缶、ラジコンを捉えたロ>>続きを読む
映画とは所詮光と影の蠢きに生々しい音声を重ねたものに他ならないというスタンスのショット群は、映画という媒体のプリミティブな力に満ちている。人々は、時折、打ち棄てられた世界で生存すること自体に疲れ果て>>続きを読む
ベトナム帰りのマーサの元恋人のエピソード。草原にポツンと立っている廃屋から幻想の悲鳴を聞き取り、誰もいない屋内で焼け死んでいくという最期は、帰還兵のPTSDの描き方として、寓話的な色合いすらある強烈>>続きを読む
冒頭、主人公宅を訪れたアンジェロの手先をエレベーターで問い詰め、突然発砲して隣人に通報させた上で、俯瞰ショットの中を逃走する二人組を窓から見守るジャン・ギャバン。言葉少なに工程を見せるのが犯罪映画の>>続きを読む
開幕時点で既に秩序が崩壊し、教会が「終わった」後の時代に突入している物語世界の丁寧に構築された世界観、膨れ上がって水気がある「腐敗者」の悍ましいビジュアル、伸びやかでゴージャスなシネスコの画と、好印>>続きを読む
予想に反してアクション映画的な趣で幕を開けたなと思っていると、おもちゃ屋が画面に映り、なるほど殺人人形の誕生秘話ってわけかと合点がいく。雷が落ちて爆発炎上のバカなエネルギー。工具で顔面を殴られただけ>>続きを読む
精神を病んだ母親から定期的に送られてくる、父親の遺品のダンボール。押入れに瘴気を充満させていたダンボールの山に、新たに加わろうとする一つの箱の中から出てきたビデオテープ。現代にあっても、『リング』以>>続きを読む
ダラダラとした導入部を排して一気に本題に入ってくれるのが嬉しい。電話を通じて強烈な支配力を発揮する殺人鬼の恐ろしさ。『ハロウィン』『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』といったスラッシャーの代表的作品>>続きを読む
冒頭、アニーがジープに乗り込むシーン、何故か運転手の姿が一切映らず、話しかけるアニーに対する返答もなく、不穏な空気が立ち昇ってくると、案の定ジープは目的地とは違う方向に疾走し始める。このシチュエーシ>>続きを読む
ロサンゼルスのエピソードの冒頭、ウィノナ・ライダーが運転するタクシーを前方から捉えたショットの背景で、低く飛んでいる飛行機が画面を真横に突っ切る素晴らしいショットに、飛行機から降りてくるジーナ・ロー>>続きを読む
グランド・ホテル形式の群像劇かと思いきや、それにとどまらず、驚くべき広がりを見せながら遅滞しないテンポで転がっていく嘘のような物語の吸引力に身を委ねていると、気付いた時にはエンドロールに突入している>>続きを読む
最初の10分で、映画的なカット割りによるきちんとした空間構築で魅せる気はないことが分かり、そうであれば相当なイメージの力で押し切ってもらう必要はあるぞと思い、少々不安になる瞬間もあったが、最終的には>>続きを読む
オープニング、三角形の先端が異様に鋭利なテーブルの逆サイドに座って食事をする夫婦。二人の不仲が先鋭化していることが一瞬で視覚的に伝わってくる。別居することになる父の元へ走っていく少女。子供が走る姿に>>続きを読む
オープニング、ならず者の二人組が橋を渡ろうとすると、先ほど嫌がらせをした車両が突如目の前に現れ、ヘッドライトが点灯される。地方ラジオのノリノリの音楽に合わせて、車上に立ち上がって揺れるレザーフェイス>>続きを読む
盛り上がってくるまではドキュメンタリータッチの雑な映像を漫然と眺めるしかないのがファウンド・フッテージものの難点だろうか。夜中に周囲から木を踏みしめる音が聞こえたり、あるいは、マイクが一人怒鳴り出し>>続きを読む
唐突にワードサラダを吐き出し始めた所長が窓を突き破り、平沢進の独特の高揚感の劇伴に合わせてどぎつい色彩のパレードが蠢きだす。基本的には、アニメーションよりも、実写映画の現実の物理的制約の中で世界の(>>続きを読む
冒頭、果てしないモノローグが流れる中、建物内の無人トラッキング・ショットがひたすら接続され、続いて凝固した人々が長々と映し出された後、やっとモノローグを発している主である舞台上の人物が映る。この瞬間>>続きを読む
開幕早々即座にアルジェント空間に放り込んでくれるのが嬉しい。赤と青の原色照明に照らされた奇妙な空間で、床の丸い穴を覗き込むと水に満たされた謎のスペースが広がっている。鍵を落としたとはいえ、よくこんな>>続きを読む
冒頭、笑福亭鶴瓶の過剰に醜悪な好色権力者を長々と映し出した後、車外に出た牧瀬里穂をヘッドライトの強烈な光が突き刺す。続いて、平成初期の日本の光景を生々しくロングテイクで切り取る相米の画に、チープな嘘>>続きを読む
ぼやけた画質で台詞も聞こえづらい素材だったが、それを貫通して往年の日本映画のパッションが伝わってくる。阪東妻三郎が演じる主人公の、常に半酩酊のような状態でフラフラと歩き回り、江戸っ子口調でキザな台詞>>続きを読む
冒頭、無人のヨットが侵入するニューヨーク湾。伝染性の死を積んで都市に迫る無人の船は『吸血鬼ノスフェラトゥ』であり、そういう意味では、ホラー映画史上由緒正しい描写から開幕したといえる。ビル群に囲まれた>>続きを読む
ボート上で、歯を剥き出しにした彼特有のニヒルな笑顔を浮かべるジャック・ニコルソンの表情。彼が高所からターゲットを狙うカメラのレンズに二人が反射する切り返しの凝った撮影。背後にフェイ・ダナウェイが立っ>>続きを読む
ルノワールは何本か見てきたところ、基本的にはかったるいメロドラマの人で自分には合わないと思っていたが、名作の誉れ高い本作は流石に一味違った。的確極まりないカメラワークとカット割りでセリフの洪水を処理>>続きを読む
だらっとした導入部だなと思いながら画面を見つめていると、唐突に録音テープの奪い合いが演じられ、静かに、サッとサスペンスの空気が吹き込む。これは効果的だった。とはいえ、『地獄の黙示録』にせよ、『ゴッド>>続きを読む
冒頭、超ロングショットの画面奥の路地で、胃薬を食べた(?)息子を追いかけまわし、棒で打つ母親と、画面手前の階段に立ってその様子を眺める祖父。ああ、ホウ・シャオシェンの画面だなと。やはり、ロングショッ>>続きを読む