ryosukeさんの映画レビュー・感想・評価 - 14ページ目

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年製作の映画)

3.9

物語としては本来160分が必要なストーリーではないが、筋書きだけに帰着しないのが映画の魅力だという信念の表れにも思えて悪い気はしない。流石のタランティーノ演出は何気無いシーン、通常ダレるシーンに魅力を>>続きを読む

モデル連続殺人!(1963年製作の映画)

4.2

バキバキに決まった構図と禍々しく赤が強調された鮮やかな色彩に、意思を持ったように滑らかに動き回るカメラワークの魅力は文句無し。ベルトルッチ、ヴィスコンティ、フェリーニ、アルジェント、そしてバーヴァらを>>続きを読む

戦争と平和(1919年製作の映画)

3.8

オープニングの人文字から既に多大な人手と手間が想像される。次第に、この"J’accuse"が大勢の兵士たちによる人文字である必然性が明らかになっていく。繰り返し中間字幕で表示される"J’accuse">>続きを読む

嵐の孤児(1921年製作の映画)

3.8

正直お勉強モードで見ることになるかなと思っていたが、普通に楽しく見られたので流石映画の父グリフィスだなあと。大量のエキストラと豪勢な巨大セットによるスケール感、途切れずコントロールされるドラマチックな>>続きを読む

グリード(1924年製作の映画)

3.6

(107分)
音楽無しの完全サイレント上映で、画質もかなり荒かったのでちょっと厳しいものはあった。もっと良いデジタル素材があるなら無理して16mmで上映しなくても良いのではとは思う。
鳥かごが様々な事
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霊魂の不滅(1920年製作の映画)

3.7

死(神)と馬車、破綻した家族関係とベルイマンが受け継いだものがよく分かる。コートを執拗に破いていくシーンや、ラスト間際、現世に干渉できない体になった男に見せつける悲劇など、なかなかえげつない。
やはり
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座頭市(1989年製作の映画)

3.9

盲人と女の混浴というシチュエーションも素敵なシーンの、長回しの中で照明と煙が移り変わっていく幻想的な描写が印象的。提灯に彩られた殺陣の様式美も素敵。
併映で見た北野版座頭市の武の動きも相当な切れ味だと
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座頭市(2003年製作の映画)

4.1

全体的には真っ当な時代劇といった趣の作りなのだが、ギャグや北野の金髪といった要素がリアリティラインに歪みを生じさせている。それが良いか悪いかは正直よく分からない。繋ぎとして時折挿入される、モブの所作が>>続きを読む

復讐 THE REVENGE 運命の訪問者(1997年製作の映画)

4.5

開始早々、あまりに無造作で無機質な拳銃の扱いに呆気にとられる。後の「CURE」などでも見られる観客に身構える隙を与えない凶行は、ヤクザ映画ということもあってか、北野武の強い影響を感じさせる。人物の横移>>続きを読む

聖なる酔っぱらいの伝説(1988年製作の映画)

3.7

ルトガー・ハウアー追悼上映@新文芸坐
(特に前半は)強いドラマ性を排して生活の断片の組み合わせで表現し、社会の下層(本作ではホームレス)に位置する人の暮らしを生々しく切り取る。これらの特徴は、オルミが
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サスペリア(2018年製作の映画)

3.5

アルジェント版の「サスペリア」のリメイクでありながら、明確なアンチテーゼにもなっている。眼を刺すような鮮やかな色彩は、灰色がかった鈍い色調と薄暗い空間に置き換えられ、異様なハイテンションさがあったゴブ>>続きを読む

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

3.8

早稲田松竹の二本立て。おそらくテーマはフェミニズム映画というところだろう。森の中で強引に迫る男と、それに対して暴力によって対等に渡り合うエマ・ストーンの姿なんて象徴的。愛欲は女たちだけで完結し、男は清>>続きを読む

江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969年製作の映画)

3.9

(35mm)
東映作品の例のオープニングが流れた後、序盤の内に再度「荒磯に波」が現れたのだが、これはメタなネタなんだろうか。磯で荒ぶるオヤジさんのクネクネした動きは何か知らんけど素晴らしいね。
異常な
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江戸川乱歩の 陰獣(1977年製作の映画)

4.4

(35mm)
初加藤泰だったが、縦の構図、ローアングル、クローズアップ、アクのある様式的な演技をキレッキレの編集で次々に繋いでいく加藤泰スタイルに呆気にとられた。会話シーンも絶対に単調で退屈な瞬間には
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黒蜥蜴(1968年製作の映画)

3.8

(35mm)
色彩(赤が目立つ)、照明の鮮やかな使用、上下左右に動き回るスタイリッシュなカメラワーク、異常な美術や演出から、ざっくり「サスペリア」の系列の作品に思える。ただどうも洗練されてない感がある
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盲獣(1969年製作の映画)

3.7

(35mm)
かなり綺麗な状態のフィルムで見られたので、ちょっとフィルムだと気づかなかった。
「暖流」「野火」に続いて本作を見て、船越英二のイメージがどんどんとんでもないことになっていく。
強烈な怪作
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アラン(1934年製作の映画)

4.0

本作は海こそが主役であるとも言えるだろう。冒頭、人物と対等なカットバックで映し出される波は、人間の理性により制御され飼い慣らされた自然、人に対して従属的な存在としては映らない。
フォロー撮影と動的なカ
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白い足(1949年製作の映画)

4.4

グレミヨン二本目。これは傑作だった。海辺の魅力的なロケーションを活かしたショット群が心地よい。風の音や灯台の明滅する明かりが効果的に活用されるのも「ある女の愛」と同様。
カットの始まりと同時にトラッキ
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真昼の不思議な物体(2000年製作の映画)

3.6

(35mm)
冒頭のインタビュアーの、作り話で良いから話を続けてくれという指示、クルーたちの会議やインタビューの音声を村人に聞かせる様子を見せる演出、撮影が終わりか尋ねる少年、映り込むガンマイクという
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失われた週末(1945年製作の映画)

3.9

アル中の苦悩というストーリーを心理サスペンスにまで高めているのは、ワイルダーの緊張感溢れる演出と陰影の強い撮影に加えて、ミクロス・ロージャの不穏な音楽も大きいだろう。特にテルミンの音は、次第に幻聴ある>>続きを読む

青髭八人目の妻(1938年製作の映画)

3.8

冒頭、セットアップのパジャマをバラ売りしろというしょうもない要求に対して、二階三階と階段を昇り上司にお伺いをたてるシーンから楽しい。
ずっと見ていたというヒロインにニヤつき、雄叫びを上げ、ネギで撃退さ
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三人の妻への手紙(1949年製作の映画)

3.8

決して姿を見せない「アディ・ロス」をキーワードとして三人の女の回想を纏め上げる脚本、人物の性格のきっちりした描き分け、手堅く洗練された演出やカット割りによる語り口がハリウッド黄金期を感じさせる良作。>>続きを読む

仁義なき戦い(1973年製作の映画)

4.2

(35mm)
テレビのSE等で聞き慣れてしまっているテーマソングだが、やはり本作の真っ赤な文字のタイトルバックと同時に流れ出す瞬間が一番かっこいいな。名曲なので気持ちは分かるのだが、毎度毎度重要人物の
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青春残酷物語(1960年製作の映画)

3.7

(35mm)
横溢する若者のエネルギー、素早いパンを織り交ぜた奔放な撮影、時に画面と音にズレが生じる自由な編集、部屋でのダンスに合わせて流れる劇伴とその唐突な終了と、松竹ヌーヴェルヴァーグの鏑矢という
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ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス(2016年製作の映画)

3.6

いつも通り何の説明もなく講演のシーンに入る冒頭からワイズマンのドキュメンタリーを見に来たな…と思わせてくれる。初っ端から大物(リチャード・ドーキンス)が出てきて無神論トークをするのだが、彼はなかなか雄>>続きを読む

殺人者にスポットライト(1961年製作の映画)

4.0

「顔のない眼」と同様、屋敷を魅力的に用いたゴシックホラー調の作品。本作は城自体が主役と言える面もあり、音と光で装飾された城は中世の伝説を再びその身に宿すことになるのだが、このシーンが実に素敵。現代の登>>続きを読む

永遠と一日(1998年製作の映画)

4.7

初アンゲロプロスだったが、期待に違わぬ大傑作だった。一作も見ていないのに評判から大好きだと確信していて、初見時にそれを確認するということがあるが、アンゲロプロスも正にそうだった。
主人公と少年の少し超
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(1951年製作の映画)

3.7

DVDに入っていた淀川長治の解説がなかなか面白かった。ロサンゼルス中の花屋がお金を集めてルノワールに美しい映画を撮ってくれと頼んで生まれた作品だとか。本当かな。淀川もロサンゼルスの映画館で見たらしいが>>続きを読む

血ぬられた墓標(1960年製作の映画)

4.5

(英語版)
これは傑作だった。「サスペリア」と同じく全編が美意識に貫かれた見事なシーンで溢れており、ダリオ・アルジェントがマリオ・バーヴァをリスペクトしていたことにも納得。この辺りのイタリア製ホラーは
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青春神話(1992年製作の映画)

3.6

開幕早々ゴキブリの串刺しでうげっとなる。ツァイ・ミンリャン作品らしい汚れた貧しき台湾の描写はこの時から確立されていたのだな。他作品同様トイレ内にカメラが侵入する。「河」と同様の水浸し、「愛情萬歳」にも>>続きを読む

愛情萬歳(1994年製作の映画)

3.5

開幕から第一声までかなりの時間がありサイレント映画かと思うほど。言葉では一切語られないが、細かな描写の積み重ねから主人公の孤独が理解される。あまりに説明が無いもので、各自の部屋に対する関係が若干分かり>>続きを読む

心のともしび(1954年製作の映画)

3.6

うーんそこまで乗れなかったのは何故だろうか。「台詞」感の強いかっちりした演技と、毎度毎度きっちり人物の感情を強調してくる音楽、無理のある展開が重なって、登場人物の心情に信憑性を感じられなかったせいかな>>続きを読む

ある女の愛(1953年製作の映画)

3.7

女が男と仕事のどちらを取るかという定番の(そして少し時代を感じる)葛藤をテーマとしたシンプルなメロドラマだが、ウェルメイドな作りと手堅い演出でしっかり見せてくれる。
派手さはないが滑らかなカメラワーク
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夢を見ましょう(1936年製作の映画)

3.8

冒頭、クレジットに合わせて演奏される音楽が性急なテンポに転じ、そのスピードに追い立てられるようにして80分間の怒涛の言葉の奔流が繰り出される。この音楽のテンポチェンジと同様に、ギトリは自在に緩急を付け>>続きを読む

ラスト・ワルツ(1978年製作の映画)

3.6

冒頭に大音量で上映するようにとの指示が出る。これは映画館で見てよかった。
ストゥージズのことをあまり知らない状態でジャームッシュの「ギミー・デンジャー」を見たら割と退屈してしまったので、ザ・バンドにつ
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ディア・ハンター(1978年製作の映画)

3.6

冒頭に結婚式のシーンを配置するのは「ゴッドファーザー」等と同様だが、日常が崩壊していく過程を見せる前に、その日常の絶頂を見せることで効果的になるのであろう。
こぼさずに飲み切れば生涯幸福でいられるとい
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