ryosukeさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

TENET テネット(2020年製作の映画)

3.7

登場人物の1対1のカットバックによる無限説明台詞でいちいちテンポが遅滞するのを、デカイ劇伴とデカイ画の連続で誤魔化しきれず(そして説明もできず) という印象は強い。ばばーんと引き画になってカメラがぐわ>>続きを読む

夜と霧(1955年製作の映画)

3.9

収容所付近の長閑で美しい現在の風景が、雑草の下に覆い隠したおぞましい歴史の禍々しさを際立たせる。戦争終結からたった10年しか経過していない、生々しい傷跡を残す収容所の中を、流麗なトラッキングで奥へ奥へ>>続きを読む

リサと悪魔(1973年製作の映画)

3.8

冒頭、壁画に描かれた悪魔を見てテリー・サバラスに似てるなあと思っていたら、彼の初登場シーンでオーバーラップしたのでそういう意図だった。彼に似せて新しく描いたのかな?棒付き飴が印象に残るテリー・サバラス>>続きを読む

血みどろの入江(1970年製作の映画)

3.9

本作は虫の主観ショット(?)で幕を開ける。マリオ・バーヴァ、観客の注意を一気に引くのが上手いな。後々虫の正体は明らかになることに。シャーレを泳いでるゲンゴロウキモい...。
一つ目の殺しが一番クオリテ
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呪いの館(1966年製作の映画)

4.6

血に濡れた突起のストップモーションに到る悲劇によって、瞬間的に観客の期待を高めてくれる良いオープニング。掴みはばっちり。観客の目に焼き付いたこのストップモーションは、怯える宿屋の娘を捉えるショットの手>>続きを読む

美しき結婚(1981年製作の映画)

3.6

35mm
フェオドール・アトキンは「海辺のポーリーヌ」で観客をイラつかせたハゲ頭と同じくやはりクズなのだが、ロメールの中のイメージなのかな。確かに似合っている。
同時上映の「飛行士の妻」と同じく撮影は
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飛行士の妻(1980年製作の映画)

3.6

35mm
フランソワが居眠りしている最中にクリスチャンを取り逃がしかける描写の繰り返しなど、ロメール流の控えめな冗談なのだろうか。フィリップ・マルローは役柄にあった良い面構え(ちょっとマチュー・アマル
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ゴダールのマリア(1984年製作の映画)

3.5

マリアの本 3.6
愛情に乏しくミソジニー気質で口は達者な夫のモデルはゴダールだったりするのかな。アンヌ=マリー・ミエヴィルとゴダールの共同生活を想像させる。全く関係ないのかもしれないが。
マリーを
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ダークナイト(2008年製作の映画)

5.0

IMAX
いやあこれは面白すぎる...。感想書いたりするのがバカバカしくなるタイプの面白さだ...。最低限の緩急だけ付けて、最初から最後までただただ面白く、ノーランらしい「デカさ」のあるシーンを叩きつ
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千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)

4.5

久しぶりにスクリーンで再見して、オープニングでこんなにあっさりトンネルに辿り着くんだったかと驚いた。我々の住む世界のすぐ側に異世界が隣接しており、ふとした瞬間に扉が開いてしまう感覚が良いよな。ホラー映>>続きを読む

バットマン ビギンズ(2005年製作の映画)

4.0

前半は人物紹介、基本設定の紹介というところで、ちょっとだけ説明的な感じもするが、三部作の第一作ということでまあ仕方なかろう。原作のことは知らないが、色々説明が必要であろうところかなり手際良く処理してい>>続きを読む

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

3.8

「女性を主人公にするなら結婚させるか死ぬかだ」冒頭、ジョーに投げかけられる編集長の呪いの言葉は、同時に「映画の主人公」としての彼女自身にも向けられているように思え、本作の全体を通してのメインテーマにも>>続きを読む

数に溺れて(1988年製作の映画)

4.3

全てのカットが俗悪な美学に従って神経質に作り込まれており、悪趣味で豪奢な飾り付けに彩られている様に呆気にとられるのだが、その拘りが「二度ある溺死は三度ある」という最悪の諺の実現に向かって数限りない悪ふ>>続きを読む

プロスペローの本(1991年製作の映画)

3.3

動的で派手なパラジャーノフといった趣だったが、残念ながらハマれず。パラジャーノフはいけてこれはダメなのが何故なのかはうまく言語化できないが、ひっきりなしに大演説の調子で鳴り響く台詞がうるさく聞こえてし>>続きを読む

マングラー(1995年製作の映画)

4.1

ファーストカット、轟音をあげながら黒光りする機械をゆっくりと舐める長回し。煙が充満した空間の中、機械の向こう側から光が差し込んでいる。巨大機械はこうじゃないとという感じでこちらのフェティシズムを満足さ>>続きを読む

宇宙戦争(2005年製作の映画)

4.9

これは大傑作だな...。IMDBの平均評価とか見てても随分スピルバーグで下の方の評価を受けているようだが、こんなに面白い瞬間だけで構成されている娯楽映画なんて他に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ぐら>>続きを読む

少女ムシェット(1967年製作の映画)

4.0

冒頭、鳥に罠を仕掛ける男とそれを草陰から見つめる男。「バルタザールどこへ行く」もそうであったが、ブレッソンは動物に対する暴力の中に人間の業を見ているのだろうか。
これも「バルタザール」にもあった演出だ
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Seventh Code(2013年製作の映画)

3.9

「旅のおわり世界のはじまり」以前にも本作で前田敦子と黒沢清が組んでいたことは知っていたが、前田敦子が異国をふらふらと走り回るというコンセプトまで同じだったとは。本作の前田の身軽さは相当なもので、一度食>>続きを読む

懲罰大陸★USA(1971年製作の映画)

3.7

ニクソン政権の時代、ベトナム反戦運動が盛んだった世相を背景に作られたフェイクドキュメンタリー。実際に存在したマッカラン国内治安維持法にも予防拘禁の規定があった(英語版ウィキペディアによれば公開年に予防>>続きを読む

バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)

3.8

オープニング、ピアノソロの演奏とその間に挟まれるバルタザールの魂の叫びの時点で、既にただならぬ作品の予感が漂っている。
やはり劇伴の使用は抑制され、バルタザールや虫、鳥の鳴き声、蹄が石畳を叩く音、ドア
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結婚(1964年製作の映画)

3.6

「傘」もそうだが、コバヒーゼは男女の運命の瞬間が好きなのかな。二人が向かい合うと嘘だろというほど甘くてロマンチックな劇伴が鳴り響くのだが、これはおめでたい主人公の主観でもあろう。
街中を人が大量に走っ
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(1966年製作の映画)

3.7

音付きだがほとんどサイレント映画のような作りの短編。
冒頭、家かと思えば線路脇の小屋であったという小さな驚き。良い舞台だな。
警笛を吹く主人公→汽車が過ぎ去ると移動してヒロインに向かって笛を吹く→汽車
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ピロスマニのアラベスク(1985年製作の映画)

3.6

いつものパラジャーノフという感じで、固定ショットでカメラの方を向いた人物が規則的な動きを繰り返すのだが、本作は静止画、絵も多くてうーん何とも...どう見ればいいのか分からん。まあピロスマニのことを何も>>続きを読む

一年の九日(1961年製作の映画)

3.8

冒頭、「戻ろう、行き過ぎたようだ」というクリコフ(インノケンティ・スモクトゥノフスキー)の台詞は、直接的には目的地を通り過ぎたことを指しているが、地球の温度が上がり過ぎたという直前の会話や、後に彼が原>>続きを読む

赤い天使(1966年製作の映画)

3.9

薄暗い戦地の病院に白衣が映えるライティングとモノクロの画面構成と、陸軍病院の薄汚い壁、迫撃砲でボロボロになった部落など流石の大映美術が素晴らしい。増村作品は画面内に人物がたくさん詰め込まれて賑やかなこ>>続きを読む

卍 まんじ(1964年製作の映画)

3.7

増村作品では「盲獣」に近い、全編が官能に満たされた作品。題材上薄暗い部屋でのシーンが中心になることで生まれてしまう若干の単調さも同様かな。
女が意中の女の顔を絵に書いて噂が広がってしまう。トイレで口紅
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バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990年製作の映画)

4.3

世評では1>2>3の順に人気らしい本シリーズについて、パート1が圧倒的なのは同意するところだが、パート2よりも3の方が序盤から理想的なテンポが維持されるし、説明的なシーン、台詞も少ないので個人的には1>>続きを読む

ブルース・ブラザース(1980年製作の映画)

4.0

映画としてどうというより、とにかく楽しい場面を連発すればよいというスタンスのショーという感じだった。黒人音楽の素養があれば豪華出演者に興奮できてもっと楽しいんだろうな。
刑務所の門から漏れ出す夕焼けの
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女は二度生まれる(1961年製作の映画)

4.3

川島雄三は「しとやかな獣」もそうだったけど、全カットのレイアウト・美術が凝っていて拘りが凄い。題材に相応しくというべきか、(特に敷布団が画面に現れるシーンなど)照明も艶かしく、上品な画作りが楽しめる。>>続きを読む

最高殊勲夫人(1959年製作の映画)

4.0

窓の周りにクレジットとカラーバーが表示されるオープニングがお洒落。
主要人物の周囲でモブの人物たちが動きながら画面を埋め尽くす賑やかさ、キビキビしたテンポ、丁寧なアクション繋ぎによるカット割りと、増村
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戦争のない20日間(1976年製作の映画)

3.7

オープニング、浜辺で兵士たちが談笑していると、一瞬兵士のセリフかと聞き間違えるような自然さでナレーションが割り込んでくる。これから流れる映像が、主人公が戦場について唯一思い出す記憶であることが明らかに>>続きを読む

タシケントはパンの町(1968年製作の映画)

3.6

余白がたっぷり確保されたシネスコサイズのロングショットによる風通しの良い映像が気持ち良い。少年の汽車との追いかけっこ、乗車率400パーセントはありそうな汽車の屋根に二人で座る姿も瑞々しいエネルギーが感>>続きを読む

戦火を越えて(1965年製作の映画)

3.7

特に戦場に行くまでが顕著だが、音楽が無いのに音がほぼ会話音しか拾われていないシーンが多く、これが60年代の音響か?という部分はあって、その点はちょっと物足りない。
旅の過程をオーバーラップと暗転を繰り
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しとやかな獣(1962年製作の映画)

4.1

全カットがギチギチに作り込まれたレイアウトの凝り具合が凄い。引っ切りなしに詰め込まれた台詞もあって、この情報量はちょっと疲れるぐらい。黒沢清がぴあのインタビューで、エドワード・ヤンから得たものを語る文>>続きを読む

妻は告白する(1961年製作の映画)

3.8

題材に相応しい窃視的なタテの構図を駆使した画面構成と、丁寧にアクション繋ぎを繰り返すカット割りの映像感覚でどことなく心地良く見られる。増村は安心して鑑賞できるな。
小沢栄太郎がバーで友人と飲むシーンで
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他人の家(2016年製作の映画)

3.8

これは中々の掘り出し物だった。アブハジア紛争によって捨てられた街が舞台となるのだが、室内映像の質感が良い。彩度が抑えられ、窓から差し込む光によって靄のかかったような印象を与える空間を作り出し、鏡や水面>>続きを読む