Ryosukeさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

早春(1956年製作の映画)

4.0

汽車も黒煙も周期的にその運動を繰り返すのであってサラリーマンもまたサラリーを貰い、残り80年ほどの余生を夫婦としていかようにか送るのだろう、そんな達観した境地に辿り着く。
夫婦生活の倦怠、夫は粗相をし
>>続きを読む

ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

4.2

間借りした古い部屋で夜な夜な「サンディ」という女性を追体験する世にも奇妙な物語。

エリーの幻覚と現実が曖昧化、同一化する恐怖。
ミステリーとサスペンス要素を兼ねた、サンディの危険に満ちた先行き。
>>続きを読む

モンスターハンター(2019年製作の映画)

3.5

実際の人間がモンハンの世界に迷い込んでしまったら??というリアル志向によって生まれる迫力。
モンスターと対峙する際、こりゃ無理だと思わせる絶望感を味わえる。
砂漠シーケンスが思ったよりも長かった。
>>続きを読む

ソウルメイト/七月と安生(2016年製作の映画)

3.5

安生(アンシェン)の下にネット小説の映像化の話が舞い込むが、七月(チーユエ)は行方不明である。
親友の2人に一体何があったのか。

ネット小説を遡り、幼き日から現在までを章立てて回想する。

繊細な感
>>続きを読む

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)

3.8

恒常的な生活。日々の一連のルーティンを至極淡々と一定の画角から映し出す。

ほとんど会話もないし、笑顔も無い。
叔父は身体を悪くしており、姪が世話(介護)をしなければいけない。その上で広大な農地の農作
>>続きを読む

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア(1997年製作の映画)

4.0

ブルースブラザーズのようなドタバタ感もありつつ、お茶目な悪役も魅力的。
程よい疾走感に間延びのしない痛快な良作。
駆け抜けた後のラストシーンは目に焼き付くね。


そして私はある体験が同時に焼き付いた
>>続きを読む

ケープ・フィアー(1991年製作の映画)

3.5

悪質陰湿、どこまでもつきまとうストーカーをロバートデニーロが熱演。
飛んじゃってます。

家族の前にいくらでも姿を現すし、大っぴらに嫌味を残して、少しずつ家族の精神を削いでいく、そしてマックス・ケイデ
>>続きを読む

恐るべき子供たち 4Kレストア版(1950年製作の映画)

3.7

子供というには少し大人びている青年達からはタイトルの真意をなかなか掴みづらかったけど、「中国の村」を根城としてからその意味がようやく分かった。
空間の変化に伴い、姉弟の想いも爆力魔破。
というか「特殊
>>続きを読む

ボイリング・ポイント/沸騰(2021年製作の映画)

3.7

ワンカット撮影で映し出される群像。レストランの舞台裏。
密着ドキュメンタリー映像を観ている時のような切迫している感じと緊張感。

イギリスのどっかの人気店の繁忙期のある夜をそのまま切り取りましたと言っ
>>続きを読む

生きる(1952年製作の映画)

4.0

心得とも指針ともなる映画。
襟を正すような、忘れたくない一作。

タイトルの「生きる」からして全てにおいて重い内容かと思えば、意外と肩の力を抜く様な場面もあった。

システムの部品に過ぎず、ただただ歯
>>続きを読む

mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.0

友達間にある憧れと嫉妬と衝突と、見栄と優越と、少し周りを見渡せば見えてくる反省やそれに基づいた行動や。
それまでの憧れも無くなって形だけの友人になり何かが終わる感覚。
最強だった証のビデオ。
まるで体
>>続きを読む

アンホーリー 忌まわしき聖地(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ウォーキングデッドのニーガン役で有名なジェフリー・ディーン・モーガン出演。
とある街でジャーナリストがとある少女の「奇跡」を目にする。
マリアを語る神秘的な大詐欺。
奇跡の力を前に簡単に平伏し、簡単に
>>続きを読む

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

3.8

不都合とする真実を暴力による外圧ではなく1人1人が内的に向き合うよう仕向ける。
露出を高めて派手な化粧をしてバーに赴くその真の動機は、武士が戦時に化粧をして赴く心意気の如し。

グリーンブック(2018年製作の映画)

4.0

粗暴なトニーと品性溢れるドクとの凸凹ロードムービー。
カテゴリーに分類できるほど人も世の中もまるで単純ではない。
しかしフライドチキンを酌み交わせばそれはもう兄弟なんだよ。

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

3.7

異食症というのがあるのか。
自己の尊厳と権利を取り戻すあるいは捜し出す話で、サイコスリラーな雰囲気を連想したジャケットからは程遠く、身に迫る類の映画だった。
そんなつもりでないにせよ彼女は所有物である
>>続きを読む

12モンキーズ(1995年製作の映画)

3.8

私は思考を置き去りにした。(話しについて行けなくなった。)
異なる時間軸を行き来する間に正気なのかどうかも不確かになるジェームズに見事撹乱されてしまった。
ひょっとしたら本当に精神疾患の妄想なんじゃな
>>続きを読む

スキャナーズ(1981年製作の映画)

3.8

「スキャナー」と呼ばれる超能力者たちのお話。
存外に面白かった。
相手の心を奪うか奪われるかの迫真の目力と表情。
特殊メイクが凄いのでリアルに感じる。まるでその事象が本当に実在しているかのような説得力
>>続きを読む

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)

3.8

何も考えずにリフレッシュできる。
おふざけと真面目の緩急が程よくてクリスチャンベールの存在感も堪能できたし、ナタリーポートマンほんとお美しゅうございまして眼福この上なしでした。
なぁマットデイモンあな
>>続きを読む

愛のコリーダ(1976年製作の映画)

-

絶対不可分で不可侵な2人だけの楽園は劇薬味を帯びていて、次第に屍臭と暗闇をまとって没落する過程の中には陶酔感がある。
太宰治の「斜陽」のあの酔う感じに近しいというか、没落すればするほどに2人の連帯がよ
>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

3.7

異なる出自、お互いが対比になるような背景を抱え混成される人物達が、一つの共同体を作るまでの過程は「万引き家族」同様に自然発生的であり、心の拠り所としてのある種の温かさが今作でも感じられた。
なにぶん観
>>続きを読む

キング(2019年製作の映画)

3.8

王とは??(男性性つまり虚栄の一例)
近年様々なステレオタイプを現代の鋭利な切り口から虚栄をぶった斬るような映画が数多い。その虚栄に密かではあるけれど、少なからずも憧れてきた大多数の一人である私も打ち
>>続きを読む

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)

3.8

ごちゃごちゃ何も考えず、ただただ楽しむことに特化するも、この映画の終わりが近づくことは日曜のサザエさんが明日を告げるように、夢が醒めるのと同じ気がしてならない。
さぁ行ってこいと背中を叩かれる気持ちで
>>続きを読む

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

手当たり次第に職を求めるサミア。大きなお腹を抱えて。
未婚の母。イスラム社会ではタブー視されるらしい。
パン屋を営むアブラと娘が彼女を匿うが、、
およそ3分の1は赤ん坊が産まれてからのサミアの葛藤の様
>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

4.3

困惑し苦悩し、一喜一憂し腹も立つ。そして一喜は瞬間であり持続しない。一憂って言うけど長いことが多いよな。
計画なんざ歯が立たない訳が分からないことばかりで参ります。

どこか牽制するような、互いに立ち
>>続きを読む

17歳のカルテ(1999年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

生きたいけど死にたい。死にたいけど生きたい。

身体を操作している実感がかろうじて生きていることを告げてくれている、身体と心が別離している状態。
痛みに慣れてしまったその結果、深い痕になると何も感じな
>>続きを読む

ヒート(1995年製作の映画)

4.5

カッコいい。
一本筋が通ってる人ってのはやっぱりかっこいいんだ。
大人の色気、渋み、哀愁、愛情がシワに刻まれまくっている。  
対照的な2人ではあるけれど根本に共通する闘争心というか、熱狂というか。
>>続きを読む

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

父親から盛大にネタバレを喰らった後に鑑賞した次第ではあるが、むしろそうと分かって見てみた方が、よりフィルがなぜ男性性を一貫しようとするのだろうかという疑問を強く念頭に観ることができた。
ポロリした父は
>>続きを読む

モービウス(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

マイケルとマイロの人間関係にもっと感情移入できればなぁ。
もっともっと感情が揺さぶられるドラマになったのではないか。僭越ながら、すごく惜しい印象を持つ。
冒頭の子供の回想シーンがあまりに淡白で、兄弟と
>>続きを読む

THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

バットマンに成る物語。これはまだビギンズだった。
「私は復讐だ。」
復讐は伝播し、連鎖に連鎖を重ねる。
バットマン=復讐という象徴が希望を含む。過去からの脱却を図る。
今作は真面目なぐらい王道なミステ
>>続きを読む

JUNK HEAD(2017年製作の映画)

3.8

エンドロールでおったまげた。
1人で7年の歳月をかけて製作ってイカれてるぜ。
不気味でミステリアスな世界を七転八倒しながら時にユーモラスに地下世界を探索する。
ファンタスティックプラネット、HRギーガ
>>続きを読む

カリートの道(1993年製作の映画)

3.8

クラブや駅など通行人がかなり多いのにマフィア達との睨み合いは途切れることなくカリートを見据えているし、エキストラかと思えばしっかり不審な動きをしてるし。
なんか後ろで怪しいやつがなんかやってるけど大丈
>>続きを読む

怒りの日(1943年製作の映画)

4.2

「奇跡」の真逆だと思った。
魔性という非現実がまるで現実に起こり得るようなおぼつかなさ。
意外や意外、個々人のメロドラマが紡がれる。
義息子との愛による罪悪と背徳。お局の嫌味。マザコン。
赤ん坊を欲す
>>続きを読む

奇跡(1954年製作の映画)

3.8

鏡のように対になる場面が多くある。
左右見比べると面白いぐらい明後日の方角を向いている。
思想、科学と宗教、無神論者と信仰者。身分の違い。生と死。
対称的な人物造形は分断の構図を取ることもあった。
>>続きを読む

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

4.5

無声映画。初ドライヤー監督。
審問官達のまぁ下卑ていること。
逃げ場のない圧倒的不条理を前にした1人の女性の受け取る感情を否が応でも直視することになる。
交錯する視線、囁かれる思惑。
音の無い審問はス
>>続きを読む