イワシさんの映画レビュー・感想・評価

イワシ

イワシ

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サユリ(2024年製作の映画)

3.5

根岸季衣覚醒ベッドひっくり返し場面の太極拳的陰陽画面構成。根岸の後方に配置される光源=太陽は南出凌嘉が一人で留守番することになり意を決して玄関まで進む場面でも反復される。太極拳の動作をしながら進むと、>>続きを読む

エイリアン:ロムルス(2024年製作の映画)

3.5

デヴィッド・ジョンソンが注目するワイヤーフックの反復/変奏。ゼノモーフの尾、肩を掴むジョンソンの手、エレベーター(巻上機)など。『チキンラン』的クライマックスで最初に登場したフックが活躍するが、その前>>続きを読む

犬猫(2004年製作の映画)

4.0

赤いダッフルコートに身を包みスーツケース片手に決然と西島秀俊の元から去り行く藤田陽子の小さな背中を階段の上から捉えたロングショットは『東への道』を思い出さざるを得ない。あの奥へ奥へと延びる一本道!一枚>>続きを読む

小さな泥棒(1988年製作の映画)

3.5

矯正院で虐められたら相手の手にフォークをブッ刺すシャルロット・ゲンズブール超好き。刺された赤毛も痛みを堪えて呻き声一つあげず、いきなり殺意に満ちた反撃をかます(ゲンズブールの吹っ飛びっぷり!)のも最高>>続きを読む

Garden of Remembrance(2024年製作の映画)

3.5

俯瞰のカメラが降下して庭から窓へ接近するが、『市民ケーン』みたく窓ガラスを貫通すると思うその瞬間に部屋に吹き込む風=カーテンの揺れのカットに変わるのがすげー良かった。

ヤコペッティの 残酷大陸(1971年製作の映画)

4.5

冒頭の空撮、ヘリコプター(時代錯誤的なヘリコプターといえばドゥミ『ロバと王女』を思い出す)の扇風で巻き上げられた砂塵と綿花が画面を覆う。逃亡奴隷のペキンパー的大虐殺場面の水飛沫の連鎖がそれを反復するが>>続きを読む

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(2023年製作の映画)

3.5

ジョシュ・ハッチャーソンがエリザベス・レイルに夢のことを告白する場面、小川の土手に座る二人を捉えたロングショットに微風が起こり、画面全体の草の葉を振り動かしているのが良い。ケーキ人形の襲撃とガラスを破>>続きを読む

パウダー(1995年製作の映画)

3.1

ショーン・パトリック・フラナリーが地下室から出てくる時の衣装が発見時から様変わりしている。古いがきちんとしたスーツとハット、手にはスーツケースという古典的な都へ行くスタイル。開いた入口から見える一本道>>続きを読む

イベント・ホライゾン(1997年製作の映画)

3.6

サム・ニールがまた狂ってる。ホラー版『ソラリス』という発想はありきたりだが、しっかり面白い。重力制御装置のコアのビジュアルは最新科学で作られたのに古代的で良かったし、制御盤を直しに行くときの全面緑色の>>続きを読む

きみの色(2024年製作の映画)

3.8

ファーストショット、ステンドグラスを透過して聖堂の床に落ちる赤い花の形の光は、ジゼルに合わせて踊るトツ子が見た自分の色と跪いた時に円形に広がるスカートに対応しているのだが、それを成立させるための躍動す>>続きを読む

ゴースト・オブ・マーズ(2001年製作の映画)

3.6

再見。籠城していた刑務所に侵入され、後退/交代しながらの迎撃。律儀な切り返しと銃撃交代劇がこうも楽しい。逃げた先の扉を開けたら、前触れもなくこの乱痴気騒ぎ。アンスラックスの奏でる轟音も相まって敵も味方>>続きを読む

光る女 修復版(1987年製作の映画)

4.4

武藤敬司とすまけいの対決が素晴らしい。拳銃を構える相手に対し、武藤は赤いスーツケースをパカっと開き落下した鉈を掴み勢い前転、テーブルを倒し反応遅れるすまけいの腕を捻り上げ、肩口に鉈を振り下ろす。迷いも>>続きを読む

夏の娘たち~ひめごと~(2017年製作の映画)

3.6

画面が濁るくらいの大雨の中を屋根を求めて走る松浦祐也と鎌田英幸の妙な子どもっぽさ。漫画やラノベ原作映画に出演する十代の役者の演じきれなさ=身体ののめり出しが現れているのは逃げ出さざるをえない自然現象の>>続きを読む

魔法少女を忘れない(2011年製作の映画)

4.1

自転車映画ベスト。高橋龍輝が自転車で帰宅する場面の運動感が素晴らしい。速度を緩めず重心を移動させ家に帰る道のりを迷わず選択し曲線を描く。カメラは適切な距離を保ち、編集は異なる空間を繋ぎ淀みなく自転車を>>続きを読む

したがるかあさん 若い肌の火照り/恍惚 KOKOTSU/東京のバスガール(2008年製作の映画)

3.8

夏の日差しを遮る古ぼけた家屋、その屋内の翳りがとても良い。ノスタルジーとユーモラスとエロス。吉岡睦雄と下元史郎が『おじさん天国』に引き続き再び甥と叔父。甥のパンツを履く叔父。下元と速水今日子のからみに>>続きを読む

憐 Ren(2008年製作の映画)

3.8

首吊り死体を発見するときのギョッとする感じはコリン『ミスター・ロンリー』を連想。歩道橋の事故場面も事故そのものは撮らず、横転した自動車と子どもの死体と嘆く母親をゴダールみたいな横移動撮影でワンカットで>>続きを読む

妄想少女オタク系(2007年製作の映画)

3.8

甲斐麻美と木口亜矢が美術室で妄想しながら戯れあっている様子を長めのワンカットで捉えながら、突然それを目撃して唖然としている中山麻聖と馬場徹の切り返しショットへ繋ぐからビビった。BL絵を見て激昂し教室を>>続きを読む

色情団地妻 ダブル失神/わ・れ・め/笑い虫(2006年製作の映画)

3.5

葉月蛍のクロースアップに賭けている感じ。特に印象に残るのはプロレスラー役のチョコボール向井の試合で前方のリングへの視線と後方席にいるレスラーの妻冴島奈緒との切り返しを交互に撮りながら、やがてリングに視>>続きを読む

海辺の一日(1983年製作の映画)

4.5

エドワード・ヤン長編デビュー作。166分。シルヴィア・チャンの人生にとっても映画にとっても核心となる「ある日」がついにやってきたことを最初に同日のチャンの髪型を見せる事で効果的に提示する。フー・インモ>>続きを読む

だれかが歌ってる(2019年製作の映画)

3.8

カフェ〈タビラコ〉の店内へとつづく廊下は映画なら絶対に走らなければならない空間として存在していたが、ラストの森岡未帆の肩を叩く手のアクションつなぎとそれにつづく逃走と追走を一気に収めた縦構図ショットが>>続きを読む

シークレット・ディフェンス(1998年製作の映画)

3.5

サンドリーヌ・ボネールの移動がまったく省略されない。病院への見舞いも決意した殺人も、駅からホーム、列車に乗って、乗り換えまでしてとにかく長い。よくわからんしかなり寝たけど割と好き。誤射の反復、する方/>>続きを読む

かえるのうた/援助交際物語 したがるオンナたち(2005年製作の映画)

3.6

終盤、吉岡睦雄と復縁した向夏がアパートの廊下を歩きドアノブに手をかけるまでをワンカットで撮る。この長さにまたもや吉岡の浮気を目撃するのかと予感させるが、ドアの先に広がる予想外の光景に驚愕。映画に裏切ら>>続きを読む

たまもの(2004年製作の映画)

3.5

林由美香がとにかく何かを手放す/手渡すという描写が多い。顕著なのは弁当。逆に手渡したものが返却される描写はことごとく排除される(弁当箱を洗って返すのを面倒臭がる吉岡睦雄のセリフ)。吉岡はラスト一時的に>>続きを読む

ラストマイル(2024年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

爆弾処理のための水没の過程があっさり省略。テーブル上の爆弾をバケツまで移動させる過程のサスペンスを楽しみたかったので残念。宇野祥平活躍のラスト・ミニッツ・レスキューは箱を開けることで作動する爆弾(この>>続きを読む

インサイド・ヘッド2(2024年製作の映画)

3.5

ホッケースタジアムの窓から差し込む斜光の繊細なライティングとヨロコビの身体から発せられる粒状の光。環境と内面が光という要素で一致し、なんて事ないプレーの一つ一つに新鮮な喜びの発露を無言で見出す。またこ>>続きを読む

絶倫絶女 おじさん天国(2006年製作の映画)

3.8

吉岡睦雄が自転車に乗って赤い車を追って爆走しながらフレームインする瞬間にもう心奪われる。みんな言ってるけど、後半は『化け猫あんずちゃん』。下元史郎は最初の自転車以外運転しない(できない)のは何故なのか>>続きを読む

痴漢電車 弁天のお尻(1998年製作の映画)

3.5

幻想的なフラッシュフォワード(?)で鈴木卓爾が廃墟を歩くときの横移動撮影は熾火版タルコフスキー。佐藤宏のヒットマンがめちゃ怖い。伊藤猛を射殺し、長宗我部陽子を狙い後半再登場。正座したままの鈴木卓爾に呆>>続きを読む

彗星まち(1995年製作の映画)

3.9

火の弔いを終え、夜明けの川に四人が裸で入っていく場面の美しさは『父親たちの星条旗』を連想。なかでも年嵩の伊藤猛が戸惑いがちに、しかし途中から吹っ切れて水飛沫を上げながら疾走する姿は感動的。あの微妙な溶>>続きを読む

劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:(2024年製作の映画)

3.6

文化祭ステージでの想定外の事態に対するアクションの起点になるものをしっかり視点ショットで示しているのが良い。おかげで2回目がちゃんとギャグになる。ラストには驚愕。ブニュエル『哀しみのトリスターナ』じゃ>>続きを読む

Man on a Swing(原題)(1974年製作の映画)

3.6

スモールタウンの殺人事件を捜査する警察署長クリフ・ロバートソンと協力を申し出る自称超能力者ジョエル・グレイ。被害者の家族や関係者に地道に聴き込みを行うロバートソンの立場はまるでインタビュアーだが、グレ>>続きを読む

黒い下着の女(1982年製作の映画)

4.0

倉吉朝子と上野淳の電車での逃避行、窓の景色はおそらくスクリーンプロセス。この合成画面が移動を見せかけのものにし、逃避行の停滞と再出発を準備する。行き掛けに男児を拐い『パーフェクト ワールド』的移動の果>>続きを読む

実録・阿部定(1975年製作の映画)

3.5

宮下順子が江角英明を殺害するまでがかなり長いが、切断した陰茎を懐に布団に寝かせた愛人に別れいよいよ宿から旅立つその場面、雨戸を開け外の光を浴びながら窓を閉める時、宮下の顔を横切る格子の横の動きが何やら>>続きを読む

わたしのSEX白書 絶頂度(1976年製作の映画)

4.4

三井マリアと社長と部下の運転手との奇天烈な3Pはゴダール『勝手に逃げろ/人生』を連想。滑稽だがされるがままで痛ましい上述のそれとは違い、益富信孝と芹明香と行う3Pは写真失敗のおかげか本当にただのセック>>続きを読む

天使のはらわた 名美(1979年製作の映画)

4.0

流石に少しは自覚しろよ!と言いたくなる鹿沼えりには辟易するが、各事件現場のロケーション(特に羽田空港付近の埋め立て場)は格別だし、何より急激にホラー化する病院場面が素晴らしい。地下から屋上、さらにその>>続きを読む

天使のはらわた 赤い淫画(1981年製作の映画)

4.0

再見。泉じゅんの転倒からパッとロングに切り替わると一瞬だけ阿部雅彦と見つめ合い、ふたたび逃走劇が始まる。後退するカメラを走り抜ける地下通路での逃走劇は『コラテラル』を彷彿。泉と視線の交錯してきた阿部の>>続きを読む

放蕩娘(1981年製作の映画)

4.0

ジェーン・バーキンを追放するも姿が見えなくなれば慌てて捜索するミシェル・ピコリの動線に合わせて断片的だった家内部が上階から地下まで一続きに。直後の屋外場面でピコリを来訪するバーキンの動線は省略されてい>>続きを読む