このレビューはネタバレを含みます
冒頭、おそらくは前夜なし崩しに始まった行為にかまけて、怠惰にもカーテンを閉め忘れた窓前に滲む明け方の光を背負った妻が、逆光の中、定かならぬ表情で淡々と夫に語りかけるシーンを観た瞬間にはもう、この映画に>>続きを読む
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福祉の破綻で死ぬ人間とそれを必要としない人間を分つのは、見せかけの平和秩序に追従できるかどうかだ。
権力者たち(富裕層、テレビスター、この作品では全て男性)が決めた共通認識から零れ落ちていく者たち>>続きを読む
バットマンシリーズはすべて未見なのだけれど、クリストファー・ノーランのこのサーガは他のシリーズと比べて傑出していると聞いていたので、TV放映前に初めて鑑賞。
冒頭から全編とおして暗い映像が続く。>>続きを読む
盲目であることと、盲目的に生きることはどこか似ている。
見えないのに見える。見えるのに見えない。それは、目に映るものを反転させ、その内面を投影する。
「盲人とは思えないほど美しい」と言われる女>>続きを読む
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フランスのカレーに住む、とある富家の三世代に亘る姿を描く。
この家族に共通しているのは、各々がその内面に闇を抱いて、しかしそれに自分で気づいていないところだろう。
母殺し、工事現場の崩落事故、交通>>続きを読む
「パンク」というジャンルが元々反社会的な運動から生まれたことを考えると、この映画は政治的に極めてシニカルな側面を持っていると思う。
イギリス連邦体制と宇宙人の全体主義体制を対置させているのが面白い>>続きを読む
1920年代のニューヨークが舞台というのが面白い。
移民排斥運動が盛んな時勢で、株高で社会的には高揚している世界のなかで淘汰される魔法族という設定がいい。
異質なものは排除し、経済的な成功のなか>>続きを読む
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このシリーズは、一貫して人間の科学技術に対する驕りとその傲慢さが描かれてるけれど、今回はそれにある種の大胆な解決を図ったように思える。
動物愛護的な観点から恐竜の保護を訴える主人公たちと、金儲けの>>続きを読む
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冒頭の、少年の後姿を接写するカメラワークが、次いで主人公へと向けられる彼の目線に移動する場面から、既にこの映画のテーマは示唆されている。
喧嘩に取り憑かれた兄(柳楽優弥)、それと対照的に内向的な弟>>続きを読む
問題作。
物や人が二重に見えたり、子供をアパートの屋上から落下させる場面や車に轢かれる瞬間を幻視したり、沖縄のガマでの出来事を彷彿とさせる戦闘員が部屋に現れ、子供を銃殺する幻覚をみる女性を、沖縄出>>続きを読む
4時間にも及ぶセックスオンパレード映画。
ちなみに、『アンチクライスト』『メランコリア』そしてこの『ニンフォマニアック』の3作が「鬱三部作」の最終作として位置付けられているらしい。
セックスオ>>続きを読む
ラース・フォン・トリアーの鬱映画。
ラースがセラピーを受けた時に着想を得たということで、いわく「鬱病患者は先に悪いことが起こると予想し、強いプレッシャーの下では他者より冷静に行動する傾向がある」。>>続きを読む
夫との性交中に子どもが転落死したことで精神失調気味になった女が夫から「セラピー」と称してエデンと呼ばれる森に連れて行かれ本格的に破滅していくスリラー。
〈プロローグ〉〈悲嘆〉〈苦痛〉〈絶望〉〈三>>続きを読む
夫の故郷の街に引っ越してきた夫婦が、夫の学生時代の旧友に再会したのを機に、夫婦関係が破綻していくサイコスリラー。
血が流れたり、過剰な暴力シーンはないが、代わりに心理的な不安を煽る演出になっている>>続きを読む
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事件現場に残された5つのメモになぞらえた連続猟奇殺人事件を追う刑事と犯人との駆け引きを描いたサイコサスペンス。
この映画の最大の失敗は、デヴィット・フィンチャーの『セブン』を否が応でも想起させる>>続きを読む
主人公のトムは、恋人のギョームを亡くし、哀しみのなか彼の家族の暮らすファーム(農場)へ向かう。恋人の葬儀に参列するためだ。そこで待っていたのは、息子に男の恋人がいたことを知らない母親と、暴力的で支配的>>続きを読む
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伝説的カルト女優の母親がかつて演じた役を獲得することに固執する女優と、両親(実は兄妹)の結婚を再現しようとする姉と弟。
焼死した母親から性的虐待を受けていた女優と、弟との婚姻関係に囚われ家に火を放>>続きを読む
家父長権的な立場にある夫(古舘寛治)と、夫に敬語で話しかけるプロテスタントの妻(筒井真理子)、その娘と3人で暮らす家に現れた八坂(浅野忠信)という男によって「家族」が崩壊していく過程を描いた作品。>>続きを読む
突如現れた謎の宇宙船に調査に入った女性が、地球外生命体との交流を試みる物語。
冒頭の、全面ガラス張りのベランダから見える夜明け前のような薄暗い海のシーンがラストに回帰していくのは、タルコフスキーの>>続きを読む
ディカプリオが念願のオスカーを獲得した作品。
北米の植民地産業(毛皮と鉄斧、銃、ナイフ、火薬の交換)で先住民族への侵食が進んでいくという歴史的な背景をしっかり描いていたのには感心した。
主に白>>続きを読む
32歳引きこもり女性がボクシングで自分自身をビルドアップしていく物語。
家族との不和や、元ボクサーの恋人とのセックスとその男の浮気、働くことになったブラック企業のコンビニの同僚からのレイプなど、い>>続きを読む
何年か前に一度観たきりで、最近思いたって観返したら思っていた印象以上によかった。
冒頭のトマト祭りのシーンがこの映画のすべてを象徴している。
母の血、息子の血、出産することで流れる血、そして、息子>>続きを読む
すごすぎる。とんでもない映画だった。
アイドルが歌って踊る風景を撮影するカメラの端っこで、ひとり死にゆく男。
名前も台詞もなく、延々と映し出される約30分間、男がひとりの人間として捉えられることは>>続きを読む
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幼い頃に目撃したある事件と、両親の離婚が原因で心を閉ざしがちな主人公が、ある青年と出会ったことで本当の自分を取り戻していく。
主人公の名前が「オスカー」で、相手の青年の名前が「ワイルダー」なのは、>>続きを読む
夫の元に届いたある手紙が原因で、結婚45周年記念日までの6日間のあいだに夫婦の拭いがたい齟齬が徐々に浮かび上がっていく様子を描いた群像劇。
20代の頃に交際していて、結婚まで考えていた女性の死体が見つ>>続きを読む
パリ郊外にある古い屋敷に住む写真家に助手として雇われた青年が、写真家の娘と恋仲になりながら、父親に土地を手放させて立退き金をせしめようと画策する。
そこに写真家の死んだ妻の幽霊や様々な怪奇現象が挿入さ>>続きを読む
「20世紀は、映像で捉えられた最初の世紀である」
————NHKスペシャル『映像の世紀』より
映画を観るという行為は、観客の一方的な視座の前でつねに無防備な状態としてある映像から>>続きを読む
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娘をレイプされて焼き殺された母親と、彼女に手を焼く末期ガンの警察署長、その部下の人種差別主義者の警官が、そのままこの作品のタイトルと呼応している。
復讐を願う母親がその怒りを向ける相手は、捜査の進ま>>続きを読む
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「LGBT」という語の意味を、子どもたちに教えることの困難さを描いた映画だった。
保健の授業で突発的に行われた性的少数者への言及が、ひとつのクラス内の人間関係を揺るがしていくわけだけど、そこから波>>続きを読む