ジジイさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

ジジイ

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凱里ブルース(2015年製作の映画)

4.2

時空が歪み全編夢を見ているかのような心地よさだった。何と言っても河べりの街の長回しに唸った。これは三途の川なのか?と思うほど、生と死と夢が混沌と混ざり合った不思議な映像体験に眩暈がした。これが長編デビ>>続きを読む

グローリー 消えた腕時計(2016年製作の映画)

4.1

2016年、ブルガリア、ギリシャ映画。吃音のある鉄道保線員が線路で大金を発見、届出をするが事態は思わぬ方向へ…という物語。面白かった。とにかく役人たちが横柄、対応が最悪で胸糞だったが、ハンデのある主人>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

坂本龍一のピアノの流れるラストこそよかったが、全体としてはそこまでハマらず。主演の男の子たちが微妙に似ていて、かつ女の子のようなキレイな顔立ちであることがステレオタイプすぎて気になった。湊くんは依里く>>続きを読む

愛する人に伝える言葉(2021年製作の映画)

3.7

主治医を演じた男性は本物の終末医療の先生で演技は初めてなのだという。ドヌーヴとマジメル親子の物語ではあるのだが、この主治医の映画における存在感と意味はとても大きい。医師や看護師を集めたミーティングでは>>続きを読む

パリ、テキサス(1984年製作の映画)

4.5

主演のハリーディーンスタントンは2017年に亡くなっているが、当初この役は脚本を書いていたサムシェパードに依頼されていたという。原作エッセイ「モーテルクロニクルズ」も書いていた彼が固辞したことでハリー>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.0

31歳になろうとする若き父親と普段は離れて暮らす11歳の娘のバカンスの物語。事件らしい事件はほとんど起こらないし、仲のいい父娘の映像が時にビデオカメラ越しに映し出され、どうやらそれを大人になった娘が見>>続きを読む

にっぽん昆虫記(1963年製作の映画)

4.2

1964年今村昌平の大傑作。地を這う昆虫のように本能全開でたくましく生きていく女たちの物語。面白かった。激動の昭和史を背景に全編を通してむせ返るような「生」のエネルギーに圧倒された。おおらかな「性」と>>続きを読む

ワンダーストラック(2017年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

「キャロル」のトッドヘインズ監督作。2017年。ベンとローズの人生が交差するシーンは感動的なのだけれど、まあ想像の範疇だしそこまでハマれず。ベンが出会った男の子が偶然博物館関係者の息子だったりが気にな>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

4.0

ナイキの社名とロゴはサモトラケのニケに由来するのだという。頭部を失ってもなお逆風に立ち向かうその姿は力強く「勝利」を目指す社風に相応しい。80年代のナイキのバスケット部門はコンバースとアディダスに大き>>続きを読む

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)

4.0

よかった。鑑賞後タケちゃんを演じた原田琥之佑のインタビューを見て驚いた。そこには役の人格を微塵も感じさせない落ち着いた12歳の少年がいた。祖父は2011年に亡くなった名優原田芳雄だという。相手役の番家>>続きを読む

帰れない山(2022年製作の映画)

4.0

都会育ちのピエトロはある夏、母親とバカンスで山村を訪れ牛飼いの少年ブルーノに出会う。一夏を通して親友となった彼らはその後、異なる生き方を選ぶものの、その友情は歳月を超えて続く…という物語。スタンダード>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

4.2

製作会社は当初この映画のプロットを男性主人公で監督に依頼したという。傲慢な男性権力者が自ら撒いたスキャンダルの種によって糾弾され転落していく物語と言えば「SHE SAID」が記憶に新しいが、主人公にレ>>続きを読む

カランコエの花(2016年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

女子高生たちの何気ない日常は自然でよかったのだけれど、肝心の保健教師と当事者の描き方に不自然さを感じた。相談を受けてすぐにLGBTの授業を不用意にしてしまうような教師に、誰にも言えないような秘密を告白>>続きを読む

永遠の人(1961年製作の映画)

4.2

これってタブレット純の元ネタなのか?フラメンコギターの弾き語りも斬新な1961年の木下恵介作品。すごく面白かった。高峰秀子の長男を演じるのは当時高校生で、本作が映画正式デビューの田村正和。モノクロで描>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

4.0

60分でサクッと観られるカウリスマキ作品。1994年。男女4人の笑えるロードムービー。ラスト小津映画で娘を嫁に出した夜にかかるような劇伴に爆笑。車に装備されたコーヒーメーカーとレコードプレーヤーがかっ>>続きを読む

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ニューヨーク州で23年の禁固刑を受けたハーヴェイワインスタインは最初の3年の刑期を終えて現在70歳。この2月にカリフォルニア州で新たに16年の禁固刑を受け、事実上の終身刑だと言われている。巧妙に隠蔽さ>>続きを読む

フィツカラルド(1982年製作の映画)

4.5

大傑作。こんなスケールの実写映画はこれから先も二度と作られないのではないか。アマゾンという未踏の地で実際に起きているクレイジーな出来事をひたすら「写しただけ」の映像。その記録を目撃することで、われわれ>>続きを読む

黒衣の花嫁(1968年製作の映画)

3.9

記録。キルビルの元ネタとなったトリュフォーとジャンヌモローのサスペンス映画。1968年。原作は「裏窓」などで知られるコーネルウールリッチ。面白かった。ラストも見事。

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)

3.0

記録。松本穂香が期待される自らのイメージをそのまま演じているようで少し居心地が悪かった。全体的に語り口が浅薄に感じられ、澪が東京に馴染めない辛さや、再開発によって失われつつある商店街の悲哀にも、あまり>>続きを読む

一晩中(1982年製作の映画)

4.0

序盤こそドラマティックに見えてワクワクしたが、途中からこの映画のコンセプトがわかってくると、時折ニヤつきながらひたすら身を任せるしかなかった。文字通り「一晩中」繰り広げられる総勢80人くらいのカップル>>続きを読む

静かな雨(2020年製作の映画)

4.0

「お互いの世界にお互いが住んでいて、ふたつの世界は少し重なっている。それで、じゅうぶんだ」この作品は、今この瞬間を幸せに思えるかどうかという思いの大切さを静かに問いかけてくる。そして原作小説が持つ「物>>続きを読む

オルメイヤーの阿房宮(2011年製作の映画)

3.8

記録。『地獄の黙示録』の原作者ジョゼフコンラッドの処女小説をシャンタルアケルマンが映画化。アジアに入植した白人が熱帯のジャングルに文字通り飲み込まれ、消化され溶けてなくなるかのようにアイデンティティを>>続きを読む

13回の新月のある年に(1978年製作の映画)

3.8

ファスビンダーが自身の伴侶の自死をきっかけに作り上げた問題作。1978年。「エルヴィラはかつて結婚もしていたが、今は性転換して不安定な生き方をしている。ある日一緒に暮らす男に出て行かれた彼は、絶望に暮>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.5

原作は未読だし完全にノーマークだったけど、友人に勧められるままドルビーアトモスで急遽鑑賞。結果、死ぬほど感動した。何だこれ。主人公のサックスへの不器用だが真摯で強烈な情熱が、そのままこの作品の映画化へ>>続きを読む

ロストケア(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

斯波(しば)が介護士になろうとしたのは何故なのか。自分と同じように介護で共倒れになりそうなのに、どこからも救いの手が差し伸べられない境遇の家族を見つけて、自らその「救い」を与えたいと考えたのだろうか。>>続きを読む

セイント・フランシス(2019年製作の映画)

3.9

記録。面白かった。重くなりがちなテーマを軽妙にユーモアを交えて表現していて、序盤からくすくす笑いながら観た。脚本はブリジットを演じたケリーオサリバン本人によるもので、彼女の実体験を下敷きにしているとい>>続きを読む

四月の永い夢(2017年製作の映画)

4.2

冒頭の桜並木と菜の花の中にたたずむ喪服姿のカットが哀しく美しい。恋人に永遠の別れを告げられたその年の「四月」に、ずっと頑なに閉じこもっている彼女の心が、一瞬にして伝わってきて胸が苦しくなるのだ。中川監>>続きを読む

ラブレス(2017年製作の映画)

4.0

ロシア語の原題は「非愛」であり単に「愛が無い」というより、より強く「愛の対極」をイメージする言葉だという。ニュアンスとしては「憎しみ」ではなく「無関心」が近いのではないか。ここに登場する夫婦は確かに最>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.0

身体が小さく難読症もあって勉強がまるでできなかった彼は早くからその才能が突出していた映画の世界にしか逃げ道がなかったようだ。逆に言えば運命の神がこの稀代の大監督を何が何でも世の中に産み出そうと必死だっ>>続きを読む

エレナの惑い(2011年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

「父帰る」のアンドレイズビャギンツェフ監督作品。面白かった。端正で静かな画角から伝わってくる、今にも何かが起こりそうな緊張感がたまらない。寝室こそ別であるが、とても仲睦まじい老夫婦に見えるウラジミルと>>続きを読む

好男好女(1995年製作の映画)

3.4

1950年代の台湾で国民党政権による政治弾圧が起こる。いわゆる「白色テロ」である。監督としてはこの事件を本当は正面から描きたかったと想像するが、台湾現代史の中で長らくタブー視されてきた題材ゆえに、この>>続きを読む

スワンソング(2021年製作の映画)

3.6

記録。タイトルは「芸術家が亡くなる直前の最高の仕事」の意。監督によればこの作品は「失われゆくゲイカルチャーへのラブソング」であり、その通りだと思った。ウドキアが伝説のヘアドレッサー(実在)に完璧になり>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.5

マルチバース全体から見れば、ランドリー店バージョンのエブリンはかなりの負け組なのかもしれない。だがその落ちこぼれゆえに無尽蔵のポテンシャルがあるという設定は泣かせる。それはまるで未だ何者にも成りきれて>>続きを読む

オール・ザット・ブリーズ(2022年製作の映画)

3.7

「生きとしいけるものすべて」HBO製作のドキュメンタリーで本年度オスカーノミネート作品。世界一人口の多い都市デリーで20年にわたってトビを中心に猛禽類の保護活動を続ける兄弟の物語。冒頭から工場の煤煙の>>続きを読む

オリ・マキの人生で最も幸せな日(2016年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

記録。コンパートメントNo.6のユホクオスマネン監督作品。実話ベース。バスに乗る直前にプロポーズするシーンはよかったが、そもそもの二人の関係性が曖昧で、そこまで乗れなかった。ラストすれ違った老夫婦は実>>続きを読む