アウシュビッツ収容所のすぐ隣に建設した大豪邸に住む、収容所長一家の毎日の生活を淡々と描いた映画である。映画としてのエンターテイメント性は皆無だが、強い社会へのメッセージを効果的に伝えたという点で名作で>>続きを読む
「体は成人女性、頭脳は赤ちゃん」なベラが、冒険を通じてすくすくと自我を確立させていく成長譚を、ドリーミーな舞台衣装の甘い味付けと、非常に悪趣味なエログロシーンのスパイスを散りばめながら描いた映画。あま>>続きを読む
映像も音楽も演技も美しいにも関わらず、もやもやした気持ちがずっと残っていた。そして、東京出身のわたしが海外の映画館でこの映画をみたにもかかわらず(なんなら子どものときの友達が映画に出ていた)、まった>>続きを読む
フランス語学習がてら鑑賞。このタイトルは、映画において「転落死」と「夫婦の終焉」の原因を、それぞれ死に体を解剖して推測する行為を指したダブルミーニングだと思われる。
単純なストーリーに帰することはでき>>続きを読む
A24が手掛けた上質な韓国ラブ・ロマンス映画。過去映画史の授業で、ロマンスの物語を成立させるにあたってはふたりを阻む障害という要素が不可欠だと学んだが、この映画においては韓国と北米という距離がその仕掛>>続きを読む
スピッツのささやかなライブを映画館で楽しめる良作。
これまで繰り返し聞いてきたスピッツだけど、舞台になる旧双葉幼稚園園舎という空間を媒介することで、スピッツの綿密な音の作り込みにはじめて気付かされた。>>続きを読む
この映画は原爆の開発と投下について、欧米の幅広い賛否両論の見方を描きつつ、結論としてはオッペンハイマーの後悔を通じて、その暗部を明らかにするものだと解釈した。現在も核の危険が存在し、またその他科学分野>>続きを読む
監督・グレタ・ガーウィグ、脚本・ガーウィグ&バームバック夫妻という前情報より一筋縄ではいかない作品に違いないと踏んでいたが、期待を超える怪作だった。現実社会の課題と歩みをフィクション社会であるバービ>>続きを読む
大好きな坂元裕二さんと是枝監督の作品ということで、これ以上なく自分の期待値が高かったが(コラボ報道を聞いた際は、「花束〜」の絹ちゃんばりに「これ内心喜び歓喜する私」状態だった)、それを優に超えていく作>>続きを読む
映画の構造も"Shitheads"たちもこの映画のミステリーネタも、すべてグラス・オニオンだったんだなあ
上映後の映画館に観客の拍手が響くのは初めての体験だった。全般、荒削りでキッチュな展開が続くが、それ以上に作品から放たれるエネルギーは前例がない。
統治者たるイギリス人たちの暴虐さおよびイギリス文化の>>続きを読む
自分の子どものときに見ていた世界を思い出させるような、あたたかで丁寧なストーリーテリングと、子役の自然な演技が何より素晴らしかった。最近は"Musique de futur"を繰り返し聞いている。
女性の人生の多様な選択を肯定するような映画に見せかけて、結果として女性の人生の価値について伝統的かつ画一的な見方のみを提示している点に違和感を感じた。原題は"Look Both Ways"だけど・・・>>続きを読む
世界史で勉強した「ドレフュス事件(1894)」の概要・意義を学べた映画。ちょうど反ユダヤ感情について著したジョージ・オーウェルのエッセイを読んでいたこともあり、欧州地域における反ユダヤ感情の根深さにつ>>続きを読む
社会派×エンタメ映画、韓国の得意分野だと思われる。この分野の第一人者ポン・ジュノ監督の諸作品の他、1987、タクシードライバー、お嬢さん等、名作を目にする機会がこれまで多く存在した。残念ながら、近年の>>続きを読む
帰省時に母と鑑賞。カンニングをスパイ映画風に撮影した独創的なエンタメ映画である一方、格差社会の不条理な現実とその世界で個人がどのように尊厳を保っていくべきかという問いを扱ったものでもあり、エンタメ性と>>続きを読む
ナレーションやインタビュー映像が挿入されず、観客は登場人物の隣ですべての出来事を経験する、”追体験”型ドキュメンタリー作品。
正義が当たり前に正義として尊重される世の中を作り上げていく上でのガバナン>>続きを読む
一人舞台がこんなに面白いなんて、ジョディ・カマーの演技力に脱帽した。過去に類似のつらい経験を持つ人が見ることはおすすめでない劇だった。
物語冒頭に挿入される対談で、「疑わしきは罰せず」と「証拠裁判主義>>続きを読む
「ごくせん」などの不良ものが大の苦手であることを顧みることをせず、名作として有名だし、スピルバーグだから外さないだろうと軽い気持ちで映画館に行き後悔した映画。終始誰にも感情移入できず、ひたすら登場人物>>続きを読む
単体では良い映画だと思いつつ、どうしても名作の万引き家族と比較してしまい、スコアは低め。「万引き家族」を韓国で語りなおし、明度を上げ(→希望のある結末)そして鮮明度を下げた(→現実からより乖離した、テ>>続きを読む
歳をとるにつれフィクションからのストレスが受け止められないようになっている気がする。リアリティのある悲劇作品がいちいち心に重く感じられるようになっている。そんな私にとってはこういう安全で楽しくてセンス>>続きを読む
この映画を通じてなにより感じたことは、社会からの疎外の結果、自己肯定感・効力感を喪失した人間、死を恐れずむしろ志向する人間は、社会にとってなにより脅威であるということだ。最近の類似事件を踏まえてもやも>>続きを読む
この映画の根幹となるテーマは、他者とのコミュニケーションと、人生に起きる悲劇との向き合い方。監督の主要なメッセージは、主に岡田将生演じる高槻耕史とワーニャ伯父さんの台詞によって語られているように思われ>>続きを読む
気候変動問題を巨大彗星の追突に置き換えてアメリカ政治・経済界と社会の反応を皮肉たっぷりに風刺した映画。性格の悪い映画が好きな性格の悪い私は楽しめた。マネー・ショートとブックスマートにつづき、アダム・マ>>続きを読む
!最高な映画体験だった!
「細心の注意を払って作り出したので、劇場で鑑賞することこそがベスト」とヴィルヌーヴ監督がストリーミング配信を批判していたけど、まさにその通りで、映画館で見ないとこの映画の魅力>>続きを読む
信頼できる映画好きの女友達が軒並みお勧めしていた作品、やっとみることができた。
男女間や階級間、都市と地方の断絶や軋轢より、世代間のそれを扱っている映画だと思った。旧世代の価値観を持つ親世代とそれを>>続きを読む
地盤・看板・カバンなし、美容室の息子が、地元の有力者(父親は政治家・母親は地元新聞・放送の長)の息子(平井デジタル庁長官)と戦う、胸熱な少年漫画のような話。最初は半信半疑で見始めたが、問題の本質を洞察>>続きを読む
主人公の名前・カサンドラは、ギリシア神話に登場するトロイの王女の名前。未来予知の能力がありながらその言葉を誰にも信じてもらえないという境遇を持つことから、「身近な人間関係での不条理な状況に置かれ、社会>>続きを読む
ストーリー展開自体はいわゆる"American Dream""少年の成長譚”系としてはかなりシンプルかつ王道だけれど、珍しい食材とスパイスの味付けで絶品に仕上がっている感じ。
まず、これまで題材とさ>>続きを読む
「燃ゆる女の肖像」は原題の « Portrait de la jeune fille en feu »のほぼ忠実な訳。このFeu=炎は、女性であることによる理不尽な運命に対する怒り(結婚を強制されるエ>>続きを読む
多くの人が意見するように「マリッジ・ストーリー」や「ビフォア・サンライズ」(三作目まで!)を想起させるような映画だった。同じ日本という東京という文化圏の、自分と同じ世代(おそらく同い年)を描いた、その>>続きを読む
癌検査の結果を待つ若く美しい歌手・クレオの5時から7時までの2時間を描く映画。さすがアニエスヴァルダ、どこを切っても美しいカメラワークと、女性の繊細な感情の機微やその自意識の強さが印象的である。
物>>続きを読む
過去に広島平和記念資料館を訪ねたが、全く当時の日本政府内の意思決定についておそらく意図的に言及がされておらず、また今となっては大切なパートナーとなった米国を強く糾弾することが憚れることも相まってか、あ>>続きを読む
親と姉妹(刺激の強い作品が苦手)と観る映画を30分以上探した結果、大晦日に観るにはめでたそうで良いかと思い本作に。
結果としては想定通りの信頼と安心のメリル・ストリープ作品で、最初から最後までテンポ良>>続きを読む
いわゆる古典的なミステリーに、アメリカと移民にまつわる現代の問題を注入した作品だった。
米国人たち自身(ネイティブアメリカンを除いて)元来移民であり、先祖が作り上げた資本の上にあぐらをかいているにも>>続きを読む