しゅんさんの映画レビュー・感想・評価

しゅん

しゅん

キートンの大列車追跡/キートン将軍/キートンの大列車強盗(1926年製作の映画)

-

移動として行きて帰るを明示している点ではマッドマックス怒りのデスロードの先達。

冒頭、列車技師が貴重という職場上の理由で兵役を免除されたことを自らの力量故と勘違いするキートン。彼が兵役志願しなかった
>>続きを読む

進めオリンピック(1932年製作の映画)

-

90度での出会い頭、ホコリを抱き合うようにはたき合う。
主人公の「ブラシのセールスマン」という設定に、アメリカにおけるセールスマンの地位の高さを思う。

私がこの映画が好きなのは、群像性によるものだと
>>続きを読む

レイクサイド マーダーケース(2004年製作の映画)

-

冒頭の写真撮影現場、ベッドシーン、湖周りの夜と、青い光に包まれている。蝶を足でつぶしたときの粘り気と、死体の髪の毛の粘り毛の重なりが、事件のオチを予告する。
役所広司の寝そべる仕草がなんだか気になって
>>続きを読む

サッド ヴァケイション(2007年製作の映画)

-

観よう観ようと思ってずっと見てなかったやつ。『EUREKA』と対比をなすような、素早すぎるカット割りの多さが一番印象に残っている。そこに、浅野忠信が川に下りてゆく場面、浅野忠信と宮崎あおいが夜中に会話>>続きを読む

キートンの蒸気船/キートンの船長(1928年製作の映画)

-

前半は、軟弱な息子と粗野な父親、貧しい船乗りと金持ちの船乗り、不器用な少年と愛らしい少女という対比の組み合わせによって笑いを誘う喜劇。水に落ちる運動が中心。敵対の解消で終わるかと予想させるし、実際に最>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

-

トリニティ核実験時の時間差の振動が、その後にオッペンハイマーの心理内音響として度々使用される。スピーチ時の観客の愛国的高揚。雄叫びと足踏みが、爆発と重なる。
静寂からの轟音。そのダイナミズムが、本作の
>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

-

すっかり書くの忘れてた!

こんな広告的な作品、というか実際に渋谷区のトイレ広告の意図が働いてる作品なのに、いい映画になっていることに驚く。映される風物もセリフも広告そのもの。石川さゆりが働く小さなバ
>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

-

ドラえもんと鬼太郎を響かせつつ、虚構との距離を虚構で描く。気づいたら、フィクションの人物たちに対して生き延びてほしいと願っている自分がいる。その分、絶対の友情を相対化する後半の展開も効く。

物語展開
>>続きを読む

#ミトヤマネ(2023年製作の映画)

-

YouTube、テレビ中継、MV、ライヴシーン、ディープラーニングポルノと画面の質感がどんどん変わっていく。古典的な映画美学ではなく、「倍速視聴で映画を観る」時代の美学を見つけようとしている。その分、>>続きを読む

男女の戦(1928年製作の映画)

-

エマ・ストーン主演のテニス映画のタイトルはこれから取ってるの知らなかった(さすがに無関係ということはないだろう)。夫婦が喧嘩する時の室内を前後に行き来する動きと付随して動くカメラは正にテニスのラリーみ>>続きを読む

イントレランス(1916年製作の映画)

-

DVDも持っているのに家で長いサイレント見ることにたじろいで今まで見てなかった古典中の古典。映画をよく観るために観る、といった学習のつもりで臨んだ部分もあったが、実のところひたすら単純に面白かった。>>続きを読む

ペナルティループ(2024年製作の映画)

-

管理統制とテクノロジーが願望を実現し、代わりに絶対的束縛を求める。そうした設定は荒木監督の前作『人数の町』と共通している。防護服のような仕事服と力の抜けた普段着の対比も同様。
若葉竜也と山下リオの恋愛
>>続きを読む

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)

-

並んで歩くことが安心を生み、陽射しを共に浴びることが感情の高まりを示す。
森七菜の娘離れできない父役・竹野内豊のヤバさに説得力があった。暗室の写真の並び。
バルト9シアター7はスピーカーからぢりぢりと
>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

-

はじめて山崎貴の映画観たらしい。

神木隆之介と浜辺美波は二人とも水に落ちる。
ゴジラへの接近感が肝心と言われて、その通りだと思う。とにかく近い。近い話だと思うが、ゴジラの地響きがずっしりくる。それが
>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

-

前作より面白い。そりゃそうか。
救世主を拒んでた奴がいつのまにかその気になってる。普通だった人がヤバくなってく様子がいい。砂からナイフが出ているように見えるやつよい。

前作の「動きねぇー!」という退
>>続きを読む

私の父は正しかった(1936年製作の映画)

-

父を反復する、名俳優の息子である名俳優サッシャ・ギドリそのものを表す室内劇。

ジャクリーヌ・ドリュバックを上から下に撮る時の上目遣い。彼女が現れたときに世界が変わる。事態が良くなったわけではないのに
>>続きを読む

シャンゼリゼをさかのぼろう(1938年製作の映画)

-

フランス王制、帝政、共和制の変遷を偽史的に描く。ルイ15世のところやたら長いなと思ったら、そういうことかい!最後になって、これが戦争に備える映画であることに気付かされる。

鶏と人を吊るすモンタージュ
>>続きを読む

ある正直者の人生(1953年製作の映画)

-

双子の兄弟。いずたらと後悔と返信願望が重なる。斜めに映された橋を渡り去っていくミシェル・シモン。

最初、娘が映されないのが思わせぶりだなと思ったけど、物語上特に重要な演出ではなかった。映らないテレビ
>>続きを読む

彼らは9人の独身男だった(1939年製作の映画)

-

社会不安の中、国籍をほしい移民女性のためにギトリが妙案を思いつく。独身老人ホームを作って、集まった男たちと結婚させればいいのだ。そこに集まった「素晴らしき放浪者」9人。無事彼等は結婚式を挙げるがーーー>>続きを読む

カントナックの財宝(1950年製作の映画)

-

人々が同時に幸せになるために必要なもの=広い土地、ということがこの映画を観た素直な感想です。満員電車なう。

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

-

ロールプレイングゲームじゃん。焦点人物となる青年ヤノーシュは常に他者の依頼によって動き、街の住民達はコマンドを入力しないとセリフを返さない。ヤノーシュの背中から前方を捉えるポジションの多用も含めて、R>>続きを読む

王冠の真珠(1937年製作の映画)

-

サッシャ・ギトリの好きなとこは、本人が役者として思い切り出演しているが故に不要な神話性を感じずに観れること。まぁ神話性を感じるのはこちらの問題とも言えるが、それにしても一人四役を演じて歴史の軽薄さを証>>続きを読む

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

-

音に対する集中を誘う映画で、多摩センター団地周囲の音とジョンのサンによる音楽が溶け合う場として時間が流れる。長回しが長くないのは、それ以上に録音が持続しているから。ダンスを二つの場から映すシーンに、目>>続きを読む

浪花の恋の物語(1959年製作の映画)

-

斜めの奥行きの中で人を配置させ、見ている人間と見られている人間、あるいは関係ないことをしている人間を同時に映す。物語の第三者を映すような撮影は、破滅に突き進む男女の道行をすぐ横で見つめる近松門左衛門(>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

-

行方不明の親友の探索が未完の映画の上映と重なる物語に、平屋の家屋、ニコラス・レイ、列車の到着といった(エリセ的な?)モチーフが連なる。アナ・トレントの変わらなさに本気で驚く。
何気ない切り返しの会話の
>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

-

最終バスの電気が消えて、再び点灯した時に運行中止を知った乗客が渋々降りてゆく。あるいは、薄暗いATMからお金を下ろそうとして、残金不足の文字が出る。またあるいは、かつての雇い主の家の窓に立ち、不法住居>>続きを読む

みなに幸あれ(2023年製作の映画)

-

ホラー版「誰かの願いが叶う頃」。シンメトリーの構図が、幸福の裏返しとしての恐怖を演出する。因習村的主題と青春恋愛映画を両立する脚本。古川琴音へのライトの当て方と表情の変化に、目が引きつけられる。服装の>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

-

話を少しずつ暖めつつ、下り坂の自転車、雨、湯気、歩き食いの繰り返しなどで感性をほぐしてくる。編集が何かを掬い取っている。事務所の奥の部屋の光がパッとつくとき、ハッとする。また観たいと思う。

光を浴び
>>続きを読む

彼方のうた(2023年製作の映画)

-

最初の小川あんの横顔、少し細い耳に目がいった。たぶん音の映画だった。音の映画だったけど、私はトークゲストの大九明子監督が指摘するまで、ラストシーンに電車の音が重なっていることに気づかなかった。

映画
>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

-

マジ面白い。動物と人の境、養子関係、幽閉と解放、魚眼レンズの駆使。ヨルゴス・ランティモスが『ロブスター』『聖なる鹿殺し』『女王陛下のお気に入り』で試してきたことがエンターテイメントとして実を結んでいる>>続きを読む

戸田家の兄妹(1941年製作の映画)

-

写真を撮ることは不吉の兆しなのは『麦秋』と同じ。老夫婦の子供たちが不義理を働くのは『東京物語』と同じ。あらゆる小津映画の記憶が反映して眩しい。同じ向きをする人物の並びを何度観たことか。上流家庭の冷淡さ>>続きを読む

悪意の眼(1962年製作の映画)

-

観ている間の苛立ちと不安が最後で解放される、典型的なほどのサスペンス映画。子供じみた男が子供じみた動機で子どもじみた策略を弄する。作家の妻への身勝手なストーキングを一人称で見せていく。回りながら庭にい>>続きを読む

>|