しゅんさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ミカエル(1924年製作の映画)

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老画家と少年モデルと女性をめぐる世俗劇。『ゲアトルーズ』や『怒りの日』を思うと、目線と立ち位置をドライヤーが大事にしたいたのだと気づく。フローベールを思わせる非情のプロットにおいて、それぞれの目の動き>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

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スーパーマーケットのレジでやたらと大量の肉のバーコードを読み取る冒頭から音はずっと鳴っていたはずだし、音楽も非常に大きな役割を担っている。にもかかわらず、無声映画の気配が印象として残っているのは、街を>>続きを読む

暗黒への転落(1949年製作の映画)

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冒頭の拳銃を水溜りに投げ捨てるアクションと中盤の拳銃を部屋で手に取るアクションが酷似しており、ジョー・デレクの動きで結末を先取っているように映る。

法廷で長広舌を働いた後のハンフリー・ボガードの前方
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

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三度のサスペンスでドキドキしつつ、川の横移動や窓枠ごしの再会にグッとくる。現地民と秘書の女性二人が残るシーンが素晴らしい。あの一瞬だけでドラマに(中国秘伝のレシピのような?)複雑さと謎を与えてる。

ドリーの冒険(1908年製作の映画)

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映画館に行く時間が取れないので家で久々に観た。

「Adventures」といいながらドリーは終始受け身の存在であること。川を下る樽の中身が見えないこと。

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

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わざわざ洋城を拵えてのバトルの動きに上がるし、上下運動を強調する怨霊の殺し方もよい。とはいえ、脚本はまともに人を掬うものの、まともであるが故に戦争の扱いは実は雑に思える。横溝正史と戦場の無責任体制と重>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

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まじよくわからん。ジョゼフィーヌとの関係の話と、ナポレオンのキャリアの盛衰の話が噛み合っていないようにみえる。

大砲に耳を塞ぐ動作を繰り返すホアキン・フェニックスと、大砲によって氷水に突き落とされる
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美しき結婚(1981年製作の映画)

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上手くいかないと思われたことが上手くいかない映画。髪長い学生との電車での遭遇でサンドイッチしている。

最初にベッドを共にしていた画家のポスターが家に飾られていたことを思い出す。友人の唆し方も雑だが、
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ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

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ファスビンダーを観るたびに、岡崎京子の言う「愛と資本主義」ってゴダールじゃなくてファスビンダーじゃん、って思う。バチくそお洒落だし。約150カットの少ないカットで織りなすこの室内愛憎劇も、徹底して「女>>続きを読む

(2023年製作の映画)

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まず、ずっと楽しかった。疲れてたけど観て元気になった。なので好き。

映画監督であることと芸人であることを融合させようとしている、は単純すぎる見立てだろうか(アウトレイジからしてそうかもしれないが)。
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サタデー・フィクション(2019年製作の映画)

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『ブラインドマッサージ』同様、見えないことが効果を成すロウ・イエとツォン・ジエンコンビ。どこにいるかわからないことが、コン・リー演じるスパイ女優と真珠湾攻撃直前の上海、それぞれの先の見えなさと呼応して>>続きを読む

飛行士の妻(1980年製作の映画)

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尾行のシーン、通り過ぎる老婆も含めてなんかいい。後半の室内の会話、何気ないシーンかと思ったらずっと続いて、鳥人間コンテストで低空飛行のままめっちゃ距離伸びる飛行機みたいだった。このストーリーで飛行士の>>続きを読む

悪の報酬(1956年製作の映画)

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冒頭の刑務所出所シーンから良いリズムで、そこにいる全員が端役なのもいい。警部役の水島道太郎がガソリンスタンドの娘、二木てるみに声をかける。ガラス越しに、無言の合図を交わすのを双方の視点から撮る。その家>>続きを読む

群盗、第七章(1996年製作の映画)

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映写室でタバコを燻らせる初老の男たちが出てきた時点で、シニカルな匂いが漂う。
と思ったら、受け止めたものは思いの外シリアスだった。

イオセリアーニの自由連想的な側面と歴史的な側面が衝突する。『素敵な
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北極百貨店のコンシェルジュさん(2023年製作の映画)

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ハレーション気味に設定された画面が、百貨店の晴れやかさと、そもそもの原作設定の残酷さの双方に関わっているように思った。動画になるとエモーショナルになって、涙腺が刺激される(普通に泣いた)。原作読み返そ>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

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まさかの、ダメ殺し屋の負債回収映画だった。そう思うとちょっと泣ける。2時間ずっと「面白い」って感触が続くの凄い。

スミスはずっと使われてるけど、音が小さくなったり大きくなったりを繰り返すから、感情的
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東京の宿(1935年製作の映画)

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『東京物語』『東京暮色』で描かれる状況のヘヴィーさと本作を重ねると、小津における「東京」は深刻さの符牒だと気づく。

同じ向きに座る子供たち、荷物をほったらかしにして後ろに気持ちを引きずられながら前に
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学生ロマンス 若き日(1929年製作の映画)

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友人同士の若い男二人が女性を取り合うのだが、女性には許嫁がいたということが判明する。この物語構造はバルネット『青い青い海』と全く一緒なのだけど、共通の元ネタが存在するのだろうか。

最初に街の風景をカ
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突貫小僧(1929年製作の映画)

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14分短縮版と、最近見つかったマーベルグラブ盤の比較。完全版38分はまだ見つかっていない。

マーベルグラフは家でみるためのディスクで、30年代に家庭用に販売されていた短縮版。当時にDVD、ブルーレイ
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淑女と髭(1931年製作の映画)

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二週間前に観たけど忙しくて感想書けてなかった。

久しぶりに全くのサイレント環境で映画を観る。
時代遅れの象徴としてのヒゲ面。その男を巡る、喜劇調の恋の鞘当て。
室内で男女が目線を送ったときに、外の床
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白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

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原作は10年以上前に読んでおり、南博の演奏も当時聴いた。
記憶の断片の連なり(だったはず)の原作エッセイを、二つの時間の交差として繋げるアイディアの実践に楽しくなる。池松壮亮は、服装をカッコよく決めて
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アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学(1988年製作の映画)

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疲れてて20分くらい寝てしまったのでなんともアレだが、悲惨な記憶やナンセンスを語るユダヤの俳優の言葉が多くの頭韻を踏んでた。細かいライミングは覚えてないけど。

野外で全て撮られる。常にどうにもならん
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テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR(2023年製作の映画)

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アルバム(=ERA)ごとに舞台美術と衣装を変えていく約40曲のヒストリー・テリング。テイラーが歌い笑うと同時に、15年に及ぶ物語が折り重なっていく。観客はテイラーの曲と自分の間に生まれた物語を重ねてい>>続きを読む

地に堕ちた愛(1984年製作の映画)

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リヴェットの映画には関係の深刻さを蒸発させる効果があるなと思った。愛は地に落ちるけど、愛ではない何かが軽くなる。
70〜80年代にかけてリヴェットは「演劇」と「二人組」の映画を撮っているけど、この映画
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オオカミの家(2018年製作の映画)

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やっと観れたがこれは確かに強烈で、手の込んだストップモーションピクチャーという段階の作品ではなかった。要再見。延々と持続する家での蠢き(まじでずっと蠢いてる)。罰と救い、二つの共同体の価値未決定さにも>>続きを読む

グランツーリスモ(2023年製作の映画)

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現実離れした話かと思いきやほんとにほぼ実話らしい。

なんつーか、メチャクチャOneohtrix point never感がすごい。シミュレーションがリアルに勝るという思想。鉄の速度の中で舞う木の葉。
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バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

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めちゃエモい気持ちになってしまってなんとも感想をうまく言えないのですが、異様なアイデアを思いついて実現まで漕ぎ着けるリチャード・リンクレイターの創造性が作中のバーナデットの創造性にリンクしていて、実に>>続きを読む

熊は、いない/ノー・ベアーズ(2022年製作の映画)

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キアロスタミにしろファルバディにしろパナヒにしろ、イラン出身の著名な映画監督は何故こんなに車の車内を撮るんだろう?
本作も多くが運転中のシーンを撮っている。
目の前を横切る、窓の外に誰かがいる、遠隔カ
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私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター(2022年製作の映画)

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兄弟喧嘩の話かと思いきや、近親相姦の予感を漂わせる。それどころか、精神科医の友人は弟に飛行機で頬を寄せ、姉は自らを崇拝するルーマニアの少女と仲睦まじくランデブーする。仲良いはずの姉の息子に、弟は突如怒>>続きを読む

悪太郎(1963年製作の映画)

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横長のスクリーンをこれでもかと駆使する横移動(たとえば建物下での喧嘩シーン)奥行きのあるロングショット(二人がキスするまでよ散歩シーン)、黒白のコントラストの強調(白い傘の印象強さ)。形式性への執着が>>続きを読む

二十歳の死(1991年製作の映画)

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不在の一人を巡る偶像劇の中でそれぞれの孤独にフォーカスする。風呂場での過呼吸のシーンとか、サッカーでやけくそになるシーンとか、シーンそれぞれの少年人物がいる。パスカルがかわいい。灰色のセーターやカーデ>>続きを読む

イスマエルの亡霊たち(2017年製作の映画)

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マチュー・アマルリックが主演なのは知っていたが、マリアン・コティヤールとシャルロット・ゲンズブールがマチューをめぐって恋のライバルになる展開に、「そんなベタに美男美女!」と笑ってしまった。全員好きなの>>続きを読む

青い青い海(1935年製作の映画)

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激しく険しい波がひたすら美しく映される冒頭に魅せられつつ戸惑い、子供じみたおかしな三角関係にちょっと退屈しつつ微笑み、最後の救いと苦さと爽やかさで全てが報われる。船の中の揺れるカメラが素晴らしいが、彼>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

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舞台裏を加えた二重の劇として展開される本作。ジェイソン・シュワルツマンが髭をつける/外すで全く違う顔をしており、これがスカーレット・ヨハンソンとの間で繰り広げられる会話と、マーゴット・ロビーとの一度だ>>続きを読む

ソウルに帰る(2022年製作の映画)

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自分が全く背負ってない傷についての映画で、それを観るのはとてもよかった。養子の自意識が継続的な関係を困難にする。本作で役者デビューのパク・ジミンは、いつ爆発するかわからないサスペンスを顔に宿している。>>続きを読む