レクさんの映画レビュー・感想・評価 - 15ページ目

前科者(2022年製作の映画)

3.6

罪を犯した者の更生に寄り添う国家公務員・保護司を描いた社会派ドラマ。

罪と防犯、贖罪と寄り添い。
警察側や事件性含めリアリティはなくエンタメ寄りではあるが、良い意味でも悪い意味でも"過去は変えられな
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クライモリ/間違ったターン(2003年製作の映画)

3.0

森という開放的でありながら閉鎖的でもある絶妙なバランスで成り立つ舞台。
そこに潜む得体の知れない恐怖、美男美女とタンクトップとスプラッター描写。

改めて観てみて、シンプルな作りはホラー映画のお手本の
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ザ・ブルード/怒りのメタファー(1979年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ホン・サンスが自身の体たらくを男に投影するように、アリ・アスター自身が経験した想いを作品に昇華した『ミッドサマー』のように、クローネンバーグの殺意がこの作品に反映されている。
クローネンバーグ監督が自
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黒い家(1999年製作の映画)

3.8

90年代のJホラー独特の湿り気と荒い画質、森田芳光監督のカメラワークと編集、照明や音、小道具の相性の良さ。

大竹しのぶと西村雅彦の怪演に留まらず、時折挿入されるコミカルさで改めて恐怖と笑いは紙一重だ
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イット・カムズ・アット・ナイト(2017年製作の映画)

3.0

猜疑心と恐怖心の関係を明るみにする静かな話運びと地味な映像に更に焦らしが入ることで、観ている側としては乗れなきゃ終始辛い。

雰囲気だけ1人前にスリラーで物語としては特に何も起こらず、ただ起こりそうな
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ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)

3.5

新時代への幕開けと人々を魅了する歌声。
思った以上に歌が多く、観客をも巻き込む歌唱力は劇場案件か。
その歌唱シークエンスでは時間を忘れるもののその前後との繋ぎが薄いため、やや乗り切れない点も。

とは
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ズーム/見えない参加者(2020年製作の映画)

3.2

コロナ禍のロックダウン中にズームで降霊術をすることに。

全編PC画面の映像で見せ方や機能を使った演出も好感的。
当時観ていればアイデアとしては面白かっただろう。
ただ68分という短さであのおまけ映像
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ウィリーズ・ワンダーランド(2021年製作の映画)

3.0

廃遊園地の清掃員として働くことになった無言のニコラス・ケイジ。

所謂ニコケイ映画としては上質な方だが、ホラーというよりファンタジーで飛躍したものがなく退屈。
清掃し、エナジードリンクを飲みほし、ピン
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映画 としまえん(2019年製作の映画)

1.5

老舗遊園地としまえんにまつわる都市伝説ホラー。

としまえんに特に思い入れもなく、ホラー描写も中途半端で結局何がどうなったのかわからないまま人数が減っていく。
嫌味を言われたり本音が見えなかったり、女
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浜辺の女(2006年製作の映画)

3.7

女性に焦点を当てつつ、だらしない男をコミカルに描くこの視点の鋭さ。
反復することで生じる差異が視覚的に分かる男女間の構図とストーリー構成も面白い。

ホン・サンス監督のフィルモグラフィーではまだ初期の
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女神の継承(2021年製作の映画)

4.1

ナ・ホンジンが原案・プロデュース。
POVモキュメンタリー形式を活かしたホラー演出と悪魔祓いの連動、そしてオカルティック排泄描写の使いどころが上手い。

"受け継がれる"とされる宗教観と神の存在を扱う
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ヘイター(2020年製作の映画)

3.7

SNSを介した中傷戦略を描く。
表情で語られる心情の変化、闇へと足を踏み入れたことで起こる状況の悪化。
これらはあくまで内包するテーマを炙り出すもの。
証拠を残さぬ工作、掌握術、嘘を覆い隠す嘘。
悪事
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女は男の未来だ(2004年製作の映画)

3.6

ホン・サンスの初期作。
過去の思い出が現在を欲情させる。
男は嘘をつき、女性を神格化して支配欲を満たす。

ある台詞とラストカットがその体たらくを露見する形となっているが、ホン・サンス監督の自己投影で
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気まぐれな唇(2002年製作の映画)

3.8

ホン・サンス初期作。
ズームやパンなどホン・サンス節のカメラワークはないものの長回しで捉える男女の機微を繊細に描き出す。

交わされる酒と男女の営み、繰り返される台詞と言葉の呪い。
恋愛における押し引
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快楽の漸進的横滑り(1974年製作の映画)

3.6

エロスとタナトス、活人画を用いた芸術性と死体愛好症の異常性。
"生と死"をシームレスに結びつけ、死体とマネキンのフラッシュバックがその叙述の時系列を横滑りさせる。

模倣と反復からなる変化こそ、時間な
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奴隷の島、消えた人々(2015年製作の映画)

3.3

塩田奴隷の調査のために離島に訪れた記者を描く、新安塩田奴隷労働事件からインスパイアを得た映画。

モキュメンタリー形式で事件の真相を追う気持ち悪さと閉鎖的な場所での不気味さ。
人怖が凝縮された闇を見た
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グレイマン(2022年製作の映画)

2.5

不得手とする自分から見てもわかるアクション映画のコピペのクドさ、加えてカット割りも好みではない。

本筋よりアクションを楽しむタイプの映画で、父と子の問題からマチズモ的思想への飛躍は面白いが、結びつき
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キングダム2 遥かなる大地へ(2022年製作の映画)

3.8

主人公・信の牽引力が周りへと波及していく"軍"としての在り方。
原作の序盤でも重要な蛇甘平原の戦い及び羌瘣の過去パートを上手く纏めきった佐藤信介監督は流石といえる。

ツッコミどころもあるが、原作を知
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説得(2022年製作の映画)

1.5

ジェーン・オースティンの同名小説の再映画化。

第四の壁を超える演出がこの物語の言葉の持つ説得力を消し去ってしまっている。
心情を台詞にすることで感情の含みを持たず、心境が軽薄に映ってしまう。

加え
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殺人ワークショップ(2012年製作の映画)

3.5

DVを受ける女性が人の殺し方を教えるワークショップに通う。

刺して抜く!刺して抜く!

運命共同体という小さなコミュニティの閉鎖的で不穏な空気。
無名俳優を起用した良い意味での素人臭さによって物語の
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呪詛(2022年製作の映画)

3.6

モキュメンタリーやファウンド・フッテージ、Jホラーへのリスペクトなど様々なホラー映画の要素を詰め込み、そのすべてをタイトルに帰す構成の巧さが光る。

話題にあるような恐怖心はほとんど抱かなかったが、経
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ビリーバーズ(2022年製作の映画)

3.9

無人島を舞台に食欲と性欲を結びつける構成も巧いが、正当化された価値観と抑え込んだ欲望に対して信仰心を用いて潜在意識を揺さぶり人間の持っている本能を炙り出すプロセスが良い。

これが、同時に映画館で映画
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タール -因縁の荒野-(2022年製作の映画)

2.5

辺境にある町で起こった殺人事件をベテラン警部補が捜査する。

アニル・カプールとハルシュヴァルダン・カプール、親子共演で敵対する役どころは面白いのだけれど、拷問シーンとストーリーテリングが如何せん地味
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わたしは最悪。(2021年製作の映画)

2.0

自分が何者かを模索する中での迷いや反発。
章立てた構成と人生を重ね合わせ、二元論で語らないプロローグとエピローグの対比から選択の重みを感じさせる。

社会的規範から逸脱するための"ギミック"は面白い試
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哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)

3.4

2020年公開『CURED キュアード』同様に今の時代を反映させ、ウイルス感染と人間の凶暴性、変態性を生かした演出がとても良い。

ただ、グロ耐性がないとキツいけど、ゴア描写を押し出した前評判でハード
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桜のような僕の恋人(2022年製作の映画)

3.2

難病モノで泣かせようとする強引な作りは一先ず置いておいて。

流れゆく時間と時間を切り取る写真。
ありふれた風景が二人の中では違って見える、思いを馳せる媒体に写真を使っているのが良い。
Mr.Chil
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ライダーズ・オブ・ジャスティス(2020年製作の映画)

3.8

所謂リベンジもののセオリーを体現するマッツと社会のはみ出し者たちによる団結とハズし。

マッツだけでなくニコライ・リー・コスとも何度目のタッグだアナス・トマス・イェンセン監督によるブラックユーモアが、
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ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

3.5

韓国で撮っても是枝裕和監督の世界は崩れない。
疑似家族という媒体を使い、登場人物の視点誘導から観客に感情移入させる構造は流石。

一方で、人身売買という重いテーマから想像していたよりも遥かに優しく仕上
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スティルウォーター(2021年製作の映画)

3.7

愛と罪、真実の所在、守りたい者を守ること。
感情は在りもしないものに意味を持たせ、現実を見誤らせる。

故郷と異国を結びつけるものが純粋な気持ちを冒涜し、跳ね返ってくる恐ろしさ。
サスペンスよりドラマ
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レアの大好きなこと(2015年製作の映画)

3.3

イタリアの8分短編アニメーション。

ヨーロッパでは当たり前の有料トイレを舞台としたストップモーション。
清掃員が好きなこととは何か。
僅かなチップを貰い夢を膨らませる彼女の姿と現実の姿、そんな中で些
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三姉妹(2020年製作の映画)

4.5

三姉妹が縛りつけられる家族という呪い、狂おしいほど痛々しくそれでいて温かい姉妹愛。

家父長制という韓国の悪しき構造を批判する痛烈な吐露に脳天をぶん殴られ、信仰と心情の乖離に僅かな希望の光を見る。
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あなたの顔の前に(2020年製作の映画)

4.2

ただの日常、何気ない会話が生み出す温度。
その背景にぼんやりと浮かび上がってくる人生。
ある事を明かされた終盤、今まで見てきた景色がすべて異なって見える。
映像から感じ取れるものこそ、この映画のすべて
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ぱん。(2017年製作の映画)

3.5

日本の14分短編映画。

阪元裕吾と共同監督・主演の辻凪子がクビになったパン屋にインスパイアされて作られた本作。
色々ぶっ飛び過ぎだが、京都を舞台に暴力は描写はほぼない滑稽さで描いたブラックユーモアは
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べー。(2016年製作の映画)

3.9

日本の37分短編映画。

京都芸大在学中に阪元裕吾監督が撮った処女作。
愛と暴力の衝動と連鎖、超低予算ながらバイオレンス描写の見せ方とトイレの使い方が良い。
残酷学生映画祭でグランプリを取ったのも頷け
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シンデレラ -Cinderella(2021年製作の映画)

2.5

シンデレラの衣装を買った女性が無実の罪で捕らえられる。
衣装が呼び込む怪奇現象、怨恨と復讐を巡る悲しき物語。

面白かったのは冒頭までで、インド特有の回想の使い方が下手。
ジャンプスケア多めのホラー演
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盲目の目撃者 -Bhramam(2021年製作の映画)

3.9

盲目を偽るピアニストが殺人現場を目撃するクライムコメディ『盲目のメロディ〜インド式殺人狂騒曲〜』のリメイク。

プロットはほぼ同じ、後半の改変点とウサギがイノシシになったくらい。
「目には目を」を皮肉
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