レクさんの映画レビュー・感想・評価 - 38ページ目

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.2

司法制度の正しさと在り方、正義とは何たるか。
アーロン・ソーキンの言葉の魔術、そして過去の出来事が現在の社会を象徴する脚本力。
結末がわかっている物語の完璧な落とし所はエンタメを超えたメッセージとそこ
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スパイの妻(2020年製作の映画)

4.5

TVドラマ的な雰囲気から一変、舞台のような俯瞰と銀幕に吸い込まれる没入感が入り交じり、"観る"というよりも"のめり込む"或いは"飲み込まれる"感覚に惚れ惚れ。
圧倒的な余韻、黒沢清のフィルモグラフィー
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ワイルドグラス(2020年製作の映画)

3.5

悲劇と喜劇に振り回される運命、人生と人生の交錯。
接点のなかった男女三人の出会いが三者三様の人生に愛や夢を抱かせる。

"やわらかく君をつつむ あの風になる"
物語の美しさと切なさを際立たせる小田和正
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CASTLE(2019年製作の映画)

3.5

平和の場である茶室と戦争の場である城。
戦国時代に生きた建築家の感情を考え、墨で描かれた短編アニメーション映画。

縦横無尽にかけ巡る臨場感溢れる視点から見せられるモノクロの濃淡、墨絵の美学。
内包す
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セイフガード(2019年製作の映画)

3.2

ロンドンで和食レストランを営む家族がマフィア抗争に巻き込まれる。

日本語と英語が飛び交い日英露のそれぞれの思惑が入り乱れる中、店のオーナーである主人公が秘密を抱えながら家族を守るために奮闘する。
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ウイルス(2019年製作の映画)

3.6

原因不明の高熱と嘔吐で病院に運び込まれた患者。
致死率70%のウイルスの感染源とその感染経路を探る。

あえて主人公を設定せずウイルスは誰もが感染するものとして医療従事者と患者、その家族を巡るドラマを
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血のお茶と紅い鎖(2006年製作の映画)

3.0

人種差別や性差別を交えつつ宗教的且つ寓話的に描いた、人形を取り合う人形劇のストップモーション・アニメ。

血と水、生と死。
搾取する側とされる側、犠牲の上に成り立つ利益と等価交換。
難解ながら過去にあ
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異端の鳥(2019年製作の映画)

3.8

原題でもある羽を塗られた鳥が群れから排他されるように、人が人を迫害する光景。
異質なものの排除、被害者転じて加害者へ。
散漫に映る挿話のすべては人の蛮行によって少年の心が黒く塗り潰されていく過程。
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結婚は慎重に!(2020年製作の映画)

3.3

当時のインドでは同性間の性行為は違法とされ、10年の禁錮刑。
女性カップルの挙式がキッカケで、インド最高裁判所が2018年9月に同性間の性行為を不自然な違法行為と定めた刑法第377条を憲法違反と判決を
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無職の大卒(2014年製作の映画)

3.9

大学で土木工学を学んだラグヴァランは職が見つからず家族から役立たず扱いを受ける。
大卒50万人のうち就職できるのは4万人、インドの就職難を問題提起とした社会派アクションドラマ。

溜め込んだ鬱積を晴ら
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ストゥリー 女に呪われた町(2018年製作の映画)

3.9

男が幽霊に攫われる奇妙な真実に基づくインドホラー。
身ぐるみ剥がす変態女幽霊と謎の美女、美女に恋する童貞青年と幽霊に唆されてバーフバリ化する友人。
男尊女卑を根底にしたシリアスな問題を軽快なコミカルさ
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ジャパン・ロボット(2019年製作の映画)

4.0

ヘルパーたちが手を焼く頑固爺の元へ送られた日本製ロボット。
親子の確執と疑似家族、想い出と記憶、感情とプログラム。

着ぐるみ感満載のロボットなど脱力系コメディに見せかけ、鋭い皮肉を随所に散りばめる。
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浄め(2017年製作の映画)

3.6

ある目的でインドを訪れた米国人女性が、バンガロールで危険を冒して拳銃を入手する。
インドの少年法の刑の軽さと増加傾向にある未成年者のレイプ事件を絡ませ、女性への暴力と性ではなく権力を問題視する力作。
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伝説の女優 サーヴィトリ(2018年製作の映画)

3.8

昏睡状態となった大女優サーヴィトリ。
彼女を取材することになった女性記者の視点から描かれる半伝記映画。

辛抱がもたらす成熟と信頼と愛。
女性記者が実在した大女優の過去を紐解き、願いや苦しみ、栄光と挫
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お気楽探偵アトレヤ(2019年製作の映画)

4.5

レイプ事件を捜査中に多数の死体が遺棄された怪事件の思惑に籠絡され、容疑者となった映画好きの探偵が映画で得た知識を使って事件を解決。

実際にあった事件から着想を得て製作された今作はリアルとフィクション
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僕の名はパリエルム・ペルマール(2018年製作の映画)

4.3

弁護士を目指す不可触民(ダリト)出身の主人公が仲良くなった女子大学生の親族から凄惨な暴力を受ける。

カーストによる不平等の是正のため、インドでは留保制度という政策が取られ、低カーストの社会的地位の上
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ビギル勝利のホイッスル(2019年製作の映画)

3.4

復讐の連鎖を断ち切る想い、親子の絆が次世代へバトンを渡す。
スポーツ精神も何もあったものではなく大将ヴィジャイがひたすら可愛いだけの映画だが、男尊女卑の根強いインドで女性が夢を掴み取る女性賛歌に確かな
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マローナの素晴らしき旅/マロナの幻想的な物語り(2019年製作の映画)

4.3

生、夢、孤独、家族、死。
捨てられた犬が飼い主を変え、名前を変えて辿り着く人生ならぬ"犬生"の終着駅。

クセの強い絵柄とアニメーションに戸惑うも、いつしかこの世界に惹き込まれ、ついには犬に感情移入し
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ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)

-

トランスジェンダーの主人公と母の愛を知らない娘の疑似親子関係。
その障害となるのが実母と周りの理解。
心揺さぶられる愛の多様性はあったものの、LGBTQのテーマを訴えたいがための演出がそのトランスジェ
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行き止まりの世界に生まれて(2018年製作の映画)

3.6

親子や人種問題、貧困と暴力の連鎖。
ドキュメンタリーである重みを大人へと成長していく青年たちを通してリアルに映し出す。

疾走感で駆け抜ける街中、転べば傷だらけになるスケボーという媒体が彼らの生き様を
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鵞鳥湖の夜(2019年製作の映画)

3.8

捜査線が敷かれる鵞鳥湖を舞台にギャングの抗争と警官殺しの逃走劇を描いた中国ノワール。

生臭い血の匂いを洗い流すように降る雨、退廃的な空気感に包まれた猥雑なネオン街、息が詰まるような閉塞的な社会を象徴
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思い、思われ、ふり、ふられ(2020年製作の映画)

3.4

恋愛と家庭問題、夢や理想を通して見せる四者四様の青春群像劇。
言葉にすることと心に仕舞っていること。
自分が傷つかないために、相手を傷つけないためにつく嘘。
アニメ表現では難しい感情の奥行きを具体的に
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妖怪人間ベラ(2020年製作の映画)

4.0

『妖怪人間ベム』にはお蔵入りした幻の最終回があった。
妖怪人間に興味を持ち、魅了され、人間性を失っていくサイコスリラー。

強さへの渇望と劣等感に対する憎悪。
病み狂っていく『シャイニング』ばりの森崎
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映像研には手を出すな!(2020年製作の映画)

3.6

SFやファンタジーをリアルにする英勉監督の作家性が爆発。

人間が想像できる空想世界を実現する夢に溢れたエンターテイメント。
冒頭から福本莉子で眼福し、寝顔の演技まで拝めるなんて是非とも腹パン決めてほ
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劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(2020年製作の映画)

4.0

時間とは必要なものであり、時に残酷なものでもある。
移りゆく時代に失われるものと残されるもの。
手紙という今や廃れた媒体にその時の感情を言葉に乗せて過去から未来へと紡ぐみちしるべ。
アニメ版から一貫し
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マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

4.2

別れの時間が迫る中に捉える二人の心境の変化。
切れる白熱電球に突然降り出す雨。
打ち明けられぬ想いとそれに伴う葛藤や苛立ち。
笑顔が溢れる瞬間と胸を締め付ける切なさ。
同性愛に対する内的独白を淡々と描
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わたしはロランス(2012年製作の映画)

4.2

自分の人生を否定し続けたトランスジェンダーの主人公が嘘偽りのない自分の人生を送る決心をする。
LGBTQをテーマに骨太な恋愛ドラマとして描きあげた超傑作。

エゴや葛藤とその選択の根底にある純粋な感情
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胸騒ぎの恋人(2010年製作の映画)

3.6

親友が想いを寄せる男性を好きになってしまった男性の視点から男女の三角関係を描く。

恋に落ちる過程、裏腹と駆け引き、嫉妬や苦悩。
片想いにおける辛さや切なさ、そして恋愛による滑稽さに至るまでが繊細に表
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ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -(2019年製作の映画)

4.2

上司のために感情を捨てた元軍人の自動手記人形と妹のために人生を捨てた良家の子女の友情。
郵便配達人が届ける幸せ、そして手紙が紡ぐ姉妹愛。

想いが繊細な言葉で綴られ、永遠の絆が生きる理由を情熱と希望を
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TENET テネット(2020年製作の映画)

3.7

時間の逆行で物語を進行させる。
時系列をいじることで、自分自身を欺く構成となっている主人公を介して観客自らが誤解する。
これらは正に『メメント』。
加えて、異なる時系列を同時系列で描く『ダンケルク』の
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マイ・マザー(2009年製作の映画)

3.9

グザヴィエ・ドランの19歳初監督作。
"母親への愛は無意識であり、親離れの時その根深さを知る"
母を愛せないが、愛さないこともできない。
愛と憎しみは表裏一体、半自伝且つ哲学的に綴られる思春期の独白。
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映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者(2020年製作の映画)

3.6

落書きに意味を見出す付加価値は自発的であること。
詰め込まれた風刺、技術発展した現代で見失っていた自由の創造性、創作意欲に対する意識改革。
勇者ひとりの力だけでなく皆が協力し合える世界の希望を描き出し
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映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~(2019年製作の映画)

3.8

劇場版27作目。
天の指輪輝く時、夫婦の愛が試される。
男と女だけでなく父と母を通して描く女性の強さと弱さ。
守る意志と信じる意思、お宝の石が導く家族の絆はラブラブファイヤー。
こんな家庭を持てたらき
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ジェニーの記憶(2018年製作の映画)

3.8

監督自身が幼少期に性的虐待を受けた実体験を基に大人になった今 この事実に向き合う姿を描く。

現在と回想の対峙で噛み合わない不確かな記憶、大人の身勝手な欲望によって植え付けられた偽りの愛によって美化さ
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砂漠でサーモン・フィッシング(2011年製作の映画)

3.0

タイトルにあるバカげたプロジェクトに臨む物語。

砂漠の枯渇と潤沢、遡上する鮭と放水による逆流。
机上の空論と現実を見据えたヴィジョンに薄く絡んでくる政治的思想と信心。
砂漠で鮭釣りと同じくらい場違い
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本当の目的(2015年製作の映画)

3.4

殺人を犯した売春婦が逃げるように乗り込んだ列車で同席した女性と意気投合。
陰鬱で暗いトーンのまま淡々と進行していく会話劇の中で、徐々に明るみとなる目的と育まれる心の繋がり。

邂逅によって重なり合う過
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