ナチスの収容所における看守と囚人という、極限的な非日常をともにした、対照的な立場の二人の女性を巡る愛憎を、偶然の再会を通じて元看守が回想するという体で語られる。作中でも南米への逃亡が示唆されるが、戦後>>続きを読む
アリダ・ヴァリがちょっと痛々しすぎてノリきれなかったのだけれど、いろいろ吹っ切れた後のブチ切れ具合は素晴らしかった。夜のヴェネツィアも。奥へ奥へと次々に開く扉、揺れるカーテンなど、屋内の細部までの絢爛>>続きを読む
タチの『トラフィック』よろしく消費社会やモータリゼーションを皮肉る大渋滞の超絶長回し。惨状の決定的瞬間を映すことはなく、機能不全に陥った事後、大量のクルマのクラクションだけが喧しく響き渡る。足を失った>>続きを読む
「マルクスとコカコーラの子供たち」というこれ以上ないほど的確な副題。女性への恨み辛みがやや見え隠れするのが可笑しい。政治意識が高じてもなお、いや高じるからこそ、女の子を追いかけずにはいられない、レオー>>続きを読む
ブニュエルはシュールレアリスムに再傾倒し出す前の中期の作品の方が好きかもしれない。草むらを分け入るシークエンス、水の描写が素晴らしい。少女の肢のクロースアップや動物のインサートショットはかなり露悪的。
化学物質に対する過敏症に苦しむ人々にとって、ケアコミュニティの存在はそれ自体が心理的なセーフスペースになる。ファイトクラブに登場する互助会みたいなノリだが、ああいうのが胡散臭いのは側からみたときの話で>>続きを読む
凸凹を交えた汽車の横移動の素晴らしさ。崖も滝も身体性を活かしたアクションのシチュエーションに変えてしまうキートンはやっぱりおかしい。滝のところで首を折ったらしいが。
「人生は素晴らしい」と謳いながら雨中を帰宅して待ち受けている修羅場をみせる際、ミシェルシモンからの視点で下品に大写しにすることなく、雨に濡れた窓越しに外から室内をゆっくりパンするカットを一つ挟むことで>>続きを読む
ナンセンスコメディとしてべらぼうに面白い。シニカルな結婚観を具象化したような。
落下、望郷といったイメージをごちゃ混ぜにしながら積み重ねて、ローグらしい赤で色付けしたような感じ。なにげにボカシなしでいろいろ映ってるが、ボウイの体が他の追随を許さぬほどエロかった。なんちゃって歌舞伎>>続きを読む
ホモソーシャルに、破滅的にしか生きられない男たちの悲哀。シネスコの画面で横並びに歩くのをみると妙に感動する。蟻。
ワイングラス、カーテン、鏡、階段などアイテムの使い方がいちいち巧い。キムギヨンの『下女』を思わせる階段と影。精神的にジワジワと追い詰めてからの主従の逆転っぷり、まっすぐな悪意が最高。
夢の話でありながらユングだなんだみたいな面倒な説明を排して、即物的な演出を積み重ねているところに好感が持てる。
多少強引ではあるが母もののノワールとして十分面白いし、ギョッとするタイミングで画面の端に猫が映り込んだり、不意にランプが揺れたりと、細部の豊かさにも満ちている。オフュルスの他の傑作群に比べると撮影の技>>続きを読む
いわゆる不在もの。周囲の人物の語りによって常にその影が見え隠れする実体なきレベッカと、その影に支配される名前のないヒロイン。カーテンの揺れ一つとっても屋敷に偏在するレベッカの影を見てとれる。
裁判以降>>続きを読む
周囲の人物たちに語らせるという体をとっているおかげで、冬の南仏を放浪するサンドリーヌ・ボネールの内面に迫ることは決してない。周囲の人間と表面上は触れ合いながらもどこまでも孤独なままでいた彼女を、「無垢>>続きを読む
キアロスタミのメタ魔術、ここに極まれりって感じ。ラストの超絶ロングショットは泣ける。
煌びやかな屋敷や装飾といった表層の内にあるあらゆる醜悪さを、覗きという行為を通じて引き摺り出す。カメラは基本固定だが構図や照明への拘りがかなりみられるので飽きない。
めちゃくちゃ面白かったが後で付けられたらしいショスタコーヴィチの力もでかそうなので、今度無声で見てみたい。
セネガル版『勝手にしやがれ』みたいな。カメラがよく動くので楽しい。音楽もいい。
70分以内の尺の時点で好評価。人物の登場も死も唐突で呆気なくて、だらだらと続くモノローグとのズレが面白い。
高層ビルを駆け上り窓から侵入するカメラは、均一に並べられた無機質な机と勤勉に働くサラリーマンを俯瞰で捉え、ゆっくりと主人公へとズームインしていく。この時代の特撮がどんな具合かはよく知らないが、兎にも角>>続きを読む
劇伴はやかましいし、カットバックはダサいし、保守的な恋愛観もキツかったが、田舎の土地に縛られた男女のメロドラマとしてそれなりに楽しめた。大枠としてやってることは君の名はと結構近いんじゃないかと思うが、>>続きを読む