しんさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

3.0

先進国の仲間入りを果たした(少なくともそう見えた)台湾の首都台北の上流階級を生きる若者たちの群像劇。PR会社(これ自体が作品を象徴するような形のない不安と期待を売る産業)の若き社長のモーリーを中心に、>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.5

「女の子(girls)」の遊具であり、女性(バービー)が男性(ケン)よりも権力を持つという現実世界と反転したバービーの世界を用いて、ジェンダーに鋭く切り込んだ本作は、『プロミシング・ヤング・ウーマン』>>続きを読む

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

3.5

大日本帝国が去り、共産党に敗れた中国国民党とともに多くの人々が移り住むことになった台湾。武器をとることが当たり前の環境、日本軍が残していった大量の武器、肥大化する官憲、安定しない経済、そして先の見えな>>続きを読む

インスペクション ここで生きる(2022年製作の映画)

3.1

敵を殺すことに特化した組織の異様さと、そこでマイノリティが生きることの難しさがよく描かれていました。軍隊というシステムは所属する個々人のことを考えて設計されるわけではなく、むしろシステムに個々人を合わ>>続きを読む

ジェーンとシャルロット(2021年製作の映画)

3.1

最初は金持ちの道楽かなと思う始まりで、話聞くだけなら勝手にやれよとさめていた。しかし物語が進むにつれて、ジェーンが自らの人生をときに否定的に振り返りながら、自分が何者かを語りによって確認していく展開に>>続きを読む

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

4.1

濃密な3時間だった。映画が始まるときに館内が暗くなる瞬間から、終わって明るくなる瞬間まで、一大叙事詩を味わい尽くした。軍閥時代から大日本帝国による占領期を経て、国民党政権、そして共産党政権から文化大革>>続きを読む

アイスクリームフィーバー(2023年製作の映画)

2.8

それぞれのシーンに差し色のようにビビッドな色を入れて、ぼやかす背景と浮き上がらせる物を対比させるなど、ビジュアルを意識した絵画のような映画でした。アイスクリームといってもバニラではなくチョコミントやブ>>続きを読む

星くずの片隅で(2022年製作の映画)

3.8

ケン・ローチ監督のような、苦しみながらも生きる人々への優しく愛のある眼差しと、その生を根本から奪おうとする過酷な社会制度や経済至上主義に対する厳しい批判が同居する素晴らしい作品でした。

新型コロナウ
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リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)

3.7

ストーリー上は、例えば大掛かりなセットを使ってずっと雪が降っている演出にしたかったでしょうし、CGをガンガン使って、シーンの統一をやりたかったでしょう。それができない低予算のなかで、これだけのストーリ>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

1.6

あまりにもオープンに語りすぎた結果、悪い意味でどんな解釈でも許容できる物語になってしまっています。『君たちはどう生きるか』というタイトルでありながら、お好きにどうぞと言っているようにしか見えない作り方>>続きを読む

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

3.8

12歳の少年の前にいる彼は「恋人」か「親友」か「幼なじみ」か。そのどれでもあり、どれでもないのだろう。グラデーションに満ちた思春期手前の心を深く描き、その残酷さに真っ正面から向き合った本作は、紛れもな>>続きを読む

セッション(2014年製作の映画)

4.3

もちろん名前は知っていましたが、いままで鑑賞する機会がありませんでした。本作に映画館で出会うことができて、本当によかったです。

エンドロールが流れるときに、ふと自分の背中が背もたれに着いていないこと
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小説家の映画(2022年製作の映画)

3.9

ホン・サンスらしい静かで優しい映画でした。書けなくなった小説家や出なくなった俳優など、ソウルでの闘いから離れた人々の静かな会話の群像劇です。ほぼ全編が白黒で展開され、会話自体もドラマチックとは正反対の>>続きを読む

探偵マーロウ(2022年製作の映画)

2.1

時代が変わったからなのか、自分の好みなのか、白人男性がタバコを加えながら教訓を語り、自らの身体性に酔いしれることをダンディズムと称する価値観に賛同できない自分がいます。

レイモンド・チャンドラーが探
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アーティスト(2011年製作の映画)

3.1

GAGA特集で視聴しました。現代の作品と考えると、ストーリーは単純で平凡ですし、取り立てて絶賛するものではありません。しかし、なぜそうなっているのかを考えると、無声映画とトーキーの質的な差異が見えてき>>続きを読む

アシスタント(2019年製作の映画)

3.8

ディレクターを目指して映画業界に就職したひとりの若い女性が、アシスタントという名の雑用に追われていく様子が淡々と描かれています。たしかに結構な衝撃作ですし、ホラーより怖いかもしれません。
お茶汲みやコ
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ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

3.3

男性名詞(he)で語られる「神」は、女性たちに「赦す」ことを求め続けてきました。そして「赦し」を受け続けた男性たちは、次第にそれを「許可」だと思うようになり、性暴力が常態化します。2010年というアナ>>続きを読む

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)

1.5

すべてが中途半端すぎて、途中からなにを見せられているのか分からなくなりました。ラブストーリーとしてもアクションとしても、ミュージカルとしても和解の物語としても、美しい自然を愛でる映像としても、及第点を>>続きを読む

苦い涙(2022年製作の映画)

3.1

主人公カントの二つの所有欲が重なりあう一室を描いたショートムービーでした。第一の所有欲は惚れた相手であるアミールに対する、愛ゆえの支配欲です。アミールに好きにしていいと語りながら、アミールが好きにする>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.5

燦々と太陽が照るトルコ。若き父と幼い娘の一夏の思い出が、スクリーンに映し出される。しかし、途中で差し込まれるハンディカメラの映像含め、すべてのカットがどこか物悲しい。これは二人が二度と会えないからなの>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

3.8

事実がいくつかあるとき、私たちはその間を埋めるように数限りない空想をする。「あそこから出てきたってことはあの店に行っていたにちがいない」、「顔にアザがあるから殴られたにちがいない」。事実が確定するのを>>続きを読む

渇水(2023年製作の映画)

3.7

100分という尺のなかで、表現したい過酷な現実を過不足なく描いたという点で、良作だった。現代社会において、公共財はみんなが使える財という意味ではなく、行政機関が独占的に配分することができる財という意味>>続きを読む

EO イーオー(2022年製作の映画)

3.3

主人公のロバに共感し、その理不尽な扱いには激しい怒りを覚える。しかしその共感も私が勝手にロバを人間的に見ているだけのエゴなのではないかという、不思議な自己嫌悪を感じる。全編通じて、そんな感じに襲われ続>>続きを読む

トリとロキタ(2022年製作の映画)

3.8

トリとロキタの二人は、逃げるときに鍵穴に砂を掛けて時間稼ぎをしたり、マフィアと相対しつつ商取引を完遂したり、入国管理局の求める答えを準備したりと、「生きるための知恵と経験」をあまりにも持ちすぎている。>>続きを読む

Winny(2023年製作の映画)

3.5

感情を揺さぶられる映画はいい映画だと思う。その意味で、本作はとてもいい映画だった。

科学者や技術者の多くは好奇心に突き動かされて生きている。その動機はしばしば人々に理解されないが、その動機こそがテク
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私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年製作の映画)

3.9

本作のベースになっているのは、「人生に絶望することは容易だが、人生を終わらせることは難しい」というテーゼである。オルガが置かれてきた環境は、容易に人生に絶望できるほどのものだった。身体的な暴行だけでな>>続きを読む

幻滅(2021年製作の映画)

3.5

奥村隆の『反コミュニケーション』によると、ルソーが人々に「仮面を剥ぎ取った透明なコミュニケーション」を求めた背景には、彼がスイスの田舎町からパリに移り住んだことがある。本作で描かれるパリは、まさにルソ>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

3.1

自分が元々この物語を知っていたからかもしれませんが、カタルシスや熱狂が少し足りなかった気がします。先行する二社が経営陣の混乱や伝統に縛られた契約で胡座をかいていた結果、ベンチャー精神を取り戻したナイキ>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.8

考えながら観れるのに、考えなくても面白いという一度で二度美味しい映画でした。

現代社会において、私たちは個性的に生きることを求められます。しかし完全に個性的に生きればいいわけではありません。「資本」
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.4

100分弱の短い作品ながら、丁寧な作りが印象的だった。ケイコの目線の鋭さは、自らが生きている世界への誇りと不信感がない交ぜになっていることを物語っている。

まず社会的な意義として、聾者が感じるであろ
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エゴイスト(2023年製作の映画)

3.9

「優しさ」と「エゴ」が紙一重の実践であることを丁寧な筆致で描いた名作。客観的に見れば一方が他方に経済的に依存しているという歪な構造がなぜ成立したのか、当人たちの「エゴイズム」から捉え直すことで、観客に>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

2.4

ゴジラやウルトラマンと比較すると規模が小さく、基本的にコップの中の争いです。だとしたら、もう少し人間関係を深掘りして欲しかった印象です。例えば緑川ルリ子と野原ひろみの関係性、本郷猛の過去からの苦悩など>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

1.5

新自由主義的政策を推し進めたサッチャーは、かつて「社会はない」と発言した。本作は、『君の名は』や『天気の子』と比較しても、最もグロテスクな形で「社会はない」現代の個人化と自己責任化を、はからずも表現し>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.3

かつて武藤敬司は「思い出とケンカしても勝てねぇよ」と言った。小学校の5年生の時に、担任の先生の趣味でクラス全員が読めるように教室の後ろに置かれた『SLAM DUNK』。今だったら、担任が教室に漫画を持>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

3.8

最高のマンガを最高のアニメーションにしてもらった。熱い涙が静かに流れる傑作でした。

まずは音。当たり前ですが、『BLUE GIANT』を冠した作品の音楽が酷ければ、全く評価に値しません。本作は心の底
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ペーパーシティ 東京大空襲の記憶(2021年製作の映画)

3.6

「紙と木でできた街」に無数の「火」が降り注ぐ。そんな凄惨な出来事が、1944~45年には日本各地で繰り返されていた。

本作品は、これまで日本国が東京大空襲の民間人犠牲者を黙殺し、一切の補償をしてこな
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