ロズニツァの『ドンバス』や『国葬』が好きなので、本作も期待していた。全体としては期待通りであり、超えてはこなかった印象。
1991年8月の共産党保守派によるクーデターは、教科書では一行で終わってしま>>続きを読む
8か月ぶりに映画館に帰ってきました。映画を見るために設計された空間で映画をみることが、この上なく贅沢なことだと改めて実感しました。本当に素敵な時間ですね。
さて作品です。中国東北部を舞台に生きる農民>>続きを読む
「逃げる」ことに人生を捧げた(捧げさせられた)一人の難民の物語です。アミンはアフガニスタン、ロシア、エストニア、デンマークといった国々で、さまざまな外部から逃げ続けなければならなかった彼が、アメリカで>>続きを読む
明るさと暗さが同居する、不思議な感覚にさせられる作品でした。事前知識がなかったので、本作が実話ベースであることは最後に知りました。元の話を知っていればもっと楽しめたのかなと思いつつ、知らなくても十分に>>続きを読む
ナイキかアディダスのPVを2時間見せられた感じでしょうか。すべてが中途半端で思想性もなく、いい感じのことをただ並べ立てているだけという印象でした。
そもそも東京オリンピック2020をほぼ見ていないので>>続きを読む
反ユダヤ主義の根深さや軍の閉鎖性、ナショナリズムの盛り上りの怖さなど、現代にも通じる問題を多数孕んだドレフュス事件は、今こそ振り返るべき歴史です。その意味では、映画化されたことを素直に評価すべきでしょ>>続きを読む
日本人が大好きなシーフードは誰が漁っているのか。普段あまり気にしないことの裏側にある奴隷労働の実態をあばいた、迫真のドキュメンタリーです。
まず出てくる証言がどれもエグいです。給料は一円も払われず、>>続きを読む
パルクールを描くにしては、ランの絵と背景が厳しい出来です。絵に立体感がないので、ベタッとした感じになっているし、走り方も雑です。結果として疾走感がない映画になっています。こういうところは子供向けだから>>続きを読む
V. ウルフの『自分だけの部屋』がそっと差し出されるシーン、サラブレッドの後ろ足が颯爽と映し出されるシーン、空想の芝生が広がるシーンなど、お洒落なシーンが満載の映画でした。
若かりし頃の不安定な恋、>>続きを読む
全体的に薄味な作品でした。ヒロインに感情移入できるかと言われると難しく、ストーリーに驚きがあるわけではなく、サリンジャーファンが好きになる作品でもなくという感じです。何を狙ったのかがいまひとつ分かりま>>続きを読む
広瀬すずが圧倒的な演技をし、松坂桃李が全力でそれに応える。脇を固める横浜流星や多部未華子も素晴らしい。役者の演技だけを見ても、近年の邦画ではベストに近い評価ができる傑作。
作品描写も素晴らしい。安直>>続きを読む
虚実の狭間を撮らせたらピカイチのセルゲイ・ロズニツァ監督が、フィクション作品として現代のドンバス地方(親ロシア派地域)を描いた作品です。
冒頭からフェイクニュース(ウクライナ側からの攻撃というフェイ>>続きを読む
生まれる前の作品ではありますが、『ウルトラマン』は大好きなドラマです。それを前提に本作を見ると、どのパートも及第点以上のできたったと思います。
最高だったのはウルトラマンのフォルムですね。CGではあ>>続きを読む
オードリー・ヘップバーンについては『ローマの休日』や結婚と離婚遍歴、UNICEFなど知っている情報が並べられていました。ただインタビューを上手く再構成したことで、「青い鳥」を探し続けたオードリーの人生>>続きを読む
友人から繰り返し薦められていた『オールドボーイ』が4Kレストア上映されることになったということで、映画館に行ってきました。
本当に素晴らしい作品でした。バイオレンス、サスペンス、ラブロマンスが高い水>>続きを読む
シャンタル・アケルマン映画祭にて鑑賞。基本的には静かでなが回しを中心にした映画なので、途中で少し飽きたり集中力が切れる瞬間はありました。しかし作品として描こうとしていた「透明さ」の度合いの問題は興味深>>続きを読む
ミュージカルという形式を用いることで、リアルとフィクションの境目を曖昧にし、主人公の願望を上手く表現していたと思います。アダム・ドライバーの丁寧な怪演も光りました。
本作はタイトルが『アネット』です>>続きを読む
露悪性の極致を行くような作品です。好きな人はとことん好きだし、嫌いな人は絶対に受け付けないのではないでしょうか。個人的には第三章辺りから作品の見方が分かってきて、頭の中で前半の意味も繋がってきたって感>>続きを読む
子どもと大人のバディものと書くと、平凡な作品に思えてしまうかもしれません。しかし本作の主題は双方の分かりあえなさであり、しかもその分かりあえなさを優しく包み込むような構成は圧巻でした。
ホアキン・フ>>続きを読む
1969年。ハーレムは悲しみに暮れていた。怒りにうち震えていた。そして革命を求めていた。そこに突如として現れた文化の波。その歴史は、つい最近まで消し去られていた。
本作はそんな「忘れ去られた」歴史(>>続きを読む
登場人物のライフストーリーが詳細に語られるわけではないのに、なんとなく彼らの深いところに触れた気がするという意味で、不思議な作品だった。
知り合うこと、触れ合うこと、分かり合うことの間にある想像を絶>>続きを読む
ゲーテインスティトュートでの試写会にて視聴。
全体的にナレーションが多く、説明しすぎな部分が散見された。また、調査不足からかありきたりな物語が流れ続け、その意味で見続けるのが少し苦痛だった。今まで全>>続きを読む
新型コロナウイルスに感染し、10日間の自宅隔離をNetFlixで過ごしたのですが、やはり映画館はいいですね。渇望していたのが分かりました。
さて本作は原作があるので、ある意味仕方ないのですが、「寡黙>>続きを読む
ソ連の一地方都市の行政官の話です。形式だけで労働者の声を聞き取らない評議会、保身に走り重要な情報や提言をしない下級行政官、普段は全く取り合わないにも関わらず有事には介入して無駄に問題を大きくするモスク>>続きを読む
死者の気持ちを慮るという生者の傲慢さを乗り越えて、それでも死者を悼むことができるのかを問う傑作でした。日々私が、自分が思うような他者であることを他者に押し付けていることをこれでもかと自覚させられました>>続きを読む
掲げた理想の気高さと、押し付けた現実の過酷さを同居させた国、ソビエト社会主義共和国連邦。二人のヒロインに焦点を当て、残骸となったソ連の記憶を現代の旧市街で考える物語です。
全体的にとても静かな作品で>>続きを読む
映画を評価する際に、ストーリーの出来や映像の美しさは大切な要素です。しかし映画館体験という全く別の次元の話があります。本作はまさに計り知れない映画体験をした作品でした。
これはバイオレンスなのかラブ>>続きを読む
期待していた割には、全体的に深みがなかった印象です。『ジョーカー』や『天国と地獄』のような作品の系譜かなと思っていたのですが、良くも悪くもアクションもの、サスペンスもの、ダークヒーローもの、ラブロマン>>続きを読む
パリのオートクチュールという華やかな世界の裏にあるお針子という仕事、そしてその世界の中の移民差別を描くという複層的な作品です。この視点はなかなか面白く、普段気にしない点を伝えてくれただけで意義があるも>>続きを読む
『ドライブ・マイ・カー』と『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の一騎討ちだと思っていた今年のアカデミー賞ですが、個人的には本作が受賞するのもありだと思いました。
近年のアジア監督ブームや作品の精緻さでいえば『>>続きを読む
私たちはどこまで「寛容」であれるのだろうか、あらなければならないのだろうか。作品が進むにつれて、どこがポイント・オブ・ノーリターン(引き返せなくなる点)だったのかが分からなくなる。結論をぼんやりと知っ>>続きを読む
まさに狂気をまとった子供という感じの主人公(山野井泰史)でした。趣味と言いきるクライミングに命を懸け、それでいて悲壮感が漂うわけではありません。「人生クライマー」というタイトルがドンピシャですし、人生>>続きを読む
TBSドキュメンタリー映画祭2022にて視聴。政治家のドキュメンタリーは最近の流行りなので、どんな作品になるのか期待していた。ただ、一般的に描かれる石破茂衆議院議員以上のものも見えず、平凡な作品でした>>続きを読む
さすがにこれだけ古い作品を引っ張り出して、謎解きの質が低いみたいな茶々を入れるのは野暮だと思います。犯人およびトリックがかなり初期の段階で分かってしまうのは、ご愛敬でしょう。また伏線も緻密という感じで>>続きを読む
Where "is" Anne Frank?という原題が示唆的ですが、本作はナチスによるユダヤ人迫害を描いているというよりも(それもありますが)、アンネ・フランクが現代社会でいかに「生きているか(生き>>続きを読む
静かながら、記憶の他者性を的確に描き出す秀作でした。記録と記憶の差は、その曖昧さだけでなく手触り感にあるのでしょう。他者とともに紡ぐ記憶という意味が、たんに温かみとしてだけでなく、厳しさやエゴという視>>続きを読む