平均たいらひとしさんの映画レビュー・感想・評価

平均たいらひとし

平均たいらひとし

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クラユカバ(2023年製作の映画)

4.2

~探しあてたのか、導かれたのか。怪しくも曳きつける地下世界で、探偵は、おぼろな記憶に行きあたる。~

年明けに劇場で目にした本作と、「クラメルカガリ」の予告編に惹かれる。今時分、原作に頼らない映像化は
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クラメルカガリ(2024年製作の映画)

4.3

~地図には描けない、胸騒ぎ。~

「クラユカバ」と同じく、掘り下げ工事が進んで、地上と地下と全く違う世界が併存する炭鉱町を、背景や街の景観に、情報屋の店構えに、偏屈な発明じいさんが使用する車椅子に、隠
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.4

直前に見た作品が、扱っているテーマの重さと、スケールと語り口でスクリーンからの「圧」が強いうえに頭を働かせないとならなかったので、それとは違うものが見たい本心に従って出かけたのですが。

作品に備わる
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.9

~現在にいたるバランスとは名ばかりの滅亡の淵が、人類の滑落を待つ崖道。それは、政治的力に踏み潰された学術への好奇心と偲ばれざる他民族の痛みから始まった。~

我国を除いては、ほぼ公開済のこの作品が、全
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.4

~美しくたなびく砂塵のスパイスで目醒める、哀しく非情なセパレイトウェイへ踏み出す若き後継者の覚悟~

この作品に出かけるのは、今、望み得る最高の視覚体感ではないでしょうか。そして更に付け加えれば、お近
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愛と哀しみのボレロ(1981年製作の映画)

3.9

~愛とか、「辛み」のボレロ~

午前十時の映画祭のリーフレットには、過去作を劇場のスクリーンで見る意義を選考委員の方々が訴えているけれど。実際に、「映画祭」の旧作群を引き受ける劇場も、観客からの有難み
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犯罪都市 NO WAY OUT(2023年製作の映画)

4.0

~狙いはハズさず、マブリーの鉄拳裁き~

「新感染」以来、マ・ドンソクさんを見ました。そして、3作目にして「犯罪都市」シリーズ参戦。

ドンソクさん扮する漢気デカのソクト刑事は、ソウルの広域捜索隊に所
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

4.2

~あんたのボタンの掛け違い人生に巻き込まれたのがウザかったのに、なぜか僕はキツイ声門をこじ開けてまで「紅」をシャウトしている~

カラダを使ってまで、性急に「世界」を学習したりしない、誰にも訪れるアド
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

~生まれ変わって、「知る」為のカラダと知識を満たす冒険を経て知る。可哀そうなのは私じゃなくて、あいつらだ~

年齢関係なく誰もが見られる予告編では、ウィレム・デフォーさんの顔に施したつぎはぎメークや術
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ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

4.5

~始まったら、構えず、映画に身をゆだねるべし~

このコンサート記録映画のタイトルに引用されている、その中でも披露されるナンバーからの歌詞「Stop Making Sense」とは、表面を装って、気取
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千年女優(2001年製作の映画)

4.4

~映画の時代を駆けた一途な想いは、宇宙空間をも貫く強く確かな軌跡を描いて飛んで行くのが、きっと誰の目にも映る。~

アカデミー賞の候補作に上がっている巨匠だけが、世界に知られた我が国のアニメーション監
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サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

4.2

~痛むこの胸を癒すべく、映画の記憶が頭の中をリフレイン。やっぱり、「人生は、祭りだ」~

妬みからの告発が、業界のハラスメント問題を正す社会運動の相乗効果から圧力となって降りかかり創作活動に「制約」を
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.5

~枯葉散る道の行く先も、犬とあなたが居るだけ心強い~

「今時のヤツらは」とか、口にしようものなら時代の波に押しやられてしまっている証拠でしょうけれど。親しくなると互いの立場も関係なく、お喋りで喧騒的
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ほかげ(2023年製作の映画)

4.4

~第二次大戦後から今も絶えない、大人たちの過ち~

シリアスなテーマ故に「売れ線」の扱いには相容れない、ここ最近の「世に問う」塚本晋也監督作に、地方劇場では中々出逢う機会が無かったが。NHKの朝ドラ効
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.5

~完全無欠な日々の年輪を重ねて、己の居場所という「幹」は強固で揺るぎない。けれど、隣の木々から忍び込まれる他者との重なりで生じる木漏れ日が作る陰影の如き感情が、たまに捉えて離さない。~

国際的な評価
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ウォンカとチョコレート工場のはじまり(2023年製作の映画)

4.3

~夢を包むベルベットコートの裾をなびかせるのは、傍に居る仲間からの風~

現実世界の権利者が引き起こす紛争に不正の横行からしたら、一応、敵役の存在は居るけれど、のどかでピースフルな世界観が展開。殺人鬼
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私がやりました(2023年製作の映画)

4.3

~蜜の味を知ってしまった、私たち。今更譲るなんて、あり得ない~

邦題を聴くと、何か登場人物が、始終罪悪感に苛まれている重たい空気がのし掛かっているかのシリアス感を連想させて鑑賞が避けられるのではない
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春の画 SHUNGA(2023年製作の映画)

4.2

~きわどい表現が「笑い絵」として普通に閲覧できる時代は、再来するかどうか~

内野聖陽さんが研究者に扮した「春画先生」を見た後に、このドキュメンタリーが公開されて、劇映画で「下地」が出来たばっかりで、
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正欲(2023年製作の映画)

4.4

~「共感」なんか、他者とのズレを晒される罠。同じくそれを避けた人と流れついた「生 (セイ)」の安らぎ~

タイトルを読み上げた響きと、宣材に添えられた「衝撃作」の触れ込み。そして出演の1人が容姿端麗で
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愛にイナズマ(2023年製作の映画)

4.4

~正しさと、煩わしさと、心強さと~

主演、助演と作品ごとポジションが変わり、間を置かずにお目に掛かっている方々でキャストが固められている、邦画ならではの背景がありますが。出演される方達の取り合わせを
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ヒッチコックの映画術(2022年製作の映画)

3.7

~5Gやら縦長動画の時代に、巨匠になりすましてドゥーユーノーミー?~

本作の邦題命名のネタである、映画史にその名を遺すヒッチコック監督が自作で駆使した技法を余すところなく、聴き手の当時監督として駆け
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春画先生(2023年製作の映画)

4.3

~センセイ好みの出汁を引くのは、教えられて艶めき生に満ちた私~

作中紹介される浮世絵春画を、「隠し無し」でありのまま見せるのでレイティングR-15の指定を受けていて。用いられる幾つかの春画を見る限り
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アンダーカレント(2023年製作の映画)

4.3

~人をわかると言いきれなくとも、「わからない」その心の隙間を互いに埋め合わせて人は係わり合う~

原作の愛読者であるか、本作を手掛ける今泉監督やスタッフ・キャストに関心が薄いと、正直タイトルからどんな
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白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

3.8

~主人公が目指す無頓着でのんきの意味のノンシャラントは、作品の出来で極めないと、物足りなくてやるせない~

劇中、ピアノの師匠である佐野四郎さんが、プロのピアノ弾きを志す池松壮亮さん扮する博に、奏でる
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アリスとテレスのまぼろし工場(2023年製作の映画)

4.2

~未来(あした)は、今その時を求めあう者の衝動で繋がってゆく~

名立たる作品に名を連ねる女性脚本家の5年を掛けた2作目のアニメーション監督作品は、他者によって映像化された作品を含めて、人物の過去や心
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春に散る(2023年製作の映画)

4.0

~老いたら、子が闘う。~

運命の終着を指すタイトルに、残り火が尽きかける間際の一瞬の燃え上がりで胸を焦がしてくれるであろう、勝手な期待を持って臨む。ピンク映画界から、今はコンスタントにメジャー作品を
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バービー(2023年製作の映画)

4.1

~納得を阻むカルチャーの壁は、如何ともし難くも。ピンクカラーの作られた街の恒久的原動力は、現世と鏡写しの世代性別を超える人形の世界にあり。~

作品中に、ほんのチラっと見える片寄った見解の地図だとか、
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Pearl パール(2022年製作の映画)

4.3

~酪農フォークで一突き、薪割り斧を一振り。フィクションならばの凶行を、認めずにはいられない主演女優の目を引く感情表現の独壇場~

鮮血に塗れた、頬に当てられた手先。その下に配した、デッサン調に処理され
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ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

4.4

~流される「デマ」に振り回されるな。信念に燃えるイーサンが、体を張って魅せるホンモノの世界。~

もしかしたら今後、この存在を超える大スターは、現れないであろう唯一無二の存在であるトム・クルーズ氏の「
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.2

〜錆びつき無縁の手練と枯れない意欲に身を任せよ〜

それこそ、年寄りの説教にも受け取られ兼ねないタイトルで、引退宣言を撤回した巨匠の作品だから出掛けましたが。でも題名を最初一見した時「上段からの物言い
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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年製作の映画)

4.2

~ルパン三世と違って、抱かれたものが総て消えゆかなかったのが、共に歳を重ねたファンとして嬉しい~

長き年月を経ての続編となると、単にストーリーの「つながり」の問題どころではなく、目に触れる事のなかっ
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ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)

4.3

~まるで複雑に絡んだ時制のような茹でたてパスタに必要な あのトマトソースは、想像の中でしか味わえない~

綿々と続く、アメコミフリークに向けられた作品群の一本であるのは間違いないし、例え「意外」な事を
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エリック・クラプトン アクロス24ナイツ(2023年製作の映画)

4.2

~ステージから陶酔に巻き込む、二十四夜からの選りすぐりプレイ集~

昔、バンドを組んでいたとか、ギター小僧だったとか、全く関係の無く。自分は、ジャンル雑食で、軽薄な「音好き」に過ぎないけど。クラプトン
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エリック・クラプトン~12小節の人生~(2017年製作の映画)

4.2

~ギターで時代を沸かせ、ギターで絶望して、ギターで救われた男の肖像~

誰もが、「人生」という舞台に立っているという。他者にとって取るに足るかどうかなど、関係はない、各々が、持ちうる技量で、ぶっつけ本
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波紋(2023年製作の映画)

4.0

~むなしさや 枯山水に 蟷螂枯(とうろうか)る~

客演でしたが、白石和彌監督作の「ひとよ」での舞台となる小さなタクシー会社に配車係りとして献身的に支えつつ、年下運転手と心身の隙間を埋めて。社会という
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最後まで行く(2023年製作の映画)

4.0

~やらかしの度を超す愚行の連続に、ただ嗤うしかない~

作品のポイントを的確に抽出した予告編が気に留まり出かける。オリジナルの韓国作品は、知らず。事前に膨らんだ期待感を裏切る事なく、世界観や、看板出演
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