タケオさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)

4.1

-「閉じた世界」が生み出すフェミサイド『聖地には蜘蛛が巣を張る』(22年)-

 2001年から2002年にかけてイスラム教シーア派の聖地マシュハドで起きた娼婦連続殺人事件(通称:スパイダーキラー事
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.0

-ジリジリと観客を追い詰める底意地の悪いブラック・コメディ『逆転のトライアングル』(22年)-

 『フレンチアルプスで起きたこと』(14年)や『ザ・スクエア 思いやりの領域』(17年)など、底意地
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ゴースト・エージェント/R.I.P.D.2(2022年製作の映画)

1.6

-熱意や創意工夫を欠いた、ただひたすらに退屈な映画『ゴースト・エージェント/R.I.P.D.2』(22年)-

 成仏できない幽霊たちをあの世に送り返す特殊組織「R.I.P.D」の活躍を描いたアクシ
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47RONIN-ザ・ブレイド-(2022年製作の映画)

3.5

-ちょうどいい湯加減のお気楽B級映画『47RONIN-ザ・ブレイド-』(22年)-

 キアヌ・リーヴスが主演を務め、約2300万ドル(!?)という大赤字を叩き出した問題作『47RONIN』(13年
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.2

-エイハブはモビー・ディックを赦せるか?『ザ・ホエール』(22年)-

 タイトルにある「ホエール(鯨)」とは、作家ハーマン・メルヴィルの長編小説『白鯨』(1851年)に登場する白く巨大なマッコウク
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キル・ボクスン(2023年製作の映画)

3.9

-ぶつかり合う、女と男の「大人のエロス」『キル・ボクスン』(23年)-

 主演を務めたチョン・ドヨンの、齢50にしてますます磨きがかかる圧倒的な美貌には驚かされるばかりだ。最強の殺し屋ギル・ボクス
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ダークグラス(2021年製作の映画)

3.4

-ダリオ・アルジェントが辿り着いた意外な新境地?『ダークグラス』(21年)-

 イタリアンホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの10年ぶりの復帰作!───と聞くと「果たして今度はどんな恐怖のつるべ打ち
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ノーセインツ 報復の果て(2022年製作の映画)

3.6

-ポール・シュレイダーが描き続ける「救済」なき「煉獄」『ノーセインツ 報復の果て』(22年)-

 煮詰まった男の姿を描かせたら、ポール・シュレイダーの右に出る者はいない。彼の作品の主人公はいつも同
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Winny(2023年製作の映画)

3.7

-「異端者」を踏みにじる「社会」への眼差し『Winny』(23年)-

 本作の主人公 金子勇(東出昌大)は、ことあるごとに空を見上げる。飛行機や星に思いを馳せるその姿は、まるで無邪気な少年のようだ
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ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り(2023年製作の映画)

4.4

-今という時代にこそ、こういう「娯楽映画」が必要なのだ!『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(23年)-

 1974年に発売された世界初のテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴン
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エスター ファースト・キル(2022年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

-まさかの落涙!怒れるモンスターの痛切な悲恋『エスター ファースト・キル』(22年)-

 前作で主人公エスター(イザベル・ファーマン)の正体がすでに明かされていることは、本作においてはプラスに働い
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マッシブ・タレント(2022年製作の映画)

3.4

-余計な一捻りは必要だったのか?『マッシブ・タレント』(22年)-

 ジャンルを問わず多種多様な作品に出演し、そのたびに(良くも悪くも)鮮烈な演技を披露し続け、多くのファンを獲得してきた怪優ニコラ
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メグレと若い女の死(2022年製作の映画)

3.8

-ドパルデューの貫禄と哀愁に惚れ惚れ『メグレと若い女の死』(22年)-

 ベルギーの作家ジョルジュ・シムノンによるベストセラー『メグレ警視』は、全100タイトルを越えるご長寿シリーズ。その中でもと
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劇場版 センキョナンデス(2023年製作の映画)

3.8

-「不健全さ」を笑う、どこまでも「健全」な態度の表明『劇場版 センキョナンデス』(23年)-

 ドキュメンタリー映画と劇映画の境界には無限のグラデーションがあり、その差異を明確に定義することは難し
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.1

-作り手が望む'画作り'と'展開'に、'ドラマ'が全く追いついていない!『シン・仮面ライダー』(23年)-

 『シン・ゴジラ』(16年)や『シン・ウルトラマン』(22年)は、今という時代に日本を代
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シャザム!~神々の怒り〜(2023年製作の映画)

3.7

-無邪気な子供たちが体現する、アラン・ムーアの「ヒーロー論」『シャザム!~神々の怒り~』(23年)-

 かつてコミック界の巨匠アラン・ムーアは「ヒーロー」という概念について、「スーパーパワーがある
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BLUE GIANT(2023年製作の映画)

3.6

-全てを台無しにするポストクレジットに唖然!『BLUE GIANT』(23年)-

 ジャズに理解のある人物しか登場しない点や、社会的抑圧がほとんど描かれていない点など、食い足りなさを感じる箇所も少
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.9

-現実と空想が交わる地平にスピルバーグは立ち続ける『フェイブルマンズ』(22年)-

 60年代後期、スティーヴン・スピルバーグは「カウンター・カルチャー」にどっぷりと浸かっていたわけではなかったが
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アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

4.3

-「物語」が色褪せた世界を彩る 『アラビアンナイト 三千年の願い』(22年)-

 「世界」は驚異に満ちている。にも拘わらず、まるでこの「世界」が色褪せているかのような感覚に日々囚われてしまうのは、
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ベネデッタ(2021年製作の映画)

4.6

-全てが'曖昧'な世界でこそ、ヴァーホーヴェンの「スーパーヒロイン」は光り輝く『ベネデッタ』(21年)-

 白黒つけることのできない'曖昧さ'は、ポール・ヴァーホーヴェン監督作品の大きな特徴の1つ
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別れる決心(2022年製作の映画)

4.8

-これはパク・チャヌク版『ファイト・クラブ』だ!『別れる決心』(22年)-

 生真面目で優秀な刑事ヘジュン(パク・ヘイル)が、事件をきっかけに美しき容疑者ソレ(タン・ウェイ)と惹かれあっていく。あ
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トゥルー・スピリット(2023年製作の映画)

2.4

-物語は感動的だが、映画としてはいかがなものか・・・『トゥルー・スピリット』(23年)-

 単独・無支援・無寄港でのヨット世界一周を齢16歳で達成し、最年少記録を打ち立てたジェシカ・ワトソンの著書
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バビロン(2021年製作の映画)

2.0

-これ見よがしの白々しい描写の数々に辟易『バビロン』(22年)-

 豪華絢爛で、エネルギッシュで、お粗末で、そして軽薄な作品である。1920年代のハリウッドの実態を描いた作品であり、その過激さを「
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そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)

3.8

-'逃避'がもたらす映画的躍動『そして僕は途方に暮れる』(22年)-

 '逃げる'という行為は、それ自体が物語に躍動(アクション)をもたらす映画的なモチーフの1つであり、西部劇やアメリカン・ニュー
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銀平町シネマブルース(2022年製作の映画)

4.0

-どこまでも優しい夢物語『銀平町シネマブルース』(22年)-

 『エンドロールのつづき』(21年)『バビロン』(22年)『フェイブルマンズ』(22年)『エンパイア・オブ・ライト』(22年)などなど
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FALL/フォール(2022年製作の映画)

3.3

-良くも悪くも手堅いワンシチュエーション・スリラー『FALL/フォール』(22年)-

 限定空間でのワンシチュエーション・スリラーが重宝されるのは、予算が抑えられるのは当然として、同時に「いつ死ん
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母の聖戦/市民(2021年製作の映画)

4.2

-観客に「現実」を叩きつける一級品の地獄ライド『母の聖戦/市民』(21年)-

 『闇の列車、光の旅』(09年)『悪の法則』(13年)『囚われた少女たち』(15年)(15年)『ボーダーライン』シリー
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終末の探偵(2022年製作の映画)

4.0

-「泥臭さ」が放つ輝き『終末の探偵』(22年)-

 いわゆる「ハードボイルドもの」の主人公は、世に蔓延る悪徳や不正を前に、ちっぽけな個人がいかに無力な存在であるかをよく理解している。何度も修羅場を
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ウェンデルとワイルド(2022年製作の映画)

4.5

マペットに命を宿すことに命を懸けるヘンリー・セリックの執念と狂気は、遂に前人未踏の境地に突入した。生と死、リアルとフィクション。アニメーションの魔力が、あらゆる境界を軽々と超越する様には感嘆とさせられ>>続きを読む

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

1.5

-雰囲気で誤魔化すだけの浅薄な作品『マイ・ブロークン・マリコ』(22年)-

 第24回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門新人賞を受賞した『マイ・ブロークン・マリコ』(19年)の実写化作品。監督は『月
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ヘルドッグス(2022年製作の映画)

4.1

-岡田准一のモテモテハーレム、美しくも切ないドライなBL映画『ヘルドッグス』(22年)-

 同じ潜入捜査官ものでも、『白熱』(49年)『ハートブルー』(91年)『フェイク』(97年)『インファナル
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LAMB/ラム(2021年製作の映画)

3.9

-「意味」を求めずにはいられない人間の弱さを浮き彫りにする怪作『LAMB/ラム』(21年)-

 宗教的なモチーフが随所に散りばめられているが、実のところ本作『LAMB/ラム』(21年)は、全く宗教
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激怒(2022年製作の映画)

4.2

-怒れ、真の個人であるために!『激怒』(22年)-

 大変パワフルな作品である。低予算のインディーズ映画ではあるものの、制作陣の「こういう映画がつくりたい!」という情熱がスクリーンを越えてヒシヒシ
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NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.3

-生真面目さが導き出す「映画」の醍醐味『NOPE/ノープ』(22年)-

 生真面目かつ意欲的なクリエイターたちは、必ずといっていいほど物事の本質について表現しようと試みるものだ。真摯かつ誠実に物事
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ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)

4.5

-スタローンがいる限り、この世界はまだ大丈夫だ 『ロッキーVSドラゴ:ROCKY Ⅳ』(21年)-

 『ロッキー』シリーズ(76~06年)はアメリカン・ドリームを成し遂げた男の物語ではあるものの、
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運命のイタズラ(2022年製作の映画)

2.9

-リリー・コリンズは早くパリから帰ってこい!『運命のイタズラ』(22年)-

 映画『アンダー・ザ・シルバーレイク』(18年)は、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の「ハリウッド・ヒルズに立ち並ぶ
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