吉田コウヘイさんの映画レビュー・感想・評価

吉田コウヘイ

吉田コウヘイ

映画(76)
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あさがくるまえに(2016年製作の映画)

4.0

寄せては返す波の音が、心臓の鼓動と重なる。提供する者と、される者。その周縁の人々。それぞれの人生が、イマジネーション豊かな映像表現で綴られて、折り重なる。タペストリーになる。

長編3作目、1980年
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嵐電(2019年製作の映画)

3.5

DとGのコード・ストロークが紫色のローカル電車が刻むリズムと調和して、ゆっくり浮かび上がる日常。やがてAmと共に、向かいから運命がやってきて交差する。

大映、日活、東宝の撮影所を結び、映画の記憶をた
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仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)

5.0

二重人格をシネマトグラフのメタファーにして、ベルイマンが時代の空気をたっぷりに仕掛けた危険なほど美しい爆弾。

アン・リーは今作を「神の不在を最も美しく嘆いた」と評し、ドゥニ・ヴィルヌーヴは傑作『複製
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イントレランス(1916年製作の映画)

5.0

時を越えた4つのカット・バックを駆使したラスト・ミニッツ・レスキュー。自身が洗練した手法をフル・パワーで駆動させたクライマックスで、映画的興奮の頂点は極められた。デビュー作『ドリーの冒険』から8年後。>>続きを読む

BLACKPINK ライトアップ・ザ・スカイ(2020年製作の映画)

4.0

2016年、プレス向けの会見。緊張した固い表情、少し震えて見える4人がステージに上がる。

「YGからデビューするグループ、BLACKPINKです!」

拍手も歓声もなく、一斉に叩かれるキーボード。次
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雄呂血(1925年製作の映画)

5.0

正しいことをしようとする人間が、その真っ直ぐさと信じられないほどの間の悪さから苦難を次々と呼び寄せ、最後にフラストレーションを爆発させてしまう姿を描く。

殺陣、撮影両方の技巧を尽くしたラスト10分間
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鴛鴦歌合戦(1939年製作の映画)

5.0

エリック・シャレル『会議は踊る』とアメリカのビッグバンド・ジャズのエクレクティックを、マキノ雅弘の快活な語り口と宮川一夫のヌケの良い映像が見事に実現した。

スキルフルなディック・ミネ、朴訥だがなんと
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丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)

5.0

膨らむ餅のアップで観客の涙を誘う。そんなことを可能にしてしまうのが、山中貞雄の映画術だ。

当時日活の大スターだった大河内傳次郎の当たり役、片眼片腕の剣豪丹下左膳のシリーズを伊藤大輔から引き継いだ山中
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河内山宗俊(1936年製作の映画)

5.0

障子に手をやり、俯く原節子の横顔。奥の庭には、粉雪が降り積もっている。

このワン・シーンで、まだ発声もままならない当時16歳の原節子の壊れてしまいそうな、見つめるだけで涙が止まらなくなる美しさのその
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青春の殺人者(1976年製作の映画)

3.5

あまりにあっけらかんと即物的にさらされる当時17歳の原田美枝子のバスト。トラックがはねた水溜まりに濡れる痩せっぽっちの水谷豊。

アンチ・ヒーローの物語、楽園を追われたアダムとイヴ、ファイヴ・イージー
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太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)

4.0

コーラス・エフェクトの効いたカッティング・ギターの爽やかなサウンドに乗って映される、初めてギターを買った少年のように盗んだプルトニウムを抱いて眠るジュリーが最高にキュート!

ミクロからマクロへグルン
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WASP ネットワーク(2019年製作の映画)

4.0

淡々と、機能的に、しかしアナ・デ・アルマスが踊るシークエンスはたっぷりと長回しで魅せてくれる。

多様な視点で多層的な歴史を学ぶことは当然重要だが、アナ・デ・アルマスの美しさを見つめることも同じかそれ
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アクトレス 女たちの舞台(2014年製作の映画)

5.0

列車の通路で仕事の電話応対に追われる、大きな眼鏡をかけたクリステン・スチュアート。

「はい、ヴァレンティンです…いや、マリアのパーソナル・アシスタントです」

彼女の明晰さ、器用さ、それと同時に抱え
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からっ風野郎(1960年製作の映画)

3.5

増村保造が自身のシグネチャーである過剰さを幾分か抑え、クールなタッチで仕上げた任侠アクション。東京大学法学部の同期生、三島由紀夫を主演に迎えた。

映画初主演の三島は鍛え抜かれた肉体で画面を支配。『詩
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卍 まんじ(1964年製作の映画)

4.0

チェロの旋律が岸田今日子の首筋にまとわりつく。大きな口と瞳に隠されたその白い明かりに導かれるやうに、谷崎潤一郎原作、新藤兼人脚色の重厚な語りが溢れ出す。

「そんなに綺麗やのに、なんで今まで隠してたん
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青空娘(1957年製作の映画)

4.0

BPM200超えのスクリューボール的セリフの応酬、駆け足のカット割り、生徒を追って上京する高校教師、女性に硬球を投げつけるガキ、太陽族が奏でる下手なスウィング・ジャズ、「ヘーイ、ジョージ!」。

プラ
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秋刀魚の味(1962年製作の映画)

5.0

「自分のことは、自分でするんだ」

出来るだけ早く嫁に行かせるのが娘のためだろう。そう考えて準備を始めたけれど、途端に寂しさが胸に迫る。バスト・ショットと、マイナー調のストリングス。父と娘、交差する思
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エノーラ・ホームズの事件簿(2020年製作の映画)

5.0

車輪が廻る、廻る、廻る。フリージア香る英国の美しい田園風景のなか、彼女は苦手な自転車を転びながらも力強く走らせる。

エノーラ・ホームズ。彼女の道を拓くのは、彼女の世界を変えるのは兄のシャーロックじゃ
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次の朝は他人(2011年製作の映画)

5.0

「私が出てきた偶然には、何が作用したの?」

「空気と、男と、女」

雪と夜空。白と黒の淡いの中で、同じ時間が反復される。酒を飲み、話をして、ピアノを弾き、キスをする。

似てるけど、どこか違う。
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淑女は何を忘れたか(1937年製作の映画)

5.0

走る車を接写で映すファースト・ショットのまま、軽快にドライヴする71分間。小津安二郎が34歳で撮った『淑女は何を忘れたか』は洒脱でモダンなセックス・コメディー。

屋内で歯切れよく交わされる会話のリズ
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赤線地帯(1956年製作の映画)

5.0

消え入りそうな小さな声と手招きで、客を取ろうとする川上康子の大きく見開かれた黒い瞳が、カメラを見つめる。その先にいるのは観客か、葛藤しながらも自らの売春宿通いを止められなかった溝口健二監督本人か。>>続きを読む

噂の女(1954年製作の映画)

5.0

邪魔者がいなくなって、何やら和解した雰囲気の母娘。東京から戻ってきて以来ずっと抵抗していた娘が溌剌と、母の遊郭を仕切っている。
「まるでずっとあそこにいたみたいだわ」
「そりゃそうよ、私のお腹の中にい
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瀧の白糸(1933年製作の映画)

5.0

朝焼けの白い光が、静かにしかし生命力を宿して流れる川の水面に反射する。映画的としか言葉に出来ないやうなこの編集表現を、1933年に体得していることにただただ驚かされてしまう。同年のキネマ旬報ベストテン>>続きを読む

西鶴一代女(1952年製作の映画)

4.5

「身分などというものが無くなって、誰でも自由に恋ができる世の中が来ますように」

恋のために命を投げ出した男、勝之助を演じる三船敏郎が力強く放つ最期の言葉に呪われたかのように、ただ悲劇へと流転していく
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祇園囃子(1953年製作の映画)

5.0

「これからは売り物やさかいに、綺麗にせなアカンで」
撮影時19歳、若尾文子の笑顔が宮川一夫の光に照らされ輝く。

「アンタもこれからいろいろなお座敷に行くんなら、沢山の人の移り変わりも見んならん」
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雪夫人絵図(1950年製作の映画)

5.0

旧華族、信濃家の令嬢雪夫人が魂の彷徨の末、湖へと還っていく。

戦後の新しい世代、その価値観の象徴である女中浜子(演じる久我美子の方が華族の出身という捻れ)による最後のセリフ、「雪さんの意気地なし!」
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パーソナル・ショッパー(2016年製作の映画)

4.5

パーソナル・ショッパーとして、センスと抜群の直感を生かしてセレブリティの買い物を代行するクリステン・スチュワート。彼女の瞳が、この105分間という劇映画として極めてスタンダードな時間に透明さを与える。>>続きを読む

悪魔はいつもそこに(2020年製作の映画)

5.0

父親の太平洋、息子のベトナム。2つの戦争の間を舞う人々。それをいつもそこにいながら操り見守るのは、原作者ドナルド・レイ・ポロック自身による悪魔のナレーションだ。

デレク・シアンフランス『プレイス・ビ
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リオ・ブラボー(1959年製作の映画)

5.0

乾いた風にカントリー・ソングが乗って、男と女が踊る。無駄な血は流さない。生きたまま捕まえる、ルールの中で罰する。人情は決して手放さない。仕事はする。だが艶がなければ楽しくない。楽しくなければ人生じゃな>>続きを読む

コンドル(1939年製作の映画)

5.0

原題は’’Only Angels Have Wings’’、天使たちの翼。愛すべきヒコーキ野郎たちへの敬意と憧憬が詰まった、宮崎駿『紅の豚』にも通じるアクション・ロマン。

ハワード・ホークスが製作、
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赤い河(1948年製作の映画)

5.0

工学部を出てセット、美術製作からキャリアをスタートさせたハワード・ホークスがその手腕を遺憾なく発揮した、精緻な西部劇にしてモンゴメリー・クリフトとジョン・ウェインの世代を越えたラヴ・ロマンス映画。>>続きを読む

満月の夜(1984年製作の映画)

4.0

「肉体の愛がすべてに関わる」

ジャン・ルノワールの傑作『ゲームの規則』でルノワール本人が演じるオクターヴと同じ名前の男を演じるファビアス・ルキーニの言葉。観念ではなく、肉体こそが映画の魅惑と書いたの
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海辺のポーリーヌ(1983年製作の映画)

4.0

「そんなの決まってるじゃないか、シナリオだよ!」

主人公ポーリーヌを演じた、当時14歳のアマンダ・ラングレの「この映画は何に似ているの?」という真っ直ぐな質問に、62歳の映画監督は朗らかに笑ってこう
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ある過去の行方(2013年製作の映画)

4.5

空港。迎えに来た女はガラスに隔てられた向こうに男を見つけるが、男は荷物に気を取られ気づかない。やがて男は女に気づきガラスに近づくが、女の伝えたいことは要領を得ず伝わらない。

この数十秒で主人公2人の
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ハスラーズ(2019年製作の映画)

4.5

ジャネット・ジャクソンとショパンの鮮やかな対比。ストリップ・クラブみたいな世界ですべてをコントロールしようとした女たちのヒリヒリするドラマ。

Most personal is most creati
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37セカンズ(2019年製作の映画)

5.0

顔の産毛まで見えるほどのファースト・カットから、執拗なまでのクローズアップが続く。ダルデンヌかケシシュか、というくらいグーっと、主人公の心に入っていく。世界を発見する喜びと、母親との愛憎や日常に溢れる>>続きを読む

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