てつじさんの映画レビュー・感想・評価 - 27ページ目

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017年製作の映画)

3.7

当事者達の真偽が明らかになっていないインタビューを、機械のように緻密に再現する俳優達の演技力が素晴らしい。当事者の真実と虚構が入り混ざったインタビュー映像を、役者は全て中立の嘘で演じきって再現している>>続きを読む

15年後のラブソング(2018年製作の映画)

4.1

愛すべきダメ男を、魅力たっぷりに好演したイーサン・ホーク。伝説の元ロックシンガーのやさぐれ感を絶妙な温度で演じていて、この軽やかなロマンチックコメディーに優しさと厚みを加えている。作品の居心地が良く、>>続きを読む

旅のおわり世界のはじまり(2019年製作の映画)

3.5

言葉の通じない異国で味わう、異邦人の孤独と閉塞感が、中途半端な生き方をしてきた女性リポーターの人生そのものを白日の下に晒す。自身の進路に揺れ動く成長途上のリポーターを危うげに演じた前田敦子は好演だった>>続きを読む

初恋(2020年製作の映画)

3.8

裏社会の抗争に巻き込まれた窪田正孝と小西桜子の純愛が、闇の世界に蠢く欲望の凶々しさを濃厚に炙り出すが、極め付きの純愛は、バールを握って激走するベッキーの暴力に尽きるのだと思う。純粋な悪であり、紛れもな>>続きを読む

ネバダ・スミス(1966年製作の映画)

3.2

『大いなる野望』のネバダ・スミスの前日譚。外伝なのに、アラン・ラッドの残像など微塵も感じさせないスミスの復讐劇として独立しているのは、マックィーンのスター性の大きさなのだろう。スザンヌ・プレシェットは>>続きを読む

ぼくらの七日間戦争(1988年製作の映画)

3.0

学校や大人に反旗を翻す子供たちの反逆は、戦争ごっこの悪戯の域からハミ出ず、宮沢りえと戦車の物語を無難にまとめる。宮沢りえのスケールの大きさに対抗できる相手役は、戦車しかいなかった、インパクトは強烈だが>>続きを読む

翔んだカップル オリジナル版(1982年製作の映画)

3.5

相米慎二は、引きのフレームの中で躍動する子供たちの息吹や、感情の起伏を周りの空気ごとフィルムの中に閉じ込める。妥協した演技を排除して、全身で表現した演技だけが残る。研ぎ澄まし、削り取り、最後に残った最>>続きを読む

イップ・マン 完結(2019年製作の映画)

4.0

詠春拳の真髄は、水のように穏やかで、時に破壊力を生む、実態を掴めない水になる事だと、どこかで読んだ事がある。中国人のプライドを踏みにじる外国人勢力に対しての詠春拳の破壊力に目が向くが、イップ・マンの穏>>続きを読む

栄光の野郎ども(1965年製作の映画)

3.1

演出はしていないが、ペキンパーの脚本には、後年の『戦争のはらわた』の原型が見て取れる。ペキンパー一家のジェームズ・カーン、センタ・バーガー、スリム・ピゲンズが揃って好演なのが嬉しい。ザックリと直訳した>>続きを読む

お名前はアドルフ?(2018年製作の映画)

3.9

久しぶりの家族のディナーは、辛辣なブラックジョークから、鬱積した日常の不平不満を吐き出すような家族の秘密の暴露合戦へとヒートアップ。泥沼化した会話劇のテンポとリズムが絶妙で、滑稽なオトナの事情を見事に>>続きを読む

イップ・マン 継承(2015年製作の映画)

3.8

カンフーアクション満載なのに、観終えた印象がイップ・マン夫妻の愛の物語になっていた。イップ・マンの詠春拳は家族を守る武術として存在し、妻は夫の木人椿の音に耳を澄まし、背中で夫の戦いを聴き安堵の微笑みを>>続きを読む

イップ・マン 葉問(2010年製作の映画)

3.7

中国武術のプライドと、中国人の品格と誇り。ホン師匠の戦いの本意を汲み取り、意志を継承したイップ・マンの漢気。人間の尊厳を胸に戦いに臨むイップ・マンの覚悟にゾクゾクと鳥肌がたった。

はちどり(2018年製作の映画)

4.5

1994年韓国を、14歳の少女の視線で鮮やかに切り取った傑作。多感な思春期の複雑な心理の機微を繊細に描きながら、少女の揺れる心を透明にして、家族や友人の健全に見える不条理な世界観を浮き彫りにした。時間>>続きを読む

帰らざる日々(1978年製作の映画)

4.2

中岡京平の傑作脚本『夏の栄光』を原作とした一級品の青春映画だった。当時メキメキと頭角を現してきた江藤潤と永島敏行、そして竹田かほり!若手俳優たちの伸びしろの大きさに、同世代だった自分たちの青春とを重ね>>続きを読む

イップ・マン 序章(2008年製作の映画)

3.9

イップ・マンが拳を構えた瞬間から、オーラの結界がピンと張られた静寂な空気が漂う。詠春拳の、舞踏のようなたおやかな動きと、必殺の一撃の力強さ、穏やかな好人イップ・マンの人柄まで表現したかのような柔らかな>>続きを読む

コロンビアーナ(2011年製作の映画)

3.5

突っ走る手持ちカメラ、少女カトレアの鮮やかな脱出劇は、短いショットを積み重ね、スリリングで緊張感に満ちたエネルギッシュなリズムを生んだ。カトレアの逃走には、生き延びる術として父親から学んだ暗殺者の資質>>続きを読む

バッジ373(1973年製作の映画)

2.8

ロバート・デュバルのキャリアの中でも、『組織』と並ぶ重要な作品と思うが、刑事が身の危険を感じたとしても敵から逃亡する為に、市街バスを略奪し、暴走して街中を破壊するのは、如何にもやり過ぎ、破天荒すぎた。

恋の渦(2013年製作の映画)

3.8

冒頭から、部屋に集まった男女9人のゲスのマシンガントークが炸裂する。この登場人物全員が顔を合わせた会話劇が秀逸であり、観客側が登場人物の誰一人に対して感情移入出来ない不思議な感覚を生む。携帯で繋ぐ薄っ>>続きを読む

GODZILLA 星を喰う者(2018年製作の映画)

2.3

時空の裂け目から、地上に降臨するギドラの荘厳さは、地球の終焉を暗示させる神々しさを纏っていて、一見の価値有りだが、ゴジラと人間に魅力は感じなかった。考えすぎて何も描けていない印象。

アンダー・ユア・ベッド(2019年製作の映画)

3.5

最初から最後まで、三井の妄想の世界なのだと思う。自分の容姿まで含めて頭の中で描いた空想世界を具現化した作品なのだと思った。でなければ、三井の行動に共感したり、肯定する感情は生まれなかった筈。そう考える>>続きを読む

黒い罠(1958年製作の映画)

5.0

縦横無尽、自在に走るカメラワークの全てが、緻密な計算に基づいた完全なる演出であり、闇と光のコントラストの鮮やかさは、他の追随を許さない。練り込まれた脚本は、一言で全てを転覆させる力を持ち、オーソン・ウ>>続きを読む

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(2012年製作の映画)

3.5

壮大な映像詩でサードインパクトの始まりを叙情性豊かに描いた"破"から、こちらの想像を遥かに超えた展開を見せた"Q"。乖離し過ぎの感はあるが、大きな大流の新たな物語の始まりとして捉えるのが妥当。この作品>>続きを読む

ブルーハーツが聴こえる(2016年製作の映画)

3.8

起動スイッチを押す市原隼人、氷の涙水原希子の美しさ、永瀬正敏を囲む炎の優しさ。時が止まった福島で、犬の遠吠えに歓喜する豊川悦司、三浦貴大。ブルーハーツに触発されたイマジネーションを見事に映像化した珠玉>>続きを読む

ハード・コア(2018年製作の映画)

2.0

ロボットが空を飛んで、この作品は何でもアリになってしまった。荒川良々の不思議な雰囲気はハードボイルド兄弟とロボットの心を繋ぐ重要な存在感を示していた。

アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

4.1

甲子園の応援スタンドの隅っこで、野球のルールも解らないまま母校を応援する生徒たちの物語。甲子園のグラウンドで光輝く野球部の同級生たちの姿を、描写せずに応援席の会話だけで、くっきりと際立たせた見事な演出>>続きを読む

ヴェノム(2018年製作の映画)

2.0

ヴェノムの人格は、エドガーと宇宙生物の二つの人格がひとつになったものなのだから、宇宙生物の地球侵略を阻止する行動は、エドガーの人格が勝った結果だったのだと自分自身には言い聞かせましたが、全くそうには見>>続きを読む

パシフィック・リム アップライジング(2018年製作の映画)

2.0

巨大ロボットが氷上で肉弾戦を繰り広げても氷が割れない重量感の無さ。悩みのないイェーガー搭乗戦闘員たちの人間模様の軽さ。

新・座頭市物語(1963年製作の映画)

3.1

市の居合い抜きの師匠河津清三郎が、弟子の座頭市より格下に見えてしまうバランスの悪さ。兄の仇と市をつけ狙う須賀不二男とのサイコロ勝負の暖かさ。風を斬っただけと呟く座頭市の胸中。

お嬢吉三(1959年製作の映画)

3.4

総天然色カラーを意識した美術・装飾・衣装の絢爛豪華な色彩の渦に圧倒された。市川雷蔵の女形姿の艶やかさと雄々しさ、中村玉緒の純真無垢な娘心を同じ着物で表現分けする。全く違う印象を与える見事な着付けの職人>>続きを読む

眠狂四郎 人肌蜘蛛(1968年製作の映画)

2.8

眠狂四郎シリーズ第11作。残酷、猟奇、エログロ色が強く作品に反映されていて、紫姫を演じた緑魔子の狂気が作品を支配している。市川雷蔵の体調不良が眠狂四郎の艶を消し、緑魔子の妖気漂う怪演が際立つ異色作にな>>続きを読む

ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年製作の映画)

4.2

亀が手足から火炎ジェットを噴き出し、遠心力で空を飛ぶ。この圧倒的な荒唐無稽な設定に、リアリズムを盛り込み、あり得ない世界観に血肉を与えた。ギャオスの造型とコンセプトを絶滅危惧種の鳥類として捉えていて、>>続きを読む

時をかける少女(1983年製作の映画)

4.2

原田知世のデビュー作として、彼女の魅力を余す事なく掬い上げ、アイドル映画の到達点を示した傑作。尾道の坂道の石段、甍の波。細い路地の高低差を巧みに利用しながら、寓話に登場するような、どこか懐かしく優しい>>続きを読む

濡れ髪牡丹(1961年製作の映画)

3.4

市川雷蔵の飄々とした演技の軽さが、このお気楽コメディの軽妙さの礎になっていて、ニヒルな眠狂四郎や硬派な殺し屋を演じた同一の役者とは思えない演技の振り幅の広さを感じた。あらためて、凄い役者だと思いますね>>続きを読む

病院坂の首縊りの家(1979年製作の映画)

3.4

憎悪が入り組んだ複雑な家系図の紐解き方が弱く、事件の真相に関わる血の宿命の悲哀は感じなかった。市川崑の映像美は健在で、特に桜田淳子の花嫁姿の艶やかさと色香を際立たせた照明の美しさは格別。

老人と海(1958年製作の映画)

3.8

作品のほぼ全編が見渡す限りカリブ海の水平線。小舟上のスペンサー・トレーシーの動きの取れない一人芝居だけで、老人の人生の尊厳を描ききった。この企画を通したプロデューサーと監督の度胸の良さは見事!今ではこ>>続きを読む

SKIN/スキン(2019年製作の映画)

3.5

同じテーマでも短編とは似て非なる語り口の作品であった。ノンフィクションに寄り添い過ぎ物語が飛躍しなかったのが惜しい。俯瞰した高さの距離が低く、ネオナチからの転向を良い話にしてしまった。