松瀬研祐さんの映画レビュー・感想・評価

松瀬研祐

松瀬研祐

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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.0

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冒頭の、過去の韓国のシーン。学校から家路に帰る主人公たちは、まっすぐの道を奥からカメラに向かって歩いてくる。奥から前方へ縦移動。そして、やけに環境音が大きい印象。それが韓国の街の特徴なのかなとぼんやり>>続きを読む

王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

4.5

映画制作のゴールがどこなのか。脚本を忠実に映像にすることなのか。脚本の核になると思われる部分に、的を絞り、そこを描くために、監督にとっての最善の、唯一の方法を模索することなのかもしれない。

あくまで
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宮松と山下(2022年製作の映画)

3.7

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切られ役などのエキストラを一つの仕事として働いている宮松という登場人物。死んだらすぐに次の設定へと変わり、そしてまた切られる、というのは、さすがに過剰ではあるものの、その、唐突に現れて、ただ、命を落と>>続きを読む

あの娘は知らない(2022年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

ワンカット、ワンカット、画への強いこだわりを感じる。カメラの置き場所、画の色使い。映画の中でも使用されるサンダーソニアのカラーがいろいろなところで意識的に使用されているのも画へのこだわりなのだと感じる>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

4.0

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突然、画面サイズが4:3に変り、カメラに向かう正面の映像のカットバックの対話が始まる。急なそれはかなり違和感があるものの、後からそれがテレビ電話の映像であるとわかる。テレビ電話ならば、確かに双方、カメ>>続きを読む

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

3.8

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『リコリス・ピザ』。冒頭の中学校のトイレシーンの爆竹から、この映画には様々な偶然があふれている。その偶然は、およそ映画的な展開をさせる物語とは無縁かのように、繰り返し続く。ニューヨークへでかけることも>>続きを読む

ヒポクラテスたち(1980年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

京都の医学生たちが臨床実習をしながら医者を目指す青春群像。彼女を妊娠させてしまった主人公の医学生は、彼女との相談のうえ、町の産婦人科で堕胎手術をさせる。その後、悪夢に襲われるが、その時は自らが彼女に撃>>続きを読む

偶然と想像(2021年製作の映画)

4.4

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三話のオムニバス。いずれも物語が動き出す些細な出来事をきっかけに生じる会話劇。大袈裟な展開は極力控えつつ、丁寧に対話のやりとりが描かれる。一度だけ、カメラ目線が入ることが三話に共通する。

誇張された
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サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

映画が誰のものか。商業として考えれば観るお客さんのことを考えるものだと思うけれど、偏った考え方をすれば、監督のモノであるともいえる。以前に、となる方が、「映画は1人のクリエイターである監督と、あとはそ>>続きを読む

きまじめ楽隊のぼんやり戦争(2020年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の楽隊の演奏と共に、草地を行進する足踏みの音がする。その足踏みの音がやけに鮮明で、楽隊の音楽は長閑な響きなのだけど、音量が徐々に上がっていき、そのボリュームがこちらの想像の少し上まであがる。それが>>続きを読む

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)

4.1

久しぶりに観た。以前、VHSに録画していたのをスタンダードサイズのテレビで観ていたが、HDサイズで観るのは初めてではないか。改めて見返して、物語はもちろんすばらしく見入ってしまうのだけど、画の描写にも>>続きを読む

凱里ブルース(2015年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

どこの考えだったか忘れてしまったのだけど、過去から現在、未来と一方向に進むのではなく、円のように丸いもののなかに、過去も現在も未来も存在するという時間の考え方があると聞いた覚えがある。そのことを思い出>>続きを読む

あなたの顔(2018年製作の映画)

4.0

どういう指示が監督からあるんだろうと思ってしまう。

被写体となる出自もわからない人たちはカメラの前で何をするでもなく茫然としていたり、戸惑うように目線をきょろきょろさせたり、照明の暖かさに眠りかけた
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

グザビィエ・ドランの作品をすべて観ているわけではないので、多くは語れないですが、結構な近さで人物のアップの表情を捉える画がある。ものによって顔にフォーカスがきているのに、肩口はぼけるほどの深度のレンズ>>続きを読む

MIND GAME マインド・ゲーム(2004年製作の映画)

4.2

全力を尽くす。しかも生き返ることに。明確な目的のために全力疾走で駆け抜ける。それが猛烈な描写で描かれる。アニメーションだからこそできる表現力を最大限に発揮していると思う。
生き返った主人公はヤクザから
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若おかみは小学生!(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

生きてる人、死んでる人、鬼、子供、大人、老人、様々な年代、生き物がでてくる。アニメーションの豊かな表現、そして日本の四季の描写の中で、一期一会のお客さんに旅館の若女将として対応するエピソードがありつつ>>続きを読む

ジュラシック・ワールド 炎の王国(2018年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

シリーズもののある種の決まってくるパターンというものがあるならば、予告編の作り方や、タイトルの付け方(原題はFallen Kingdomで邦題も炎の王国)、そして物語の始まり方も、これまでのシリーズを>>続きを読む

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

暑い夏を映画で表現するには、どうすればいいのだろう。原作小説も印象的な一文が冒頭にあるし、この映画もその一文が、タイトルロールで主人公演じる柄本佑さんのモノローグで語られる。佐藤泰志さんの小説の映画作>>続きを読む

ここは退屈迎えに来て(2018年製作の映画)

3.5

原作小説を最初に読んでしまうと、どうしてもその印象に引っ張られてしまう部分がある。できる限り、その印象から離れて、映画を観たいと思いつつ。

4年ほど、地方の大学に通っていた身として、地方での暮らしと
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ディストラクション・ベイビーズ(2016年製作の映画)

3.9

引きの画の中で、転がり合いながら殴り合う姿。音楽も少なめに、ただ、ありのままを切り取ろうとする。

それでいて、ここぞとばかりにギターが鳴り響くのも絶妙にかっこいい。

言葉で語らずに、ひたすら飽きず
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リップヴァンウィンクルの花嫁(2016年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

3時間ちかい尺の映画だったけど、長さは感じなかった。ただ、この映画の成り立ちのことをつい考えてしまった。

どのようなきっかけからこの映画はうまれたのだろう。

『SNS』なのか『結婚式参加バイト』な
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グリーンブック(2018年製作の映画)

4.0

役作りなのか、すでにそういう体型だったのかわからないけれどポスタービジュアルの顔からは想像できないヴィゴ・モーテンセンのガタイの良さ、腹の出かたにびっくりしたけれど、その演じる役の頭の回転の良さを示す>>続きを読む

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)

4.0

一画面の中の情報量がすごく多いのに、それらは風景のように画面の中を過ぎていく。

登場人物が行動する根拠は、物語(ストーリー)の中から立ち上がって来ない。風が吹くから目を瞑る様に、家族が食卓に揃えば御
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愛しのアイリーン(2018年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

吉田恵輔監督の作品は『銀の匙』しか観たことがないのですが、その作品を観たあと、
この『愛しのアイリーン』を観ると、どこか、これは吉田恵輔監督の画だなぁと思うところがありました。
具体的に、ここ、と言え
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ホームレス理事長 退学球児再生計画(2013年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

さまざまな事情で学校を中退した元野球部の高校生たちを集めて、合宿生活をしながら野球を続けさせて、高校も卒業できるようにするとある学校のNPO法人の理事長を中心にカメラで追ったドキュメンタリー。

表面
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眺めのいい部屋(1986年製作の映画)

3.7

イギリスやイタリアの文化的背景について詳しくないのでこの作品の台詞のやりとりや、たしなみなどについて詳しく理解をできてないと思うのだけど、おっさんから青年まで、泉で全裸でわいわい騒ぐ姿とかそういうのは>>続きを読む

はじまりへの旅(2016年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

映画を作るうえで、約2時間という時間にどのような物語を紡いでいくのか、というのは、とても大切なことなんだろうなぁと思う。
ざっくりと区分けして、最初の30分で、父と子供達の自然の中での生活を描き、次の
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