TaTさんの映画レビュー・感想・評価

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イレブン・ミニッツ(2015年製作の映画)

2.5

ラストまでカメラワークで魅せる中々良い群像劇だと思ってた。オープニングも良かったし不穏さと違和感を与えてくれる映像には期待できた。
でも、どうまとめてくれるのか?と思ってたらラストに愕然。ありゃないわ
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サウルの息子(2015年製作の映画)

3.8

単焦点でサウルを追い続けるカメラとピントの外の残虐な行為。
尊厳との闘いを徹底して一人の世界を通して描ききるカメラワークに尽きるかな。
ぼやけた周囲の世界は生々しい残虐さと常に隣にある死を示し続けてく
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神のゆらぎ(2014年製作の映画)

4.1

ギャンブル狂いの夫とアル中の妻。不倫旅行に出かける老いたバーテンダーとクロークの女。過去に罪を抱えたクスリの運び屋。
「人間は不浄だから」
その言葉が象徴するように欲望に翻弄される人々と対称的に描かれ
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中国女(1967年製作の映画)

3.9

毛沢東に影響受けたパリの若者たちの話。

ファッションのように身に纏う彼らの政治思想は薄っぺらく軽い。行きすぎた思想、本質のない思想への警鐘は大学教授との会話で明らかになるけど、この一年後に五月革命起
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ザ・シャウト/さまよえる幻響(1978年製作の映画)

4.3

黒魔術師クロスリーが18年かけて習得した秘技それは「叫び」。そんなクロスリーがふとしたことから出会った一組の夫婦との物語...。をクロスリーが自分でその辺の若者に語り始める冒頭から「なんかこれ好きそー>>続きを読む

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)

3.8

内戦が続く祖国を抜け出し、言葉も通じない異国に未来を求めた偽装夫婦の話。移民などの社会問題を丁寧にドラマに落とし込んでる。

彼らが懸命に異文化に馴染もうとする姿と時に感じる孤独、少しずつ家族として感
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ヴィデオドローム(1982年製作の映画)

3.5

映像という架空の媒体が幻覚を作りそれが現実と混同していく話。

本能とか欲望の蓋を刺激するような「ビデオドローム」の世界観とそれに固執していく主人公の姿は良いけど、黒幕が実は...とかアメリカチックな
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ライク・サムワン・イン・ラブ(2012年製作の映画)

3.4

キアロスタミが撮った東京ってどんなんだろうな?と思って鑑賞。
でも、車中のシーンが多かった。キアロスタミの映画は「桜桃の味」しか見てないけれど、そういえばあの映画も車中のシーンは多かった。この人の映画
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サイコ(1960年製作の映画)

3.8

軽はずみな現金の持ち逃げから、豪雨の中立ち寄ったモーテルで事件は思わぬ方向に...っていうあらすじとか予備知識一切なしで見てみた。

2つの事件が絡み合って移行していく様と共にいつの間にか代わる主人公
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奇跡の海(1996年製作の映画)

4.2

全身不随になった夫とそれを支えるクリスチャンの妻の話。

愛とは?献身とは?と投げかけてくれるベスの生き方には心打たれるものがあった。
彼女は彼女なりに裏切るものなく生きていて、純真であるがゆえに全て
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ヤクザと憲法(2015年製作の映画)

4.0

ヤクザ映画じゃなくてヤクザの映画。暴力団排除条例などが拡がる中で排除される側の言い分をまとめたドキュメンタリー。

事務所での普段の姿などをかなり踏み込んで映してて、時おりアップで映される刺青や小指の
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映画よ、さようなら(2010年製作の映画)

4.0

老朽化と会員数の減少により閉鎖に追い込まれたシネマテークが舞台。良質な物でも採算の取れない世の中とそれすら凌駕しちゃう映画愛の話。

彼らが流すラジオでの一幕、「観客の教育」には少し笑ったけど、確かに
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(2012年製作の映画)

4.3

ある朝目覚めると、越えることのできないガラスの壁の中に閉じ込められていたという女性を描いた話。原作はマルレーン・ハウスホーファーの同名小説。 

自然の中の一つの存在としての人間、無限性を持って流れる
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あやつり糸の世界(1973年製作の映画)

3.5

仮想世界を作った学者が実は自分が生きている世界も仮想世界だったと気づく話。
「アルファヴィル」「惑星ソラリス」と並び称されてるけど、そこまでは及んでなかったな。そこまでの作品ならとっくに世に出てただろ
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LOUISE (TAKE2)(1998年製作の映画)

3.9

ストリートキッズと少年と浮浪者。不意に出会った彼らにはそれぞれの世界があって、彼らのやり方は間違っているのだけれど、同じくらい世の中も雑多で軽薄に映る。

屋根の上からパリの街を見下ろすシーンが印象的
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シアター・プノンペン(2014年製作の映画)

4.0

クメール ルージュ。この映画見るまで過激な体制によって陰惨な行為が実際に行われたなんて知らなかった。それもそんなに遠くはない過去に。 
時代が負わせたものと当事者たちの悔恨を思うと...。追憶と忘れ去
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アンナと過ごした4日間(2008年製作の映画)

4.5

冒頭の人が押す車とか、ゴミ箱から出てくる手とか、川を流れる牛の死体とか見て何となくこの映画は好きだろうなって。
そりゃ本当にやっちゃったらダメだけれど、言葉無き映像に滲んでくる感情にとても惹かれた。主
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ブルックリン(2015年製作の映画)

3.3

アイルランドからアメリカに移住した女性の成長を描いた話。

主人公エイリッシュのアメリカでの生活はもうちょっと苦渋に満ちているのかと思っていたのだけれど、わりとすぐ男できて馴染んじゃって...。その恋
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欲望(1966年製作の映画)

4.4

原題はBlow up(引き伸ばし)
何気なく公園で撮ったカップルの写真を引き伸ばしてみたらそこには陰謀が...。みたいな話。
人物を捉えるフレーミングとそこからの動きや、主人公がやたらと気取ってて少し
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ホース・マネー(2014年製作の映画)

3.5

カーボヴェルデからリスボンにやってきた一人の移民の記憶を辿る物話。

構図美を謳うだけあって、構図、ライティング、地下の病院や廃墟などのロケーションは美しく、それが主人公ベントゥーラの錯綜する記憶をよ
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鏡は嘘をつかない(2011年製作の映画)

3.8

舞台はインドネシアの海上に浮かぶ村。そこで暮らす亡き父を思い続ける少女を中心に、素朴で自然愛に溢れた生活を映したドラマ。

彼女達の生活は全てを海に依存していて、それ故に時に海が奪うこともある。けれど
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ロストックの長い夜(2014年製作の映画)

3.6

EUフィルムデーズにて

92年にドイツで実際に起こった難民襲撃事件をテーマにした映画。

前半は痛々しい若き衝動に飲み込まれる息子と、錯綜する政治と倫理に揺れる父親をこだわりを感じるモノクロの画とカ
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愛と死の谷(2015年製作の映画)

3.5

フランス映画祭にて

自殺した息子の手紙をきっかけにアメリカのデスバレーで再会した元夫婦の話。

死んだ息子に導かれるような冒頭と終盤のユペールとドパルデューそれぞれのバックショットが印象的。
デスバ
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父 パードレ・パドローネ(1977年製作の映画)

4.0

農家で暮らすエゴイスティックな父親と学校にも行かせてもらえず屈折した少年時代を送った息子の話。 

困窮した生活の中で支配的な父とそこから逃れようとする息子。たまにナレーションで語られるそれぞれの欲望
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シテール島への船出(1983年製作の映画)

4.5

映画監督であるはアレクサンドロスはオーディションで気に入る役者を見つけられず、ふと目に留まったラベンダー売りの老人に役を任せようとする。そこから亡命し32年ぶりに祖国に帰ってきた老人を主人公とした劇中>>続きを読む

ロゼッタ(1999年製作の映画)

4.0

一人の少女が負った痛みと重さの話。

アル中の母親、キャンプ場での生活。目の前にあるろくでもなさと「まっとうな生活」という儚い希望。他人を蹴落としてまで手に入れようとしたものが現実に掻き消される姿は痛
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闇のあとの光(2012年製作の映画)

3.6

分かりやすいことを難解に繋げたような示唆的映画。

ただ目の前が好奇に溢れてて、それが全てだった頃と生きることに追われてそれがすり潰された頃。ソフトフォーカスのような暈しのかかった映像が現実の不明瞭さ
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ツリー・オブ・ライフ(2011年製作の映画)

2.0

懐古的信仰心から始まりその後盛大に天地創造のイメージ映像が流れる序盤。恐竜が出てきた所で見るの止めようかと思った...。文化的、思想的に後退してる世の中で今更生命の神秘とか見せられても1ミリも感情が動>>続きを読む

僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)

4.1

戦争で全てを失い戦争に取りつかれた少年の異常な執念と対称的に描かれる本来の姿。誰一人として直接的な死は描かれない。けれど、晒し者にされる死体、最後の少年の写真に戦争の陰惨さを思い知らされる。

白樺の
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長江哀歌(ちょうこうエレジー)(2006年製作の映画)

4.0

巨大なダム建設によって沈み行く実際の町で綴られた物語。それを妻を探す男と夫を探す妻という二人の男女の視点から描いてます。

利便性を求める文明がもたらす刹那的な悲哀。まだ幽玄な景色も残る中国で行き先の
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何も変えてはならない(2009年製作の映画)

4.2

相変わらずペドロ コスタのカメラを動かさず、そこにあるものを切り取る手法が生きている。

追求と研鑽によって導き出されるスタイル。作り込まれたものに見るのは真実であり、それがもたらしてくれるものに感情
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恐怖分子(1986年製作の映画)

4.3

病理学者と作家の妻と妻の昔の上司。写真家の青年とその彼女。奔放な少女とその母親。それぞれに問題があって、共存を図れない現実とその不調和が少しずつ積み重なって起こる悲劇を描いている。

人が埋められない
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ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.4

映像の連なりという普遍的概念を放棄した実験的SF映画。全編が静止画のスライドショーとナレーションで描かれる。テリー ギリアムの「12モンキーズ」の元ネタらしい(10年くらい前に見たけど内容覚えてない)>>続きを読む

或る終焉(2015年製作の映画)

3.8

死を隣に置いた終末期患者と一人の看護師の交流。死生観の中の繋がりは時に患者の家族にも理解できぬ程に深いもので、それゆえに常に孤独さを帯びていた。

患者の死の捉え方は様々だけれどどれもが悲哀に満ちてい
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レネットとミラベル/四つの冒険(1986年製作の映画)

4.2

ふとしたことから出会った田舎娘のレネットと都会的なミラベルが織り成すちょっとした四つの冒険譚。
「青の時間」(明け方の朝と夜の間の1分間)など少女的、自然的ロマンに溢れるレネットと、どこかサバサバして
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偶然(1982年製作の映画)

4.0

父親の死を機に大学を休学した男が辿る分岐した3つの物語。
ポーランド情勢を交えながらも、運命の数奇さを描いているのがキェシロフスキーらしい。

人生とは偶発的なものと意図的な選択に導かれた結果の連続で
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