茶一郎さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.5

 『JAWS/ジョーズ』のせいで低予算サメ映画が撮れなくなったという言い回しはよく聞くが、本作『フェイブルマンズ』はいよいよスピルバーグが「自伝映画」「映画についての映画」というジャンルをぶち壊しにき>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.3

 監督ダニエルズがしっかり悪趣味さ・お下品さを残していて驚く、彼らにしか作れない“おバカ”SF感動作だった。
 多元宇宙に加え、映画パロディ…ミシェル・ヨーの俳優人生…カート・ヴォネガット・ジュニアの
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アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

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【コメントを寄稿いたしました!】
「アンチ・怒りのデス・ロード」という監督の言葉に相応しい、ホテルの一室から3000年の時をわたる静かだが壮大な愛の物語。
ここでの愛は「物語」それ自体への愛。
物語を
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アントマン&ワスプ:クアントマニア(2023年製作の映画)

3.4

 今回の悪役は「征服者カーン」ではなく「既視カーン」だ!なんて言っている場合ではない、余りにもそのままな「スター・ウォーズ」コピーに落ち着いた平凡な新フェーズ導入映画。
 過去「アントマン」シリーズの
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シャイロックの子供たち(2023年製作の映画)

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【コメントを寄稿いたしました!】

「紛失した100万円」が「ある陰謀」に辿り着く銀行ピタゴラスイッチ。
パズルのように複雑な原作を改変し、“倍返し”の爽快度を高めたエンターテインメント……全く新しい
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バビロン(2021年製作の映画)

4.0

 「お尻の穴」で始まり「お尻の穴」で終わる、余りにも下品な映画で驚いた!
 観客に排泄物をぶつける冒頭からお察しの低俗ブラックコメディ版『雨に唄えば』だが、ジャスティス・ハーウィッツの祭りビートとマー
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すべてうまくいきますように(2021年製作の映画)

4.0

 ゴダールがスイスに渡り死を選んだ昨年を思い出す。「この人生を終わりにしたい」父の最後の願いを叶えるために奔走する娘たちを描いた一本。
 フランス(国旗の色、青と赤のカラーが映画全編を支配)では尊厳死
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.4

 「お前とは絶好。ずっとお前の話、つまらないと思ってた。」から始まる東京03のような開幕から、人と人との憎しみ合いを1923年アイルランド本土での内戦と分断/分極化の現代とに重ねる、最高に意地が悪く鋭>>続きを読む

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)

3.6

 2023年アカデミー賞インド代表は『RRR』ではなく本作。映画の魔力に魅了された少年が映画を「撮る」のではなく、映画を「上映」するために奔走する。
 小さい頃、「この大きなテレビはどのように映ってい
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母の聖戦/市民(2021年製作の映画)

3.7

TIFFにて『市民』というタイトルで上映された、誘拐ビジネスに巻き込まれた母の“闘争”を描く一本。アプローチは異なるが、奇しくもNetflixで配信された新作『ざわめき』と同様に「母」のアクション(>>続きを読む

ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

4.6

 圧倒的なパワー!圧力!本年の「力こそパワー!」映画暫定一位!ヒトがケモノと化してとにかく叫ぶ!吠える!異常なまでに中央に人物を置くカット割、Z軸移動カメラの圧力がスクリーンから飛び出してくる!
 父
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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

4.1

 ハーヴェイ・ワインスタインを告発したニューヨーク・タイムズ紙の記者を描く、『スポットライト~』『大統領の陰謀』の現代最新版のような一本。Follow the money ではなくFollow 示談金>>続きを読む

ファミリア(2023年製作の映画)

3.2

 ブラジル移民との役所広司版『グラン・トリノ』と、アフリカから帰省した息子との物語と、事態を悪化しかさせない役所パパの暴走。有機的に絡まない2本の物語を焼き物職人の役所広司が無理矢理繋ぎ合わせる、中々>>続きを読む

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

3.8

【祝!黒字】狂気とも思える水描写、最高峰の最新技術を堪能する一方、語られる内容は『ターミネーター』、『タイタニック』とほんの僅かな『アビス』……そして父性に縛られた愚かな父親の物語と家父長制……この新>>続きを読む

トロール(2022年製作の映画)

3.6

 「1984ゴジラ」のトロール版といった具合で個人的「トロール怪獣映画」の王『トロール・ハンター』とは異なる“真面目”な、硬派な方の「トロール怪獣映画」。『~サンダ対ガイラ』を思い出す人喰い巨人初登場>>続きを読む

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)

3.9

 『反撥』の観るトラウマ版と言うべき、昨年の『ラストナイト・イン・ソーホー』が裸足で逃げ出す男性の自覚的/無自覚な加害無間地獄。
 日本では遅れて同年に配信されたドラマ『Devs』が素晴らしく勝手にハ
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ブラックアダム(2022年製作の映画)

3.6

 小学生がストーリー展開を考えたような大味の行ったり来たり映画。
ロック様がイカした曲(選曲センス!)を背景に大量虐殺をしたり、セルジオ・レオーネのパロディで人を撃ったりする嘘みたいなシーンがあります
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ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

3.4

 パステルカラーの住宅が並ぶ50年代のアメリカ郊外。男は仕事に行き、女性は家事をする……この“理想的な”住宅街……どこかがおかしい??という一億回は見た設定だが、一億回は語られるべき設定。オリヴィア・>>続きを読む

バルド、偽りの記録と一握りの真実(2022年製作の映画)

4.2

 『バードマン~』で一度は空を飛んだはずが、まだ空へ飛び立とうと荒野を駆ける苦悩する監督の跳躍。赤、白、緑、メキシコの国旗の色が怪しく光り、より黒いお笑いの度数を上げた一本。
 相変わらず同じことしか
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ソングバード(2020年製作の映画)

3.0

 【✍️コメントを寄稿致しました】
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ノーランとジョーダン・ピールがIMAXカメラで「コロナ禍」と闘った一方、
“破壊王”マイケル・ベイはiPh
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カメの甲羅はあばら骨(2022年製作の映画)

3.2

 予告を見て目を疑った。「気持ち悪い」はこの映画には褒め言葉か。狂気じみた映像の一方、物語は真面目な青春学園モノで頭がおかしくなるかと思った。
 「もし人間の骨が動物の骨なら?」な世界では、動物の骨格
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RRR(2022年製作の映画)

4.3

 今年『トップガン マーヴェリック』と並ぶ無邪気で、圧倒的に“強い”映画。“強い”とか“大きい”という形容詞が似合う“大”娯楽作。
 作り手の映画への信仰心が、こんなにも楽しい楽しいエンタメ作に繋がっ
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LAMB/ラム(2021年製作の映画)

3.9

 ツッコミ不在の漫才「鳥人」の実写版といった具合に絶妙に気持ちの悪く、居心地の悪い映画。(ツッコミ的第三者がボケ側に加担するのも似ている。)
 ロケーション選びで勝ってしまっている感もありつつ、要素を
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オカルトの森へようこそ THE MOVIE(2022年製作の映画)

3.9

 台湾が『呪詛』!?でも日本には白石晃士監督がいるぞ!フェイクドキュメンタリー×ホラーの最高到達点。白石作品のベスト盤とも言える原点回帰的『オカルトの森へようこそ』。「コワすぎ!」シリーズはもちろん、>>続きを読む

百花(2022年製作の映画)

3.7

 大変失礼ながら、作り手のお名前から事前に予想していた出来を超えて「映画だよ!!!!」と大声で言っている“映画”で、かなり前のめりで楽しめました。「母と子の記憶」というミニマムなテーマを異常なまでに長>>続きを読む

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)

3.4

 『デッドプール2』とガイ・リッチー作品のコラボのような歓迎すべきおバカ大作。隔月でこういうの観たい。「エアポート」シリーズの新幹線版的荒唐無稽なリアリティで繰り広げられる暗殺者同士のすったもんだに、>>続きを読む

地下室のヘンな穴(2022年製作の映画)

3.7

「入ると時が12時間進み、体が3日若返る穴」をめぐる老化・美醜についてのブラック人間観察コメディ。「念力で殺人を繰り返すタイヤ」の『ラバー』でお馴染み、今最も「映画設定大喜利」が尖っているカンタン・デ>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.0

 空の『ジョーズ』とカメラで闘う映画史に名前を刻めなかった「名も無き者」たちの映画史への復讐劇。何ともジョーダン・ピールらしからぬアツく楽しい本作は、自身が敬愛するスピルバーグへのラブと批評を入れ込ん>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.8

【「大人になっても判らない」人生における正しい選択。
ただひたすらに何かを待ち続ける“わたし”は、自分で自分の人生をコントロールできない。
そんな“わたし”の感情が、衝動が、人生をはみ出て爆走する最悪
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みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)

4.2

 夏の終わりに観たい映画オブ・ザ・イヤー2022。
 『宝島』ですっかり心を掴まれてしまったマイ・フェイバリット ギヨーム・ブラック監督の「夏休暇モノ」はやはり最高だった。ヴァカンス先での3組それぞれ
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ハケンアニメ!(2022年製作の映画)

3.8

 アニメの制作現場に加えて、作品タイアップ、商品化、監督が関与するPRまで射程を広げて「作品を“あなた”に届ける」過程全てを描いているのが印象的なアニメ制作(+製作)お仕事ムービー。
 『映画大好きポ
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宝島(2018年製作の映画)

4.7

どうやって撮影したのか意味不明、どうやったらこんなにカメラの存在を消せるのか理解不能。遠い国のレジャー・アイランドに自分の幼少期の好奇心と、青春と、現在、触れている社会の問題、全てが投影されていた。>>続きを読む

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022年製作の映画)

3.8

 何だかんだ製作ケヴィン・ファイギは今の今まで上手く作家性の強い監督をコントロールしていたんだと思い知る、「サム・ライミ監督作である」事だけが異常に浮き上がっている変〜な映画。逆に清々しい。
 『スパ
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流浪の月(2022年製作の映画)

4.0

 徹底的な“2人だけ”の映画。「感情移入できなかった」なんてのは、あるある映画感想ですが、ここまで分かりやすく観客に「共感してはいけない」安易な感情移入を許さない物語の邦画新作も珍しい。
 逆視点版『
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英雄の証明(2021年製作の映画)

4.1

 「面白い」と言って良いのか頭を悩ませながら、やっぱり抜群に面白いファルハディ先生。「金貨を拾って届けただけなのに」な、とてもシンプルな服役中の男の善行が些細な嘘を巻き込んで大騒動になっていく…これが>>続きを読む

THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

4.6

 映画館がバットケイブになる黒…闇…暗黒…ヒーローであるはずの主人公が狂った悪役側になるカーチェイスには流石にブッ飛んでしまった。
 ティム・バートン版以来、最高の“バットマン”映画。白人富豪が持たざ
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