vivoさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

vivo

vivo

映画(2027)
ドラマ(0)
アニメ(0)

日本の夜と霧(1960年製作の映画)

4.0

とにかくいやーな気持ちを残すとんでもない結婚式。滑舌の悪さや噛みまくりの台詞回しに少し驚いたが、結果的にその稚拙さが、論を論で返すことの虚しさと滑稽さを絶妙に表現していた。心なき弁の立つものが集団を支>>続きを読む

恐怖の報酬 オリジナル完全版(1977年製作の映画)

4.0

恐怖の質が独特。精神的ストレスを与えるディティール描写、始終鳴りわたる不穏な高音BGM、そして容赦なく非常な展開が独特のホラー感を醸し出していた。強烈な恐怖感と画的な美しさが同居した吊り橋のシーンはこ>>続きを読む

男はつらいよ(1969年製作の映画)

3.0

寅さんのキャラクターが、圧倒的なチャーミングさは他のいろんな人間性の問題を凌駕して人を魅力的にすると思わせてくれる。そして、チャーミングな人間は周りの人間のチャームと幸福感をも引き出してくれるものだと>>続きを読む

鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)

5.0

とても長時間は見ていられないほどの圧力を始終放つ映像が凄い。相当な労力を想像せざるを得ない細かい美術やストップモーションに、自分の中に存在する世界をとにかく外に出したいという制御の効かない熱量を感じた>>続きを読む

踊るブロードウェイ(1935年製作の映画)

3.0

舞台装置や視覚効果のアイデア、明るいユーモア、そして高レベルのタップダンスがストレートに楽しい気分を運んでくれる映画。タップダンスをやってみたくなった。

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.0

どんな環境であれ、人間社会には支配する側とされる側が常に存在することを滑稽かつ苦々しく描いた作品。軽妙な会話とあっけらかんとしたブラックジョークがずっと楽しいが、とにかく、後味は苦い。自分自身を顧みて>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

4.0

なんだこりゃな物語ではあるのだが、始終美しく楽しい画面を見ているだけでも満足感があるし、眠らなければ起きられないという比喩に込められた優しさがじわりと沁みた。並行して展開するレベルの異なる世界を眺めて>>続きを読む

ミラノの奇蹟(1951年製作の映画)

4.0

とにかく驚きと楽しさのある新しい画を作りたいという好奇心と創造欲が溢れていて、見ていて幸せな気分になった。シュールなユーモアも楽しく、エンターテイメントとしての映画に必要な本質的な要素を思い出させてく>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

3.0

中年の喧嘩をめぐるウィットのある会話劇を楽しむコメディと思いきや、物語の展開と共に登場人物たちの様々な感情が層のように重なり、最終的には悲哀と救いが一体となった大きな感情の塊を受け取ったような感覚にな>>続きを読む

過去のない男(2002年製作の映画)

3.0

全てを失っても、まぁ、どうにかなるし、人との新しい関係は生まれ続けると思わせてくれる映画。笑わせようとしているのはわかるものの笑えない小ネタが沢山あったが、肩の力が抜けた感じが伝わっただけでも十分効果>>続きを読む

エゴイスト(2023年製作の映画)

3.0

愛し方や愛の意味など考えず、当たり前に誰かと寄り添い、誰かに囲まれながら生きてゆける人生もあるだろう。でも、そうではなかった場合、人は愛の意味を自問自答し、その中で何度もエゴと愛の境界に迷うのだろう。>>続きを読む

ゾラの生涯(1937年製作の映画)

4.0

正義と真実が尊重されることは決して当たり前ではないということを再認識させられる物語だった。長い歴史の中でそれらを守るために闘ってきた人たちがいて、今も誰かが諦めず流されず闘っている。もちろん正義も真実>>続きを読む

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

3.0

性犯罪は被害者に拭えない羞恥心を植え付け、自分の尊厳ために戦う力を奪う。それが、密室交渉やメディアの忖度とは比べ物にならない力で性犯罪の告発を難しくしているのだろう。その圧倒的な負の力に立ち向かうため>>続きを読む

流浪の月(2022年製作の映画)

3.0

それぞれに違う痛みを抱えた人間の集合体なのに、世間という塊は痛みにとても鈍感で、だから痛みは流浪する。どれだけ努力しても当事者以外には決して想像し得ない類の痛みがある。そんな痛みを一人で抱えて生きるの>>続きを読む

ベニスに死す(1971年製作の映画)

3.0

まるで美の象徴であるかのようなひとりの人間が、ひとりの老人の中に美への強烈な渇望感を生み出す。それは、一度その手にあって失ってしまったものも含めて、もう決して手の届かない全ての美に対する渇望感。最初は>>続きを読む

クレイジークルーズ(2023年製作の映画)

2.0

全体的に演出の不完全さが目についてしまう作品だった。なにより核となる事件の演出に致命的なミスがあるし、本筋に関係ない小エピソードの回収も雑だったため、なんだかとっ散らかってる上にカタルシスもなかったと>>続きを読む

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.0

意欲的な作品というのはこういう映画のことなんだなと、まず思った。思考を刺激して止まない高濃度の会話劇に夢中になった。事前情報なく鑑賞したので、国勢調査の場面でハッとなり、そこから更にこの世界に没頭。男>>続きを読む

ハモンハモン(1992年製作の映画)

3.0

悲劇的な展開なのに最後の最後までやはり喜劇になっているという奇作。二組の家族とひとりの青年がかなりライトかつワイルドに混じり合う様が可笑しい。突然のスローモションや股間と乳房の強調や豚の活躍など、映像>>続きを読む

ヘル・レイザー(1987年製作の映画)

4.0

造形と映像演出のアイデアが満載で刺激的な一本だった。後の映画に多大なインスピレーションを与えたであろうユニークな魔導士のビジュアル、逆再生などのアナログ手法を駆使した目に楽しい映像、そして快楽と苦痛の>>続きを読む

地中海殺人事件(1982年製作の映画)

4.0

全員にアリバイがあるということはどこかに嘘があるということ。その嘘が解き明かされる過程で点と点が繋がる様が気持ちよかった。更に、物的証拠を導く流れが鮮やかで二度気持ち良い。女性陣のキャラクターを雄弁に>>続きを読む

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)

3.0

しっとりした情緒のある景色と音楽が良かった。前半の村上春樹的な世界観に物語の行く末を案じてしまったが、最終的には不可思議要素のあるミステリー作品になっていてジョジョ的な世界を楽しめた。ヘブンズドアーの>>続きを読む

リオの男(1964年製作の映画)

3.0

冗長な追いかけごっこをひたすら見せられる映画ではあるが、カラッとしたユーモアと、アニメのような画づくりが面白い。そして、そんなアニメのような画にばっちりハマっているのが主演のジャン=ポール・ベルモンド>>続きを読む

鉄道員(1956年製作の映画)

5.0

失われるはずがないと思える存在や習慣が、突然、あるいはごく自然に失われる。それは誰にとっても本当は受け入れ難い不思議なのに、その不思議を世の常と受け入れて大人は生きている。でも、やっぱり喪失は辛いとい>>続きを読む

JOY(2015年製作の映画)

5.0

前向きな気持ちになれるいい物語。やや運に助けられている感はあるが、現実もそんなもの。強い意志や決意のある人間のもとに運が集まりやすいのかどうかは定かではないが、どこにでも迷い込むかもしれない運に、何か>>続きを読む

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)

3.0

光と影のコントラストを美しく見せる絶妙な構図に加え、意味的にも主題に対してコントラストの強い背景を配置し、その画面における主題を際立たせる手法が面白かった。慣性が生んだ殺人と新時代を祝う花火、破壊され>>続きを読む

渇水(2023年製作の映画)

2.0

ネグレクトされながら健気に生活する姉妹、特に姉にどうしても感情が集中してしまう物語だが、その姉妹の母親の行動や台詞にいまひとつリアリティがないところに少し冷めてしまって残念だった。水は、この物語ほどに>>続きを読む

台湾アイデンティティー(2013年製作の映画)

2.0

自分が属する国や文化やイデオロギーに迷うことなく生きられることの幸運に気付かされた。しかし、それら全てが揺らぐ環境に生まれ、自分の意思で自分のアイデンティティを形作らなければならなかった人たちが、不幸>>続きを読む

ディック・ロングはなぜ死んだのか?(2019年製作の映画)

2.0

緊張感がありつつもコミカルなやり取りが楽しい映画だったが、中盤で明らかになる下品な事実のインパクトが強すぎて、その前後の謎や伏線や会話劇の妙か全てどうでもよくなってしまった。The Death of >>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.0

個々の人間の存在の本質的な不確かさや、どんなに近くにいてもわかり合えない他者との関係から生まれる大きな虚無感。そんな虚無の中にも僅かな意味があると語る希望の物語。哲学的なテーマと普遍的な家族の問題をマ>>続きを読む

JAWS/ジョーズ(1975年製作の映画)

4.0

見えないものが襲ってくる恐怖を多様な演出手法で体感させる名作。実際にサメがその姿を見せるシーンは多くなく、サメ目線を思わせる水中カットや消えた犬、そして水面の樽など、巧みなアイデアで間接的にサメの存在>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

2.0

哲学性のある背景設定や、精緻かつリアリティのあるキャラクターやマシンの造形が庵野秀明氏らしい。スピード感を過剰に強調した不自然な動きも、昔懐かしい初期特撮作品へのオマージュに感じられてよかった。幾つか>>続きを読む

KAPPEI カッペイ(2022年製作の映画)

2.0

気楽に観られるおバカ映画。エンドロールを見る限り、かなり原作を忠実に再現している様子だが、静止画で得られる可笑しさと、動画で得られる可笑しさは違うということを感じる場面が多々あった。静止画でこそ表現で>>続きを読む

ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

物語自体に目新しいアレンジはないが、芸術作品としてのストップモーションアニメに見応えがあった。あくまでストップモーションのルールを守りながらも最新技術を駆使した映像は、素朴さを保ちながら目に新しく飽き>>続きを読む

グラス・イズ・グリーナー: 大麻が見たアメリカ(2019年製作の映画)

3.0

どんなルールであれ、それが人権を侵害するものでなく、自制心をもって守れるものであれば、それを守れない人間の言うことにあまり説得力はない。そう思いながら見始めたが、大麻をある文化の構成要素のひとつと見た>>続きを読む

カモン カモン(2021年製作の映画)

4.0

子供ともっと真剣に向き合いたくなった。思い返せば子供の中にある無限の世界を無意識的に軽視していた気がする。かつて子供だった時の自分の中にあった世界のことも、いつの間にか忘れていた。子供と対話することに>>続きを読む