ありがちなプロットではあるが、主人公が大暴れする様がとにかく気持ちよかった。家族との生活のために恒常的に自己を抑制して生きる主人公への共感に加え、その主人公を演じるボブ・オデンカークの嫌味のない雰囲気>>続きを読む
世界がこんな風にやさしくあればいいのにと願ってしまうし、こんなやさしい世界もまた世界の一側面だと思える映画だった。好きを追求することと、周囲がそれを見守りサポートすることによって生まれる、大袈裟ではな>>続きを読む
前作をはじめとする80年代の青春ムービーにありがちなステレオタイプなキャラクター達とベタな展開。しかし、それが良かった。程よいノスタルジー感に包まれながら、状況理解に頭を使う必要もなく、現代の映像技術>>続きを読む
映画らしいスケール感を意識したっぽい物語だが、肝心の謎解き要素が薄い。そして、同じシーンの繰り返しや時間稼ぎのような演出が多く、薄い内容が更に薄く感じられてしまった。
繊細で美しく切ない映画だった。具体的には示されていないものの、何度も見返されるビデオが、この父娘に大きな喪失が訪れることを暗示している。父の抱える苦しみもまた直接的には描かれず、幾つもの兆しや気配を散>>続きを読む
リズムはあまり良くない映画だったが、する側、される側として高い可能性で経験するであろう介護についていろいろ考えさせられた。家族とたとえ心が通じ合わなくなったとしても、やっぱりできるだけ生き続けてほしい>>続きを読む
知性が高く自己中心的で冷酷無比、そんなソシオパス男を強烈なインパクトで演じる仲代達矢を鑑賞する作品。ストーリーはシンプルだが、主演の存在感で最後まで飽きさせないところが凄い。
核心に触れず、互いに察しながら進む会話にリアリティがあった。男女の役割に固定観念があった時代の物語なので、現代の価値観に照らすと、それでいいのか?と思ってしまう結末ではあった。しかしながら、その結末の>>続きを読む
直視するのが難しい場面の多いアクが強いホラーだった。前半の空虚な明るさと不穏な静けさが、その後に待ち受ける悲劇を予感させて恐怖を誘う。上空からしか見えない事実を俯瞰で見せるカメラワークが面白かった。
既に閉塞感満載で更に悪いことが起こりそうな予感しかない舞台で、やはり悪いことが起きてしまうという救いのない話。解像度の高さを感じさせる美しくスタイリッシュな映像と、主演二人の迫力のある演技が良かった。
三船敏郎演じる赤ひげ先生がひたすらカッコいい。人を救いたいという強い信念、人並外れた忍耐力と包容力、権威に怯まない度胸、そして腕っぷしまで強い。これは憧れずにいる方が難しい。人情エピソードが連なる構成>>続きを読む
色彩が押し寄せる戯曲的な世界の中に人間の逞しさと弱さと優しさが詰め込まれた忘れがたい群像劇。人と人との間にある複雑で繊細な感情は第三者からは決して理解できるものではないことが強く伝わったし、それを理解>>続きを読む
ザ・悲恋。哀愁たっぷりのテーマ曲と広大な景色で、どうにもならない人の運命の虚しさを印象づける手法は、70年代あたりの日本のメロドラマのお手本になっていたのではないだろうか。ロシアの鉄道駅の大胆にドラマ>>続きを読む
自分自身にも自分のことが判っていない年頃の少年の姿が丁寧かつ印象的に映し出されている。妥協や伝統や建前に対する静かな反抗心、真実と自由への渇望感、大人らしい行動への憧れと、喜びや興奮に敏感な子供らしさ>>続きを読む
ビング・クロスビー演じる神父がひたすらスマートでかっこいい。価値観の違う人を感化するためには、違う価値観への尊敬と理解を忘れず、相手の尊厳を傷つけないやり方で接することが大事なのだろう。そして、そんな>>続きを読む
精神が疲れた人を救うことはとても難しい。ただ、真の傾聴力と行動力を併せ持つ人が、人を救うという奇跡に最も近い場所にいることを教えられた。まず、本人が何に悩み、それをどう解決したいのか、何を求め、何をし>>続きを読む
光を大胆かつ巧みに使った映像が印象的。特に逆光によって輪郭を際立たせ、人の顔や身体を美しく見せる手法が良かった。そして、そんな手法で映し出された主演のジェニファー・ビールズが、そのフェチ度の高い衣装や>>続きを読む
オープニングのシンボルロックから笑った。真面目とおふざけの境界線が曖昧だからこそ生まれる可笑しみを味わえる作品。フォーマットとしては主人公の特技を駆使して成り上がったり悪人と戦うというスタンダードなも>>続きを読む
物語自体は単に身勝手な男が巻き起こす迷惑な話ではあるが、自己犠牲や贖罪の様式に日本らしい価値観を見た。和を感じる色彩美も公開当時は印象的だったのだろう。
簡単には解決できない問題を抱えながらも、お互いにぶつかりながらゆっくり明るい未来に向かってゆく。そんな家族の姿にあったかい気持ちになった。自分を許し、他人を許す力と、誰かに確かに愛されているという実感>>続きを読む
理想主義者が権力に溺れてゆくという珍しくない物語の中で、理想と手段、正義と悪の関係について考えさせられる物語だった。性善も性悪もなく、人は誰でも正義を求め悪に弱いものなのかもしれない。だから悪に弱いと>>続きを読む
生命体に依存した有形アートを通して生命の尊厳について考えさせる映画。人身売買や難民問題に加え、言論弾圧からフェイクニュースまで、現在進行中の社会問題が巧みに組み込まれた脚本が面白かった。
負の感情がてんこ盛りの物語。一人ひとりの嫉妬や執着や自尊心や鈍感さが相乗的に負の感情を生み出し、そこにあるはずの愛情など容易に覆い隠してしまう嫌な空気を生み出す様には納得できるものがあった。母娘間の複>>続きを読む
雰囲気のある役者陣の演技も含め、全体的にそこはかとなく閉塞感のある雰囲気がよかった。変えられないプロフィールが生み出す長く続く苦しみを抱えながらもなんとか生きる人間に与えられたわずかな救い。そんな優し>>続きを読む
先が見えている物語の退屈さはさて置き、映像演出の物足りなさが残念。純粋に歌と踊りと衣装で魅せるタイプのミュージカルなので舞台だったら楽しめるのかもしれない。しかしながら実力派シンガーたちの歌唱力はさす>>続きを読む
不快度が高い事件と目を背けたくなるような拷問シーン、そこに場違いにミックスされたコミカルな演出が倫理観の歪みを生み、全体的にサイコ感のある空気を生み出していた。ミステリーとしてのカタルシスは弱いが、合>>続きを読む
まず、ブラジルの独特な民間風俗の魅力が詰め込まれた世界観がいい。1959年の公開当時には今よりもずっと強烈な印象を残したに違いない。鮮やかな世界で自由に刹那的に動き回る人間たちと、その中で生まれる悲恋>>続きを読む
生死が不明な人の存在がどれだけ人の心を縛るのかを見せる作品。待ち続けている時の苦しみは、忘れられそうな時にふとしたきっかけで訪れる。ひとつの謎が軸になっている物語だが、その真相を明らかにするのではなく>>続きを読む
愛憎も孤独も遠くから見れば全て喜劇になる。自分自身のこともそうやって見ることができれば救われるかもしれない、と気づかせてくれる優しい映画。ひとりの魅力的な女性を中心に生まれては交差する人々の感情の動き>>続きを読む
かなり嫌な話。上流社会の退廃的な生活が倫理観の崩壊をもたらすことってあるんだろうなと思ってしまった。日本らしい怨念の視覚化方法を味わえる作品でもあった。
ストーリーテリングに関しては、もう少し種明かしを先延ばしにする構成にしていた方がミステリーとして楽しめた気がする。しかしながら、三國連太郎の巧みな演技だけでも見ていて面白かったし、爪を介した情の表現は>>続きを読む
アイデアのある犯行シナリオ、それが幾つかのミスや不運や詰めの甘さによって狂ってゆく様、そして警察と犯人グループの裏のかきあいが楽しかった。犯人グループと警察、警察と鉄道会社、鉄道会社の司令部と現場、そ>>続きを読む
ひたすら歌い続ける八代亜紀、プレイボーイという役割を迷いなき自信で演じる梅宮辰夫、右から左から美顔を見せつける中島ゆたか、そして謎テンションのメキシコ人、と思いきや仮面を脱いだらある役者。とにかくシュ>>続きを読む
中盤のミュージックビデオ的な展開は冗長に感じてしまったが、とにかく目を見張る映像アイデアと技術が楽しかった。奥行きを強調したカメラワーク、強い光に呼応するダイナミックな影の動き、そして盲目の世界の表現>>続きを読む
やや散らかった印象の映画だったが、それ故に作者の溢れる感情と情熱を感じた。大きなものの一部になりたいという渇望、それを実現するために失われるものに対する喪失感、そして、大胆な挑戦を通して大きなものの一>>続きを読む
仕事で得られるカタルシスが気持ちいい映画。個人の成功意欲に溢れ、それらが産業を大きく発展させるきっかけになっていた80年代の空気感が、2020年代に重なる気がした。Just Do Itな性格の主人公の>>続きを読む