夜さんの映画レビュー・感想・評価

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涼宮ハルヒの消失(2010年製作の映画)

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キョンと長門に焦点を当てた物語。163分の長さを退屈させずに観させられるというだけで充分、ちからのある作品だと思う。

管見の限りでは押井守の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』以来、アニメ
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ガールズ&パンツァー 最終章 第4話(2023年製作の映画)

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これだけ長いスパンで制作しながら作中の雰囲気やキャラにほとんどブレを感じさせないのが、まず見事。主力のⅣ号、ちょい役として素晴らしい働きを見せるヘッツァーが序盤で脱落する中、どう見せ場を作るかに期待が>>続きを読む

コクリコ坂から(2011年製作の映画)

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ストーリーラインが平坦でメリハリがなく、絵までのっぺりしていて、全体に緊張感がなかった。これは習作だろう。宮崎駿との違いを一番感じたのは風の描き方で、この作品の風がただの風だとしたら、駿はもっと立ち騒>>続きを読む

風立ちぬ(2013年製作の映画)

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数年ぶりに再見。冒頭からあんなにも夢見ていたパイロットになれないという現実を突きつけてくる容赦のなさもさることながら、菜穂子との愛が零戦の残骸に結実するという構造のまさに呪われた夢感が好きで、「なんて>>続きを読む

特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト(2023年製作の映画)

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上司の激詰めを振り切り休暇を取って観てきた。出来事らしい出来事は起こらないが、それでも興味を失わずに最後まで見られるのはさすが京アニクオリティ。クレジットで今は亡き池田晶子先生の名前が出てきて心の中で>>続きを読む

この世界の片隅に(2016年製作の映画)

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女性のライフコースが限られていただけに女同士の絆というか誰もが先輩として知恵を提供してくれるコミュニティ感に懐かしさを感じた。すずさんに「ああ、なんも考えん、ぼうっとしたうちのまま死にたかったなぁ」と>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

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巨匠の積み木崩しに付き合わされたというか、今までのジブリ映画の中で最も作り手のエゴを感じた。それだけメッセージ性を強く押し出しているという賛意もありうるが、私はもう少し開かれた作品の方が好きだ。今作は>>続きを読む

マルホランド・ドライブ(2001年製作の映画)

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リンチの作品をあらかた見尽くして数年が経って見直してみると記憶の美化が進んでいたらしく失望させられた。この作品は一見難解だが、それなりに整合性のある解釈を施しやすい作品でもあって、映画がわかる自分に酔>>続きを読む

カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)

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再見。小説をそのまま映画に移し替えたらこうなるだろうというような小説的な作品で、内的な筋としてはボビー青年が"Life is a comedy written by a sadistic comedy>>続きを読む

リバー・ランズ・スルー・イット(1992年製作の映画)

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再見。若き日のブラッド・ピット演じるポールの、青年期特有の危うさというか、向こう見ずゆえの輝きを映した作品。それがポールとの比較の中では凡庸と言わざるを得ない兄ノーマンの視点から語られているところにこ>>続きを読む

隣の女(1981年製作の映画)

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現在の背後に過去が影のようにピッタリと貼り付いていて、その息苦しさを終始、感じさせる作品だった。惹かれあいすぎて互いを破壊せずにはいられない危険な組合せ。それにしても男の嫉妬は醜い。「どんなに通俗的な>>続きを読む

(1963年製作の映画)

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いかにも精神分析批評におあつらえ向きな内容で、大学の講義などで扱われていそうな教科書的な作品だった。ヒッチコックの中でもあまりにもリンチ感あふれる一作ではないだろうか。冒頭でヒッチコックが犬の散歩をし>>続きを読む

めまい(1958年製作の映画)

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圧巻だった。男たちの病気にひたすら女性が付き合わされる話で、スコティの葛藤を理解しつつも居心地の悪さを感じながら観た。普通は病的なものが真実を遠ざけるのに、その病的さを貫くことで真実に到達することにも>>続きを読む

サイコ(1960年製作の映画)

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各パートごとに観客の興味や関心がどこにあるのか、それをどこに仕向けるのかといったコントロールが抜群にうまい。

薔薇の名前(1986年製作の映画)

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映像表現がテレビドラマレベルで映画と呼べる域に達していない上に、内容が極めてローカルなのでキリスト教圏以外の人間が観る価値があるのだろうかと考え込んでしまった。バフチンのカーニヴァル論が評価されたのは>>続きを読む

ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)

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私立探偵物。そういえば、こういう主人公がイカす男として祭り上げられていた時代があったなぁと懐古的な目で眺めていた。映画として洒脱に作り上げられていたが、その分、原作はまた違うんだろうなと思わされるよう>>続きを読む

ロスト・イン・トランスレーション(2003年製作の映画)

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あきれるくらいクソみたいな映画だった。日本人の目から見てもおかしいステレオタイプな日本(人)が何の留保もなしに表象されている。「外国人の視点から映しだされた東京」なんて言葉で擁護しきれるほど丁寧な作り>>続きを読む

たぶん悪魔が(1977年製作の映画)

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画面構成があまりにも完璧すぎてオープニングのクレジットが尽きてすぐの場面からもう薄笑いが浮かんでくるくらいだった。ある色の明るさが他の色にどんなふうに映えるのかまで完璧に計算に入れて作る画面は人工的だ>>続きを読む

アメリカン・ヒストリーX(1998年製作の映画)

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ウクライナ問題に関連してネオナチが話題にのぼる機会が増えてきたので数年ぶりに再見。

いわゆる芸術的な観点での見所はない、純粋に社会派の映画だと思う。それでも120分まったく飽きさせることなく観られる
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寝ても覚めても(2018年製作の映画)

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再見。演技はともかく脚本が素晴らしい。震災を軸に原作を翻案している。ある日突然いなくなって生死不明になった麦の存在のありかたが震災の行方不明者と重なりあってくる。

もし災害で行方不明になった大切な人
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

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ひさしぶりに日本の映画で素晴らしいものを観たなという充実感があった。一方で演出の意図が見え透いていたり、登場人物に台詞で語らせすぎていたり、優等生然としすぎていたりするところが気になった。

この作品
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わたしを離さないで(2010年製作の映画)

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マキューアン原作の『つぐない』に似たイギリス文学的な陰鬱さで、改めてイシグロへの苦手意識を確認した。とにかく暗い。物語の根幹に関わる噂もヘールシャム側にメリットがないからそんなわけないだろうと誰でもわ>>続きを読む

タクシードライバー(1976年製作の映画)

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何度目かの鑑賞。もう偏愛に近いと思う。主人公の利己的な言動は褒められたものではないし、メインテーマはあまりにもムーディでセンチメンタルだ。でも映像や音楽の綜合のなかからトラヴィス・ビックルという一人の>>続きを読む

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)

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一部露骨な場面が好みにそぐわなかったが、文句なしの名作。同性愛というよりもフラテルニテ=ブラザーフッドの話として観ていたので、古代ギリシャの文脈があるとはいえ性愛関係に入るのは意外だったが、AIDSが>>続きを読む

ジョーカー(2019年製作の映画)

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ホアキン・フェニックスの笑いに狂気が足りないように感じた。もっと本能的な恐怖を感じさせる深いネガティブな笑いがこの世にはあると思う。本物のピエロの哄笑ってもっとずっと怖い。

想像力なんて大袈裟な言葉
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

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言うならば、気にいらなかった。繊細という以上に作り手の意識や作為性が気になってしまって、よく出来ているけど不自然という印象が勝ってしまった。いかにも作り物じみているというか、シチュエーションも含めて「>>続きを読む

海がきこえる(1993年製作の映画)

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宮崎駿が参加していないので芸術性という点では評価されていないものの、同時代を愚直に描いているので後になって80年代懐古主義者に再評価されてシティ・ポップのMV御用達になっただけかと思って観てみたが、普>>続きを読む

天空の城ラピュタ(1986年製作の映画)

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(特にムスカの掘り下げが足りないせいで)出来事の表層的な連なりにしか見えないところもあったけれど、それでも後半の展開には圧倒される。絵になるシーンは多いものの登場人物のその時々の心情に想像を巡らすよう>>続きを読む

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)

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根本的な問題がなにも解決されていない気がすることとイデオロギー色が強いことと肺病を抱えていた身としては胞子が飛ぶ世界観そのものに生理的な嫌悪を感じるという点で苦手な作品だった。エヴァを先に観ていたせい>>続きを読む

もののけ姫(1997年製作の映画)

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まぎれもなく宮崎駿の作品だが、ジブリ映画と言うのが憚られるくらい異色だ。第一に子どもの存在が徹底的に排除されている。アシタカの一族も乙事主の一族も種の存亡が掛かっていて、その退路のなさが物語の底にある>>続きを読む

映画 聲の形(2016年製作の映画)

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情緒的にかなり揺さぶりを掛けてくるので感動はするけど、脚本に無理があることは認めなくてはならない。

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(2001年製作の映画)

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ひろしの革靴の臭いは一家を養うために汗水流して働いてきた結果獲得されたものであり、それは大人になってしまったひろしの現在を端的に象徴するものだからこそ正気に還らせる効果がある。そこに垂直的な移動の闘い>>続きを読む

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