まやさんの映画レビュー・感想・評価

まや

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未来世紀ブラジル(1985年製作の映画)

4.0

コント色がやけに強いと思ったら(デニーロ演じるテロリスト登場&退場シーンと主人公の夢の良質なチープさが際立ってコントだった)監督がモンティ・パイソンのメンバーなのか……過度な情報管理社会への風刺は勿論>>続きを読む

The Blue Hour(英題)(2015年製作の映画)

4.2

タイの人気俳優Gun君の演技をドラマでしか観たことがなかったので(Puppy Honey, Puppy Honey 2, Theory of Love)映画も観てみたい!と思ったらDailymotio>>続きを読む

ディア・ハンター(1978年製作の映画)

4.4

戦争映画ではあるけれど戦争映画という直接的かつ叙事詩的(と思わせるような)ジャンルに区分しかねる、それでいて単純にパーソナルで叙情詩的な物語とも銘打つことができない、複雑で多層的である意味違和感の多い>>続きを読む

Summer of 85(2020年製作の映画)

4.0

主人公が死の観念から死の実質に迫っていく、恋愛映画という表層を纏った「死」の映画。16mmフィルムのザラつき感とフレームレートの低さが心地良い。恋愛描写が意外にも淡々としていて、奇を衒うことなくひたす>>続きを読む

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)

4.2

午前十時の映画祭にて鑑賞。家で4度鑑賞を試み4度とも寝落ちしてしまったのでもう一生観了できないのでは……と思っていた矢先の劇場上映に感謝。
ワーグナーから映像芸術に受け継がれたであろう冗長さと、神話の
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コヤニスカッツィ(1982年製作の映画)

4.3

台詞もナレーションも無い、映像と音楽が無限旋律のように連なる90分。監督はこの作品の一義的な捉え方を否定しているらしいが映像に含意されるものがあまりにも分かりやすく、どう考えても"結果"に終着している>>続きを読む

戦場のメリークリスマス 4K 修復版(1983年製作の映画)

4.7

青みがかかった画面に赤いタイトルが映え、聴き取りにくかったビートたけし氏とトムコンティ氏の日本語がはっきり聴こえ、坂本龍一氏の音楽の低音部がちゃんと響き、修復版の良さを実感。
日本の武士道精神と全体主
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ファンタジア(1940年製作の映画)

4.2

絶対音楽を視覚化する際に楽器群のビジュアルを使用してオーケストラそのものの身体を強調したり『春の祭典』のような作品に新たな物語を上書きすることで、演奏行為における演奏家の「演者」としての身体性が映像に>>続きを読む

午後の網目(1943年製作の映画)

4.2

ともすれば直接的に表現されがちな鏡や階段のモチーフを敢えて平面化している間接的な入れ子構造、「境界線」の象徴としての白昼夢や影、鍵やナイフをポジティブに映す達観した分断、自我の二義性/両義性への懐疑と>>続きを読む

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009年製作の映画)

4.0

新作公開前に予習鑑賞。前作では何のためにエヴァに乗るのかを自問することで「自己」の確立を目指した主人公が、この作品では対他者としての自己を超えて対自己としての「自我(自己同一性)」を形成していく。
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窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)

4.0

画面縦横比をシネスコにすることで愛し合う彼らの世界だけにピントが合うような近視眼的狭さ、社会からの断絶が示されていて良かった。し、潜在的な異性愛規範とかホモフォビアもリアルさを失わずに描くことで同性間>>続きを読む

わたしはロランス(2012年製作の映画)

4.3

「トランスジェンダー」が主題というよりそのフィルターを通した「愛」を主題にした物語。
ロランスとフレッド2人だけの主観世界と彼らが「見られる対象物」になる対主観(≒客観)世界の対比はサルトル的な眼差し
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ベン・ハー(1959年製作の映画)

4.2

新年1発目鑑賞。ベンハーと宿敵メッサラがかつて同性愛関係にあった、という公式裏設定の存在を映画『セルロイド・クローゼット』を観て知りその印象が強すぎたので鑑賞中どうしても悪役メッサラを憎めず複雑な気分>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.5

昨年末に鑑賞。主体と客体の一方向性をインタラクティブな関係に発展させる際、男性(性)を介さずほぼ女性だけが登場する世界を敢えて創り出したのはテーマに対してより均質に思考できて効果的だなと(ただ最後には>>続きを読む

ザ・プロム(2020年製作の映画)

4.0

ミュージカル映画の虚構感はやっぱり楽しい。ただそのリアリティの無いフォームと反比例して内容はリアルを装っていて、些か啓蒙的すぎるような気が。ここまで啓蒙的でなければ伝わらない現代社会に危機感を持つべき>>続きを読む

メランコリア(2011年製作の映画)

4.2

これほど全編通して『トリスタンとイゾルデ』前奏曲を使ってくれるのは単純に耳の保養ではあった。イゾルデは愛の力で死にたいと欲し「愛の死」を歌うが本作の鬱病の主人公はより直接的なデストルドーを露わにし、死>>続きを読む

ぼくを葬る(おくる)(2005年製作の映画)

4.3

ネガティヴな意味ではなく主人公の自己愛の強さにフォーカスした作品で、自らのDNAを残したいと願う、自分と「似ている」祖母にだけ事実を打ち明ける、幼少期の自分を思い起こす等、死に直面した主人公が自己同一>>続きを読む

ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)

4.4

映画館で鑑賞できて本当に良かった。映画音響分野はエンジニア達の「音」の出発点がシェフェールの具体音楽やケージの音概念だったりするので映画音楽よりアクースマティックで実験音楽的な印象を受けると同時に、(>>続きを読む

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)

4.2

【再投稿】
この映画の冒頭に使われているピアノ曲『ハレルヤ・ジャンクション』を演奏してみました。全てのcmbynファンに届け!ご視聴はこちらから→ https://youtu.be/RBIoy3kui
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死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)

4.0

大衆娯楽的サスペンスストーリーと調和しているのかは不明だがマイルスデイヴィスの音楽が最高、夜のパリを彷徨うジャンヌモローの美しさを一層引き立たせている。冒頭の顔面アップショットから世界が広がっていく感>>続きを読む

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

4.2

何ヶ月も前から楽しみにしていたドラン最新作を遂に鑑賞。相変わらずスローと早回しの使い方が絶妙、唐突なズームも背後からのショットも健在でドラン節全開。音楽の入れ方も良い。何より言葉であまり語ることなく感>>続きを読む

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)

3.8

女性の描き方にウンザリして途中で断念したきりだったのを先日頑張って最後まで鑑賞。男性性と極端に対比させているだけの意図的表現なのは理解できるもののやはり生理的に受け入れ難かった。しかし最後の美津子の言>>続きを読む

インセプション(2010年製作の映画)

4.4

個人的に大衆性の欠片もない芸術分野に携わっているのでノーラン作品の哲学性と娯楽性両方兼ね備えたバランスの良さには圧倒される。重層化したミッションのそれぞれの場面は良い意味で荒唐無稽で、夢世界における何>>続きを読む

セルロイド・クローゼット(1995年製作の映画)

4.0

ハリウッド映画においてLGBTQが如何に描かれてきたか検証したドキュメンタリー。物笑いの対象として、悪の体現として、或いは死をもって罰せられる悲劇の対象として、彼/彼女らは大抵シスジェンダーヘテロセク>>続きを読む

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)

4.2

音楽で煽ることもなくカメラをズームさせることもない、前触れなく遂行される静かな殺しは写実主義の極致で、ヴィスコンティやフェリーニのネオレアリズモから受け継がれた(語弊があるかもしれないが)瀟洒さを感じ>>続きを読む

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

4.3

フライヤーの言葉通り「圧倒的熱量」を体感。三島由紀夫も東大全共闘も反知性主義を標榜しながら両者の思想はどちらも反米愛国主義が根幹にあるという矛盾が面白かったのは置いておいて、「他者を主体として認識して>>続きを読む

キング・コング(1933年製作の映画)

4.0

制作から90年近く経った今でも色褪せない怪物映画の金字塔。ストップモーション撮影のぎこちなさが気にならないほど物語の筋が通っていて充分面白い。マックス・スタイナーの音楽が秀逸でアンダースコアの意義を明>>続きを読む

ドクター・ドリトル(2020年製作の映画)

3.7

それぞれの動物の性質や特徴を掴んだ観察力とCG技術は素晴らしかったが人間キャラクターの描写の掘り下げがやや不足気味でプロット自体も甘さが目立つ。子供向けだから許されるのか……最近はプロットや人物描写が>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.2

共同体の物語なのでてっきり共感賛美を描いているのかと思いきや真逆だったり、北欧神話にまつわるのに反ワーグナーを感じさせる内容だったりと色々面白かった。エンパシーとりわけ共苦の全否定はアンチワーグナー祝>>続きを読む

すばらしき映画音楽たち(2016年製作の映画)

4.3

すばらしきドキュメンタリーだった。初期の映画音楽が映写機のノイズを誤魔化す役割を担っていたというのはグールドやケージ美学の対立項に思えるし、ある楽器や楽器ではない物から全く別のイメージを持つ音や音楽を>>続きを読む

美女と野獣(1991年製作の映画)

4.2

冒頭、暖色系の画面にベルの青い衣装が際立ち一瞬で惹き込まれる。建物の内部=心の中という明快な比喩も良い(城の中に閉じ込められ嘆くベルの姿がズームアウトされカメラが窓の外に飛び出すショットと、陽気に『強>>続きを読む

霧の中のハリネズミ/霧につつまれたハリネズミ(1975年製作の映画)

4.2

ノルシュテインの短編アニメーション映画。クラリネットの穏やかな主題と不安を掻き立てるような弦のトレモロが対比的に提示され、得体の知れない霧の中の「何か」への恐怖を描写する。作家自身がインタビューで「霧>>続きを読む

ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013年製作の映画)

4.0

スコセッシ初鑑賞。クズ男性生成の流れが分かって面白かった。(実話だからではあるが)あからさまなヘテロ男性中心描写と社会的マイノリティの完全モブ化は風刺が利いていて逆に良い。冒頭で主人公の会社のロゴが映>>続きを読む

ラウンドヘイの庭の場面(1888年製作の映画)

4.0

現存するもので最も古いといわれる2秒の映画フィルムが、現在最も巨大な動画共有コンテンツであるYouTubeやその他のマルチメディア資料閲覧サービスで誰でも簡単に鑑賞できるということ自体にある種のメディ>>続きを読む

地獄でなぜ悪い(2013年製作の映画)

4.3

園子温作品初鑑賞。酷くて最高だった。映画賛歌と思わせておきながらアンチ映画的。わざとらしい駆け引きの台詞、いかにもそれっぽい音楽、画面と音楽の唐突なブツ切り、全てが「映画的なもの」への反骨とアイロニー>>続きを読む

天気の子(2019年製作の映画)

4.2

昨年夏に映画館で観た時の感想を今更ながら投稿。一億総動員的なものへの反発やエゴイズム賛美に清々しいほどのイマドキ感が表れていて好きだった。すごく前向きなデカダン。
『君の名は。』大ヒットで予算が潤沢に
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