過酷な舞台設定でもシリアスになり過ぎない、ブラックコメディすれすれの独特なタッチの娯楽作品で面白かった。二転三転する派手な展開の中でも、1944年のオランダで生き抜き、目的を達成しようとする一人のユダ>>続きを読む
賛否が激しく分かれる作品だが、マイケル・マンの映像美学や様式("追う男"と"追われる男"の構図など)へのこだわりはしっかりと詰まっている。銃撃戦の迫力も半端じゃない。ジョン・デリンジャーもメルヴィン・>>続きを読む
アキ・カウリスマキの映画らしく淡々と悲劇が続くが、主人公カスリネンが刑務所に入れられ、マッティ・ペロンパー(ミッコネン)が登場してから一段と物語の吸引力が増す。そこからラストシーンまでのゆるやかな感動>>続きを読む
「八歳の少女が森の中でpetite maman(小さな母親)と出会う」不思議な話であるにも関わらず、SF的な感じはほとんどなく、ファンタジー感も前面に押し出さない。対等になった親娘のシンプルでささやか>>続きを読む
緑と赤の対比に彩られた絵画のような画面が美しい。ヘビーな物語だが、原案になったノンフィクション『戦争は女の顔をしていない』の内容を知ると、本作の脚本が極めて誠実に書かれているということがよく分かる。ク>>続きを読む
物語の核となる家族のドラマは、自分のような人間にとってはナイーブ過ぎるように感じられ、うまく接続できずモジモジしてしまった。それでも好きだし面白かったと思えるのは、端的に言えば「スピルバーグの映画」だ>>続きを読む
元々派手とは言えないカウリスマキ作品の中でも本作は特に地味な物語として分類されそうだが、「ただの映画」という感じがしてとても好みだった。いい意味で「大したことない」だけに味わい深い作品。
独特の青み>>続きを読む
思った以上に奇妙なラブロマンスで、とても面白かった。これまでのパク・チャヌク作品で印象的だった過激な暴力シーンや性的なシーンを抑えて、一見「普通に洗練された映画」っぽく見えるのが、余計にストーリーテリ>>続きを読む
すごい豪華でよく出来た風刺映画。こういう役のティム・ロビンスいいな。劇中で語られているヒットする映画の条件=スターの出演、セックス、バイオレンス、サスペンス、ハッピーエンド等を本作自体が満たしていて、>>続きを読む
重たい現実を反映しつつもどこかチャーミングな作品で、偏愛する一本になった。もしかすると「洗練された映画」とは言えないかもしれないが、映像も良いしキャラクターも魅力的(華僑の双子姉妹の役割と扱いはややゆ>>続きを読む
モラルを飛び越えた奇妙な映画であることは確かだが、基本的には(アメリカン・ロードムービーへの愛を湛えた)アウトサイダー同士の普遍的なラブストーリーである。そういう意味でも『僕らのままで/WE ARE >>続きを読む
繊細な演出と映像。『ゴッズ・オウン・カントリー』同様、丁寧でとても良い映画だった。フランシス・リー監督は、自然と労働と愛を瑞々しく描くことに長けている。そして何より、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ>>続きを読む
個人的アンナ・カリーナのベストアクト(の一つ)。
A面:『女と男のいる鋪道』
B面:『修道女』
という感じで。
もはや「演技が良い」のかどうかすらも分からないけれど、とにかくアンナ・カリーナを魅>>続きを読む
画面に映し出されるのは、寒々としたロシアの風景や狭く薄暗い列車内ばかり。その余計な装飾や光のない映像世界がかえって美しく、内省的な雰囲気を際立たせている。まるで夢の中を旅するロードムービーのようだ。ま>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
自分の好きなシャンタル・アケルマンのほぼ全てはこの映画に詰まっていると思う。約200分と長尺だが、この長さには必然性がある。通常の映画で省かれるような描写(淡々と繰り返される日常の動作・家事)が「省略>>続きを読む
スケッチ的に描かれた群像劇と富陽の景観に見惚れているとあっという間の150分間。壮大なロングショットや絵巻物を彷彿とさせる横移動の長回しも迫力があって、大きなスクリーンで観てみたかった。巻二の公開を楽>>続きを読む
ファルハディの長編第一作目。まだ色々と荒いけれどケレン味もあって、これはこれでまた魅力的な映画。特に、これ以降完全に捨ててしまったタイプのショットが全編を通して見られるところは注目に値する。しかし、キ>>続きを読む
アスガー・ファルハディの長編第二作目。今のファルハディ作品に通ずる「スキのなさ」が確立される第三作目(『火祭り』)以降とはまた違う強烈な魅力があって、めちゃくちゃ良い映画だった。意外にも切なくてエモー>>続きを読む
映像と撮影の美しさ、それからクレアの多彩なスタイリング以外は内容的にあまり刺さるところが無くて結構つらかった。主人公のフレデリックは悪人ではないけれど、今までに観たロメール映画の登場人物の中でおそらく>>続きを読む
「完全に共感」とかは無いけれど個人的な経験や性格上、本作には特別惹かれるものがあった。この滑稽さ、それから微妙な人間心理と関係性の描き方はまさにロメールにしかできない芸当で素晴らしい。最近みっともなく>>続きを読む
ほぼリアルタイムで進んでいく試合描写の異常なまでにこだわり抜かれたアニメーション表現は圧巻だった。ほとんど説明抜きに登場人物(特に主人公・宮城リョータ以外の、回想シーンのあまりないキャラクターたち)の>>続きを読む
語り口も上映時間もあっさり、すっきり。ドロドロの愛憎劇になりそうな内容でも、あくまで軽妙なのがロメールらしい。不憫に見えたシュザンヌが真の勝者であったと分かる結末も気持ち良い。
「もしや心霊ホラーかも?」と思わせるような演出、二転三転する展開など、観客を楽しませようとするサービス精神満点の映画で面白かった。また、谷崎潤一郎も評していたように役者陣が適役。皆そういう人にしか見え>>続きを読む
この頃からすでにファルハディの卓越した演出・撮影・編集・ストーリーテリングの技法は確立されている。『別離』同様、オリエンタリズムやエキゾチシズムでは片付けられない良い意味での普遍性と、イラン社会固有の>>続きを読む
基本的にしょうもない、肩の力を抜いて観られる祝祭コメディで最高だった。観る前は、アートワークの雰囲気から勝手に、ロイ・アンダーソンのような不条理コメディをクストリッツァが撮ったのかと想像していた。ワン>>続きを読む
今までのロバート・エガースの作風と比べるとだいぶ挑戦的な規模感の作品なので正直そこまで期待値は高くなかったけれど、予想以上に楽しめた。迫力あるヴァイキングの雄叫びや唸り声が全編を支配し、高揚感のある音>>続きを読む
長尺だが、スタイリッシュで緊張感のある映像とサスペンスフルな展開によって飽きずに観られる。心を入れ替えて善い人間として生きようとするものの社会的・構造的な障壁にぶつかり、どうしても悪の道に引きずり込ま>>続きを読む
一瞬苦手なテイストかと構えたが、黄色みがかった映像とイレーヌ・ジャコブの美しさにじわじわ惹きつけられる。ちょっと少女漫画のような話で、案外肩の力を抜いて観られる。それから、他の映像作品では感じたことが>>続きを読む